「そりや、あんたたちの世界がひねくれておるからしやろうが。」 ヒボクラテスが、いしわるそうにアカネとチイおばさんを見た。 「」、フい、つ一」をエよ , チイおばさんが、また、いきおいよく立ちあがってしまった。 「そ、フしやろ、フが。きっと、あんたたちの世にも、むかしはピボのよ、つな人たちもいた んしゃ。なのに、そういう人たちは生きていけないように、 世がひねくれてしまったん おも しゃないのか。わしには、そうとしか思えんわい おも いっすんばうし アカネはヒボクラテスのことばに、一寸法師や、七人の小人や、小人のくっ屋を思いお おも こして、うなすきそうになった。そうかもしれない、 と思いかけたのだ。そこへ、 ふたり 「でも、ヒボクラテスさま。このお二人は、お世辞しゃなくて、わたくしたちの世界の人 と変わりはありませんよ。 と、ばあやさんが口をだしたものだから、チイおばさんのまゆが、きりきりとつりあがっ か ふたり 「わたしたちから見れば、お二人は、ヒボクラテスたちはもちろんですけど、変わってま か くち せかい ひと せか ) にんこびと こびと ひと や せかい ひと
かえ よ、つに帰ってしま、つからだ。 まど さつぶうけい し本ーかかっているはと時と、窓ぎわ それにしても、なんと殺風景なへやだろう。太 ) 主こ に置かれた古いつくえが、やけに目だつだけだ。 ぐち したそうこ かぎがかけてあるし、店のあげぶた 「どこからはいったの ? 下の倉庫の入り口には、 は、ちょっと見ただけではわかりつこないし。」 おとこひと チイおばさんは、その男の人をにらんだ。 「となりからはいったんしゃ。」 ひと こたつにはいって、やっと人ごこちついたらしい男の人が口をきいた。 あたま なにいってるのよ。見たところ頭はしつかりしてい 「となりからはいったですって ちか るようなのに。うちは、いちばん近いおとなりとだって、五百メートルははなれているの よ。なんでそこからはいれるの ? 」 「ほんとのとなりからしゃ。」 その人は、チイおばさんのことばをさえぎるように、「ほんとのところに力をこめて、 ふたりみ またくりかえした。そして、さあこれでわかっただろう、というように二人を見る。 ひと ふる ふと はしら おとこひとくち どナい みせ ちから
こはるびより おも 「ほんとにねえ。小春日和の国の者だっていわれれば、そうだと思ってしまいますよ。 ポポとばあやさんは、アカネたちを見てうなずきあっている。 「祖先がいっしよ、ですってー どうじ アカネとチイおばさんが同時に立ちあがった。 「そうですよ。むかしは、おたがいにいったりきたりしていたらしいか、いつのまにか、 おたがいの存在も知らないということになってしまったんでしよう。 ばなし おも 「むかし話だとばかり思っておりましたもの。 チイおばさんは、ポポ、ばあやさん、ヒボクラテスと目を動かしていたが、ピポへ目を やると、 え、ええと、ピポみたいな人はい 「そんなはすないわ。わたしたちの世界に、こんな、い ないもの。 ねえ、とい、フよ、つにアカネを見る。 「うん。」 ふたり あんしん と、アカネがうなすいて、二人は、なんとなく安心して、また、いすに腰かけた。 そせん そんざい もの せかい う′」 こし ひと
えん。 と、アカネとチイおばさんのほうへつめよってきた。 「まあ、いわせておけば、なんですって ! そりや、ヒボクラテスは、いばりたがりで、 えらぶってて、おこりんばうですけどね。ひきよう者なんかしゃないわ。 「そうよ。にげだしたんしゃないんだもの。」 ふたり こんどは、チイおばさんとアカネが、その人につめよった。その人は、二人をおしとど めながら、 「このおこりつばいところを見ると、弟子にはちがいあるまい。」 とうなすいて、 「とにかく、わたしたちの王女のところへきて、ヒボクラテスが市へこられないわけを話 していただけまいか。」 と、ていねいな口調で頭をさげた。 おな 木の芽時の国のテントは、アカネたちを案内してきた人が着ているシャッと同じ、あわ めどき くちょうあたま おうじよ あんない ひと もの ひと ひと はな 143
ポポは、あたりまえのことだとい、フよ、つに、アカネを見る。 にん 「けんかにならないの ? 三人がさんまを食べたいのに、二ひきしかなかったりしたら。 ひとり し力に、丁・、ればい ) 。 「それなら、一人は、、、 「いかを食べる人は、おもしろくないわ。」 「でも、その人は、つぎのときに好きなものを食べられる。」 「せったいに ? アカネは、ポポをうたがわしげに見た。 まち 「もちろんです。こんな月さな町でうまくいかなかったら、市など立っても、どうしよう もないでしよう。 ポポは、さもおかしそうに、おなかをかかえてわらいだしてしまった。 ふあん まえ アカネは不安になった。目の前にいるポポもばあやさんも、着ているものがすこし変 わっているだけで、アカネの見なれた世の人たちと、すこしも変わりはない。なのに、 やつばりどこかちがっている。 しなもの おも 「品物のやりとりの方法はわかったと思、フけど。それじゃなにをしに、ヒボクラテスは市 ひと ひと せか、 ひと 102
さっき、カスミじゃないっていったばかりなのに、もうカスミって呼ぶ。チイおばさん はわたしの名まえなんて、わすれてしまったんだ。アカネは、ぶっとふくれた。でもい おも おも ま、アカネなんて呼ばれても、自分のことだと思えるかなと、アカネは思った。カスミっ なんねん て呼ばれてから、もう何年もたってしまったような気がする。 でんごん 木の芽時の国のテントへ寄って、チイクラテスさまの伝言をつたえて、やっとヒボクラ みせちか テスの店へ近づいた。 こえ こえ ひとびと まわりの人々の声にまじって、チイおばさんが、だれかといいあらそっているらしい声 がする。 いちば しなものみ おうたい 市場は、品物を見て歩く人や、応対にかけずりまわる人で、ごったがえしている。腰に おも もうふ コートに、ひざまである 布をまきつけただけの人がいるかと思えば、毛布のように ひと おんなひと あさ プーツをはいた人もいる。アカネの三僵もある女の人が、麻ぶくろのようなポンチョを着 ある おも おとこひと て、ドシンドシンと歩いているかと思えば、アカネより頭一つ分ほど小さな男の人が、シ ふく ひとあいだ ルクハットにえんび服、そのうえ、ひげまでたくわえて、ちょこちょこと人の間をぬって ぬの めどき じぶん あたま ひと ぶん こし 175
ピボの手がら話をむちゅうになってきいているうちに、好車はの門をかけぬけた。目 の前には、まぶしいような野が広がっている。こぶしほどもある雪が、音もたてすに ふり積もる。 四人とも、体をぶるっとふるわせてフードをかぶった。 「寒いわ。ー 歯をガチガチいわせながら、チイおばさんとアカネは身を寄せ合った。 ゆきくに とお 「ばたん雪の国を、すこしだけ通れば、あとは木の芽時の国でございますから。」 ピポがそ、フ教えてくれたが、ことばが最後まで耳にとどかない。 こえばしやおと ゆき 「声も馬車の音も、雪にすいこまれるみたいね。」 おか アカネは、どこまでもつづく白いなだらかな丘へむかって、「おうい。」とさけんでみ おおごえ 「あっ、いけませんのですよ。大声をおだしになっては。この国では、みんながねむって ふゅ ふゅ いるのでございますから。冬のない国の、かえるやヘびや、冬ごもりが必要ないろんな動 さむ にん からだ しろ くに こ みみ めどき ひつよう どう 223
イトウの町の人たちは、むかしはこうしてをしていたんだ、と思うアカネたちを乗せ くろうまし 、そあしすす て、黒い馬は急ぎ足で進む。 いろこう おと ほくじよう 馬車はガタガタと音をたてて、牧場から森の中へはいった。木々は、いろいろな色に紅 葉していて、地面はまるで、ベルシアじゅうたんを敷きつめたようだ。 ふとおお 道がせばまり、傾斜がきゅうになってきて、まわりの木々も太く大きくなってきた。 「市への入り口は、時なし雨の国っていうところにあるんだって。 チイおばさんは、ポポから地図をもらってきたらしく、マントからとりだして、ひざの に広げた。 馬は市への道を知っているらしい。山道をあぶなげなく進んでい いちば ちゅうしんいちば 「この世の地図なの ? 中心が市場みたいね。ここから市場まで半日かかるってことは 「そうね。この地図にの 0 ているでいうと、日本の = 一の一。いや、もうすこし月さい かもしれない。」 ばしゃ せか、 ぐち じめん けいしゃ とき あめくに やまみち もりなか すす はんにち 117
きんこ 先せ金え 庫 祖そん グ そ わ そ と わ ん 祖ぞと の し り フ も 父ふな と た イをか ダ に し だ な わ あ が て 老 集粤た イ 々ミ く 亡なた そ る 玉 . ぅ 目既ま く し ズ に 石 ヤ ち た だ 金えな ル 鏡 び し 伝 と っ は た を をう 、 . 庫こ っ ち や わ た に か わ 金え わ な を ゆ の か た る 月っ れ 庫こ開あ と ・・ヘカ : た い 家か董与 っ け 先まだ き 話わし け け 宝 ロロん り 祖そ を た ど の か と 金え ち 、掛かも み と 母ば ・し、な は 財こけ 回が 祖そ庫こよ し よ に 玉ぅ ほ軸 父ふ み や だ フ の に そ で や の か ん あ な や な あ し な り わ な や い の が 注 と を が か た を て 目 3 ら だ し 聞き い カ あ と さ い る チ て あ 地ち が び い 図ず い む 話段た 音ら がし落 ? そ も 手 が て れ て を 金えひ ネ且そ 庫ころ 金 っ だ の げ 庫 た れ かこ てちょう きんこ 243
と、じっとりと重い毛布をはぎとった。毛布の間から、本やノートやペン、インクつばま でころがり落ちた。 「や 0 ばり保をわ。」 アカネに見やぶられたのに、王子はまだ、まくらをかかえてわらいころげている。わら いすぎて、なみだをぬぐいながら、 うた 「こんなにおかしいことって、はじめてだ。きゅうにへんな歌をうたいだすんだから。そ れも、あんなましめな顔してさ。そういえば、すこし顔がひきつってたみたいだったぞ。」 こえ おも と、また思いだしたらしく、「ひいつ。」と声をあげてわらいころげる。 「こんなところをチイおばさんが見たら、なんてい、フかしら。ヒボクラテスにも、あのカ マドウマにも見せてやりたいわ。 アカネが足をふみ鳴らしてさけんだ。 「ヒボクラテスは、ど、フしたんだい ? おうじ 王子は、やっとわらいやんだ。 けびよう 「ええ、ちょっと急用でこられないの。それより、どうして仮病なんてつかうの ? 」 おも きゅうよう もうふ かお おうじ もうふ あいだ かお