てくれるつもりだったかは知らないけど、ばくはデルにくるしかなかったんだ。 みなみうたひめ なにしろ『南の歌姫』は、ここにあるんだから」 いっしゅん かおいろ フは一瞬せいせいした気がしたが、ジョ ジョーカーの顔色が変わった。リー じぶんは かたお カーが肩を落とすのをみて、自分が恥ずかしくなった。 ーフはふたたび手をさしだした。「そんなこと、あなたが知ってる 「ごめん」 わけないのに。それに、『南の歌姫』がデルになくたって、きっとばくはここに きたよ」 。り・よ、って こんどはジョーカーも、両手でリーフの手をとった。 「ああ、そうだろうな。おまえは、頭ではなく、心で行動するやつだから。おま りゅう えは、年のわりにはいい国王だが、それがまず理由の一つだ。おれにはとてもま ねできん」 ほんね ーフの手をば ジョーカーは、つい出た本音をごまかすようにせきばらいし、 っと放した。 こくお、つ こ、つど、つ
5 0 かなしき再会 癶し、刀し 5 一かなしき再会 かおこお から ひら ドアが開き、ジョーカーがしずかに入ってきた。空のべッドをみて、顔が凍り すみ へや つく。ゆっくりと部屋をみわたし、剣を手に部屋の隅に立っリーフをみつけると、 え ジョーカーは皮肉な笑みをうかべた。 めざ 丿ーフ。まあ、ずっと目覚めないよりはましだが」 「やっとお目覚めか、 ーフはよわよわしくわらい、剣をすてて手をさしだした。 「ジョーカー。会えてうれしいよ」 つめ と言ったら ? 」ジョーカーは握手もうけずに、冷たい声 「おれはうれしくない で言った。「ここに近づくなと、言っておいたはずだ」 くっとこらえ、さしだした手を下ろした。「でも、 ーフはかっとなったが、、 たび ばくに旅をつづけろとも言ったじゃないか。あなたが、危篤の母にばくを会わせ あくしゅ
ーフとジャスミンがそばへいくと、フィリかバルダの肩からジャスミンの腕 むかし にとひ、つつり気、つれし / 、てたまらないとい、つよ、つに自 2 、こ。リ ーフは、昔からの あゆ 友バルダの、みえなくなった目をみると、歩みよって抱きしめた。 ヾルダ》 , も、リ・ オ、気恥ずかしくなったのか、すぐ ーフをひしと抱きとめた。、、こか、 ーフをおしかえす。 り・ゅ、つ 「うへえ。竜のにおいがプンプンするぞ、 ーフ。くつつくな」バルダはわらっ そのときふと 、バルダの顔から笑みが消えた。まばたきをして眉間にしわを寄 せ、手をさしだす。 「おれの手をとってくれ」バルダがだしぬけに言った。 ーフは訳もわからず、さしだされた手をとった。バルダがまた、まばたきを すこ した。その、つつろな目に、少し光がもどったようだ。 こ、ん ほ、っせご 「ベルトの力だ」バルダの声がかすかにふるえている。「宝石のどれかが、おれ A 一、も 2 1 8
170 どんでんがえし かお そのとき、ラネッシュが紙をにぎりしめてかけこんできた。まっ白な顔で、目 こ、つふんちばし は興奮に血走っている。 せいふく 「あったよ , ジョセフの制服のポケットに、これが : 言いかけてラネッシュは、テープルの上の地図をみると、もってきた紙をとな 。り・ゅ、つ りにならべた。リ ーフが思ったとおり、それはドランの竜のなわばり地図を、ジ ョセフが写したものだった。四つの歌姫の場所に、ジョセフの手で印が入れられ ている。その印をむすんで、 リーフがひいたのとおなじ線をひいていた。二本の 線が交わっているのは、オパールの竜のなわばり。『ネズミの街』のヒラだった。 リーフは手をにぎりあわせて、ふるえを止めようとした。 、、 , ンヨセフかあれほどばく 「これが、ジョセフがばくにみせようとしてたものた。 ) に会いたがっていたのは、最後の歌姫をたおす手だすけのためだとばかり思って た。パフも、そ、つ田 5 った。でも、そうじゃなかったんだ。。 ショセフは、ばくを止 うたごえや めようとしてたんだよ。もし最後の歌姫の歌声が止めば、飢えよりももっとおそ 、つつ かみ しるし 261
あしもと うしろに下がってみると、足元には ふたりはまた突進した。ガッシャーンー ふんじん 大理石の破片が山となり、あたりには粉塵がもうもうと立ちこめている。台の側 あとかた 面はほとんど跡形もなく、まっ黒な穴が、大きな口を開けていた。 お コーン。くぐもった音が響きわたる。バル ーフとバルダは鉄棒を ~ 洛とした。、、 ダがひざに手をついて、息を切らしている。 あせ かみ . り・よ、つ一 ( ーフの両手もぐっしよりぬれていた。髪からしたたる汗が目にしみる。上着 そでひたい の袖で額をぬぐったとき、手がふるえていることに気がついた。 はかあな しつこくやみ 漆黒の闇をたたえた穴が、墓穴のように目の前に口を開けている。奥に何があ ーフはぞっとした。 るのかは、まったくみえない。 ジャスミンかリーフの手にロウソクをおしつけた。うけとって、穴の前にカカ くる ほのお ーフはロウソク 醗みこむ。ロウソクの炎が、狂ったようにゆれた。息をつめて、 0 を穴に差しいれた。 大理石の破片が散らばっているほかは、穴のなかは空つほだった。 、つ . わご 169
ーフはまよわなかった。空いた手をオパールにのばし、ぎゅっとにぎりしめ しゅんかん はいいろふも、つ その瞬間、リーフの頭に、さまざまな光景がうかんだ。灰色の不毛の地。枯れ はいいろ すいめん 鹹木の森。川は灰色で、ぬかるみのようによどみ、膜のはった水面に、死んだ灰色 かいぶつきせい の大きな魚がういている。空では、おそろしく巨大な怪物が奇声を上げ、そして あら ぞっとして、 セイゼイと荒い息でバルダをみ ーフはベルトから手を放した。。 かん の目を癒してくれている。感じるぞ ! 」 あたま いっせつ ーフの頭に『デルトラの書』の一節がうかんだ。 【オパールは : : : 未来をかいまみせる力あり、視力の弱き者のたすけとも なる】 よわ 219
「ゼアン ! ど、ど、つやって、ど、つして、ここに ? リーフかすっとんきような声を出す。リンダルがうれしそ、つにバルダに近より、 かんせい なおった目をみて歓声を上げた。 ゅびわ ゼアンが手をさしだした。大きなエメラルドのついた指輪をはめている。これ 4 わ、つはリ は、っせ、さ はたしか、王家の宝石だ。 「デルトラのベルトのエメラルドのあとには、この宝石が癒してくれました」ゼ しろ ある アンはしすかに言った。「リンダルの手を借りて、お城からここまで歩いてくる さま ことができましたよ。シャーン様はまだかなり弱っていらっしやるので、グルス に運んでもらいました。。 ショーカーとグラ・ソンが、ジョセフの遺体とパフを運 鹹びだしてくれたと思います」 れ ーフとジャスミンのとまどい顔をみて、ゼアンは首をかしげ、はっとした。 「きいていないのですか ? 城がくずれるかもしれないのですよ」 「何ですって ? ジャスミンがさけぶ。 よわ 221
「じゃあ : ・ ・バルダは、トーラの人がほんと、つにデルをつぶそ、つとしてると田 5 っ てるの 2: 」ジャスミンかむきになる。 ひょ、つじよ、つ バルダの表情が、ぐっときびしくなった。「思いこみをなくして、ものをみよ しゅんかん うと言っているだけだ。それと、いまこの瞬間から、おれたち三人以外、だれも しん 信じてはならん」 かいだん しばらくして、 ーフか階段をかけのばっていると、上のほ、つから、くるしい すしよ、つ 息づかいと、あぶなげな足音がきこえてきた。みあげると、はるか頭上に、手す りをにぎる手がみえる。 あれはまさか , ーフは、ぎよっとした。あわてて走りだす。すると、階段 すがた にうずくまるリンダルの姿が見えた。 いじよ、つある 「いや、ありがたい」リンダルはくるしそうに言った。 「これ以上は歩けないよ。 丿 ] フ、ど、つやらあんたは、とんでもないまちかいをしちまったよ、つだよ。ゼア し力し 138
みじか 「グラ・ソンがやってくれる」ジョーカーは短く答えた。 ゼアンはうなずくと、布を手にシャーンのべッドに歩みより、かかみこんだ。 ねっ 「してさしあげられることは、あまりありません」ゼアンは熱にうなされるシャ かお あんしん ーンの顔をふきはじめた。「顔と手を冷やしたり、そばについて安心させたり、 水をあげることくらいでしようか。あとは、体が病に打ち勝つよう、祈るだけで ーフはくちびるをなめた。「デルトラのベルトのダイアモンドが、母をたす ておく けてくれると思ってたけど、もう、手遅れかもしれない しっしゅんことば ゼアンは一瞬言葉につまってから、やさしく言った。「そうかもしれません。 シャーン様はだれよりも長くがんばっていらっしゃいますが、トーラ病とよばれ 一よ、つ . り・よ / 、 やまい ているこの病は、ひどく強力ですから むす ゼアンのロがかたく結ばれるのが、マスクの上からでもわかる。 しろ まちもん 「わたしがこの城へくるときは、ジョーカーがみすから、デルの街の門までむか ぬの 、ひょ、つ
「あの人、あたいの手を、どろばうをひっとらえるみたいに、ひねったんです。 あたい、 はずかしくて : : : 」 じぶん 「はすかしいのはジョセフだ ! 今後は、きたない仕事は自分でやれ ! 」ジョー かお なみだ カーがどなると、ハフが顔を上げた。涙にぬれた目に、さっと怒りの色がうかぶ。 さま 「ジョセフ様はほとんど歩けないんです ! 衛兵たちの手を借りないと、上の階 へや ぞん ) 、つ のシャーン様のお部屋までいけないことは、あなた様もご存じでしようー して、体のことをからかったりできるの ? 「そんなつもりはーー・・・」ジョーカーが言いかけたが、パフは止まらない。 むりやり てつだ 「ともかくあたい、、、 ショセフ様に無理矢理、手伝わされたわけじゃありません。 よろこんでひきうけたんです。前の助手のラネッシュなら、さっさとかたづけち かれ / 、ら ゃうよ、つな仕事でしよう。あたい、彼と比べられるのには、もう、つんざり。あた ー ) よ、つめい いだってやればできるって、そう証明できるチャンスを、ずっとまってたんです」 「ジョセフもそれを知っていたから、おまえにたのんだんじゃないのか ? 」ジョ じよしゅ し ) 」と