健吾 - みる会図書館


検索対象: 七時間目の怪談授業
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1. 七時間目の怪談授業

きよう ほうかご 放課後になった。いつもなら、健吾が待ちわびている時間だ。だが、今日の健吾は古田 こえき ふか せんせい 先生の声を聞いて、深いため息をついた はなし きようだれ 「さてさて、今日は誰がこわい話をしてくれますか ? 」 かん せなか 健吾は背中に、真紀の視線をチクチクと感じている。 おおぜいひとまえで はな ( あーあ、やつばオレが話さなきゃいけないわけ ? オレ、大勢の人の前に出たりするの き ほかひとはなし きらいなのに : 、それにどうせなら、他の人の話を聞きたいなあ : : : 。 ) て こころなか 心の中でぶつぶつ言いながらも、健吾は手をあげた。 きよう こばやしくん 「今日は小林君ですか ? それではよろしく—。 きようだんうえた せんせい 先生のかわりに教壇の上に立っと、いっせいにクラスメートの目に見つめられて、健吾 はゴクッとつばを飲んだ。 けんご ま 健吾が言いかえす間もあたえず、真紀はそう言って去っていった。 の しせん けんご ま さ じかん め み けんごふるた

2. 七時間目の怪談授業

こた けんごたの 健吾は楽しそうに答えた。 ひやくものがたり ぼん 「オレ、お盆におばあちゃんの家に行って、いとこの兄さんたちと百物語をするのが一年 はなし たの でいちばん楽しみなんだ。こわい話って、なんかハラハラドキドキして、すっげーおもし ろいじゃん ! 」 けんご ふるたせんせい そんな健吾にとって、古田先生の言いだした『七時間目の特別授業』は、すばらしく魅 りよくてきかんが 力的な考えだった。 はなしき がっこう 「ああ、学校にいて毎日こわい話が聞けるなんて、うれしすぎる ! 」 こうふんかく 興奮を隠しきれないようすで、健吾は言った。 けんご じゅんいちろうすこ かんが そんな健吾を見て、純一郎は少し考えるようにつぶやいた はなし 「こわい話なのに『おもしろい』のか ? 」 かお じゅんいちろうみ 健吾はきよとんとした顔で、純一郎を見る。 はなし おも 「お ? おう、オレはこわい話って、おもしろいと思うな。そりゃあ、もちろん、こわい す おも とも思うけど。でも、こわいだけじゃなくて、おもしろいから、好きで、もっといつばい し おも 知りたいって思うんだし : : : 。」 み まいにち じかんめとくべつじゅぎよう 0 ねん み

3. 七時間目の怪談授業

いきころ き すべての目が健吾をじっと見つめ、息を殺して話を聞いている。 なら むすうめ 並んだ無数の目。 けんご せなか 健吾は背中がむずむずしてきた。 はや じぶんせきもど 早くこの場所からおりて、自分の席に戻りたかった。 はなしぜんぶおぼ 「この話、全部覚えてたの ? すごいわねー き はなし めまる ふるたせんせい かんしん 古田先生は、話を聞きおわると目を丸くして感心したように言った。 ほん A 」 - っ 「本当にこわいのはここからです。」 くちひら 健吾はロを開く。 じっ いちまつにんぎよう 「実は、オレの家にも、市松人形っていう黒髪の和服の人形があるんです。」 かお はな 顔をしかめながら、健吾は話した。 み かん にんぎよう いもうと にんぎよう 「どっから見てもこわい感じの人形なのに、妹はぜんぜんこわがらないで、その人形をか にんぎよう なにはなし き わいがってるんですよ。しかも、たまにその人形とぼそぼそ何か話をしてるような気がす はなし るんです : ・ : 。だから、オレ、この話がこわくてこわくて : : : 。」 に じぶんせきもど それだけ言うと、健吾は逃げるように自分の席に戻った。 めけんご けんご けんご み くろかみわふくにんぎよう 0 110

4. 七時間目の怪談授業

ひっしおも こころき はるかは必死の思いで、そう心に決めたのだった。 ほうかご 小林健吾は、わくわくしながら、放課後を待っていた。 はやほうかご 「あー、早く放課後にならねーかなー すせ けんごおも 椅子の背にもたれて、背伸びしながら、健吾は思わず一人でつぶやく さんすう たいいく きゅうしよく じかん じかん 算数の時間も、体育の時間も、給食の時間までも、早く終わって放課後になってほしい おも と思いなから、すごした。 けんごなに かいだんす 健吾は何よりも、怪談が好きなのだ。 よ ほん かいだん べっ 本なんてほとんど読まない健吾だけれど、怪談だけは別だった。図書室にあるこわい話 よ じぶん どくしやみ ほんとう かいだん は、ほとんど読んでいたし、自分でも『読者は見た ! 本当にあったおそろしい怪談』の も か シリーズをおこづかいで買って持っていた。 はなしす 「小林って、こわい話、好きなのか ? こえ せきかとうじゅんいちろう となりの席の加藤純一郎が声をかけてくる。 す 「おう ! むっちゃ好きー こばやし こばやしけんご せの じかん 0 ま はやお ひとり ほうかご としよしつ 0 はなし

5. 七時間目の怪談授業

してき 純一郎の指摘に、健吾も考え、顔をあげて言った。 「それに、こわくなくって、おもしろいだけのこわい話ってのもあるぞ。 はなし はなし 「おもしろいだけのこわい話 ? こわい話なのに、こわくないのか ? 矛盾してるな。 くび じゅんいちろう 首をかしげる純一郎に、健吾はうなずく。 あくまにんぎようはなし 「悪魔の人形の話とか。」 けんご わら こえ はな 健吾はにやにやと笑いながら、こわがらせるように声をひそめて話した。 あくまにんぎようはなし ひとり よみちある 「とてもおそろしい悪魔の人形の話をしてやろう。ある日、女の子が一人で夜道を歩いて にんぎよう おんな いた。すると、そこにぼつんと何か、落ちていたんだ。それは古びた人形だった。女の子 にんぎようめ ゅび にんぎよう は、その人形を目にすると、指さして、つぶやいた。あ : 、クマの人形。」 き まじめかお あとくち 真面目な顔でじっと聞いていた純一郎は、しばらく考えた後、ロのはしをピクリと動か して笑った。 「ダジャレか : : : 。」 あくじゅうじか 「ほかには、悪の十字架って話もあるぞ。 はなしつづ 健吾は嬉々として、話を続ける。 じゅんいちろう わら かんが はなし なに じゅんいちろう かお お はなし かんが ひおんな ふる こ むじゅん うご こ

6. 七時間目の怪談授業

ばこなか そして、健吾がごそごそと押し入れをかきまわし、オモチャ箱の中からさがしだしてき かいじゅうにんぎよう えんか いろかいじゅうようちえん たのは、怪獣の人形だった。やわらかい塩化ビニール製のオレンジ色の怪獣。幼稚園の ころ き も にんぎよう 頃、お気に入りで、どこに行くにもずっと持ちあるいていた人形だ。だが、いつの間に あ わす か、飽きてしまって、オモチャ箱の奥底に入れたまま、忘れていた。 かいじゅうしゅうらい 「ガオーン、怪獣襲来だぞー。」 けん′」 てかいじゅうにんぎようも そう言って、健吾は手に怪獣の人形を持って、愛美のそばに行った。 なに 「何よう、お兄ちゃん ! 」 むねいちまつにんぎようだ あいみめいわく 胸に市松人形を抱きしめて、愛美は迷惑そうな顔をする。 かいじゅうまち はかい 「怪獣は街を破壊するのだ。 も けんご かいじゅうにんぎよう きつぎつぎたお そう言って、健吾は持った怪獣の人形で、積み木を次々に倒しまくる。 「やめなさい ! 」 いちまつにんぎようけんごかいじゅうまえた 愛美は市松人形を健吾の怪獣の前に立たせて一部った。 わるかいじゅう まちわたしまも 「悪い怪獣め ! この街は私が守ります ! 」 うご いちまつにんぎよう あいみ 市松人形を動かしながら、愛美は一部う。 お - ばこおくそこ っ あいみ かお 120

7. 七時間目の怪談授業

ふくざっきも まきすがたみ しんけんかいだんよ 真剣に怪談を読んでいる真紀の姿を見て、はるかは複雑な気持ちがした。 きよう ひるやす としよしつ 「今日も、お昼体みに図書室に行くでしよう ? もっともっと、こわい話をさがさな きや ! 」 こと・は むごん 真紀の言葉に、はるかは無言でうなずくしかなかった。 としよしつ 昼体み、図書室でこわい話の本をさがしていたはるかは、貸出力ードを見てふと気づい なまえ み きのうか 昨日借りてかえった本にも「小林健吾」の名前があったのだ。見てみると、他の本にも なまえ ねん 四年二組だったり、五年一組だったりと、学年はちがうものの、どれも小林健吾の名前が あった。 「ねえねえ、真紀ちゃん。これ見て。」 ほんしら み かしだし はるかが貸出力ードを見せると、真紀も自分の持っていた本を調べてみた。 こばやしけんご か ほんかしだし すると、その本の貸出力ードにも小林健吾と書いてあったのだ。 おな こばやしけんごくん 「小林君って : : : あの、同じクラスの小林健吾君だよね ? 」 ひるやす こばやしくん はなしほん み こばやしけんご がくねん じぶんも かしだし こばやしけんご はなし み ほん き

8. 七時間目の怪談授業

じゅんいちろうはな 純一郎が話しおえると、古田先生はメガネの奥の目をきらきらさせて言った。 はなしす すごくおもしろいわ ! 先生、こういう話、好きだなあ。」 「すごーいー おも 思いきりほめられて、純一郎は耳まで赤くなった。 だが、健吾は首をひねっていた。 さいご み 「最後のって、どういう意味なんだ ? ま 健吾もミカコに負けず英語はわからない ひと 「わかってない人もいるかもしれないから、いちおう説明しておきましようか。」 き けんご ふるたせんせい そんな健吾に気づいて、古田先生は言う。 ミカコは困りはててしまった。 ちゅうがくせい 中学生のときからずっと、英語はミカコにとって何よりも苦手な科目だったのだ。 れいのうりよくしようじよ さいだい これが、霊能力少女ミカコをおそった最大の危機であった。 けんご こま じゅんいちろうみみ ふるたせんせい せ おくめ なに せつめい にがて かもく

9. 七時間目の怪談授業

「ハッハッハッ、やれるものならやってみろ ! えー にんぎよう けんごあいみ 健吾と愛美は、人形をぶつかりあわせ、戦わせる。 「こっちだって、正義のビームです—。」 あそ めかがや わらごえ たの あいみ 愛美はきやっきやと楽しそうに笑い声をあげ、目を輝かせて、遊んでいた なに いもうとあいてにんぎようあそ ( オレ、いい年して、妹相手に人形遊びだなんて、何やってんだろ : : : 。 ) おも こころなか 一瞬、健吾は心の中で、そう思った。 いもうとにんぎようみ それから、ちらりと妹の人形を見る。 きもわる あそ ( でも、まあ、いっしょに遊んでみると、こいつもそんなに気持ち悪いってわけじゃない かもな : いちまつにんぎようみ みだ かいじゅうたいあ かみ 髪をふり乱して、怪獣に体当たりしている市松人形を見ながら、健吾はそんなふうに おも 思った。 いっしゅんけんご とし たたか ひっさっ 必殺のビームだ ! 121

10. 七時間目の怪談授業

、んこえ 8 なりました。まだ教室に残っている人は帰る用意をしてください。」という放送委員の声 きようなが が今日は流れなかった。 おとひび そのかわりに、何かマイクにこすれるような音が響いている。 「キーン : : : ガ : : : ガガッ : きぎ あいま こえ ノイズの合間に、切れ切れに女の子の声のようなものが聞こえた。 し : : : ガガッ : 「ガガッ : : : せん : : : せゝ こえ 消えいりそうな女の子の声。それが呼んでいるのだ、先生 : 「うわああああああっ ! 」 ごえ けんご おそろしげなさけび声をあげたのは、健吾だった。 ほうそうゆうれい ほんものゆうれい 「今つ、今つ、放送で幽霊の声が ! 本物の幽霊だ ! 」 たた けんご つくえ 健吾は目をむき、パニックにおそわれたように、机をバンバンと叩いている。 こえ ひめい 健吾の悲鳴をきっかけに、あちこちでおびえた声がひろがった。なかには泣きだしてい る子までいる。 はるかは真紀のほうを見た。 こ おんな なに きようしつのこ こ こえ おんな ひとかえよう こ せんせい ほ - っ墨、 - っしし