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検索対象: リアル鬼ごっこ
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1. リアル鬼ごっこ

祐『あいっさー、何かおかしくない ? 』 『なんか噂によると、虐待に遭っているらしいぜ』 自分に関する様々な悪口が聞こえてくるようだった。色々な声が重なりあって、翼に襲い かかってきた。 「やめろ・ : ・ : やめてくれ ! 」 翼が叫んでも決して耳から離れなかった。翼は両手で頭を抱え、 「うわああああ ! 」 と再び大きく叫ぶと、もう自分で自分が分からなくなっていた。その声から逃れるように 更にスピ 1 ドを速めると、目の前の金網に突き当たった。そこを乗り越えると一面の畑が広 がっていた。明かり一つない真っ暗闇の畑の中を翼は駆け出していた。後ろからは、鬼が金 網を乗り越える音が聞こえてくる。畑を抜けると道が左右に分かれていた。左に曲がろうと すると、またもや別の鬼が現れ、警戒音を発した。 震えて言葉が出なかった。翼は向きを変えて休む間もなく駆け出した。畑から抜け出した 鬼がなおも翼を追ってくる。 細い道路をひたすら逃げていた翼は初めて後ろを振り向いた。一人が先頭に、もう一人が

2. リアル鬼ごっこ

た。まさか、最初に訪れた家に愛がいるとは思っていなかったが、その反面、心の奥底では ″もしかしたら〃と、そんな思いを抱いてしまう。玄関のドアの前に並んで立っと、洋が顎 でインターホンを示す。頷いてインターホンを押した。辺りが静かだったせいか、チャイム が響く音もしつかり聞こえてきた。しかし、しばらく経っても誰も出て来なかった。翼はも 。翼の考えを洋はそのま う一度押してみたが、結果は同じだった。留守か ? それとも : ま言葉にした。 「捕まったのか ? ここの人間は : いないことは確かだな」 「分からない。でも、 二人の間には重い空気が立ち込めた。その雰囲気を紛らわそうと、 「よし ! 次行くで、次 ! まだまだ始まったばかりやからな ! 」 翼に向かって言うと、強く肩を叩いた。 「あ、ああ : : : 」 言葉に力が感じられなかった。何とか気持ちを奮い立たせようと、 「そうだな、行こう」 自分に一一 = ロい聞かせるように一一 = ロった。 「よっしゃ ! 」

3. リアル鬼ごっこ

104 再び気持ちが昂ぶり、つい口調も早まった。 「そ、そのことだが : : これから話すことを真剣に聞いてくれ : いいな、冷静に聞くん 苦しいはずなのにしつかりした眼差しで翼に言った。翼は、真剣な顔をした父に息を呑ん で耳を傾けた。 「益美が死んでからな、愛は俺の弟夫婦の所へ、養子として引き取られた」 「どうして ? もう一度、愛と一緒に暮らすこともできたんだろ ? 」 「そうしたら、益美が死んだことがお前に分かってしまうだろ ? それだけは避けたかった。 それに、弟夫婦には子供がいなかったんだ。弟夫婦も是非、愛を養子に欲しいと言ってき 不満そうに翼は言った。 「それで : ・・ : 愛を預けたのかよ・・・・ : 」 父は小さく頷き、 「そうだ。お前にとっても愛にとっても、それが一番よい選択だと思ったからだ」 父は自分は乱暴な父親だと遠回しに言っていた。愛を連れ戻したら愛にも暴力を振るって いただろうと。

4. リアル鬼ごっこ

は食わなかった。洋の拳をよけると、今度は鬼が洋に殴りかかった。鬼の拳が洋の顔面をと らえた。洋は倒れずに、そこから体勢を整えて、 「うおおおお ! 」 今度は殴ると見せかけて、鬼の腹を思いっきり蹴り上げた。もう一度腹を蹴り上げると鬼 は吹っ飛び、仰向けになって倒れた。 「翼 ! 何やってる ! 早く ! 」 怒声を放った。 「でも : : : でも : 洋を見捨てて自分だけ逃げることなどできなかった。そんな翼の躊躇いを打ち消すように、 「何を迷っとる ! さあ、翼 ! 走れ ! 走れ ! 」 何度も″走れ〃と叫び続ける。翼は涙を流し、声を詰まらせながら、 逃と、ささやくように言った。翼が泣いているのが分かったのだろう。洋は優しく頷いた。 驂翼も涙を拭いて頷いた。その直後だった。もう一人の鬼が静かに立ち上がると腰の辺りから おもむろに″拳銃〃を取り出したのだ。 「ひ、ひ、洋 ! 」

5. リアル鬼ごっこ

ようやく長い坂を上りきった翼は一度立ち止まって辺りを見回した。静かだった。誰一人 歩いていなかった。住宅街だし時間も時間である。しかし、翼は妙な胸騒ぎを覚えた。一度 も感じたことのないこの不安。何だろう ? もう鬼が出るはずもないし : 。次第に動悸が 速まっていくのが分かる。 妙だな、と思いながら角を左に曲がると、自宅の前に一人の男性がうつぶせに倒れている のが目に入った。荒てて駆けつけた翼は目をみはった。 「お、おやじ : 父は異常なほどに呼吸を乱している。あまりの驚きに言葉が続かない。 翼はしやがみ込み、ゆっくりと父を仰向けにした。 「おい、おやじ ! しつかりしろ ! 」 叫び続ける翼に、父はうっすらと目を開いた。 実「つ、つ、翼か : : ・・」 もうろう 目朦朧としながらも、まだ意識はあるようだ。 四「あ、ああ : : : 俺だよ。おやじ : : : どうした ? 」 十 翼も必死に声をかけていた。 的父は呼吸を乱しながらも苦笑いを浮かべ、そして、苦しそうに言った。

6. リアル鬼ごっこ

「翼君 : : : 落ち込む気持ちも分からなくはないが、君にはまだまだ残された使命があるはず だ。この馬鹿げた鬼ごっこから一週間逃げ切る他に、君には妹を守る義務がある。何として も、妹の愛ちゃんを助けて、佐藤の死を決して無駄にしないでくれ」 この人の言うとおりだ。落ち込んでいても何も始まらない。しつかりしろ ! と自分に強 く言い聞かせた。そして、森田の瞳の奥を見つめながら強く頷いた。森田も頷いた。そして、 最後に、 「負けるなよ ! 」 とだけ言い残し居間を後にした。 いろんな意味が込められているのであろう森田の最後の一言で、より一層、翼の闘志が燃 え上がった。何としても、何としても愛を助け出し、二人だけでも逃げ切るんだ ! 翼は森 田と出会えたことに感謝した。 真翼は座布団から腰を上げ、居間を出た。 目そろそろ通夜も終わりを告げようとしている。弔問客を見送りながら、頭の中で、父が最 四後に残してくれた愛の唯一の手掛かりを何度も何度も繰り返していた。大阪までの切符は既 に手に入れてある。そして : : : 淀川区新北野という場所のどこかに愛がいるはずだ。父の言 とにか / 、、そこに夂が っていた情報が正しければの話だが、今はそれしか手掛かりがない。

7. リアル鬼ごっこ

込んで作られたと思われるそのオモチャが反応しなくなるまで距離を稼がないといけないの で、翼は裏道をただがむしやらに、走って走って走りまくった。もう、振り返りはしなかっ ふと気付くと高級住宅街に入っていて、翼はそこにポツンと一本だけ立っているライトの 下で、足を止め、塀の壁に寄りかかった。多少息が乱れていたものの、まだまだ余裕があっ た。先ほどの鬼は完全にまいたとはいえ、鬼はあれだけではない。全国に百万人の鬼が配置 されているのだ。いつどこで違う鬼に遭遇し、追いかけられるか分かったものではない。そ の間、ほんの少しだけ休憩を取ることにした。それでも、周りに目を配ることは怠らなかっ た。休憩をしていても、体はちっとも休まらなかった。この一時間の間は肉体的にも精神的 にも、決して休まることはないだろう。 よみがえ しばらくして、呼吸の落ち着いた翼の脳裏に先ほどの悪夢が蘇っていた。鬼の姿をとうと うこの目で見た。目から鼻の辺りまで覆われている探知ゴーグル。全身が迷彩服で、頭には ハーか納まっていた。 王国のマ 1 クがついた帽子。胸には鬼同士の連絡のためか、トランシー そして、何より衝撃を受けたのは、鬼の腰の辺りに拳銃のような武器がチラッと見えたこと だ。捕まえた者、またはル 1 ルを犯した者を射殺するためだろうか。とにかくそれが一番恐 ろしかった。

8. リアル鬼ごっこ

会 逃げて行った。男と警官の姿が見えなくなると、周りの視線は翼へと移った。 翼がそんな人々の視線も気にせず立ち上がろうとした時、ポケットから一枚の紙がチラリ と顔を覗かせた。おもむろに取り出すと、それは洋と二人で調べたリストだった。五十軒も 書かれていた住所が、今では四十軒が消されている。そのリストを眺めているうちに、洋と の思い出が蘇ってきた。いつでもどんな時でも諦めずに自分を慰めてくれた洋との思い出が そのうち、翼の耳に洋の声が聞こえてきた。〃必ず愛ちゃんを助けろよ % その言葉が耳に何度も響くと、翼は今自分が着ているジャ 1 ジに目を向けた。洋がくれた 真っ白なジャージ。それを見ているうちに、翼の中で本来の自分が目を覚ました。立ち上が って、死んでいった洋に再度誓った。 「お前の死を決して無駄にはしない。必ず、必ず愛を捜し出して、一週間逃げ切るよ」 そう言うと翼はしつかりとした足取りで歩き始めた。 洋の死ぬ間際のセリフを翼は胸に秘め、辛い時にはそれを思い出した。再び愛を捜し始め た翼の隣に洋はいない。 一人になった翼は右も左も分からず、一軒、探し出すにもかなりの 時間を要した。それでも弱音は吐かず、ようやく四十五軒目にたどり着いた。計画が実行さ 再 れてから今日で : : : 五日目か。既に何人の″佐藤〃さんたちが捕まったんだろう。翼はそん な恐ろしい現実を不思議なほど冷静に考えていた。そうしているうちに翼は玄関前に立って

9. リアル鬼ごっこ

王のものであるとは書いてなかったのだ。大介はテレビのワイドショーを見ており、発案者 がくぜん が誰かまで全て分かっていた。それを言った途端、翼の愕然とした表情が浮かぶだけに迷っ てしまう : だか、これはいずれ分かることだ。隠さずに全てを伝えようと決心した。自 5 を吐いて、王に対していささかの怒りを込める。 「それは国王の提案だ。理由は俺にも分からない」 そう聞いた瞬間、胸が締めつけられ、鼓動も速まっていくのが分かった。 「こ、国王が : 言葉を続けられず、愕然となった。驚きのあまり、視線が一点に定まらない。手にしてい た新聞はいっしかクシャクシャになっていた。段々と怒りが膨れ上がっていく。拳を強く握 り、鼻息も荒くなり始めた。しかし、怒っても無駄ということは百も承知である。国王が 〃やる〃と言ったら〃やる〃のだ。例外はない。皮肉なことだが、翼は、いや全国の佐藤さ んは、自分の名字を恨むしかないのだ。そして : : : 逃げるしかないのだ。それにしてもこん 日 な理不尽なことはなかった。名字が佐藤というだけで命が狙われるなんて : : : くそー 四翼は諦めたのか、それとも考えるだけ無駄と思ったのか、次第に怒りを収めていった。し 十 かし、不安を顔に出して俯いているのは相変わらずで、その間、二人の間に重い空気が流れ ていた。大介は何とかこの件を翼の頭から追い払ってやろうとした。

10. リアル鬼ごっこ

「王様ー・・鬼、こっことはど一つい一つことで」ざいますか ? ・」 王様はじいをギョロッと見た。じいは一歩引いたが、王様はニャリと不気味な笑みを浮か 「王様、一体何が浮かんだというのですか ? じいにはさつばり分かりませぬ」 王様に対し、先ほどよりかすかに口調が強まっていた。 「ふふふ、じいよ、そんなに私の考えを知りたいか ? 」 さつばり分からないと言われたのが、よほど嬉しかったのか、王様は満足そうな表情を浮 かべ、 いつにも増して尊大であった。 「お願いでございます。教えて下され ! 」 じいはただ興味本位で聞きたいのではない。王様の考えが王国を危機に陥らせるようなも のなら、すぐさま諫めなければならないのである。 王様は固く腕を組み、眉間にしわを寄せて深く考え込んでいた。何を考えているのかはじ いにも分からなかった。 再び、側近たちにとってあの嫌な沈黙が訪れた。が、今度はその沈黙はすぐにゃんだ。王 様は再び不気味な笑みを浮かべた後、 「じい : そんなに聞きたいか。それなら聞かせてやろう ! そのかわり驚くんじゃない うれ