顔 - みる会図書館


検索対象: 地下室からのふしぎな旅
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1. 地下室からのふしぎな旅

ほんやりとしたはだか電恥の光が、段ボールや薬のびん、気のぬけてしまったチイお ばさんの顔、そして、ぬけでてきたはずのコンクリート のかべを照らしている。アカネと かお ふたりめ チイおばさんの顔が、ゆっくりとコンクリートのかべのほうをむいて、二人の目が、これ 以七きくなれないほど見開かれた。そのかべにヒボクラテスのマントが、いや、黒い布 ふたり がすいこまれて、たったいま、見えなくなってしまったところだ。二人は、かべを見つめ て、すわりこんだままだ。 やっとチイおばさんが、 かお 234

2. 地下室からのふしぎな旅

と、じっとりと重い毛布をはぎとった。毛布の間から、本やノートやペン、インクつばま でころがり落ちた。 「や 0 ばり保をわ。」 アカネに見やぶられたのに、王子はまだ、まくらをかかえてわらいころげている。わら いすぎて、なみだをぬぐいながら、 うた 「こんなにおかしいことって、はじめてだ。きゅうにへんな歌をうたいだすんだから。そ れも、あんなましめな顔してさ。そういえば、すこし顔がひきつってたみたいだったぞ。」 こえ おも と、また思いだしたらしく、「ひいつ。」と声をあげてわらいころげる。 「こんなところをチイおばさんが見たら、なんてい、フかしら。ヒボクラテスにも、あのカ マドウマにも見せてやりたいわ。 アカネが足をふみ鳴らしてさけんだ。 「ヒボクラテスは、ど、フしたんだい ? おうじ 王子は、やっとわらいやんだ。 けびよう 「ええ、ちょっと急用でこられないの。それより、どうして仮病なんてつかうの ? 」 おも きゅうよう もうふ かお おうじ もうふ あいだ かお

3. 地下室からのふしぎな旅

チイおばさんが、動枷園のチンパンジーのように、おりを両手でつかむまねをして、歯を おも むいてみせた。アカネは、チイおばさんは、しようだんのつもりだとった。なのに、ポ かお ポもばあやさんも、ましめな顔で、 にど かえ 「そんなことになったら、二度とおうちへ帰れませんよ。 あお と、うなすいた。いいだしたチイおばさんが、アカネのつぎに青くなった。 とにかく、ちらかったへやをかたつけることにした。ヒボクラテスもピポも、どんなめ あしお にあったのだろう。テープルはひっくりかえっているし、いすの足は折れてしまってい おと 「こんなにひどいありさまなのに、音がしないわけがないわ。だれも気づかなかったの ? アカネは、こなごなになった花びんをはきあつめながら、だれともなしにきいた。 だいどころ ご ) こ、台所にいたチィさんとばあやを呼んだものだから、なにもき 「糸をまとめる手つオし。 こえなかったんですよ。」 そう答えたポポの顔を、アカネは見ることができない。 「それでよろしかったのですよ。でないと、チィさんまでさらわれてしまいましたもの。」 こた かお

4. 地下室からのふしぎな旅

しんばい 「いやね、寝ばけてるんしゃないの ? どうして心配しなきゃいけないの ? ちょっとお つか 使いをたのんだだけじゃない。 へんな子ねえ。あっ、そうそう、チイおばさんにもたのん だけど、水まくらもら 0 てきてね。愛 0 たら、タからがでてきたのよ。」 こえ という、おかあさんの声がかえってきた。 じかん 「時間は、そうたっていないらしいわよ。 チイおばさんは、そういったきりで、だまりこんでしまった。アカネが帰ろうと立ちあ かると、 「マント。」 あたま とだけいう。アカネの頭は、いまはなにも考えることができない。黄色のマントをのろの ろとぬぐと、チイおばさんのサンダルを借りて家へ帰った。 それから一一、三日のアカネは、自でもあきれかえるほど、ばんやりとしていた。ヒポ ろけい はな クラテスのこと、ピボのこと、けいとう色の毛糸のこと、しすく切りのこと、話したいこ からだ とも きようだいかおみ とは体じゅうにつまって、はちきれそうなのに、友だちの顔を見ても、兄弟の顔を見て かんが いえかえ かおみ かえ 236

5. 地下室からのふしぎな旅

じしん ポポが自信ありげに、うなすいてみせた。 まどそと 窓の外から、 あおきぬいと 「わたしね、ポポさんがわたしにくれたこの青い絹糸で、、フちのちびちゃんの首につける リポンを編むの。それぐらいなら、この糸でもじゅうぶん編めるわ。 こえ ごえ とい、つ、はしゃいだ声と、メエーとい、つ鳴き声がきこえてきた。 アカネは、さっきからポポの顔を見ることができない。 「いいんですよ。カスミさんのおかげで、町にまたしげな声がもどってきたのですか ま ) 」 まちあ せいちょう ら。メリーのところの孫むすめも、この町で編み手として成長していけます。きっといし 編み手になるでしよう。あのおばあさんの孫だもの。この町で、くもの糸をあっかえるの は、あのおばあさんだけなんですよ。残り糸を持っていったら、飛びあがらんばかりによ ろこんでくれました。」 けっしん ごめんなさいっていわなくちゃ。アカネがそう決心して顔をあげたとたん、 「カスミ、早く ! チイおばさんがさけんだ。 はや かおみ のこ まち かお 115

6. 地下室からのふしぎな旅

いちば たいようたかだか ずなのに、でてきたら、市場には太陽が高々とのばっていた。 あめくに ふたりからだ チイおばさんとアカネの体は、灰色の時なし雨の国のテントの屋根に落ちた。二人の体 の重みで、テントがきくゆらいだ。そのとたん、時なし雨の国のテントの入り口から、ば くろ わあっと、まっ黒いけむりがふきだした。もくもくはきだされるけむりにせきこみなが ら、時なし雨の国の人たちが、ぐっをどたっかせて外、ころがりでた。王子もカマドウ かお マも、顔じゅうすすだらけだ。 ひと みすおと まわりのテントの人たちも、水の音とけむりにおどろいて外へ飛びだしてきたが、水を ふきだしている井戸と、けむりをはきだしているテントを見くらべて、どちらへいってみ たものかと、まよっている。 「ばんやりしてないで、おろしてよ ! 」 ひめい ひと かお チイおばさんの悲鳴に、下にいた人たちの顔が、い っせいにをむいた。 どうあっても、このばばの魔法のじゃまをするつもりか。も 「やや、おまえたちかー う、ゆるしておかぬ。こざかしいまねをしおって。さるにでも変えてやるー からだ した ーししろとき そと みず 203

7. 地下室からのふしぎな旅

しゃ した。たくさん仕上げようとするために、ロもききませんし、わきめもふりません。そ りや、わたくしたちが橘をしていたころも、一日しゅう編み物をしておりましたけど、好 こ 車にゆられながら歌をうたったり、子どもをあやしたり、なべのかげんをみたり、わきめ をふるほうにいそがしか 0 たものでございます。それでも、自の編んでいるものがどん おも いまの町の人たちの顔は、 なふうに仕上がるかと思うと、しぜんに顔がほころんで : かな みんな悲しそうで、苦しそうで : : : 。」 ばあやさんが、こらえかねたように、鼻をすすりあげた。 いとだままち 「いろんな国の糸玉町からもらったはんば糸が、まだあったはすだ。」 ポポが立ちあがった。ばあやさんがポポを見あげた。 いちば おも 「すこし、ほかの糸も配ってみようかと思う。なに、市場へ持っていけなくとも、町のみ んながしんでくれる分だけでもあればいいんだ。」 と、ポポがきくうなすいた。 はなしいちだんらく それで話は一段落ついた。 「あしたの市へは、どうしてもでかけねばな。 しあ くに しあ うた くる かお はな くち まちひと かお まち

8. 地下室からのふしぎな旅

「いやはや、さっきはひどいめにあったわい。まちがって川のほうへふみこんでしまった のじやから。 かお と、ヒボクラテスは倉庫の中で、なまがわきのズボンをはいて顔をしかめた。 かえ しんばい どナい 「あまりお帰りがおそいので心配いたしました。二階の、はと時計のかけてある柱が、地 下までつづいているようでございます。この柱めがけて飛びこめば、よろしゅうございま ーレト 6 、つ , 0 ピポは切り声でさえずりながら、むらさき色の虫のようにヒボクラテスのまわりを飛 そうこ なか かわ はしら

9. 地下室からのふしぎな旅

とつけたして、顔をしかめてみせた。 とお 「通られい ばしゃうご おとこひとばしゃ 男の人が馬車からはなれた。やっと馬車を動かせる。 「こわかった。 アカネがきなため息をついた。 とお 「どうして ? うまく通りぬけられたじゃない。」 「ううん、そんなことしゃないわ。チイおばさん、あの男の人、見た ? 「そりや、見たわよ。 「三メートルはあるわ。」 アカネたちは車のおにすわっている。そのアカネたちを、あの男の人は見おろしてい たのだ。 「あら 0 、ほんとうだ。ピポみたいな小人のいる世よ。もっときな人だっているかも しれないわ。」 ふりかえっていたチイおばさんは、 み かお おとこひとみ 125

10. 地下室からのふしぎな旅

の顔がかがやいていたもんだ。なのに、このていたらくときたら : うわけなんだろう。 はなし ヒボクラテスは、ポポの話をだまってきいていたが、 「市が立っといったようだが、もう、そんな時期か ? と、首をかしげた。 「ああ、あしたから市が立つ。 「おかしい。わしが、この世恭をでたときは、市が立つまでに十日ほど、まだ間があった はすじゃ。」 ししよう 「いえ。お師匠さま。わたくしがお師匠さまをおむかえにまいりましたときは、市まであ かえ しんばい と五日ほどでございました。あまりお帰りがおそいので、心配いたしたのでございますか ら。」 と、ピボか口をだした。 「おかしい ヒボクラテスが考えこんでしまった。 かお いっか いちた くび くち ししよう かんが いちた せか、 じき いちた とおか し / し」、つ・・し