あたた くろまめふうみ 「黒豆の風味はいいんだけどね。温かいのも、 き て つ、決め手にかけるなあ。」 こうすいせんせい 幸水先生も言った。 て 「決め手つて : ・・ : どういうことでしようか ? はなゅおんせん かし はなゅおんせんしんめいぶつ 「花の湯温泉の新名物になるお菓子のコンテストなんだよね ? どうも、花の湯温泉のお かん った 菓子 ! って感じが伝わってこないんだ。 はなゅおんせん 「花の湯温泉のお菓子 : : : 。」 じみ 「それに、灰色のプリンって見た目が地味じゃない ? あかねがつづけた。 った じみ おんせん ものたりない、温泉らしさが伝わってこない、地味 : おも へんじ 思いがけないきびしい言葉に、おっこは返事もできなくなってしまった。 かし し / し どうやったら、それらをクリアするお菓子ができるんだろう ? おも あたまなか 頭の中がかちんと固まってしまって、なにも思いっかないおっこ 考えようとしたが、 よ」っ」 0 き み め かた おも ししと思うんだけど、なにか、もうひと 0 149
ね。 ) かいじようまえ しゆっじようせんしゅ それで、おっこは、会場の前のほうに、出場選手たちといっしょにならびなおした。 しんさ はっぴょう 「審査委員長から発表していただきましよう。 AJ かかりいん げんぞう 係員に言われて、源蔵がマイクを受け取った。 はっぴょう はなゅおんせんめいぶつがし 「発表します。花の湯温泉名物菓子コンテスト、優勝者は。」 かいじよう しず しいんと、会場じゅうが静まりかえった。 えだまめ いけづきわがしてん 「池月和菓子店、″枝豆バターどらやきんに決定いたしました。」 かいじよう かんせい いけづきわがしてんひと うわあっと、会場のなかほどで、歓声があがった。池月和菓子店の人たちだった。 じみ くふう 「地味な菓子ではあるが、よくエ夫されていたし、ていねいに作られているのが、よかっ こんご き はなゅおんせん しんめいっ だ た。花の湯温泉では、今後、この菓子を新名物として売り出すことに決めました。」 げんぞうことば さ ふかぶかあたま 源蔵の言葉に、としおが深々と頭を下げた。 ( やつばり : そうか。としおさん、おめでとう。 ) おっこは、せいいつばいの拍手をとしおに送った。 ・ほう ( せつかく、ウリ坊にも助けてもらったんだけど、あたしだめだったよ。でもしかたない い いんちょう 0 たす はくしゅ けってい ゅうしようしゃ 194
「なかなかですな。 こう おっこと康さんは、目を見合わせた。 さむ 温かいお菓子が温泉まんじゅう 「ねえ、これ、寒いときなんか、いいかもしれない ! ばっかりじゃっまらないじゃない ? 」 よろこ だ 「なるほどねえ。お客様にお出ししたら、わりと喜ばれるかもしれないなあ。 こ、つ 康さんが、うなすいた。 た あ おっこは、立ち上がってばんざいした。 めいぶつがしかんが 「さすが康さん ! こんなに早く、名物菓子を考えつくなんて、天才じゃないの ! 作り かた とうじっ しゅうこうりよかん 方もそんなにむずかしくないし。これなら当日、秋好旅館であたし、作れるわ。」 ひとりつく 「おじようさんが一人で作るんですか ? どよ、つこ、つ し′」と はるや あきの 「だって、土曜は康さん、春の屋の仕事があるでしよ。それに、秋好旅館だって秋野さん まっき だいひょう しゆっじよう はるやだいひょう ・ : 真月さんが代表で出場するんだもの。春の屋代表として、あたしががんばらなく ちゃ。 むね おっこが、まかせてくれといわんばかりに、胸をたたいた。 きやくさま め みあ はや あたた てんさい しゅうこうりよかん かしおんせん つく つく 143
( でも、お菓子のことなんて、ぜんぜん知らないのに : かんが まっき かしせんもんか うちけす自分もあったが、考えてみれば真月だって、お菓子の専門家じゃない 「あたしも ! 」 気がついたら、さけんでいた。 「あたしもそれ、出る ! どこで申しこんだらいいの ! 」 じしん 「へえ。あなたってつくづく負けずぎらいなのねえ。自信あるの ? まっき あきれたように、真月が言った。 じしん 「じ、自信はないけど、やってみなくちやわからないもの。がんばるもの。がんばって、 わか みと 若おかみとして、認められたいもの。」 やくそく それに、あかねとの約束もある。 おっこが、これでがんばったあかしをみせれば、あかねだって、学校に行くようになる かもしれない。 ほんと、つ ぼしゅうお 「ふうん : おもしろいわね。本当はもう募集は終わってるんだけど : はるや しゆっじようみと じいちゃんに言って、春の屋さんの出場、認めてもらってあげるわ。」 かし じぶん も、つ ・かっこ、フ しいわ。お 137
あかねとの約束 粍秋好旅館で ししよく お菓子の試食ーー ろてんぶろ 露天風呂プリン じけん コンテストの事件、、、ー ューレイにしかできないことーーー けつかはっぴょう 結果発表ーーー しゆっぱっひ 出発の日ーー鬲 あとがき しゅうこうりよかん かし やくそく 130 139 120 150
「どうしたの ? 」 と、すぐにたすねてきた。 き 「コンクールのお菓子が、決まらなくて : : : 。」 くろまめ 「この間の黒豆プリンはやめたの ? 」 力いりよう おも 「いえ、あれを改良しようと思うんだけど、なかなか : くびよこ おっこは、首を横にふった。 かいりよう 「どういうふうに改良しようとしたの ? くろまめふうみ 「黒豆の風味を消さずにあまさをプラスしようとするとむすかしくて。はちみつとか、 ジャムとかフルーッソースとかもためしたんだけど、みんなだめで。 「ふうん : あかねはしばらく考えたあと、ほっりと言った。 「カラメルソースはだめかな ? 「カラメルソース ? 」 き おっこは聞きかえした。 あいだ 0 0 152
力いじん まっき くいっと、あごをあげて、真月は、おっこを見た。 はるや 「あなただって、春の屋さんのあとつぎなんだから、接客ぐらいできるでしよう。 そう一一一一口われて、おっこはうぐっとつまった。 ちゃだ みおく ゝ ) っまゝ、 とてもじゃないけど、 お茶を出してごあいさっと、お見送りをするのがせしし きやくさま あいて 外人のお客様のお相手など、おっこにはできそうもない。 まっき 真月はえらそうにしているけれど、えらそうにしているだけのことはあるんだ : き ちぢ こうだい おっこは、広大なロビーのざわめきの中で、縮んで消えてしまいたくなった。 まっき そのとき、真月かふいにこんなことを言いだした。 どようめいぶつがし みせで いけづき 「池月さん。ところで土曜の名物菓子コンテスト、おたくのお店も出るの ? 」 で しゅうこうりよかん あに いけづきわがしてんだいひょう 「ええ。うちの兄が、池月和菓子店代表として出るって、はりきってるわ。秋好旅館さん りようりちょう てつだ だいひょうで 「わたしが代表で出るつもりよ。料理長にも手伝ってもらってね。 ま 「ちょ、ちょっと待って。」 はなし おっこは、あわてて、話をさえぎった。 なか み せつきやく 0 135
ちゅうぼう おっこがばんばんにふくらんたビニールぶくろをかかえて厨房にかけこんできたので、 かお 康さんは、おどろいた顔をした。 へや 「おじようさん。お部屋のほうにいなさいっておかみさんに言われたでしよう ? こ はやね おとこ ・ : : ・さしカら早く寝ちゃ 「わかってる ! だけど、いそいで作らないと、あの男の子 うでしよう。」 おとこ つく 「なにを作るんです ? あの男の子 ? もしかして、さっきのお客様のことですか ? 」 たんじようび たんじようび 「そうよ。お誕生日をだいなしにしてしまったんだもの。せめて、お誕生日をお祝いする おも かし お菓子でも作ってあげようと思ってね ! 」 たまごぎゅうにゆう おっこはコンビニのふくろから、卵、牛乳、コンデンスミルク、ももの缶づめ、さくら ヤ」、つ あたたかい気持ち つく きも こ きやくさま かん
つくかた ソースの作り方など、おっこよりもうまいぐらいだった。 きよ、つ ・ほう ( ウリ坊って器用だったんだねえ。 ) かんしん 物ほ、つとくい 感心するおっこに、ウリ坊は得意げだった。 み ( そや、いつも、おっこのすること、はらはらして見てるんや。おれやったら、もっとう おも まくやれるのになあ、とか田 2 いながらな。 ) わら うははと笑いながら、頭をかいた たまご ( ちょっとー 卵のついた手で髪をさわらないでよ ! ) ( ごめんごめん。 ) てあら ( ちゃんと手を洗って ! ) おも ( ちえつ、今、ほめてたとったらこれやからなあ、おっこは。 ) くろまめ む ふたり かし かんせい 黒豆プリンが蒸しあがったころには、両どなりの二人も、お菓子をそれぞれ完成しつつ あった。 まえ や としおの前。。 リこま、おいしそうに焼きあがったどらやきか、香ばしいにおいをたてて、ず なら らりと並んでいる。 あたま て かみ りよう 181
ばあい いまきよう、ちゅう そうだ。今は競技中だ。ばんやりと考えごとをしている場合ではない。 ( そんなことできるの ? ) じかん かしつく なお ( だいじようぶ まわりの人らに、お菓予を作り直しますって ( 一。え。畤周ないぞ。 ) おっこは、うなずいて立ち上がった。 かしつく なお 「すぐにあたし、お菓子を作り直します。手も動くようになりました。みなさん、おさわ がせして申しわけありません。 かかりいん かお おっこかそう言うと、係員がほっとした顔をした。 きようぎぞっこう しょてい 「では、みなさん、競技を続行します。所定の位置にもどってください。」 あっ ばしょ ひと それでおっこのまわりに集まっていた人たちは、それぞれの場所にもどった。 ( まず、どないしたらええねん。 ) たまごわ つく ( 卵を割ってとき卵を作るのよ。 ) ( よっしゃ。 ) おっこの手はうーんとのびをして、それから卵をいきおいよくばんばんと割りはじめ もう たまご ひと かんが うご たまご 179