国男さんにきてもらいたくてよ . かみ 「その〈神かくしレストラン〉っていうのは、どこにあるんです。まあ、 たばなし ここで立ち話していてもしかたがない。お花さん、ぜひおれのうちへき てください。そこでゆっくり、その、レストランの話、きかせてくだ というわけで、おれ、お花ちゃんから、くわしく、レストランの話を きいた。それにおれの話もまぜて、はなすね。 おうめてつどう おうめせん いまから何十年もまえのことだ。この青梅線がまだ青梅鉄道っていっ た 6 あさ く、小さな女の子が泣きながら、山からお ていたころ、ある日、朝はや なん はなし はなし はなし 4
ーや 1 3 ". ーい、煢 すいぶんむかし、お花という小さな女の子が、てんぐさんにつれら と、つきよ、つ いわてけんもりおか ばん れて、ひと晩のうちに、岩手県の盛岡の山の中の村から、東京の おうめ おうめ 青梅の山までつれていかれました。このかごは、女の子が青梅から
かくれんぼ 「日がくれたら、かくれんばはだめだよ」 てらにわ 「お寺の庭のかくれんばは、日のあるうちだけだ。夕方は神かくしにあ うでな」 おばあちゃんは、いつでもそういう 、つ てらにわ ) 0 、 ノキやツッジの植えこみはいい お寺の庭のかくれんばはおもしろし にわ ほんどう ばしょ かくれ場所だし、本堂のゆかの下へだってもぐりこめる。うら庭には二 0 ゅうがた みやかわ 宮川ひろ かみ 3 5
もりおかし 〈神かくしレストラン〉は、盛岡市にあった。駅まえしゃない、 町の中だけど、なかなかいいレストランだった。 お花ちゃんにつれられて、中にはいると、小さなロビーがあって、な おうめしやしん んと、青梅の写真がかざってある。 こけ . 亠の ガラスのケースに、むかしの、竹で編んだべんとうのかごが、かざっ てあった。 おにぎりをいれた、、第 ) - ) 。を ) 松谷みよ子 ペんとうのかご かみ えき もっと
ようじ もりおか 「ああ、あしたは用事があるからな。なにしろ盛岡だって、いましや日 がえ 帰りできるもんな。おっと、神かくしなら、むかしも、あっというまだ ったつけ」 はな お花ちゃんは、くすくすわらった。 「それでね、わたし、国男さんに、てんぐタクシーをたのんでおいたの と , つきょ , つおうめ 「タクシーだって ? よせやし : いくらちかいったって、東京の青梅 しんかんせん までタクシーにのってはいけないよ。新幹線でかえるよ」 するとまた、お花ちゃん、くすくすわらって、おれをひつばって外へ でた。 かみ そと 1 50
ばん あじ いっしよう 、つまかったよ。 「あのときの、おにぎりの味、一生わすれないくらい 村へかえったら、みんな、もう、たまげたり、よろこんだり。 とお きしゃ だってさ、汽車にのったって一日はかかる遠いとこから、なんでひと おうめ 小さい子か青梅の山の中にいったんだろう。みんな、これ 晩のうちに、 はてんぐさんのやったことだ、って、いったんだよ。神かくしだってね」 すげえ、、フまかった。 お花ちゃんも、むちゅうで食った。 「じゃあ、しつかり、のってけよ」 でんしゃ 電車にのせて、おくりだしたんだ。 かみ 2
かぜ それ以来、子どもたちは、つむじ風にちかよってはいけないと、きび しくいわれている。でも、かえってこられるのなら、ちょっといってみ たいという子もいるかもしれないね。 かぜ え ? つむし風こぞうにあってみたいって ? ほ、つほ、つ それなら、 しい方法をおしえてあげよう。 こむぎこ 4 小、つい うん 小支粉をひとっかみ用意して、大きな木の下でまっていてごらん。運 こな かぜ かぜ よく風かまきはしめたら、粉をばっとなげるんだよ。つむじ風こぞうか こな いたら、きっと粉にむせて、すがたをあらわすだろう。 うそかほんとうかはしらないけどね。
と、つほノ、亠つほ、つ 「おれがおもうに、 この子は東北地方の子だ」 と、っちゃんかいった。 おうめ 「だけど、そんなとおくの子が、なぜこの青梅にいるんだ ? 」 女の子は小さいし、泣いてて、なにいってるかよくわからない。でも とうちゃんは、すっとまえ東北にすんでいたことがあるとかで、ようや いわてけん くその子が、岩手県あたりの子どもらしいってわかった。 そこでかあちゃんと、まだやつばり小さかったおれに、お花ちゃんの てつどうでんわ 世話をさせ、とうちゃんは鉄道電話をかけまくったんだ。 もりおか そうしたら、盛岡の山のほうの村で、女の子がひとり、ふっとすがた をけして、神かくしだと、村じゅうおおさわぎ。 せわ かみ
岩倉 岩崎 いわくら いわさき 千春 京子 ちはる きようこ 岡野久美子 おかのくみこ おざわ 小沢 けんもち 剣持 すぎもと 杉本 つねみつ 常光 ふじ きよ 冫月子 ひろ 弘子 えい 栄子 徹 とおる 藤かおる まったに 松谷みよ子 みずたに 水谷 みやかわ 宮川 もちづき 望月 吉沢 よしざわ しようぞう 早 ひろ 正子 和夫 まさこ かずお 執筆者紹介 ( 50 音順 ) 日英の民話を研究。共著に『世界の愚か村話』 『夢で田中にふりむくな』など。 著書に『シラサギ物語』『鯉のいる村』『花咲か』 『あかまんまとうげ』『花に暮れて』など多数。 東京・小平を中心に民話を採集。共著に『小平 著に『佐渡の伝説』など民話論多数。 著書に『民話の再発見』『民話の心と現代』、共 信海太の夏』『てんにんのよめさま』など。 著書に『ちいさな村に汽車がきた』『海ガメ通 き地ぞう』『天使のいる教室』など多数。 著書に『春駒のうた』『夜のかげは、うし』『つば ばん』など。紙芝居も多数手がける。 著書に『たぬきからの手紙事件』『きようも星 のにしき』「あかちゃんの本」シリーズ等多数。 著書に『現代民話考』『龍の子太郎』『やまんば すこ』『くらげほねなし』など。 著書に『上総の民話』『くらっこ』『へつぶりむ 『妖怪図鑑』など。 民俗・ロ承文芸を研究。著書に『学校の怪談』 の民話』『世界の妖怪たち』など。 日独の民話を研究。共著に『ガイドブック世界 王』『ピノキオ』『三つのオレンジ』など。 日伊の民話・児童文学を研究。著書に『クリン らのおくりもの』『高崎のむかしばなし』など。 群馬を中心とした民話を採集。著書に『あの世か ちょっと昔』『ちょっと昔』など。
ひつじか とぐち 羊飼いがばうしを手にとったとたん、戸口からはいってきたねこが、 まど さっとばうしをくわえると、窓から外へでていった。 そと 1 〇 5