さだ。ほ , フ 「ありや。おまえ、となりの貞坊じゃ ないか 「うんー よなか 「どうして、この夜中にきたんじゃ、 とうちゃんといっしよか、かあちゃん といっしよか」 さだ物ほ , フ すると貞坊が、たどたどしくいった。 かお そうしたら、月の光で、小さな顔が しようしから、のぞいているのがみえ ひかり 1 39
ーや 1 3 ". ーい、煢 すいぶんむかし、お花という小さな女の子が、てんぐさんにつれら と、つきよ、つ いわてけんもりおか ばん れて、ひと晩のうちに、岩手県の盛岡の山の中の村から、東京の おうめ おうめ 青梅の山までつれていかれました。このかごは、女の子が青梅から
もりおかし 〈神かくしレストラン〉は、盛岡市にあった。駅まえしゃない、 町の中だけど、なかなかいいレストランだった。 お花ちゃんにつれられて、中にはいると、小さなロビーがあって、な おうめしやしん んと、青梅の写真がかざってある。 こけ . 亠の ガラスのケースに、むかしの、竹で編んだべんとうのかごが、かざっ てあった。 おにぎりをいれた、、第 ) - ) 。を ) 松谷みよ子 ペんとうのかご かみ えき もっと
どうしてこんなところに小さな子がいるんだろう。しかもはだかじゃ ないか けんたむね 健太の胸がどきんとした。竹内さんのことばがよみがえってきた。子 きもの どもかいなくなったこと、木のてつべんに着物だけかかっていたこと。 なん するとこの子は神かくしにあった子だろうか。何十年ものあいだ、ここ にいたのか。健太はおそろしさのあまり、へたへたとその場にすわりこ んだ。 あれから何か月もたった。健太はまだかえってこない。森でみつかっ たのは健太のシャツだけ : けんた なんげつ けんた かみ けんた たけうち 0 5 9
かよしのフランコの家にいってみた。 「トニーノ ! もう、おそいからかえっておいで」 こえ かお 外から声をかけると、フランコが顔をだした。 「あら、フランコ、トニーノはいっしよしゃなかったの ? 」 すると、フランコかいった。 「おばさん、トニーノはかえってないの ? きゅうにいなくなったから、 家にかえったのかとおもってたんだけど」 「あんたたち、どこであそんでたの ? なにしてたの ? 」 ふあん マリーアは不安になって、たたみかけるようにフランコにきいた。 ひろば かぜ 「広場の木の下であそんでたんだ。ときどき風がふいてね。小さなつむ そと 6 6
「なにいってんだよ。おれ、ここにいるよ。ここにいるよ」 けんた と、つと、つ数罸 ひっしで健太はうったえたが、ふたりにはつうじない。 けんた もユ力もまちくたびれて、さくをのりこえかえってしまった。健太もあ とをおお、つとしたが、ど、フしたことかさくかこ、んられない。くるときは、 あんなにかるがるととべたのに。 けんた あせる健太のうでをぐいっとひつばるものがいた。ふりかえると、そ あたま あおじろ こには小さな男の子がたっていた。ばうす頭で、はだか、青白いはだが、 うすやみにばーっと、にしむようにうかんでみえる。 「あんちゃんもひとりばっち。おらもひとりばっち。いっしょにあそ かずま 3 9
あか やりと明るくなっている。 「どこまでいくんだよう」 まさや 正也はなにかにひつばられるように、しゅんすけのあとをおった。足 きぶん はもう地についていない。木の枝から枝へとんでいるような気分だ。 林がきれたところに、あかりのついた家がみえた。そこの入り口にた えほん ってふりかえった子は、しゅんすけではない。絵本の中でみたような、 こぞ , っ くろころも 黒い衣をつけたお寺の小僧さんだ。 どうしたんだ、しゅんすけはどこへいったんだ : そこはふる い小さなお寺だった。中へはいれという ぶつぞう 仏像のまえにふとんかしかれて、だれかがねていた。 てら てら えだ えだ
国男さんにきてもらいたくてよ . かみ 「その〈神かくしレストラン〉っていうのは、どこにあるんです。まあ、 たばなし ここで立ち話していてもしかたがない。お花さん、ぜひおれのうちへき てください。そこでゆっくり、その、レストランの話、きかせてくだ というわけで、おれ、お花ちゃんから、くわしく、レストランの話を きいた。それにおれの話もまぜて、はなすね。 おうめてつどう おうめせん いまから何十年もまえのことだ。この青梅線がまだ青梅鉄道っていっ た 6 あさ く、小さな女の子が泣きながら、山からお ていたころ、ある日、朝はや なん はなし はなし はなし 4
かぜ かぜ し風ができるんだよ。風がまきあげる葉っぱがおもしろくて、おっかけ てたんだ。そうしたら、きゅうにトニーノかいなくなっちゃったんだ マリーアは、村のはずれまでさがしてみたが、トニーノはみつからな かった。 った マリーアは、ふるくからの言い伝えをおもいだした。小さないたすら ようせい かぜ かぜ 妖精の「つむじ風こぞう」が、どこからかやってきて、つむし風をおこ して、その中に子どもをまきこんで、つれさることかあるという でんせつ 「そんなこと、ただの伝説だとおもってたけど、もしかして : おっとし かぞく はやくに夫に死にわかれて、ほかに家族のいなかったマリーアには、 そうだん きんじよ とくに相談する人もなかった。近所の人たちも、あちこちさがしてはく 0 7 6
こしよくそうぜん ガラスケースの中の小さな竹かご。古色蒼然たるむかしの「おにぎりをいれたべん しようじよ と、つきよ、つ もりおか とうのかご」です。なんと、あの日東京から盛岡へおくりかえされるとき、少女っ おもでしな おんなしゅじん いまのレストランの女主人がもっていた思い出の品とい、つわけです。 しゆるいしようかい とうてん デザートをふくめて十一種類の紹介 では、これより当店とびつきりのメニュ をいたしましよ、つ。 はなし 「てんぐの釜たきをした男」は、自分の家のまえから、てんぐにつれさられた男の話 かみ です。「神かくし」とはいっても、相手は神であったりてんぐであったり、ところに おに よっては鬼や、きつねだったりするわけです。しかし、てんぐに命じられて湯をわか てつがまげんじっ した鉄釜が現実にあるというのですから、なんともふしぎです。 すぎたいぼく あな かみ 「神さまの子」では、杉の大木にあいた穴の中からいなくなります。神かくしにあっ た人のおおくは、家の人があきらめたころ、みちがえるようなすがたでひょいっとか はなししゅじんこう えってきて、すぐにまたすがたをけすか、息をひきとるかします。この話の主人公の のうりよく ように、ふしぎな能力をみせることもすくなくありません。 かみ かま じぶん あいて かみ 1 55