だんじよ 霊とはしらす、生きている女の子とばかりおもってもとのところへかえってきて、友 力いた、ん だちの話をきいてあらためてびつくりぎようてんするという、怪談によくあるタイフ の話です。 あいじよう ははおやゅうれい この世にのこしてきた子どもへの愛情が、母親を幽霊としてこの世につれかえし はなし てくるという、なんとも心あたたまる話が「ショキンショキンと音かして」です。 かいだん にんげんせい 屋談には、こうしたあたたかい人間性をかたる話もあるのです。 はなよめいしよう こ、つつ、つじこ はなよめいしよ、つ みこん 「花嫁衣装」は、ロシアの話です。交通事故で死んだ未婚のむすめの花嫁衣装をつく せんそうせんし ってやって、いわれたとおりになげこんだトラックには、アフガン戦争で戦死した男 いじよ、つし カた みこん 性の死骸がのっていたという、なんともせつない話です。異常な死に方をした未婚の よ しん、」、つ に・はん ぜんやまがた 男女が、あの世でむすばれるという信仰は、日本にもあります。わたしは以前、山形 けんりつしやくじ せんそうはなよめえ せんそうざんこく 県の立石寺で、そうした戦争花嫁の絵をいくつもみて、戦争の残酷さにやりきれない おも 思いがいたしました。 ぼち 「霊のとおり道」は、ドイツ人墓地とリトアニア人墓地のあいだを霊かかようという はなし し力い はなし よ みち こころ はなし し はなし よ とも 1 41
したとき、おかあさんは荷台めがけて服をなげこんだ。 キキーツー うんてんしゅ きゅうていしゃ トラックが急停車し、運転手がこぶしをふりあげて、おりてきた。 「いまおれのトラックになにをなげこんだ ! おまえはおれがなにをは し むすこ こんでいるのか、しっていてやったのか ! アフガン戦争で死んだ息子 のひつぎだぞ ! 」 おかあさんはおどろいてあやまり、これまでのことをはなした。する うんてんしゅ と運転手はしはらくかんかえてから、こ、ついっこ。 はなよめいしようむすこ 「よし、その花嫁衣装を息子のひつぎにいれよう。そうすれはきっと、 むすめさんのところにとどくだろうよ ふく せんそう 1 1 4
よ ほね ぶきみ はそういう背景はなくなったのですが、夜な夜な骨をかじるという不気味さが、この きようみ 話への興味をその後すっとかきたててきたのでしよう。 げんざい いっしょ そせんかぞく ほね 祖先や家族の骨をあちこちから一か所にあつめるというしきたりは、現在ではもう り・カい はなしきょ , っ 理解できないでしよう。「墓よせ」とはそういうことなのですが、しかしこの話で興 ゅ み そぼれい あによめ 味ぶかいのは、山の上にとりのこされた祖母の霊が兄嫁にのりうつって、ごはんの湯 り・ゅ、つ じぶんぶつぜん 気をすうところですね。わたしなど子どもの時分、仏前にあげたごはんを理由もなく さけたものでした。 カくせいせいかっ きもだめしというのをわかいときにわたしもやらされました。学生生活の中の年 ちゅうぎようじ まもの 中行事みたいなものでした。しかし、もしそこで「墓地にでた魔物」のようなこと ゅうれい がおこったらおそろしいですね。幽霊がでてくるよりもっとおそろしいことです。し はなし じっさい かもこれは実際におこりえる話ですから、ほんと、つにぞーっとします。 さいきん 丿におちて死んだ女の子の もうひとつ「きもだめし」の話があります。つい最近、日 ゅう ゅうれい ほんにん 幽霊とっきあう話ですか、きもだめしをしている本人はそのことをしらないから、幽 はなし はなし よ し ね ん 1 4 〇
さいきん これは最近、ロシアのある村でほんとうにあった話だ。 てんらく ぎせいしゃ 「バスが橋から転落し、おおぜいの犠牲者がでたもようです . ゅうはん おかあさんがタ飯のしたくをおえてテレビのスイッチをひねると、ア ナウンサーの声が耳にとびこんできた。おかあさんはぎくっとした。ま さか、うちのニーナがのっているバスしゃあ : あの子がのるバスも、 村はすれで川をわたる , 花蜍衣装 はなよめ ーレよっ こえ 0 はなし さいとうきみこ 斎藤君子 1 06
にしがわ 「ごらん、この村には墓地がふたつある。村の西側にあるこの墓地がド ぼちひがしがわ ィッ人墓地、東側にある、こっちかリトアニア人墓地だ」 ゅび といって指さしながら、はなしはじめた。 ばん ししゃ 「そのにねむる死者たちの霊が、あらしの晩にむかしの友だちをたす みち ねあうんだが、ちょうどこのあたりはそのとおり道になっているんだ」 ぼち ばしょ たしかに、男が家をたてた場所は、ふたつの墓地のあいだにあった。 はなし しかし、そんな話、かんたんにしんじられるものではなかった。 じぶん 「おまえさんは、どうしても自分の目でたしかめないとしんじられない ばん じゃくば みつかご んだね。じゃあ、三日後の晩の十二時、役場のまえでまっているんだ」 そのおばあさんは別れぎわにそういった。 わか とも 1 21
はかば 最初のおはなし墓場レストランのできたわけ / 松谷みよ子・ あなのおはなしロビーでふしぎなあな / 松谷みよ子 しやしん 最後のおはなし一枚の写真 / 松谷みよ子・・ 135 ずかん ひとだま図鑑 / 常光徹・ ・ 41 , 74 , 105 解説 / 吉沢和夫・ ・ 138
いし にほん にんげんせいかっきせい 話ですが、目にみえないものの意志が人間の生活を規制するという話は、日本でもよ めいしん くききます。たんなる迷信としてかたづけるのはかんたんですが、もっとかんがえて もんだい みなければならない間題がそこにはありそうです。 しゅやく 「おまえにひとつ、おれにひとっ」では、カキが主役をつとめますが、このイタリア にほ , ル ししよく はなしした のカキはじつは日本から移植されたものだそうです。そうかんがえると、この話に親 はなし かいだん しみかわいてきますね。それにこの話は、屋談というにはあまりにもこつけいで、ゆ にほ・ん きよう かいな話です。日本の「ねずみ経」のおもしろさとつうしるものがあるかもしれませ ん。 さい′」 しやしん さいしょ さっえい さて最後の「一枚の写真」です。最初のところで撮影した写真ができあがってきま よふうけい ふうけい どくしゃ した。あの世の風景ってどんなにおそろしい風景だろうとおもった読者もいたことで じぶん しよう。それから先はぜひ自分の目でたしかめてください はなし はなし しやしん はなし 1 42
はなし にかざられた手」、これはドイツのお話です。 にんげん うしびようき つぎの「どくろのスープ」はイギリスのお話です。牛の病気をなおすのに、人間の きみ はかば どくろを墓場からほりだしてきてスープにしてのませるというのですから、気味のわ るさはすごいものです。 かしじようたい しぼうそくだん むかしは仮死状態を死亡と速断して、墓にうめてしまうことがときどきあったよ はか、もり・ したい じっさい ) ます。「墓守のむか うです。だから死体が生きかえるということも実際あったといし がた し語り」で、双子のうちのひとりが生きかえるのも、けっしてふしぎではありません。 ひっしゃ ちよくせつ これは筆者がお祖母さんから直接きいた話だそうです。 よるきやく はなし きよ、つみ ゅうれいはなし 「雨の夜の客」はタクシー幽霊の話です。この話はよはど興味をそそられるとみえて、 はなしかず 日本だけでなく、外国にもおなじような話が数おおくあるのです。 ふるはなし かんが にほんきゅ、つきよ、ついく せんぜん 「見たな」は戦前からかたりつがれた古い話で、わたしの考えでは、日本の旧教育 こころざし やまい こっかすうようじんっ きたい わかもの 制度の下で国家枢要の人物として期待された若者が、病のために志をとげることな せんご ・カい」んは、け . ) ようせつ く夭折していくうらみが、この怪談の背景にはあったというふうにおもいます。戦後 にほん ふたご はなし 1 39
のとおり これは、ドイツの東、ポーランドにちかいある村での話。 みち いえ あるとき、よその町からうつってきた男が、道ばたの草むらに家をた てはじめた。 とち かお それをみた土地の人たちは、あれあれという顔をしてみている。首を ふりながらとおりすぎていく人もいる。 「なぜ、そんな顔をしてみるんだ」 れい かお ひがし みち たかつみほこ 高津美保子 はなし 1 1 6
ある日のタぐれ、男がふたりしめしあわせて、カキどろばうにでかけた。 カキの木は村はすれにあった。ひとりが木にのばり、カキの実をもい でおとすと、もうひとりが下にいて、大きなふくろのロをあけてうけと る。そ、つやってふくろかいつばいになっこ。 おまえにひとつ、 おれにひとっ これはイタリアの話。イタリアにもカキの木はあるんだよ。 はなし けんもちひろこ 剣持弘子 1 27