かんが - みる会図書館


検索対象: 地下室からのふしぎな旅
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1. 地下室からのふしぎな旅

しんばい 「いやね、寝ばけてるんしゃないの ? どうして心配しなきゃいけないの ? ちょっとお つか 使いをたのんだだけじゃない。 へんな子ねえ。あっ、そうそう、チイおばさんにもたのん だけど、水まくらもら 0 てきてね。愛 0 たら、タからがでてきたのよ。」 こえ という、おかあさんの声がかえってきた。 じかん 「時間は、そうたっていないらしいわよ。 チイおばさんは、そういったきりで、だまりこんでしまった。アカネが帰ろうと立ちあ かると、 「マント。」 あたま とだけいう。アカネの頭は、いまはなにも考えることができない。黄色のマントをのろの ろとぬぐと、チイおばさんのサンダルを借りて家へ帰った。 それから一一、三日のアカネは、自でもあきれかえるほど、ばんやりとしていた。ヒポ ろけい はな クラテスのこと、ピボのこと、けいとう色の毛糸のこと、しすく切りのこと、話したいこ からだ とも きようだいかおみ とは体じゅうにつまって、はちきれそうなのに、友だちの顔を見ても、兄弟の顔を見て かんが いえかえ かおみ かえ 236

2. 地下室からのふしぎな旅

そう思うと、アカネは自の頭を、両手のこぶしで ば、あしたには家へ帰れたのに : ポカボカなぐりつけたかった。 ばしよけんとう 「とらわれているとすれば、場所の見当はっきます。さて、助けだす方法は : あたま ポポは頭のしわを僵にふやして、うでぐみをした。チイおばさんも、くちびるをかんで おも いえかえ かんが 考えこんでいる。アカネは、もう家へ帰れないのではないかと思うと、なみだがとまらな しんばい そんな三人を、ばあやさんが心配そうに見ていたが、 かんが 「チィさんのひろってきたくりでも食べながら、ゆっくり考えましようよ。」 と立ちあがった。チイおばさんは、うれしそうにバチンと手をうっと、 かんが 「それがいいわ。そのほうがいい考えがうかぶってもんよ。」 と、ばあやさんのあとへついてい チイおばさんは、食べ物のこととなると目の色が変わる。アカネは、湯気のたっゆでぐ さら りのはいった皿をかかえたチイおばさんを見て、これしやだめだと、あきらめてしまっ あたまなか かんが くりのことしかはいってい オしい考えなどうかぶものか。チイおばさんの頭の中には、 にん いえかえ もの たす

3. 地下室からのふしぎな旅

の顔がかがやいていたもんだ。なのに、このていたらくときたら : うわけなんだろう。 はなし ヒボクラテスは、ポポの話をだまってきいていたが、 「市が立っといったようだが、もう、そんな時期か ? と、首をかしげた。 「ああ、あしたから市が立つ。 「おかしい。わしが、この世恭をでたときは、市が立つまでに十日ほど、まだ間があった はすじゃ。」 ししよう 「いえ。お師匠さま。わたくしがお師匠さまをおむかえにまいりましたときは、市まであ かえ しんばい と五日ほどでございました。あまりお帰りがおそいので、心配いたしたのでございますか ら。」 と、ピボか口をだした。 「おかしい ヒボクラテスが考えこんでしまった。 かお いっか いちた くび くち ししよう かんが いちた せか、 じき いちた とおか し / し」、つ・・し

4. 地下室からのふしぎな旅

るわ。」 いとだままち ほんゅびて ひとり 「糸玉町には、二本指の手ぶくろも編めない編み手など、一人もいませんよ。 おかあさんのまゆがつりあがった。 「まあ、まあ。」 あかかた 厚いめがねをかけたおばあさんが、おかあさんをなだめにかかった。女の子は、赤い肩 かけのおばあさんの背中へかくれると、べろりと舌をだした。そして、かき根のほうへむ かって、きなあくびをした。 女の子とアカネの目が合った。 「あっ、あの女の子、編みこみのセーター着てるー ふたりどうじ 女の子がさけんだので、おばあさんもおかあさんも、アカネに目をとめた。二人は同時 こえ に、ため息をつくと、おばあさんがアカネに声をかけた。 「どこの国のお方か知らないけれど、ちょっとここへきて、そのセーターを見せてくださ いな。」 おも アカネは思いがけないなりゆきに、 かき根のところでうろついてしまった。女の子がか おんなこ あっ おんなこ くに おんなこ かたし せなか した おんなこ おんなこ

5. 地下室からのふしぎな旅

ーし力ないわ。そんなこと 「ヒボクラテスの弟子として、魔法を使ったといわれるわけによ ) 、 になったら、ヒボクラテスの面目、丸つぶれよ。」 チイおばさんか、くちびるをかんだ。 ちゅうしゃ しつぶ 「やつばり湿布がせいぜいね。注射なんて考えもしないだろうし。」 と、チイおばさんは、ため息をついたが、「うん。」といって首をかしげた。そして、頭を 月さくふりだした。 ちゅうしゃ 「注射ね : : : 。針、みつばちの針。あのおしいさん、ヒボクラテスにたのまれたっていっ ちゅうしやみ みつばちを注射に見たてれば : てたな。市のはしまる日に、とどけてくれって : ひとり チイおばさんは一人でぶつぶつつぶやいていたが、きゅうにはしゃぎだした。 これよ。わたしの頭のに、あのはちのお化けは、まだお達者で 「わかったわ、カスミ。 いらっしやるのかしら ? 「いるわよ、チイおばさん。髪に、しつかりしがみついちゃって、ねむっているみたい。 このみつばちがどうかしたの ? 」 「わかったのよ。ヒボクラテスが王子に使おうと思っていた薬が。むかしの神痛の治 いち めんばくまる かみ まほうつか かんが あたま

6. 地下室からのふしぎな旅

びようにん 「ご病人にお会いしたいんですけど。 はなし と、話をそらしてしまった。 しようねんね あおじろかお いしづく 。ッドに毛布を何枚もかけて、青白い顔をした少年が寝て テントのおくでは、石造りのヘ ごえ しようねん ちか いた。アカネたちが近づくと、その少年は、「うーっ。」と、うなり声をあげだした。その こえ ひとあっ 声をききつけて、テントじゅうから人が集まってきたが、おろおろするばかりだ。 もうふ チイおばさんは毛布に手をかけていたが、 かん もうふ みす 「こんな毛布、見たこともないわ。いま、水から引きあげてきたって感しよ。」 と、そばにいた人のコートを引っぱっこ。 「それに、石のべッドしやえるばかりよ。ほかのべッドはないの ? 」 と、べッドをたたいてみせた。 「なにしろ、わたしの国では、木は、すぐにくさりますし、鉄では、さびつくものですか ひとあたま チイおばさんにつかまった人が頭をかいた ひと くに もうふ なんまい てつ 161

7. 地下室からのふしぎな旅

かんけい 「子どもだとか大人だとかいうことは関係ないんですよ。大人だからまかせられると、き おも まったものでもないでしよ、つ。チィさんはカスミさんならだいしよ、フぶだとっているか あんしん ら、ああやって安心して、ねむりにいけるんですよ。」 ポポのやさしいことばに、アカネは泣きたくなった。チイおばさんは、めんどうなのが いやなだけにきまっている。いつも、カスミ、カスミって、ばかにしておいて、こんなこ とをおしつけるなんて、あんまりだ。 あんしん おも 「わたしだって、カスミさんに話しておけば安心だと思っているから、こうしてお話しし ているんですよ。」 あか ポポのことばをきいたとたん、アカネは赤くなって、うつむいてしまった。おばあさんに しーオしとろばうみたいなことをしたんだから、あやま あげた糸のことをいわなくちゃ ) ナよ ) 。 ' おも かお しんらい らなくちゃいけない。そう思って顔をあげたのだが、ポポの信頼しきった目を見ると、ま すますいいだすことができない。 はな ゅうき とうとう、アカネにいいだす勇気がわかないうちに、ポポがまた話しだした。 みつかご ひる 「市は、あしたの昼からはじまります。そのときから市の終わる三日後の昼まで、市の門は おとな ひる おとな いちもん

8. 地下室からのふしぎな旅

それに、かぜ薬ときず薬ぐらいなもんよ。自の体に合った土地で、自伝のしたいことし びようき てるんでしようから、ひどい病気になんてならないらしいわ。これしゃ魔法使いがヒボク ラテスとはりあってても、ちっともおかしかないわ。」 と、チイおばさんは肩をすくめた。 「ねえ、カスミ。これは、なんの薬かわかる ? しろたま チイおばさんま、 : しカきで、天しようから白い玉がたくさんついた草を引っぱりおろし しろたま た。そしてそれを、かるくふってみせた。その白い玉は、チリチリコロコロとかわいらし おと やさしい音をたてる。アカネが首をかしげると、 「鈴をころがすようなわらい声をだせる、すずまめだ 0 ていうのよ。西飃のすずまめが はらぐんせい 原に群生す、って書いてあるわ。 いってみたい。 飃がふいたらすてきでしようね。 「うわあー アカネは小さな白い鈴が、何千と地面にむらが 0 て、飃がふくたびにそよぐさまを、飃 おも おとすずね の音と鈴の音といっしょに思いあわせて、うっとりとなった。 おんち ひとまえ かお「あか 「うるさいだけにきまってるわよ。人前にでても顔が赤くならない花粉だとか、音痴をな かた てん くすり かふん くさひ まほうつか

9. 地下室からのふしぎな旅

よかん アカネはわるい予感がした。この鼻がひくつきだすと、ろくなことがおこらない。アカ くにやさい がわ こはるびより にしさかみち ネたちのいる西の坂道をはさんで、チイおばさん側にある店は、小春日和の国の野菜を置 がわみせこくるい いていて、とうもろこしを焼くにおいがしている。アカネの側の店は穀類を置いているら しい。焼きたてのパンが湯気をたてている。 「がまんできない。わたし、とうもろこし、もらってくる。」 ばしゃ チイおばさんは馬車から飛びおりようとした。どうせ、そういいだすだろうと思って、 アカネは、さっきからチイおばさんのマントのすそをにぎっていたのだ。 「はなしてよ ! 」 「だめ、だめよ、チイおばさん。この世ではおなんて使えないのよ。 あじみよう 「もう、カスミなんだから。よく見てごらんなさいよ。あれは味見用よ。通りがかりの人 ばんばん が一本一本、だまって食べてくしゃない。せつかくのご厚意を、むだにできないわ。 チイおばさんは、にいとわら、つと、かけだしていった。 り、 6 、つり - なんばんも いわれてみれば、そのとおりだった。料理してしまったとうもろこしを、何百本と持っ て帰っても、くさらせてしまうだけにちがいない。チイおばさんは食べ物のこととなる かえ はな みせ もの とお ひと 132

10. 地下室からのふしぎな旅

ほうよ れたころには、は、フきにでもまたがって、そこいらを飛びまわりたくなった。 チイおばさんは、もう、ほうきにまたがって遊んでしまったらしい。ばあやさんが、片 方へ寄ってしまったほ、フきと、庭についたジグザグのほうきのあとを見て、こまったよ、フ あたま に、ほおずき頭をふっていた。 なんど ものもうふ みつかかん 「三日間のことですから、食べ物や毛布は馬車に積んでおきました。何度もいうようだ みせ が、くれぐれも、ちがう世からきたなどと気一どられないように。ヒボクラテスの店へ ししよう つごう ひと はいりこんでも、あまりたくさんの人がつめかけてくるようなら、お師匠さまが都合で市 おも はなし へでてこられないので、お話だけうかかう、といったほうがいいように思うのだが : くろ ーしんばい と、黒パンやミルクを口へつめこみながら、ポポは心配そうにチイおばさんを見た。 先にごはんをすましてしまったチイおばさんは、の畆に立って、マントを広げてみた 、すばめてみたりしている。 「アプラ、カダブラー。」 かおみあ とさけびだしたチイおばさんを見て、ポポとアカネは、やれやれと顔を見合わせた。この くち せか ) にわ ばしやっ あそ かた 111