どうしてこんなところに小さな子がいるんだろう。しかもはだかじゃ ないか けんたむね 健太の胸がどきんとした。竹内さんのことばがよみがえってきた。子 きもの どもかいなくなったこと、木のてつべんに着物だけかかっていたこと。 なん するとこの子は神かくしにあった子だろうか。何十年ものあいだ、ここ にいたのか。健太はおそろしさのあまり、へたへたとその場にすわりこ んだ。 あれから何か月もたった。健太はまだかえってこない。森でみつかっ たのは健太のシャツだけ : けんた なんげつ けんた かみ けんた たけうち 0 5 9
と、つほノ、亠つほ、つ 「おれがおもうに、 この子は東北地方の子だ」 と、っちゃんかいった。 おうめ 「だけど、そんなとおくの子が、なぜこの青梅にいるんだ ? 」 女の子は小さいし、泣いてて、なにいってるかよくわからない。でも とうちゃんは、すっとまえ東北にすんでいたことがあるとかで、ようや いわてけん くその子が、岩手県あたりの子どもらしいってわかった。 そこでかあちゃんと、まだやつばり小さかったおれに、お花ちゃんの てつどうでんわ 世話をさせ、とうちゃんは鉄道電話をかけまくったんだ。 もりおか そうしたら、盛岡の山のほうの村で、女の子がひとり、ふっとすがた をけして、神かくしだと、村じゅうおおさわぎ。 せわ かみ
「いきましよう」 たいいん げんき 隊員たちは、きゅうに元気 がでた。 かぜ はたして子どもたちは、風 のこないくばみに、しつかり かたまっていた。外側の子が さむくなると、中の子とこう どうひょう おりるつもりで、道標を左 あぶらぎ におれたんで、油木にでたら そとがわ 1 1 5
もどせえーかやせえー もどせえーかやせえー って、ちょうちんつけて、かねをならして、さがしまわったけど、みつ か、らか ( い その子の名が、お花っていうんで、それだ、となった。その子がここ そこで、うちのかあちゃんが、にぎりめし、 いつばいにぎってね。あ れは、さくらがばちばち、さきだしたころだったから、ふつかくらいは もつだろう、って、いつばいにぎってね、かごにつめて、もたせた。水 とうに水いれてね、首に大きな札をぶらさげた。 ふだ すい 7
「きよ、つは、神さまかおいでになるから、こ、つしてまっている」 と、おかしなことをい、つ 、がっこっ 「またはかなこというて、学校におくれつぞ ちょうきち ははおや 母親がしかっているうちに、長吉はみるみるくちびるが色あせたよ うに白くなって、ふっと息をひきとってしまった。 しばらくのあいだ母親は、たいそう、なげきかなしんでいたが、やが 「あの子は、神かくしにあったとき、神さまの子になったんですなあ。 かみ 神さまにおっかえするために、つれていかれたんでしよう」 いうようになったそうだ。 かみ かみ ははおや かみ
たいしていた。 そうさくたい 「あれ、このすぐよこ、捜索隊はとおった」 「え、気がっきませんでした」 こえ こえ しんとした山の中で、たいこの乱打や、声をからしてさけんだ声がき そうさくたい こえなかったとは、ふしぎだ。捜索隊のはうも、うすくまっている子か わからなかった。なぜだ、なぜなんだ。 やまみち めいきゅう いったいこの子たちを、迷宮ーラビリンスーのような山道においこ んだのは、なんだったのだろう。 ほ、つこ、つ みち 「山の道は一歩まちがえると、方向がわからなくなることはよくありま す . らんだ 1 1 6
しらもち そうで いえ なえることになっておった。その家でも、家のもんが総出で、白餅をこ しらえるのにいそがしく、子どものめんどうなんかみておられんのだっ どま 夕方になったころ、ふと気がつくと、すっと土間であそんでいた子ど ものすがたがみえん。 ーい、だれか一太郎のことしらんか , どま 「そういえば、さっきまで土間におったのに、どこへ な」 それから、そうひろくもない家のすみからすみまで、ちょっとでも子 どものはいれそうな、すきまというすきまのすべてをさがしまわったが、 ゅうがた いちたろう いったかみえん 7 7
くの山の中も、手わけしてさがしたが、どこにも手がかりはなかった。 わだい そのうち、マリーアとトニーノのことを話題にする人もいなくなり、 ふたりは、村人たちから、わすれさられてしまったようだった。 一年もたったころだった。ある日、ひとりの女が村にあらわれた。男 の子もいっしょだった。うすよごれた服をきて、つかれきったようすだ むらびと 村人か、ひとり、ふたりとあつまってきて、女のまわりをとおまきに した。そのうち、ひとりがさけんだ。 「マリーアしゃないかい。それに、その子はトニーノだね」 「どこへいってたんだいー むらびと ふく 7
って、この子をしつかりかかえていた。気がついたら、どこかの森の中 にいたのさ。そこからあてもなくあるきだしたんだけど、ここをみつけ るまでに、三日もかかってしまった」
2 はなし この話はね、一九一九年っていうから、すいぶん、まえのことさ。 しこく たにがわ いえ 四国の山の中に、谷川をはさんで、家が二けん、たっていた。さみし いくらしだよね。 さくたろう いえ まよなか そこにすむ、作太郎さんの家のしようじが、真夜中、すうっとあいた さくたろう かぜ んだって。作太郎さんはぐっすりねてたけど、顔にひんやり、風があた ったので、目をさましたのさ。 かお ′、ま ノ、た 合に み よ 子こ 1 38