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検索対象: 地下室からのふしぎな旅
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1. 地下室からのふしぎな旅

と、のほうでチイおばさんが答えた。あわてたアカネは思わす、 「わたしです。カスミ。」 と、一尸で返事をしていた。 「ああ、カスミ、待ってたわよ。あがってきてよ。 チイおばさんが声でさけびかえしてよこす。 段のあがり口で、アカネはポポのところへ置いてきたはすの自のズックぐっを見つ けて、このままちゅうとはんば屋から飛びだしたくなった。 あいだ この間のことは、やつばりゆめだったんだ。 「カスミ、なにしてるの。見てほしいものがあるのよ。 かいだん チイおばさんが呼んでいる。アカネは、ゆっくり階段をのばっていった。 アカネがこたつにはいるやいなや、チイおばさんが一枚の紙をさしだした。 「あすにでも電しよ、フと思 0 ていたのよ。きよ、フはくるか、きよ、フはくるかと、首を なが ひとり 長くして待ってたんだけど、カスミ、こないんだもの。がまんできないから、一人でいっ けいやくしょ おも てきちゃった。やつばり、契約書はあったほ、フがいし ) と思ってさ。それで、ヒボクラテス かみ 239

2. 地下室からのふしぎな旅

アカネは、また大通り五丁目でバスをおりた。 こびと 小人のピポ。それも、りんごの背たけぐらいの小人。そんなものが、いるはすもない。 やはりゆめだ 0 たんだ、という考えがアカネの頭の中できくふくれあがる。でも、わた いえかえ しのくつがなくて、チイおばさんのサンダルを借りて家へ帰ったのだ。わたしのくつは、 かんが ポポのところにあるのだからと、またちがう考えが大きくなる。アカネは、二つの考えの あいだ 間を、いったりきたりするばかりだ。 またカスミあっかいされても、チイおばさんに、はっきりきいてみよう。アカネは、 けっしん やっとそう決心すると、ちゅうとはんば屋のドアをあけた。 おと トアベルの音をききながら、アカネは、なんと呼びかけたものかと、まよってしまっ た。ヒボクラテスたちといっしょにいたときは、チイおばさん、チイおばさんと、何度も いまはまた、けむたいおばさんのところへ、むりやりお使いにだされたと 寧んだくせに、 おなきも きと同し気持ちだ。 トアベルに気づいてか、 「はあー こびと おおどお ちょうめ おお かんが なんど 238

3. 地下室からのふしぎな旅

「ここは寒い、へいこう。 と立ちあがった。 チイおばさんのへやで、こたつにもぐりこんでも、二人とも、こたつのを見つめてい るだけだ。石油ストープので、やかんがチンチンいいだした。石油、なくならなかった おな アカネと同じよ、フに、チイお んだ。それにしても、お湯がいまごろわきだすなんて : ばさんも、やかんを見つめている。 電が鳴った。アカネもチイおばさんも、ざぶとんから三十センチは飛びあがってし まった。ふしぎなものにさわるように、チイおばさんか受器をとりあげた。 「カスミによ、おねえさんから。」 げんき しんばい 「おかあさん、わたしよ。元気でいるから心配しないでね。」 なんど おな アカネは何度も、同じことをくりかえすばかりだ。なにかいいたいことかたくさんあっ たはすなのに、なんにも口にでてきてくれない。受器をにぎりしめているアカネの耳 235

4. 地下室からのふしぎな旅

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5. 地下室からのふしぎな旅

からルにのってばれてくる。 ヒボクラテスは、アカネとチイおばさんを二色の城の、いちばんてつべんにあるヘやヘ つれていった。 みち 「まわり道をさせてしまったのしやから、送っていってやるわい。 ゅび ヒボクラテスがそういって、どこといって変わりのない白いかべを指さした。そのへや まど のはら かたほうまど べにいろ には、窓が二つだけあった。片方の窓からは、うす紅色のれんげの野原だけが、もう一方 まど まどまど の窓からは、あわい黄色のたんばばの野原だけが見える。ヒボクラテスは、その窓と窓 なか の、ちょ、フどまん中をさしたのだ。アカネは、ここからなら、まっすぐに、ちゅ、つとはん しん みせおな かえ ば屋へ帰れると信じこんだ。だって、ここもチイおばさんの店と同しようなぐあいに、 ちゅうとはんばなのだから。 ヒボクラテスカ、いっかのよ、フに二人をうでにかかえこんだ。岩でできた白いかべは、 四人のすがたを、すうっと飲みこんだ。 く、つ強」 おも おもくる かん また重苦しい空気。どうも、この感じは好きになれつこない。そう思いながらアカネ ゆか ま、いつのまにか、コンクリート の床にすわりこんでいた。 にん きいろ ふたり のはら おく ふたいろしろ しろ しろ いつばう 232

6. 地下室からのふしぎな旅

ピポがアカネの足もとに飛んできた。 だいり 「そうね。それがいいわ。ピポはヒボクラテスの代理。わたしはチイおばさんの代理ね。 さて、ど、フいたしましよ、つ ? 」 「はい。 「そうね。いままでどおり、貸していただける ? 」 「ええ、ええ、よろしゅ、つございますとも。」 チイおばさんとヒボクラテスは、 「まあ、すいせんがきれいだわ。 ) か 「あれが、つくしんば山じやから、そろそろ二色の城へつくわい どう どうじ はなし とかいって、ピボとアカネの話を、きかぬふりでいたが、同時にくるりとふりむくと、同 時になにかいお、フと口をあけた。 「それじゃ、それで決まり。 アカネとピポは、二人がなにかいいかける前に、声でそう宣してしまった。ヒボク ふたり ラテスもチイおばさんも、また、ふんと、そっぱをむいてしまったが、二人ともアカネた くち やま ふたいろしろ だいり 230

7. 地下室からのふしぎな旅

かた 方のおうちも、もうすぐでございますよ。 「そ、つ、よかった。」 あんしん アカネは、やっと安心した。なのに、 「この人といっしよしゃね。こんどは、どこへつれていかれるか、わかったもんじゃなく てよ。 と、チイおばさんがヒボクラテスのほ、フへ、あごをしやくった。 「やめしや、やめしゃ。あの地所は、きようからわしのものしやから、ダブったはくれ てやるつもりでおったが、やめしゃ。だれが、こんなやつにくれてやるもんか ! 」 くち ヒボクラテスが、ロからあわをふかんばかりにさけびちらした。 「だれがくれっていったのよー チイおばさんが、そっぱをむいてしまった。 ふたり アカネとピポが二人をなだめるのだが、チイおばさんなどは、あかんべえをするしまつだ。 ここは、わたくしとカスミさまとで、よろしいよ、フにとりき 「しかたがございますまい めましよ、フ。 ひと 229

8. 地下室からのふしぎな旅

とき 時なし雨の国の王子をなおしたほうびに、わしが王女からいただいた。 おうじ 「なにいってんの。王子は、わたしがなおしたんしゃない。せつかくわたしたちの世へ もどれかけたのに、わざわざこっちへもどってきてやって。」 チイおばさんは、「わざわざ [ に力をこめていった。 「なに ? もどれかけた ? 」 ヒボクラテスは、おどろいたよ、フだ。 「そうなのよ。ねえ、カスミ。カマドウマに追いかけられて、はねかえりの井戸へ落ちて しまったの。あの井戸と、わたしの家のうらを流れる川とが、となりあっているの。」 おと 「ふうむ。あの井戸は、ふしぎな音がきこえたりするので、魔物の井戸といわれておった のじゃが、むこうの世の音だ 0 たのしゃな。き 0 と、むかしは一一色の城のように、き でいりぐち ちんとした出入口だったのじやろ、フが、だれかがふさいでしまったんじやろ、フて。 「どうして、ふさいだりしたんだろう。 アカネが首をかしげた。 「その人は、物好きしゃなかったのよ。 ひと あめくにおうじ ものず ど ちから お おうじよ まもの ど ど せか、 お 226

9. 地下室からのふしぎな旅

ピボの手がら話をむちゅうになってきいているうちに、好車はの門をかけぬけた。目 の前には、まぶしいような野が広がっている。こぶしほどもある雪が、音もたてすに ふり積もる。 四人とも、体をぶるっとふるわせてフードをかぶった。 「寒いわ。ー 歯をガチガチいわせながら、チイおばさんとアカネは身を寄せ合った。 ゆきくに とお 「ばたん雪の国を、すこしだけ通れば、あとは木の芽時の国でございますから。」 ピポがそ、フ教えてくれたが、ことばが最後まで耳にとどかない。 こえばしやおと ゆき 「声も馬車の音も、雪にすいこまれるみたいね。」 おか アカネは、どこまでもつづく白いなだらかな丘へむかって、「おうい。」とさけんでみ おおごえ 「あっ、いけませんのですよ。大声をおだしになっては。この国では、みんながねむって ふゅ ふゅ いるのでございますから。冬のない国の、かえるやヘびや、冬ごもりが必要ないろんな動 さむ にん からだ しろ くに こ みみ めどき ひつよう どう 223

10. 地下室からのふしぎな旅

と、アカネはきいてみた。 れんきんじゅっし 「わたくしは、子どものころから錬金術師にあこがれていたのでございます。 と、ピポが答える。 「ひとりばっちでいても ? 「ひとりばっちじやございませんですよ。お師匠さまと、いつもいっしょでございますも の。それは、とんばを飼うことだっておもしろうございます。虫だけを食べるように、 わたくしたちがとんばの背に乗 0 て訓練するのですが、虫を見つけて急降下させるとき の、あの気。ほんとうにおもしろうございます。でも、わたくしは、どうしても錬術 師になりたかったものですから。」 アカネは、にこにこして話している、月さな月さなピポを、ましましと見た。すこし強 いがふくと飛ばされてしまいそうなピポ。そのピボか、アカネには、とてつもなくき く、たのもしく見える。 くにおうじ 「時なし雨の国の王子は、ほんとうによろしゅうございましたね。わたくしは、とても人 おも からだ ごととは思えなかったのでございます。わたくしは、このとおりの月さすぎる体でござい とき あめ こた こ はな ししよう ひと つよ 221