′、ちょう かなもりせんせい 金森先生は、おどろおどろしい口調で言った。 かお ふあん そして、息をひそめて不安げな顔でその話を聞いていたはるかと真紀を見ると、ふふ わら ふっと笑った。 はなし かん 「とまあ、こんな感じで、その話はわからないままらしいけれどね。 はなかたもど きゅうかなもりせんせい 急に金森先生は、ふつうの話し方に戻る。 じようたい 「いわゆる見えなくてわからない状態で想像しているときがもっともこわいものを創りだ している、ってパターンね。 「想像しているときがいちばんこわい ? 」 まきかなもりせんせい 真紀が金森先生の言葉に、首をひねる。 しようせつよ おも 「そういうことってない ? ホラー小説を読んで、ものすごいものを思い浮かべてこわ えいがか やす がっていたけど、それが映画化されて見てみると安っぽいバケモノになっていて一気に気 持ちが冷めたりするじゃない このヘビの首っていうのが、私が知ってる有名ないちばん はなし おも かいだん こわい怪談ね。なかなかよくできた話だと思うわ。」 かいだん かなもりせんせい そう言って、金森先生は怪談のシリーズものから何冊か取りだしてみせる。 そうぞう そうぞう はなし なんさっと わたし ゅうめい
たてものまえ ろうば まち ひとりろうばある しず 「人の気配がなく、静まりかえった街に、一人の老婆が歩いてきた。老婆はある建物の前 ひやっかてんあ こえ で、立ちどまった。そして、しわがれた声で一部ったのだ。この百貨店、開くの、十時か じゅんいちろう 純一郎はブッと吹きだした。 「くだらねー はなし 「な ? こわくなくって、おもしろい、こわい話だろ ? あと、恐怖のみそ汁とか、ネコ かいだん の怪談とかもあるぞ。」 かた じゅんいちろう 健吾が言うと、純一郎はまだおかしそうに肩をふるわせながら、うなずいた 「うん、たしかに、おもしろいな。」 ほうかごたの はなし ほん」う 「でも、オレは本当にこわい話のほうが好きだけど。あー、放課後、楽しみだなー きようしっとけい 胸をわくわくさせながら、健吾は教室の時計をながめた。 キーンコーンカーンコーンー おとな じかんめ 六時間目の終わりを知らせるチャイムの音が鳴りひびく ひと むね きようふ しる
すいようび げこうじかんはや 水曜日なので、いつもよりも下校時間が早かった。 じかん かとうくんきよう はなし 「あらあら、もう時間ですね。加藤君、今日はすてきな話を聞かせてくれてありがとう。 たの こわくはなかったけれど、とても楽しかったです。 ふるたせんせい じゅんいちろうほほえ 古田先生は、そう言って純一郎に微笑みかけた。 あした はなし たの 「明日はどんなこわい話をしてくれるのでしようか ? 楽しみにしています。それではみ き なさん、気をつけて帰ってくださいね。 え ふるたせんせい かんたん 古田先生の笑みは、簡単にはくずれそうになかった。 こえ ランドセルにノートを入れて、急いで帰ろうとしていた純一郎に、健吾が声をかけた。 「なあ、さっきの話ってあれで終わりなのか ? じゅくおく きようしつで こた 塾に遅れそうな純一郎は、教室を出ながら答えた。 「うん、そうだけど ? あと 「いや、あの後、ミカコはどうなるのかなあ、って気になって。」 「べつに考えてないけど : かんが はなし じゅんいちろう かえ 0 お かえ じゅんいちろう
「ケータイ返してもらえて、よかったね。はるかちゃん ! 」 - っ てなか おもかん だが、はるかは浮かない顔だ。手の中のケータイがずっしりと重く感じられた。だが、 き 真紀は気にしていない かとうくん さいのう 「ほんと、加藤君って才能あるって、ぜったい ! 」 まきたかこえきようみよう みみひび 真紀の高い声が今日は妙にキンキンと耳に響いた かんが はるかは考えていた。 まえ ( 真紀ちゃんがケータイを持ってる前で、あのサッちゃんの霊のメールを送ってきたアド へんしん へんしん レスに「返信」をしたらどうなるだろう ? もし、返信のメールが真紀ちゃんに届いたら ・ : 真紀ちゃんが私にあのメールを送ってきたってことだ : : : 。 ) はなしかんが かとうくん 「そうだー こわい話を考えてくれた加藤君に、なんかお礼をあげようよ ! ねつ、はる きようじゅくまえ か かちゃん ! 今日、塾の前にでも、なんか買いにいこうか ? わら 真紀はそう言って、笑いかけてきた。 えがおっく へんじ だが、はるかはうまく笑顔を作って返事をすることができなかった。 かえ わたし かお も おく おく とい」 224
き 「そう ? わかんないよ ? 気のせいじゃないの ? おな しぐさ くび 同じように匂いをかぐ仕草をした真紀は、首をひねる。 くさき 「むしろ、ちょっとカビ臭い気がするけど。 真紀はそう言って、顔をしかめた。 はなくうき す かん はるかも鼻で空気を吸いこんでみたが、何も匂いは感じられなかった。 すす わ おと じゅんいちろうあしした 丿、。、リ、とガラスのかけらが割れる音がした 進んでいく純一郎の足の下で、 あしもと お あぶ 「足元、いろいろと落ちてて、危ないぞ。」 みどりいろひじようとうゆかころ かいちゅうでんとうて みどりいろひとかたち 懐中電灯で照らすと、緑色の非常灯が床に転がっていた。緑色の人の形がドアから脱出 すがたえが あたまぶぶんわ しようとしている姿が描かれているのだが、その頭の部分が割れてなくなっている。 くび ひじようぐち くん 「首なし非常ロマーク君だ : ・ しやしんと そうつぶやいて、真紀はパシャリと写真を撮った。 「ここはトイレだな。 あかじよせいよう かいちゅうでんとうあ くろだんせいよう 黒い男性用のマークと赤い女性用のマークに、純一郎は懐中電灯の明かりをむけた。 こよく出てくるスポットだよね 「トイレってのも、怪談。 にお かいだん 、お 0 で なににお じゅんいちろう 0 0 だっしゆっ 178
しつもん いきなり質問をされて、みんなはとまどった。 とく こた そんな中で、クラスでいちばん、国語の得意な純一郎がぼそりと答える。 「客観。」 ものごとみかた しゆかんてきみかたきやっかんてきみかた 「そうですね。物事の見方には、主観的な見方と客観的な見方というものがあるのです。」 はなしすこ せんせい りくっ 先生の話が少し理屈っぽくなったので、健吾はあくびをした。 かとうくんのこ ( 加藤君も残ってたんだ : : : 。 ) いがいおも はるかは意外に思った。 あたま かえ かとうくん かいだん ( 加藤君って頭いいし、怪談なんてバカにして、とっとと帰っちゃいそうなイメージだっ たけど。 ) き じゅんいちろうまえ そして、はるかはそんな純一郎か前から、ちょっと気になっていた。 おな め さんじよう せんせい 「もし、先生が三条さんと同じような目にあったとしても、先生はそれを霊だとは考えな おも ひとからだ かんが つか いと思います。人の体がにじんで見えても、眼が疲れてるのかな、って考えるでしよう み おも さんじよう ゅうれい せんせい ね。三条さんが幽霊を見たと思ったできごとも、先生なら、まだ寝ぼけてるのかしら ? おも へんゅめみ ああ、変な夢を見たわ、と思うでしよう。」 きやっかん せんせい なか み め じゅんいちろう かんが
ばんごう 「バカだねー、そんなのありえないって。はるかのアドレスってケータイ番号じゃなく て、ローマ字でしょ ? たまたま組みあわせてあんたのメルアドになるなんて、どんだけ おも の確率だと思うのよ。」 じわるわら お姉ちゃんは意地悪く笑ってみせる。 「つまり、あんたのアドレスを知ってる子がわかってて送りつけてきた、ってことね。」 お姉ちゃんの言葉を聞いて、はるかはショックだった。 のろ おく ( 私のアドレスを知ってる子が、呪いのメールを送ってきたってこと : しん そんなこと、信じたくなかった。 かんが ここのかいない ( でも、考えてみれば、私だって、九日以内にメールを送らなきゃいけないって書かれて さき おく おも だれ いるのを読んだとき、真っ先に「誰のケータイに送ろうか ? 」って思ったんだ : : : 。 ) まきかお まさき はるかの頭に浮かんだのは、真紀の顔だった。はるかが、真っ先にメールのアドレスを 教えた相手。 ( ちがう ! 真紀ちゃんが私にあのメールを送ったなんて : : : そんなわけない ! ) じぶんかんが あわてて頭をふって、はるかは自分の考えを打ち消した。 わたし かくりつ ねえ ねえ あたま あたま わたし わたし こ こ おく おく 165
おも はなし 話がいちばんこわかったんだと思うぞ 「ああ、それいいかもー 真紀が手を打つ。 しこくちほう こじんてきほうげん にがて 「オレは個人的に方言ってやつが苦手で、特に四国地方のしゃべり方をされると、なんで むかし かん かそれだけでこわい感じがしちまうんだ。あと、昔つから、ネコってなーんかこわいんだ よな。化けネコとかのイメージで。」 にがて ふるたせんせい 「うーん、古田先生の苦手なもの、ってなんだろう : ・ うでく はるかは腕を組むようにして考えてみた。 まえきようしつはい せんせい 先生はネコを飼ってるから、たぶんこわくはないだろう。虫も、前に教室に入ってきた へいき カナプンを平気な顔して追いだしていたし : ・ ともだち はな ばふんいき 「それとさ、話すときの場の雰囲気っての、もっと演出してみたらどうだ ? オレの友達 くら えいがかんきようふかん ばしょ えいが は暗い場所がこわいから、ホラー映画とかそういうのじゃなくても映画館に恐怖を感じ かいちゅうでんとうひかりはな むり るって言うし、明かりを消してロウソク : : : は無理でも、懐中電灯の光で話すとけっこう おも もりあがると思 , っぜ かお かんが AJ く えんしゆっ むし かた 147
きようしつ ・けこうじこく こんど 今度はちゃんと、いつもスピーカーから聞こえる「下校時刻になりました。まだ教室に ほうそう いんこえなが ひとかえよう 残っている人は帰る用意をしてください。」という放送委員の声が流れた。 たの はなしき しゅうかん かえじかん しろいろな話が聞けて楽しかったです。話 「さて、もう帰る時間ですね。この一週間は、 ) はなし せんせい あしたほうかご をしてくれたみなさん、本当にありがとう。では、明日の放課後は、お返しに先生が話を おも したいと思います。 はなし 「それもこわい話ですか ? 」 おも こえ ほんものゆうれい 健吾が手をあげて聞いた。さっきの放送を本物の幽霊の声だと思って大さわぎしていた のに、こりていないようすだ。 はなし 「そうですね。こわいと言えば、先生にとってこれほどこわい話はありません。この話を あした おも せんせい かん かいだん 知っているからこそ、どんな怪談もこわいと感じないのだと思います。明日は、先生がな おも はなし りゅう おも ぜ幽霊をこわいと思わなくなったか。その理由となった話をしたいと思います。 こと・は けんご 先生の言葉に、健吾はうれしそうだった。 とく かおはな かえみちまき 帰り道、真紀は得意げな顔で話しかけてきた。 のこ ゅうれい せんせい ほんとう せんせい ほ - つ、 - っ き かえ おお はなし はなし 223
わたしのうりよく えても、私の能力はそんなに強くないから、浄霊とかそういうことはできないからです。 き それに、霊はやさしくしたり、気にかけると、その相手についてきたりするのです。だ むし から、無視したほうがいいんです。 おなのうりよく うちのおばあちゃんにも、同じ能力があります。おばあちゃんは占い師をしています。 しようらい ちからひとやくた おも 私も、将来はこの力を人の役に立てたいと思っています。 きよう ねんせい わたし よれんしゅう だから、三年生になった頃から、私はお経を読む練習をしていました。おばあちゃんが しやきよう よかたおし 写経をしていたので、そのとなりで読み方を教えてもらったのです。 きよねんなつやす わたしゅうがた かものたの 去年の夏体みのことです。私は夕方、お母さんに買い物を頼まれました。 そとあか とお まだ、外は明るかったし、スー ーまではそんなに遠くないし、おっかいなら何度も ひかぎ よかん 行ってるのに、その日に限って私はイヤな予感がしました。 しん てつだ でも、そんなことを言っても、お母さんには信じてもらえず、「お手伝いをサポりたい からそんなことを言ってるのでしよう。」とか言われて、私はしかたなくおっかいに行き ました。 なにか わす かもの かえみちある 何を買ったのか、忘れたけど、とにかくスー ーで買い物をすませて、帰り道を歩いて わたし ころ つよ わたし かあ かあ じようれい わたし うらなし なんど