ある日のタぐれ、男がふたりしめしあわせて、カキどろばうにでかけた。 カキの木は村はすれにあった。ひとりが木にのばり、カキの実をもい でおとすと、もうひとりが下にいて、大きなふくろのロをあけてうけと る。そ、つやってふくろかいつばいになっこ。 おまえにひとつ、 おれにひとっ これはイタリアの話。イタリアにもカキの木はあるんだよ。 はなし けんもちひろこ 剣持弘子 1 27
グロープをかかげて、境内へか けこむと、みんなが拍手しながら、 さとるをかこんだ。 しんばい 「おそかったなあ、心配したぞ」 あたま りゅうた 龍太かさとるの頭をこついた みち 「、つん、ちょっと道にまよっちゃ ったんだ。でも、きれいな女の子 みち にあって、道おしえてもらっちゃ 「あっ、するー はくしゅ ひとりでいか 一響を手ら
あさ 朝になると、めぐみはおばさんのところへやってきます。 「おばさん、かみゆわえてー めぐみのかみの毛は、かたのあたりまでものびていて、まえのはうだ けつまんで、ゴムでゆわえていました。おとうさんにはそれができませ ん。 「かみの毛をきって、おかつばにしよう」 おとうさんかいっても、きらせてはくれません。しかたがないので、 となりのおばさんに、ゆわえてもらっています。 かみをとかしてあげなから、おばさんはきよ、つもいいました。 ) つでも、おはさんのところへ、 「ひとりのねんねは、さびしかろう。し 6 8
にいれて、ほうむった墓なんだよ。 ほりかえして、棺おけのふたをとると、なんとふたごのうちのひとり が生きかえっていた。 かん 「おめえ、つめてえよう。あっちいけ , っていうのは、棺おけの中はせ まいし、死んだきようだいのからだはつめたくなってるもんで、生きか えった子がそういってたんだ。 おとつつあんとおっかさんにしらせると、それはもうびつくりしたけ げんき ど、大よろこびだった。生きかえった子はその後、すっかり元気になっ かん ご 4 4
し′」とし′」と 「さあ、仕事仕事」 駅のはうへあるいていこうとおもって、ふと、さっきの白いふうとう をあけてみました。 そこには、一枚の写真がありました。 ききよう、かるかや、おみなえし、なでしこ、やさしい花がさきみだ れて、その中に、ひとりの女の人がたっていました。 「かあさん : ふいになみだがこばれました。 くろうして、くろうして、ちっともたのしいことかなかった、なんに もしてあげられないうちに死んでしまったかあさん。いま、あの世で、 えき まいしやしん 1 36
どくろのスー。フ うしなんとう 小さな村のはすれに、ひとりぐらしの女がいた。牛を何頭かかって、 はこけやさい トさい畑で野菜をつくって、どうにかこうにかくらしていた びよ , つき ところがあるとき、牛たちがみんな病気にかかってしまった。えさを やくそう たべなくなって、乳もすっかりへってしまった。女は薬草をたべさせた せいすい 、教会でもら「た聖水をのませたりしてみたが、牛はやせていくば かりだった。 うし うし いわくらちはる 岩倉千春 3
すると、人かげがあらわれるんです。夜ですけどね。 ひとりでたっていることもある。ぞろぞろとあるいていることもある。 それか、うごくというより、ながれていくような、ただよっているよう な、そんなふうで。 あしば 工事がすすむと、足場ができ、どんどんそれがたかくなります。そこ でんき よる し′」と か。かり・ でんき に電気がつくんです。夜、仕事がおわると、係の人がその電気をけして いくんだそうです。 でんき フレーカーをきっていくと、 いくつかの電気がばっときえる。またす すんで、あるところのプレーカーをきると、またきえる。 でんき ところが、きっても、きっても、電気がひとりでにつくんだそうです。 こ、つじ よる
おもった。 とうし でも、牛はどんどんやせていって、とうとう一頭死んでしまった。ほ ヤ」ころ ぜんぶし うっておけば、このまま全部死んでしまう。女は心をきめて、おはあさ んかいったとおりにやってみることにした。 ひとりでいくのはこわいから、女はとなりの家のおかみさんにたのみ きようかい こんで、いっしょにいってもらうことにした。いちばんちかい教会の まよなか 墓地は二キロちょっとのところにある。ふたりは真夜中になるすこしま えに、でかけていった。 ぼち 墓地の入り口までくると、となりのおかみさんはがたがたふるえだし ぐち
おかあさんの心配はあたり、ニーナはこの日の事故でバスもろとも川 におちて死んだ。十八歳だった。 はやいもので、あれからもうじき四十日になる。ロシアでは死んだ人 にちめ いえ にちかんじぶん のたましいは四十日間は自分の家のまわりにいるという。四十日目に、 よ したしい人たちがあつまっておいのりをし、たましいをあの世へおくる。 まいにちいえ だけどおかあさんは四十日の法要のしたくをする気にもなれす、毎日家 しやしんふく にとじこもっていた。ニーナの写真や服をながめては、ひとりないてい ことし がっこ , っそっぎよう た。あんなに小さくてなき虫だったニーナが学校を卒業し、今年から やくば 町の役場ではたらくようになって、ほっとしたところだったのに : よめ し お嫁にもいかないで、 あの子がこんなにはやく死んでしまうなんて : し しんばい さ ほ、つよ、つ じこ し 0 1 〇 7
じかん 「この中で山わけしようや。こんな時間、だれもきやしないさ , はかいし 墓石のかげにすわりこんで、カキをわけはじめた。 「おまえにひとつ、おれにひとっ . こえ 声にだしながら、ひとっすつわけていく。 ぼちもん そのうち、カキがふたっ、ふくろからころがりでて、墓地の門のかげ でとまった。そのカキを目でおいながら、手はやすめすに、カキをわけ 「おまえにひとつ、おれにひとつ。おまえにひとつ、おれにひとっ 大きなふくろをかついで、墓地のところまでくると、ふたりは足をと めた。 1 28