のろ 「呪いなんてありません。そんなメールなんて送らなくても、何も起こったりはしません まきなっとく だが、真紀は納得しない ほんとうのろ 「そんなのわかんないじゃないですか ! 本当に呪いなんてない、 ほんとう か ? サッちゃんの霊が本当にいたらどうしたらいいんですか ? ふるたせんせい しかし、古田先生はきつばりと言ったのだ。 ゅうれい そんざい 「幽霊なんて存在しません。」 じじん かた その自信たつぶりの言い方に、よりいっそう、真紀は食ってかかった。 ゅうれい はなし 「でも、あたし、幽霊を見たって人、知ってるもん ! 霊を見たっていうこわい話だっ はなしし て、いつばい聞いたことあるし。ね、みんなも霊が出てくる話、知ってるでしょ ? 」 どう まききようしつ 真紀は教室のみんなに、同意を求めるように言った。 しずか すると、静香も手をあげた。 すこ れいかん まえ 「私 : : : 少しだけ霊感あります。うちのおばあちゃんも、人が死ぬ前に、その人が死ぬこ とがわかったりするって言ってました。 わたし もと ひと おく ひと なにお って言いきれるんです ひと
きもわる 「そんな : ・ 、あの人形、見ただろ ? すつごく古くて気持ち悪い : 、あんなので遊ん でるのってよくないってー かんかく ひっし マサオはイヤな感覚がしてしようがなかったので必死で言ったが、お母さんはおっとり とつぶやいている。 こうか 「でも、ああいうアンティークドールってけっこう高価なものだったりするのよね。落と もぬし だれ し物だったら、持ち主はさがしてるんじゃないかしら。誰かが捨てていったものだったら いいけど : : : 」 そんなことを言ったので、マサオは驚いてしまった。いつものお母さんなら、捨てて ひろ おこ いったものを拾ったりしたらぜったいにものすごく怒る。 かあ だれ なにねん お母さんは誰かが使っていたものというのは何か念のようなものが残っていそうだと気 もわる かもの 持ち悪がって、リサイクルショップで買い物すらできないのだ。 おも ふるにんぎよう 古い人形なんて、どんな想いがこめられているか、わからない かん にんぎようみしゅんかん マサオはそれを感じとったからこそ、あのフランス人形を見た瞬間から、ずっしりと重 きも い何かがのしかかってくるような気持ちになっていた。 なに もの にんぎようみ つか おどろ ふる かあ のこ かあ あそ おも
ばしょ はなしせんせい ななふしぎけい がっこうかいだん 「学校の怪談とか、七不思議系の話が先生にも関する場所だし、こわいかなあ、って おも : : : うーん、しまいちたった」 思っていろいろと読んでみたんだけど わたし なか 「私が読んだ中でいちばんこわかったのはこの話。」 さつほんと はるかは一冊の本を取りだして、しおりをはさんでおいたページを見せた はなし それはこんな話だった。 こゆくえふめい ゅうれい 学校のトイレに、幽霊が出るという噂があった。そこで女の子が行方不明になって、警 さっ 察がやってくる。 しん ゅうれい じよし そうさく 女子トイレを捜索にきた婦警さんは、幽霊なんて信じていなかった。そんな婦警さんの ぶきみこえき 耳に、不気味な声が聞こえる。 あか 「赤いチャンチャンコ、着せたろか ? 」 つよき 婦警さんはちっともこわがらず、強気に言いかえした 「着せられるものなら、着せてみなさいよ ! すると、どこからともなく、手が出てきて、婦警さんはナイフでめった刺しにされて、 まか ようふくち 洋服が血で真っ赤に染まった・ : みみ がっこう ふけい うわさ はなし ふけい け おんな ふけい
よ はなし 「そんなこと言ったって、オレはちゃんと今まで読んでいちばんこわかった話をしたんだ いじよう ぞ。みんなビビってたじゃねーか。それ以上、オレにどうしろって一一一一口うんだよ。」 健吾はふてくされた。 「しようがないよ、真紀ちゃん。小林君の話、すつごくこわかったもん。 けんご はるかは健五口をかば , つよ , つに一一一戸つ。 てきおも てごわ ふるたせんせい 「敵は思ったより手強いってことだね。でもさ、古田先生、ほんとにこわがってないのか ほんにん な ? やせがまんしてるだけ、かもしれないよね。こわがってるかどうかなんて、本人に しかわかんないじゃない ? 」 ことば 真紀の言葉にはるかもうなずいた : うーん・ そうだね。 「それは : ある うし そんなことを言いながら歩いていた真紀たちの後ろから、急に声がした。 「そんなことありませんよ。 ふるたせんせい ふりむくと古田先生がいた 「先生はそんなズルみたいなことはしません。ちゃんと、こわかったらこわいって、言い せんせい 0 こばやしくんはなし きゅう こえ 116
はなし ほん : っ 「さてと、本当にこわい話を読みたいなら、これとこれとこれなんかいいんじゃないか ていがくねんむ な ? こっちのは低学年向けだから、あんまりおすすめしないわね。 はるかと真紀は、それぞれ四冊ずつ本を借りることにした。 はなし くび 「ヘビの首って、どんな話なんだろうね ? 」 ろうかある 本をかかえて廊下を歩きながら、真紀は言った。 し 「知らないほうがいいんだよね。っていうか、知りたくない : し ら死んじゃうんでしよう ? かんが 考えたくないとばかりに、はるかは頭をぶんぶんとふる きようか おも はなし 「でもさ、そこまでこわい話なら、古田先生だってきっとこわがると思うんだよ。今日借 ほんなか いいなあ。」 りた本の中にのってると み すこおどろ へいきかお 平気な顔でそんなことを言う真紀を見て、はるかは少し驚いてしまった。 よ はなし わたし こわくないの ? 私だったら、そんな話、読んじゃったら、ぜったい 「真紀ちゃん : ・ な こわくて泣く じぶんき すると、真紀もそんな自分に気づいて笑った。 ほん し 0 よ さっ あたま ふるたせんせい ほんか わら 0 : 。だって、聞いちゃった き
わたしのうりよく えても、私の能力はそんなに強くないから、浄霊とかそういうことはできないからです。 き それに、霊はやさしくしたり、気にかけると、その相手についてきたりするのです。だ むし から、無視したほうがいいんです。 おなのうりよく うちのおばあちゃんにも、同じ能力があります。おばあちゃんは占い師をしています。 しようらい ちからひとやくた おも 私も、将来はこの力を人の役に立てたいと思っています。 きよう ねんせい わたし よれんしゅう だから、三年生になった頃から、私はお経を読む練習をしていました。おばあちゃんが しやきよう よかたおし 写経をしていたので、そのとなりで読み方を教えてもらったのです。 きよねんなつやす わたしゅうがた かものたの 去年の夏体みのことです。私は夕方、お母さんに買い物を頼まれました。 そとあか とお まだ、外は明るかったし、スー ーまではそんなに遠くないし、おっかいなら何度も ひかぎ よかん 行ってるのに、その日に限って私はイヤな予感がしました。 しん てつだ でも、そんなことを言っても、お母さんには信じてもらえず、「お手伝いをサポりたい からそんなことを言ってるのでしよう。」とか言われて、私はしかたなくおっかいに行き ました。 なにか わす かもの かえみちある 何を買ったのか、忘れたけど、とにかくスー ーで買い物をすませて、帰り道を歩いて わたし ころ つよ わたし かあ かあ じようれい わたし うらなし なんど
のろ ほかひとおく 「もし、自分にこんなメールが来て、他の人に送らないと呪われる、なんて書いてあった ばあい じぶんほかひと とい , つ人はど、れ′、、らいい 場合、自分も他の人にそのメールを送ってしまうかもしれない、 ますか ? 」 せんせいしつもん 先生の質問に、はるかはまわりを見わたした。 あと かおみあ クラスメートも、顔を見合わせた後、おずおずと手をあげている。 ( みんな、やつばり、呪いはこわいよね。 ) すこ はるかは少し、ホッとした。 ほんとう せんせい 「本当に、先生は霊とかこわくないんですか ? 」 いちどねんお 手をあげるかわりに、真紀はもう一度、念を押すようにきいた ゅうれい ほんき かいだん えいが 「ええ、どんなホラー映画でも、怪談でも、本気でおびえることはないですね。幽霊なん おも ていない って思ってますから。」 こた こんど ふるたせんせい 古田先生は答えると、今度は真紀にむかってたずねた。 おも はなし A 一う耳一う 「そういう東堂さんは、きっとすごくこわい話を知っているのでしようね。先生が思わ おも ゅうれい ず、幽霊はいるかもしれない、って思ってしまうような : じぶん のろ ひと せんせい
しつもん いきなり質問をされて、みんなはとまどった。 とく こた そんな中で、クラスでいちばん、国語の得意な純一郎がぼそりと答える。 「客観。」 ものごとみかた しゆかんてきみかたきやっかんてきみかた 「そうですね。物事の見方には、主観的な見方と客観的な見方というものがあるのです。」 はなしすこ せんせい りくっ 先生の話が少し理屈っぽくなったので、健吾はあくびをした。 かとうくんのこ ( 加藤君も残ってたんだ : : : 。 ) いがいおも はるかは意外に思った。 あたま かえ かとうくん かいだん ( 加藤君って頭いいし、怪談なんてバカにして、とっとと帰っちゃいそうなイメージだっ たけど。 ) き じゅんいちろうまえ そして、はるかはそんな純一郎か前から、ちょっと気になっていた。 おな め さんじよう せんせい 「もし、先生が三条さんと同じような目にあったとしても、先生はそれを霊だとは考えな おも ひとからだ かんが つか いと思います。人の体がにじんで見えても、眼が疲れてるのかな、って考えるでしよう み おも さんじよう ゅうれい せんせい ね。三条さんが幽霊を見たと思ったできごとも、先生なら、まだ寝ぼけてるのかしら ? おも へんゅめみ ああ、変な夢を見たわ、と思うでしよう。」 きやっかん せんせい なか み め じゅんいちろう かんが
はなし くて、そういう話になるとよくしゃべる しんれいしやしんみ がっき はるかも心霊写真を見せてもらったことがあった。去年の三学期のはじめごろ、そんな なかよ しずか はな に仲良くしているわけじゃないのに、静香はいきなりはるかに話しかけてきたのだ。そし しやしんみ ーししろ しやしん やす あいだかぞくりよこう うみと しやしん て、写真を見せた。灰色っぽい写真だった。休みの間に家族で旅行した海で撮った写真ら き しずか ははおやなら かいがんた かぜっよ しい。野暮ったいコートを着た静香と母親が並んで海岸に立っていた。風が強かったらし かみけみだ うみた しろなみ ゅび しず 髪の毛が乱れまくっていた。その後ろの海に立っていた白い波しぶきを指さして、静 かせつめい 香は説明したのだ。 むすうて み じ うみおぼ : ここに無数の手が見えるでしよう ? この海で溺れ死んだ霊たちが引きずりこもう としてるんだよ : しずか こた そんな静香に、はるかはなんと答えていいか、わからなかった。 しずか しやしん 静香はその写真をうれしそうに、クラスのみんなに見せてまわっていた。 せつきよくてきはな ( いつもなら、積極的に話しかけたい相手じゃないけど : ・ : ・。 ) あと 一瞬、ためらった後、はるかはうなずいた あしたさんじよう 「うん、そうする : 明日、三条さんに言ってみるよ。 いっしゅん 0 0 0 きよねん み
まきすこ すると、真紀は少しむっとしたように言った。 らく′」 わらばなし 「落語って、オチとかある笑い話でしょ ? そんなのじゃなく、ちゃんとしたこわい話の ことを言ってるんです ! 」 はなし 「うーん、こわい話なあ。 こま あか おおいわせんせい 大岩先生は困ったように、キャップをした赤ペンで、頭をかく。 な せいと まえじゅく はなし じっ 「実はオレ、前に塾でこわい話したら、それがよっぽどこわかったらしく、生徒が泣きだ もんだい あとおや でんわ して、その後で親から電話かかってきたりして、問題になっちゃったことがあるんだよ じゅくちょうおこ はなし な。だから、こわい話とかしちゃいけないんだよ。塾長に怒られる。」 めかがや こと・は その言葉に、真紀は目を輝かせた き はな はなし 「うそっ、そんなにこわい話 ? ぜったい、聞きたい ! 話してよ 5 、泣いたりしないか し はなし よ はなしほん ら。これでもあたしたち、こわい話の本とか読みまくったから、たいていの話は知ってる おも と思 , つよ はなし こわい話マニアなのか ? 「はあ : おおいわせんせい 大岩先生は、呆れたように言う。 0 あき あたま な はなし 145