手 - みる会図書館


検索対象: 最後の歌姫
278件見つかりました。

1. 最後の歌姫

てくれるつもりだったかは知らないけど、ばくはデルにくるしかなかったんだ。 みなみうたひめ なにしろ『南の歌姫』は、ここにあるんだから」 いっしゅん かおいろ フは一瞬せいせいした気がしたが、ジョ ジョーカーの顔色が変わった。リー じぶんは かたお カーが肩を落とすのをみて、自分が恥ずかしくなった。 ーフはふたたび手をさしだした。「そんなこと、あなたが知ってる 「ごめん」 わけないのに。それに、『南の歌姫』がデルになくたって、きっとばくはここに きたよ」 。り・よ、って こんどはジョーカーも、両手でリーフの手をとった。 「ああ、そうだろうな。おまえは、頭ではなく、心で行動するやつだから。おま りゅう えは、年のわりにはいい国王だが、それがまず理由の一つだ。おれにはとてもま ねできん」 ほんね ーフの手をば ジョーカーは、つい出た本音をごまかすようにせきばらいし、 っと放した。 こくお、つ こ、つど、つ

2. 最後の歌姫

5 0 かなしき再会 癶し、刀し 5 一かなしき再会 かおこお から ひら ドアが開き、ジョーカーがしずかに入ってきた。空のべッドをみて、顔が凍り すみ へや つく。ゆっくりと部屋をみわたし、剣を手に部屋の隅に立っリーフをみつけると、 え ジョーカーは皮肉な笑みをうかべた。 めざ 丿ーフ。まあ、ずっと目覚めないよりはましだが」 「やっとお目覚めか、 ーフはよわよわしくわらい、剣をすてて手をさしだした。 「ジョーカー。会えてうれしいよ」 つめ と言ったら ? 」ジョーカーは握手もうけずに、冷たい声 「おれはうれしくない で言った。「ここに近づくなと、言っておいたはずだ」 くっとこらえ、さしだした手を下ろした。「でも、 ーフはかっとなったが、、 たび ばくに旅をつづけろとも言ったじゃないか。あなたが、危篤の母にばくを会わせ あくしゅ

3. 最後の歌姫

ーフとジャスミンがそばへいくと、フィリかバルダの肩からジャスミンの腕 むかし にとひ、つつり気、つれし / 、てたまらないとい、つよ、つに自 2 、こ。リ ーフは、昔からの あゆ 友バルダの、みえなくなった目をみると、歩みよって抱きしめた。 ヾルダ》 , も、リ・ オ、気恥ずかしくなったのか、すぐ ーフをひしと抱きとめた。、、こか、 ーフをおしかえす。 り・ゅ、つ 「うへえ。竜のにおいがプンプンするぞ、 ーフ。くつつくな」バルダはわらっ そのときふと 、バルダの顔から笑みが消えた。まばたきをして眉間にしわを寄 せ、手をさしだす。 「おれの手をとってくれ」バルダがだしぬけに言った。 ーフは訳もわからず、さしだされた手をとった。バルダがまた、まばたきを すこ した。その、つつろな目に、少し光がもどったようだ。 こ、ん ほ、っせご 「ベルトの力だ」バルダの声がかすかにふるえている。「宝石のどれかが、おれ A 一、も 2 1 8

4. 最後の歌姫

170 どんでんがえし かお そのとき、ラネッシュが紙をにぎりしめてかけこんできた。まっ白な顔で、目 こ、つふんちばし は興奮に血走っている。 せいふく 「あったよ , ジョセフの制服のポケットに、これが : 言いかけてラネッシュは、テープルの上の地図をみると、もってきた紙をとな 。り・ゅ、つ りにならべた。リ ーフが思ったとおり、それはドランの竜のなわばり地図を、ジ ョセフが写したものだった。四つの歌姫の場所に、ジョセフの手で印が入れられ ている。その印をむすんで、 リーフがひいたのとおなじ線をひいていた。二本の 線が交わっているのは、オパールの竜のなわばり。『ネズミの街』のヒラだった。 リーフは手をにぎりあわせて、ふるえを止めようとした。 、、 , ンヨセフかあれほどばく 「これが、ジョセフがばくにみせようとしてたものた。 ) に会いたがっていたのは、最後の歌姫をたおす手だすけのためだとばかり思って た。パフも、そ、つ田 5 った。でも、そうじゃなかったんだ。。 ショセフは、ばくを止 うたごえや めようとしてたんだよ。もし最後の歌姫の歌声が止めば、飢えよりももっとおそ 、つつ かみ しるし 261

5. 最後の歌姫

あしもと うしろに下がってみると、足元には ふたりはまた突進した。ガッシャーンー ふんじん 大理石の破片が山となり、あたりには粉塵がもうもうと立ちこめている。台の側 あとかた 面はほとんど跡形もなく、まっ黒な穴が、大きな口を開けていた。 お コーン。くぐもった音が響きわたる。バル ーフとバルダは鉄棒を ~ 洛とした。、、 ダがひざに手をついて、息を切らしている。 あせ かみ . り・よ、つ一 ( ーフの両手もぐっしよりぬれていた。髪からしたたる汗が目にしみる。上着 そでひたい の袖で額をぬぐったとき、手がふるえていることに気がついた。 はかあな しつこくやみ 漆黒の闇をたたえた穴が、墓穴のように目の前に口を開けている。奥に何があ ーフはぞっとした。 るのかは、まったくみえない。 ジャスミンかリーフの手にロウソクをおしつけた。うけとって、穴の前にカカ くる ほのお ーフはロウソク 醗みこむ。ロウソクの炎が、狂ったようにゆれた。息をつめて、 0 を穴に差しいれた。 大理石の破片が散らばっているほかは、穴のなかは空つほだった。 、つ . わご 169

6. 最後の歌姫

ーフはまよわなかった。空いた手をオパールにのばし、ぎゅっとにぎりしめ しゅんかん はいいろふも、つ その瞬間、リーフの頭に、さまざまな光景がうかんだ。灰色の不毛の地。枯れ はいいろ すいめん 鹹木の森。川は灰色で、ぬかるみのようによどみ、膜のはった水面に、死んだ灰色 かいぶつきせい の大きな魚がういている。空では、おそろしく巨大な怪物が奇声を上げ、そして あら ぞっとして、 セイゼイと荒い息でバルダをみ ーフはベルトから手を放した。。 かん の目を癒してくれている。感じるぞ ! 」 あたま いっせつ ーフの頭に『デルトラの書』の一節がうかんだ。 【オパールは : : : 未来をかいまみせる力あり、視力の弱き者のたすけとも なる】 よわ 219

7. 最後の歌姫

「ゼアン ! ど、ど、つやって、ど、つして、ここに ? リーフかすっとんきような声を出す。リンダルがうれしそ、つにバルダに近より、 かんせい なおった目をみて歓声を上げた。 ゅびわ ゼアンが手をさしだした。大きなエメラルドのついた指輪をはめている。これ 4 わ、つはリ は、っせ、さ はたしか、王家の宝石だ。 「デルトラのベルトのエメラルドのあとには、この宝石が癒してくれました」ゼ しろ ある アンはしすかに言った。「リンダルの手を借りて、お城からここまで歩いてくる さま ことができましたよ。シャーン様はまだかなり弱っていらっしやるので、グルス に運んでもらいました。。 ショーカーとグラ・ソンが、ジョセフの遺体とパフを運 鹹びだしてくれたと思います」 れ ーフとジャスミンのとまどい顔をみて、ゼアンは首をかしげ、はっとした。 「きいていないのですか ? 城がくずれるかもしれないのですよ」 「何ですって ? ジャスミンがさけぶ。 よわ 221

8. 最後の歌姫

「じゃあ : ・ ・バルダは、トーラの人がほんと、つにデルをつぶそ、つとしてると田 5 っ てるの 2: 」ジャスミンかむきになる。 ひょ、つじよ、つ バルダの表情が、ぐっときびしくなった。「思いこみをなくして、ものをみよ しゅんかん うと言っているだけだ。それと、いまこの瞬間から、おれたち三人以外、だれも しん 信じてはならん」 かいだん しばらくして、 ーフか階段をかけのばっていると、上のほ、つから、くるしい すしよ、つ 息づかいと、あぶなげな足音がきこえてきた。みあげると、はるか頭上に、手す りをにぎる手がみえる。 あれはまさか , ーフは、ぎよっとした。あわてて走りだす。すると、階段 すがた にうずくまるリンダルの姿が見えた。 いじよ、つある 「いや、ありがたい」リンダルはくるしそうに言った。 「これ以上は歩けないよ。 丿 ] フ、ど、つやらあんたは、とんでもないまちかいをしちまったよ、つだよ。ゼア し力し 138

9. 最後の歌姫

みじか 「グラ・ソンがやってくれる」ジョーカーは短く答えた。 ゼアンはうなずくと、布を手にシャーンのべッドに歩みより、かかみこんだ。 ねっ 「してさしあげられることは、あまりありません」ゼアンは熱にうなされるシャ かお あんしん ーンの顔をふきはじめた。「顔と手を冷やしたり、そばについて安心させたり、 水をあげることくらいでしようか。あとは、体が病に打ち勝つよう、祈るだけで ーフはくちびるをなめた。「デルトラのベルトのダイアモンドが、母をたす ておく けてくれると思ってたけど、もう、手遅れかもしれない しっしゅんことば ゼアンは一瞬言葉につまってから、やさしく言った。「そうかもしれません。 シャーン様はだれよりも長くがんばっていらっしゃいますが、トーラ病とよばれ 一よ、つ . り・よ / 、 やまい ているこの病は、ひどく強力ですから むす ゼアンのロがかたく結ばれるのが、マスクの上からでもわかる。 しろ まちもん 「わたしがこの城へくるときは、ジョーカーがみすから、デルの街の門までむか ぬの 、ひょ、つ

10. 最後の歌姫

「あの人、あたいの手を、どろばうをひっとらえるみたいに、ひねったんです。 あたい、 はずかしくて : : : 」 じぶん 「はすかしいのはジョセフだ ! 今後は、きたない仕事は自分でやれ ! 」ジョー かお なみだ カーがどなると、ハフが顔を上げた。涙にぬれた目に、さっと怒りの色がうかぶ。 さま 「ジョセフ様はほとんど歩けないんです ! 衛兵たちの手を借りないと、上の階 へや ぞん ) 、つ のシャーン様のお部屋までいけないことは、あなた様もご存じでしようー して、体のことをからかったりできるの ? 「そんなつもりはーー・・・」ジョーカーが言いかけたが、パフは止まらない。 むりやり てつだ 「ともかくあたい、、、 ショセフ様に無理矢理、手伝わされたわけじゃありません。 よろこんでひきうけたんです。前の助手のラネッシュなら、さっさとかたづけち かれ / 、ら ゃうよ、つな仕事でしよう。あたい、彼と比べられるのには、もう、つんざり。あた ー ) よ、つめい いだってやればできるって、そう証明できるチャンスを、ずっとまってたんです」 「ジョセフもそれを知っていたから、おまえにたのんだんじゃないのか ? 」ジョ じよしゅ し ) 」と