ひらめになれ いもうと 妺がね、 「おねえちゃん、 っていうの。 にんぎよう のろ 「呪いの人形よ」 にんぎよう すごくちっちゃくて、手つくりの、へんな人形。 のろ にんぎよう 「この人形に虫ピンさして、土にうめてね、呪いのことばをとなえる しいもん、あげる」 にロ まったに 松谷みよ子 こ 1 1 9
コーンコーン なにかをうちつけるような音かひびき、あたりはすうっと、うすぐら く、つき くなりました。空気もつめたくなりました。いつのまにかロビーは、ふ かい森の中にかわっていました。 すぎこだち そそりたっ杉木立。 コーンコーンコーン すぎ にんぎよう 白い手が、杉の木に、わら人形をうちつけています。人のすがたは にんぎよう みえません。ただ白い左手だけが、わら人形にうちこまれる、くぎを みぎて しつかりとおさえ、白い右手が、ふりかざされて、コーン、コーン、コ ン、と、くぎをうちつつけているのです。 ひだりて
にんぎよう ジュースをのみながらワラ人形をもてあそんでいたまゆが、ふいに っこ 0 「やろう、なっき。どうせごっこだもん。ここは神社のつもり、おしい うしこく れの中ならくらいから、丑の刻のつもりになればい ) 、 ししゃない」 「そうだね。やろうやろう ! 」 ふたりはおしいれの中のものをひつばりだした。そして、なっきが紙 きもの かがみ の着物、まゆが鏡のペンダントをつけてもぐりこんだ。ロウソクは、せ まくてあぶないからやめて、ほんのすこしすきまをのこして戸をしめた。 「なっき、のろいをこめて、ね」 にんぎよう まゆが、おしいれのおくの板にワラ人形をおしつけてもっと、なっ じんじゃ かみ
ネ社からわすかにくだったところで、小さなあかりか目にはいりまし 道からすこしわきにはいった大きな木のそはで、チラチラと炎がゆ れて、なにやら白いものかうごいています。カツーン、カツーンという 音も、そこからひびいているようです。 「こんなよふけに、なにをしているのだろう」 こころ かいちゅうでんとう 中電灯をけすと、ふるえる心をおさえて、あかりのゆれるほうに そろそろとはいっていきました。 しよういち 大きな木がみえるところまできて、章一はおもわす息をのみました。 にんぎよう スギの大木に、ワラでつくった人形がしはりつけられているのです。 にんぎよう きもの 白い着物をきてをふりみだした女か、ワラ人形につきさしたなかい じんじゃ みち たいぼく ほのお
ばん こえ せつめい そういってなっきは、声にだして説明をよみはじめた。 あたま きものき うしこくまい 「丑の刻参りのやりかた。白い着物を着て、頭に火をつけたロウソクを じ にんぎよう うしこく かがみくび たて、鏡を首にかけて、丑の刻 ( 夜中の二時 ) に、ワラ人形とクギを のろ にんぎよう じんじゃてら もち、神社か寺にいく。そして、このワラ人形を、あなたの呪ってい 、つ のろ る人にみたて、呪いをこめて、大きな木にクギで打ちつけるのです。七 わざわ のろ 晩つづけるとあなたの呪いのあいてに災いかあるでしよう。ただ、くれ わざわ ぐれも人に見られないように。もし見られたら、災いはあなたにかえっ てきます : : : だって。なんだかマンガみたい え 「そうよね。この絵をみるとちょっとこわいけど、こんなことあるはす ( ししなんておもうはど、のろいた ないよ。だいいち、わざわいがあれま、 ) よなか 4 6
にんぎよう きはクギを人形のうでにつきさして、石でトコトコうちつけた。 「翔太のばか。およげないようになれ」 「翔太、二度といしわるするな」 いいなから、ふたりはちょっと気持ちがわるくなり、あせびっしより になって、おしいれからころげでた。 しようたがっこう つぎの日、翔太は学校にこなかった。 うでをケガしたときいたまゆとなっきは、ぶるるっとして、あせをふ しようた しよ、った
しろしようぞくあたまてつ まいりというのは、白装束で頭に鉄のわくをはめ、その上に三本のろうそくをとも じ じ のろあいて まよなか し、真夜中の一時から三時のあいだに、だれにもみられすに、呪う相手にみたてたわ じんじゃ すん にんぎよう ら人形を五寸くぎで、神社などのふとい木にうちつけます。それを三日または七日 」うりよく かん つつけますが、その間、これを人にみられると、効力をうしなうといわれています。 こく はなし じっさい 「コンビニののろいグッス」は丑の刻まいりあそびの話です。実際、こうしたグッズ ひょうばん みせ をうったところ、あまりの評判でひっこめたという店もあるそうです。はんとうに のろ ひょうばんじんじゃ までも、呪いにきくと評判の神社が ききめがあるのかどうかはわかりませんか、い たいぼく いちめん かず しやしん くっ下、写真、わ あって、ひとかかえもある大木の一面に、おびただしい数のくつ、 にんぎよう ら人形などか、くぎでうちつけられているそうです。 むじっ へいしろう へいしろうむし 「平四郎虫」は、無実の罪をきせられ打ち首になった平四郎が、虫となって、自分を のろ みごろしにした村の人たちにうらみをはらす話です。かっては虫をつかって、人を呪 ほ、つは、つ 、つ方法もありました。 じようるり じようるり るすばん 「ねこの浄瑠璃」は、留守番をするよめさんにねこが浄瑠璃をかたる話です。ところ つみ 、つし はなし はなし じぶん 1 38
よこめ 「ひらめみたいに、横目つかうな」 よこめ むかし、おかあさんのいうことをきかないで、いつも横目つかってた 子が、ひらめになったんだって : かねや 「そうだ、金谷さんをひらめにしちゃえ」 にんぎよう それから土をほって、人形に虫ピンっきさして、 かねや 「金谷さん、ひらめになれ , のろ って、呪って、うめたの。 カっこ、つ かねや つぎの日、学校へいったら、金谷さん、やすんでるの。あれっておも よこめ びよ , つき った。しんねりと、横目つかう、くらーい子だけど、病気はあんまりし ない子だからさ。 1 22
ちよきんばこ 貯金箱のお金ももって。 ばしょ 《のろいグッズ》はきのうの場所にあった。 ふたりはふくろをもっと、まっすぐレジへいった。レジのおにいさん はニャリとわらい、「たつぶりおたのしみをーといった。 へや まゆの部屋にもどり、あせをふくのももどかしく、ふたりはふくろを あけた。 にんぎよう ワラでつくったおとなの手はどの人形と、なかいクギ、ロウソク、 かがみかみ ひものわっかについた小さな鏡、紙でつくった、ながいちゃんちゃんこ きもの せつめいしょ のような白い着物かでてきた。それに、絵入りの説明書がついている。 えゅうれい きみ 「なによこの絵、幽霊みたいで気味わるー でも、おもしろそう」 え 2 6
コンビニののろいグッズ じゅく まゆたちのかよう塾のちかくに、あたらしいコンビニかできた。 「まゆ、あついよー、ちょっとだけすすんでいかない ? たんけん 「いいよ。ついでに、中、探検していこう」 じゅく 塾へいくとちゅう、まゆとなっきは、さっそくはいってみた。 みぎがわ しゅうかんし にちょうひん すぐ右側に、週刊誌や日用品のたな、つきあたりに、ジュースやお さけ 酒のケースがみえる。 もちづきまさツ」 望月正子