ーロさんは、また、はなしはじめました。 り・よ、フりにん しゅぎよう それから十五年はど、たちました。料理人として修行していたわた くにりよ、つり たの しは、いろいろな国の料理をたべあるくのを、楽しみにしていました。 ある年、ロシアからべラルーシにはいり、そこで、チェルノフィリにい こう、とさそわれたのです。 チェルノブイリって、しっていますか。一九八六年、ソ連のウクライ げんしりよくはつでんしょ ナの原子力発電所チェルノブイリで、大きな事故がおこったんです。 ほうしゃのう せかい かぜ そこから放射能をふくんだ「死の灰」か、世界じゅうを風にのってかけ めぐったんです。 せいき いこうとおもいました。二十世紀をゆるかせたできごとでした。ひと かわぐち れん
けの女の子がうかんでいます。あ、こっちにも、しやがんでいる女の子。 みち かわぐち 川口さんがうっした、チェルノブイリへいく道の、あの森の写真です。 しんれいしやしん 心霊写真でした。かなしげに、しっとわたしをみつめている女の子たち。 ほうしゃのう イチゴをつみにきて、放射能で死んだ女の子たち : しやしん
がお チェルノブイリの事故がおきたのが一九八 , ハ年、それなのに、 はつけっぴょうし クでは、まだ白血病で死んでいく子もいるといいます。 かわぐち 口さんがそはにたっていました。 つのまにか、川 びよういん 「ミンスクの病院で、おかあさんにだかれている赤ちゃんかいました。 小さな小さな赤ちゃんも、だいているおかあさんも、ことばもなく、笑 こご、しっとしていました 顔もなく、オオ かわぐち 日ロさんはレストランのドアを、あけてくれました。 しんれいしやしん 「さあ、どうぞ、心霊写真レストランへ」 じこ ミンス え 2 2
ほうしゃのうおせん だいち けれど、その下にひろがっている大地は、放射能に汚染されているの です。 「この森にイチゴをつみにきた女の子が、死んだそうです」 だれかが、ばつりとつぶやきました。わたしはどこまでもつづく森を、 カメラにおさめました。 しやしんげんぞう 日本へもどったわたしは、ミンスクからチェルノブイリの写真を現像 して、あっと息をのみました。 しようじよ たしかにかごをさげた少女がうつ あの森をうっした一枚のなかに、 しんれいしやしん っているのです。あのとき、人かげはありませんでした。心霊写真だ とおもいました。 し 6
高津美保子 ) げ・んしよう にんげん しんれいしやしん ちょうしぜんてきそんざし 心霊写真とは、ふつう人間の目ではみることのできない、超自然的な存在や現象 と。も じっさい をとらえた写真をいいます。つまり、実際にはそこにいるはすのない、死んだ友だち し ばしょひごう せんぞ や先祖がうつっていたり、その写真をとった場所で非業の死をとげた、かわいそうな し しやしん あんじ 霊がうつっていたりします。また、まもなく死ぬ人を暗示するような写真のときもあ しんれいしやしん ります。この本には、そんな心霊写真にまつわる話をおさめました。 しんれいしやしん かわぐち ざっしきしゃ 雑誌記者のわたしのインタビューをうけて、オーナーの川口さんが「心霊写真レス ど しんれいしやしん かわぐち トランかてきたわけ」をかたります。川口さんは二度ショックな心霊写真をみて、こ のレストランをつくることにしたそうです。一枚は、はなやかなレストランでぜいた り・よ、つり・ じよゅう くな料理をたべている女優さんのうしろから、それをのぞく防空すきんをかぶった子 し どもたちがうつったもの。もう一枚は、チェルノブイリにイチゴをつみにきて死んだ 女の子がうつったものでした。このレストランの「ロビーにて」、わたしは、そのか しやしん しやしん はなし し 1 38