ルーカス - みる会図書館


検索対象: 最後の歌姫
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1. 最後の歌姫

ーフは息をのんだ。 「スカール ! 」 医一よ、つば、つ ふかあしあとお あなしやめん 凶暴な兄がのこした深い足跡を追って、ルーカスがよろめきながら穴の斜面を すがた くだる姿が、ほんやりみえる。 みなみうたひめ ちから 『南の歌姫』の力は、スカールには効かないのかもしれない。だ力、丿 レーカスは みるからにくるしそうだ。それでもルーカスは剣を手に、じっと兄のスカールを すす みつめて進んでいく。 スカールとわたしは体を共有してるんです。いっしょに戦うか、いっしょ にやめるかのどちらかだ なみだ へいげんぞく ーフの目に、、つつすらと涙が、つかんだ。平原族のルーカスとスカールは、 し 戦って死ぬのか。そう、そのほうがましだ。 、つで かお だれかか腕に触れ、 ーフは顔を上げた。、、 シャスミンかかかみこんでいた。 「逃げて。上にいくのよ。さ、早くーー」 ものがた そのやつれた顔が、たいへんな思いをしてここまできたことを物語っている。 ふ 0 医」よ、つゆ、つ 202

2. 最後の歌姫

兵たちが襲ってきても、どれかバラムか、わからないからな」ジョーカーはよろ かたて お 、んい、さゆ、つ よろと片手をもちあげ、また落とした。「バラムが、仮面が永久に顔からはがれ ひじゅっ はつめい なくなる秘術を、そのときすでに発明していたのかどうかは、だれも知らない ーフが身ぶるいして顔をそむける。 「すまなし ) 。いまはこんなことを話すときではなかったな」ジョーカーはきまり わる きけん 悪そうに言うと、せきばらいをした。「ルーカスから、おまえがどれほど危険な ちぢ 目にあったかをきいて、おれは縮みあがった。だが、ルーカスに会えたことはう れしかった。言葉では表せないくらいにな。しかしいまは、ルーカスかデルにこ しんそこ びよ、つ、さ なければよかったのにと、心底思う。もしルーカスとスカールが、この病気にた 会 再おれるよ、つなことになれば : : : 」 かれ し 「彼らはだいじようぶですよ」部屋の奥からしすかな声がした。「ルーカスと連 しようねん きゅ、つしゃ ちょ、つばし ◇れの少年は、亡くなった調馬師のかわりを務めているのでしよう ? 厩舎なら、 あんぜん きっと安全です」 おそ へやおく っと 9.

3. 最後の歌姫

ち ころ その目は、血に飢えていた。殺してやる : : : 殺してやる : けのようだ。 かれ なかま 「よせ、スカール , ルーカスがさけぶ。「彼らは仲間だ ! 」 だが、スカールの耳には入らない。歯をむいて、とひかかろうと身かまえる。 ひく たんけん 竜が低く、つなり、リ ーフは剣にエ卞をのばした。ジャスミンも短剣をかかげる。 「スカールー ルーカスが声をかぎりにさけんだ。「わたしは蚤我をしてるんだ。 たすけてくれ。もどってきてくれ ! 兄さん ! 」 あらあら スカールは迷った。荒々しい顔がゆがむ。 ひび ひつう 「スカール ! 」ルーカスの悲痛な声が響いた。 じゅうぶん もう十分だった。スカールはきびすをかえし、二またぎでルーカスのもとにも きす . り・よ、つ一 ( どると、ルーカスの傷ついた腕を、大きな両手でやさしくつつんだ。つぎの しゅんかん きいろ 瞬間スカールは、目もくらむような黄色い光に包まれた。 まぶしい 丿ーフが思わず顔をそむける。ふりむくとそこには、凶暴な黄金 こえ 、つで つつ あたま ・頭のなかはそれだ こがね 2 10

4. 最後の歌姫

ー ) 一ゅ、つ ふりむくと、地図をみてからずっとおしだまっているルーカスに言った。「至急、 いちばん 『ネズミの街』にいかねばならん。おまえのハチと馬のメローを借りるのが一番 はや おも 一迷い A 」田ハ、つ」かしし、か ? ・」 ルーカスは、こぶしをかためて小さくうなすいた。黄金色の目にちらちらと影 かじゅえん がさす。「母の果樹園が、ネズミの平圧のはしにあるんですよ」ルーカスは低い 声で言った。「それを守るためなら、メローは風のように走ってくれます はや こくお、つ まんげつ わたしのほうが速いぞ、デルトラの国王よ。それに、満月がのばってきた あたまひび トパーズの竜の声がリーフの頭に響き、デルトラのベルトのトパーズが、手の あっ 下で熱くなる。となりには、バルダとジャスミン。 フはジョーカーのほ、つを むいた。 「あなたはルーカスと、いってください。ひとりでも多くの仲間を連れて、運べ ぶき るだけの武器をもってね。むこうで会いましよう」 かせ おお こがねいろ 264

5. 最後の歌姫

あな でんせんびよう ーフとジャスミン、ルーカスが穴の外に出るころには、伝染病はデマだった もの ようじんぶか という話が、人びとにひろまっていた。用心深い者もちらほらいたが、ほとんど しみん みながマスクをはずした。衛兵も市民も、おなじようによろこんでいる。 しせん すがた ルーカスが、ゼリーをさがすとか何とか言って、姿を消した。人びとの視線が フは田 5 った。 気になるんだろ、つなと、リー めんかいぶったたか 実のところ、ルーカスとスカールが二面の屋物と戦うのをみた者は、ほとんど . り・ゅ、つ みなみうたひめ いなかった。みな『南の歌姫』のおそろしい力にやられていたのだ。竜が『南の かぞ 歌姫』を焼きつくすのをみた者も、数えるほどに過ぎない。 それでも、みなはわかっていた。ここでたいへんな戦いがあり、自分たちが勝 ふしぎ ったこと、そして何か不思議なことが起きたとい、つことを。、つき、つきして、 言 5 一かくれた敵 てき じぶん 2 1 6

6. 最後の歌姫

140 穴底の戦い ちか で近づいてきた。 めでたし、めでたし ーしよ、つーり・ あなふち あんしん いまこそ安心して勝利を祝うときだと、リーフは頭ではわかっていた。穴の縁 かん うちょうてん 丿ーフは何も感じなかった。 の人びとは、有頂天になっている。だが、 医、、も さいご ことば ゅめ ーフの気持ちを言葉にしてくれた。「最後 「何だか夢みたい」ジャスミンが、 、っそ は、あっけなかったわ。嘘みたいね」 「嘘なもんですか ! あぶないところでしたよ」ルーカスが一言う。 へいげんもの 「おまえたち兄弟はよくやった、平原の者よ」竜が、めずらしいものをみるよう にルーカスをみた。「だか、いい気になるなよ。おまえが屋物にとどめを刺した よわ ときには、敵はひどく弱っていたのだから」 れいぎ 「そうだったんですか」ルーカスは礼儀正しく答えた。「じゃ、兄とわたしは、 、つん 運がよかったんですねー めんかいぶつざんがい ーフは、話をほとんどきいていなかった。二面の怪物の残骸である、干から てき きようだい ひ 2 1 3

7. 最後の歌姫

5 0 かなしき再会 かめんいちざ の門』にむかったことや、仮面一座と出会ったこと、それに金貸しジャックの話 もきいたぞ」 おもおも 丿ーフはどきっとしながら、つなずいた。ジョーカ 1 が重々しくつづける。 「デルトラには変わったやつが多いから、おれはいままで仮面一座のことなど、 気にしたこともなかったし、知りたいとも思わなかった。だが、ルーカスの話を ひら こくお、つおと、つとぎみ きいておどろいたよ。仮面一座は、エルステッド国王の弟君、バラムが開いた一 座だそうだな」 ジョーカーは、リーフが目を丸くするのをみて言った。 ざちょ、つ れきだい ーフ、おまえには、仮面一座の歴代の座長 「ルーカスからきいてないのか ? リ じぶんむすこおもかげ とおなじ血が流れている。だからこそベスは、おまえに自分の息子の面影をみた。 こくみんあい てだまげい てじな ノラムは手品とお手玉芸を得意としていて、ひろく国民に愛 ルーカスの話では、ヾ ちょうあい され、国王である兄からも寵愛されていたらしい。だがある日、手品がうまくい お かずに、バラムは顔にひどいやけどを負ってしまった」 もん まる かねか 7 ′

8. 最後の歌姫

「どれくらい亡くなったの ? 、ききたくないか、知らねばならない。 こうひたい なんびやく ジョーカーはつらそうに、手の甲で額をこすった。「何百もだ。もう、数え 、かみ、、つ しみん がいしゆっかんご るのが追いっかない。遺体は火葬にするよう命じた。市民には、外出や看護のと かお ししゃ きは、顔をおおうようにと言ってある。だが、それでも死者はあとを絶たない」 でんせんびよう ジョーカーはため息をついた。「おれにできたのは、伝染病をデルの外にひろ まち げないことくらいだ。だれも街から出さないよ、つにしてある。だから、グラ・ソ かのじよ ンがここにいるのだ。彼女は、おまえたちのことを知らせるために、キンに乗っ ごよ、つふ 、ひょ、つ」 て『恐布の山』からやってきた。キンはすぐに帰ったが、、 クラ・ソンは、 ~ 抦 ~ が 発生したときも、まだここにいたんだ。ジャリス族のグルスと、それにルーカス も、デルに閉じこめられている」 ーフはオウムかえしにきいた。 「グルスとルーカス ? 」リ ーしょ / 、 . り・よ、つ 「グルスは、ジャリス族のために、食料をもとめてやってきた。ルーカスは っしゅ、つかんま、ん あらわ 一週間前、ゼリーという小僧をつれて現れた。ふたりから、おまえたちが『影 はっせい こぞ、つ

9. 最後の歌姫

かみあさぐろよど いろおおおとこすがた 色の大男の姿はなく、黄金色の髪に浅黒い肌のルーカスが、ひとり立っているだ けだった。 「いまだ ! 」しわがれ声でさけぶと、ルーカスはわきによけた。 みなみうたひめ ほのお 竜がほえ、黄金色の炎をはいた。色あせた『南の歌姫』が、炎に包まれてどす うたごえ せきたん ちゃいろ しんく 黒く「り、やが、燃え石炭 0 う」赤くな 0 た。歌声が、あわれ 0 = 〕声」変 わる石炭のような赤は深紅になり、そしてにぶい茶色へと変わっていく。 はくねっ 竜がシューシューと音を立て、白熱したほそい炎をはいた。『南の歌姫』がし ばみはじめる。 あっ あまりの熱さに、リ ーフは顔をそむけた。それでも、左手は竜のうろこを、右 諏手はベルトのトパーズを放さない。 の 底 『南の歌姫』の声が高く、高くなる。そして、ふいに止まった。 穴 ちんもく めまいのするような沈黙。 一 4 あ ーフは目を開けた。 ゆっど、りと、リ 2 1 1

10. 最後の歌姫

りゆ、つ あ ーフは竜をみた。黄金色の目がふたたび開いている。うろこに、黄金色の ひかり ふか きず しゆっけっと 光がみるみるもどっていく。深い傷からの出血も止まった。リ ーフの手の下で、 ちからあじ まるでよみがえる力を味わうかのように、竜ののどがゴクゴクと動く。 し みなみうたひめ 「『南の歌姫』が死にかけてる」ジャスミンはつぶやいた。「でもどうして ? デルトラのベルトのせい ? ルーカスとスカールのおかげ ? それとも、日の 光 ? 」 ほ、っせルさ ーフはとまどいながら、色あせていくニセモノの宝石をみつめ、それから屋 物に目をもどした。 きせき いっかんお しゅんかん 奇跡だ。一巻の終わりだと思った瞬間、『南の歌姫』が、急に力をうしなうな 0 んて : ま。り・よ / 、 かん いぬがおざんにん 二面の怪物も、魔力がひいていくのを感じていた。大顔の残忍な目に、とまど A 一り・ かお いの色がうかぶ。鳥の顔は、ルーカスの剣が見えないのか、くちばしを大きく開 やみくもおそ けて、闇雲に襲いかかっている。 ぶつ めん こがねいろ キ」ゅ、つ 208