おもった。 とうし でも、牛はどんどんやせていって、とうとう一頭死んでしまった。ほ ヤ」ころ ぜんぶし うっておけば、このまま全部死んでしまう。女は心をきめて、おはあさ んかいったとおりにやってみることにした。 ひとりでいくのはこわいから、女はとなりの家のおかみさんにたのみ きようかい こんで、いっしょにいってもらうことにした。いちばんちかい教会の まよなか 墓地は二キロちょっとのところにある。ふたりは真夜中になるすこしま えに、でかけていった。 ぼち 墓地の入り口までくると、となりのおかみさんはがたがたふるえだし ぐち
女はとなりのおかみさんをおぶってあるきはしめたが、おもくてなか なかまえへすすまない。のろのろあるいていたのでは、いちばんどりが なくまでにどくろをお墓にかえせなくなる。しかたなく、女はすぐ先に いえとぐち みえた家の戸口に、となりのおかみさんをおろして、おいていくことに それから家へはしってかえって、大いそぎでどくろをなべにいれて火 にかけた。スーフがにえると、どくろをとりだして、また墓地へはしつ た。どくろをお墓にもどして、シャベルで土をかけて、もとどおりたい らにならしたとき、コケコッコーと、どこかでいちばんどりかないた。 墓地はなにごともなかったように、しんとしすまりかえっている。女 8 3
だんじよ 霊とはしらす、生きている女の子とばかりおもってもとのところへかえってきて、友 力いた、ん だちの話をきいてあらためてびつくりぎようてんするという、怪談によくあるタイフ の話です。 あいじよう ははおやゅうれい この世にのこしてきた子どもへの愛情が、母親を幽霊としてこの世につれかえし はなし てくるという、なんとも心あたたまる話が「ショキンショキンと音かして」です。 かいだん にんげんせい 屋談には、こうしたあたたかい人間性をかたる話もあるのです。 はなよめいしよう こ、つつ、つじこ はなよめいしよ、つ みこん 「花嫁衣装」は、ロシアの話です。交通事故で死んだ未婚のむすめの花嫁衣装をつく せんそうせんし ってやって、いわれたとおりになげこんだトラックには、アフガン戦争で戦死した男 いじよ、つし カた みこん 性の死骸がのっていたという、なんともせつない話です。異常な死に方をした未婚の よ しん、」、つ に・はん ぜんやまがた 男女が、あの世でむすばれるという信仰は、日本にもあります。わたしは以前、山形 けんりつしやくじ せんそうはなよめえ せんそうざんこく 県の立石寺で、そうした戦争花嫁の絵をいくつもみて、戦争の残酷さにやりきれない おも 思いがいたしました。 ぼち 「霊のとおり道」は、ドイツ人墓地とリトアニア人墓地のあいだを霊かかようという はなし し力い はなし よ みち こころ はなし し はなし よ とも 1 41
かそ , フ。は けつきよく、三年生、四年生は、だれも火葬場までいきつくことがで きなかった。 いよいよ五年生のさとるの番だ。 みち 「道は、さっきいったとおりだからな」 りゅうた みち 龍太かささやいた。はじめての道だ。 りゅうた みち あたま さとるは、龍太がおしえてくれた道を、頭の中でくりかえしながら、 お寺のうら山をのばっていった。あたりはまっくらだ。星はよわくひ かいちゅうでんとう かっているか、月はでていなし ) 。小さな中電灯では、足もとをてら すのがやっとだ。 さかみち しはらくいくと、両わきが墓場になっている坂道にでた。ササのしげ てら ねんせい ねんせい り・よ、つ ねんせい ばん 4 9
〈ええ、 しいわ。いまも水車がまわっているかしら〉 すぐ目のまえを、半分すきとおったような白い霊たちが、ひらひらお どるようにとんでいた。 かぜ 目をこらすと、あっちにもこっちにも、風にまいなからたのしそうに すがた おしゃべりする霊たちの姿がみえた。 やくば いえやね リ ,. ッと そのとき、役場のすぐとなりにある家の屋根の一部かノー 音をたてておちてきた。ちょうどしゃれあうようにとんでいったふたっ の霊が屋根にぶつかったところだった。 いえれい みち 「わかったろう。この家も霊たちのとおり道にかかっているんだ。屋根 なんじっかい しゅうり のはじだけだが、年に何十回と修理をせにゃならん」 はんぶん すいしゃ いちぶ 1 24
にしがわ 「ごらん、この村には墓地がふたつある。村の西側にあるこの墓地がド ぼちひがしがわ ィッ人墓地、東側にある、こっちかリトアニア人墓地だ」 ゅび といって指さしながら、はなしはじめた。 ばん ししゃ 「そのにねむる死者たちの霊が、あらしの晩にむかしの友だちをたす みち ねあうんだが、ちょうどこのあたりはそのとおり道になっているんだ」 ぼち ばしょ たしかに、男が家をたてた場所は、ふたつの墓地のあいだにあった。 はなし しかし、そんな話、かんたんにしんじられるものではなかった。 じぶん 「おまえさんは、どうしても自分の目でたしかめないとしんじられない ばん じゃくば みつかご んだね。じゃあ、三日後の晩の十二時、役場のまえでまっているんだ」 そのおばあさんは別れぎわにそういった。 わか とも 1 21
するとその晩、ニーナがあらわれて、こういった。 さい′」 「おかあさん、ありかとう。最後にもうひとつ、わたしのおねがいをき はなよめいしよう かいい」 , っ いてね。あしたの朝はやく、その花嫁衣装をもって、街道までいってほ みち さいしょ しいの。道はたにたって、最初にとおりかかった車とつぎの車はやりす だいめ ごし、三台目の車がきたら、服を車の中になげこんでちょうだい」 おかあさんはニーナのいうとおりにした。いちばんどりがなくのを かいいっ まって街道にいき、しはらくたっていると、むこうから車がやってきた。 たいめ 一台目はセダン、一一台目もセダン。二台の車がとおりすぎてしばらくす だいめ すな ると、三台目の車かやってきた。こんどはトラックだ。トラックは砂け むりをあげて、はしってきた。トラックが目のまえをとおりすぎようと ばん あさ 1 1 2
のとおり これは、ドイツの東、ポーランドにちかいある村での話。 みち いえ あるとき、よその町からうつってきた男が、道ばたの草むらに家をた てはじめた。 とち かお それをみた土地の人たちは、あれあれという顔をしてみている。首を ふりながらとおりすぎていく人もいる。 「なぜ、そんな顔をしてみるんだ」 れい かお ひがし みち たかつみほこ 高津美保子 はなし 1 1 6
「あたしはいやだよ。この先はいきたくないよ」 「しゃあ、ここでまってて」 女はすんすん墓のあいだをすすんでいった。おくのはうにどうやら古 そうなお墓があった。女はスコッフで土をはりはじめた。しばらくはっ こえ あしもと て、ようやくでてきたどくろを手にとると、足元からうつろな声がきこ えた。 あたま 「おれの頭だ。もっていくな」 女はいわれたとおりにそれをおいた。どれだってかまわないんだから、 もんく 文句をいわれなくてすむのをもっていこうとおもったんだ。女はもうす こえ こしほって、べつのどくろをもちあげた。すると、また声がした。 ふる 4 3
ェフのま、すすあ ・かべにかざられた手 / 杉本栄子・ とっておき、ドイツ産赤ワイン。 1600 年代ものです。 ・どくろのスープ / 岩倉千春・ 真夜中ににこんだ、カルシウム入り特製スープ / はかもり ・墓守のむかし語り / 岡野久美子・ この世のものとはおもえぬ味、よーくかみしめてめしあがれ。 きやく ・雨の夜の客 / 岩崎京子 暑い日におすすめ。ひんやりとした舌ざわり / ・見たな / 吉沢和夫・ この料理、音をたてすにたべてください。 ・墓よせ / 水谷章三 湯気のたつほかほか料理。さめないうちにどうぞ。 ・墓地にでた魔物 / 常光徹・ ・ 75 切り口もあざやか、血のしたたるステーキ。 ・ショキンショキンと音がして / 宮川ひろ ・ 83 ほどよいあまさ、からだにやさしい家庭風手作り料理。 ・きもだめし / 小沢清子 シロップ入りかき水。祭りの夜のなっかしい味です。 はなよめいしよう ・花嫁衣装 / 斎藤君子・ 悲しみのなみだでつくった伝説のロシア料理。 みち ・霊のとおり道 / 高津美保子 ・月 6 秘伝の味。風のつよい日にたべると、霊たちが見えるかも。 ・デザートおまえにひとつ、おれにひとつ / 剣持弘子 ・ 127 ぞーっ / としてあまーい特製デザート。 ・引 ・ 42 よる ・ 59 はか ・ 67 まもの ・ 106