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検索対象: 若おかみは小学生!
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1. 若おかみは小学生!

しやせん 」っ・」 0 な き じぶん そういう自分が、大人に決められたことにたんたんとしたがって、泣いたりぐずったり せず、いろんなことをきちんとやってるのって、だいじようぶということなのだろう。た ぶん。 まえ たいこう しようじき きおく それに事故のことは正直、あまり記憶がないのだ。フロントガラスの前にいきなり対向 しろ めまえ とだ おも 車線からトラックが飛び出してきたと思ったら、とっぜん目の前がまっ白になって、なん き ちゅう だかふわふわっと宙にういたような気持ちになって、あとは気を失っていたのだろう。 め びよういん はっと目がさめたら、もう病院だった。 「だいじようぶ。 と、おっこはおばあちゃんにそう答えた。 「そうかい おばあちゃんがほっと息をついた。 へや 「じゃあ、おっこの部屋に行くかい おっこはうなずいた。 おとな こた うしな

2. 若おかみは小学生!

みひら おっこは、はっと目を見開いた。 ぼうまえ 「ウリ坊が前にのりうつったのってまさか、あのとき ? 事故の瞬間 ? 」 。ほ , っ くろめ ひか ウリ坊が、じいっとおっこの目を見た。ウリ坊の黒目が、じんわりと光った。 あや 「そうや。おまえは危うく死ぬとこやった。おれはとっさにおまえにのりうつって、車か からだ ちゃくち らとび出したおまえの体を、できるだけけがの屮ないように着地させたんや。」 ぼう たす 「ウリ坊があたしを助けてくれたの ? 」 「そうや。おれは : うたやろ。おまえがどんくさいことするたびに、助けにきてや むかし るって。昔からそうなんや。」 ウリ坊が、反っ歯をあらわに、にやりと笑った。 ・は , つみ おっこは言葉を失って、ただウリ坊を見つめかえすだけだった。 ・は、つ うしな わら しゅんかん たす ( つづく ) 211

3. 若おかみは小学生!

「あっ、はゝ。 ( えーっと、なんだっけ。 ) おもだ 思い出せないでいると めまえ ウリ坊がいきなり目の前で、ばっと大きな板を出した。 こく・はん それは黒板だった。 ぼうしろ ウリ坊は白いチョークで言葉をかきつけた。 ゅうしよくなんじ きよう りようり・ 「お夕食は何時にいたしましようか。今日のお料理は、新鮮なあまえび、それにひらめの うす作りでございます。 おっこは、それをそのまま読んだ。 きよ、フ りようり・ ヤ」う 「まあ、今日のお料理のこと、よくおばえていましたね。ミーティングのときに康さんが こころと 言っていたのをちゃんと心に留めておいたんですね ! さすがおじようさん。いえ、若お かみ。 ェッコさんがまた、目をうるませかけるので、おっこはあわてた。 わか 「たまたまおばえていただけよ。そんな、あたしなんてぜんぜん若おかみだなんて言えな ぼう おお いただ しんせん わか

4. 若おかみは小学生!

「そ、そう ? にんげん ューレイには、ふつうの人間には見えないなにかか見えるのかもしれない おとここ それに、い っしょにいる男の子が、とてもつらそうだった。目を閉じてぐったりと鳥居 にもたれかかっている。 ぐあいわる ( あの子、具合が悪いのかもしれない。 ) おも まえた ふたりづ おっこは、それで思いきって二人連れの前に立った。 「あのう、ひょっとして、どこか泊まるところをさがしてらっしゃいますか ? 」 おとこ みあ すると、男ははっと目を開けて、おっこを見上げた。 ことわ 「ええ、ええ、さがしてるんですけど、どこもいつばいだって断られて。」 いえりよかん 「あのう、もしよかったら、うちの家、旅館なんですけど。 いらっしゃいますか ? 」 「ええ ? ほんとうですか ! 」 おとこた 男が立ち上がった。 たす むすこねつだ 「助かります ! ぜひ泊めてください。息子が熱を出してしまって。 「じゃあ、どうぞ、ついてきてください。」 こ とり

5. 若おかみは小学生!

にい 兄さん」だろうか ′」くぼそ そういえば、極細マジックでひと息にひいた線みたいな細い目が、よりこによく似てい 「あのう、池月よりこさんのお兄さんですか ? おっこはたずねてみた。 そうです。兄のとしおです。」 「あっ、よゝ。よゝよ ) よゝ。 しかく としおは、四角いばうしを取ると、おっこにあいさっした。 おな せきおりこ 「あたし、よりこさんと同じクラスの、関織子っていいます。おっこって呼ばれてます。 はるや 「ああ、春の屋さんのおじようさんだね。」 ほそめ としおはにこにこと、細い目をさらに糸のように細めて、笑った。 ひと 「よりこから聞いてるよ。すごくはっきりしてて、おもしろい人だって : どし よりことおない年なのに、コンテストに出るなんて。 「えらくなんかないです : かおまえて おっこは、顔の前で手をふった。 いけづき にい あに せん ほそ ほそめ わら えらいね。 165

6. 若おかみは小学生!

あかねが、おっこの目をじっと見た。 おっこは、うぐっと自 5 をのんだ。 びしようねん こうして向かい合うと、あかねは、やつばりたいへんな美少年だ。 なが ひとみ ほしち 長いまっげにふちどられた瞳が、星が散ったようにきらきらしている。 「あかねさんもがんばれるよ、きっと。 かん わる ときに感じの悪いことを言ったりもするあかねだったが、そんなきれいな目でじいっと おも 見つめられたりすると、思わずはげましたくなってしまう。 おも 「でもさ、がんばっても結果がだめだったら ? それを思うとこわくない ? 」 「こわくないっ ! 」 じぶん おっこは自分でもおどろくほどきつばり言った。 すす 「がんばらないと、なにも進まないもの。きのうのあたしは、失敗ばっかりして、お客さ さい′」 んをおこらせちゃったけど、がんばるのをあきらめなかったから、最後はお礼言ってもら えた。がんばらなかったら、なにもなかった。がんばることってこわいことじゃないよ。」 しん 「 : ・・ : そうかな。そういうの、信じられない。 きやく 126

7. 若おかみは小学生!

うで ( おまえの腕に、おれがのりうつったんや。 ) ( ふうん : : : 。 ) かんか / 、 こた 答えながら、おっこは目をつむった。なんだろう。この感覚。 かん しず とてもおだやかで静かでなっかしいようなこの感じ : めひら おっこは、ふ、と、目を開いた。 かん ( この感じ、あたし、知ってる。 ) ぼう おっこは、どきっとした。なぜなんだろう。ウリ坊にのりうつられたことなんて、初め かん。か′、 てのはずなのに、おっこはたしかにその感覚を知っていたのだ。 ぼう ( ひょっとして、ウリ坊があたしにのりうつるのって初めてじゃないのかも ? ) むな どきどきっと胸さわぎかした。 おも むねおく なにか、大切なことを思いだしそうな、胸の奥がむずがゆいような、もどかしい気持ち かした。 ぽーっとするなよ。今から、おまえのかわりに、おれがプリンを作る。 ) ( いいめ ・ほうこと物は ウリ坊の言葉に、おっこはわれにかえった。 たいせつ はじ はじ 178

8. 若おかみは小学生!

なだ ・ほ、フ ほそっと投げ出すようにウリ坊が言った。 じんせいさいだい 「人生最大の危機 ? それってひょっとして : ・ じんせいさいだい おっこは、ごくっとつばをのんだ。おっこの人生最大の危機は、まちがいなく、あの事 と、つ かあ だいくるまの かあ じよしゅせきの 故だ。父さん母さんといっしょに一台の車に乗っていた。母さんが助手席に乗っていて、 こうぶざせき かあ かおよこくび おっこは、後部座席からだきつくようにして話していた。母さんの顔の横に首をのばし かあ べにずいしよう て、母さんのつけているべンダントーーー紅水品をねだっていた。あんまりおっこがそれを かあ こんま たんじようび 欲しがるので、母さんが根負けした。もうすぐやってくるおっこの十二の誕生日にそれを あげる、と言ってくれた めまえ おっこがわあっと喜んで手を打った直後だった。トラックが目の前にとび出してきたの おも めまえ フロントガラスがばしゃんと波うちこなごなになったかと思うと、目の前がまっ白に そして、なにもわからなくなった : なった。それから、ふわっと体がういた : からだ しず ふわっと体がういて : : : とても静かな気持ちになって : まさか よろこ からだ なみ ちよく′」 しろ 210

9. 若おかみは小学生!

いみ 「いや、ある童味、それは正しいな。だって、おっこがおれを見たのは、たしかにその日 まえ はるや おっこが春の屋に引っ越してきた日やもんな。そやけど、おれはちがう。その前か ら、おっこのことは知ってた。」 むかし はる ・ほ , フ 「えつ、そうなの ? あっ、そうか。ウリ坊って、ずっと昔から春の屋にいる : はるや おおさか まえ 言ってたよね。もともと大阪にいて、春の屋ができたときに来たって。じゃあ、 阜ほう ちい あたしが小さいころから、ウリ坊はあたしのこと見てたんだね。 むかしみねこ 「そうや。昔の峰予ちゃんにそっくりになっていくんかおもしろうて、しよっちゅう、お みまも まえの後ろにくつついて、おまえのこと見守ってたんや。」 ・は , フめほそ ふっと、ウリ坊が目を細めておっこを見た。それは、今までおっこが見たことのない、 ひと ぼうひょうじよう ウリ坊の表情だった。うんと小さなかわいい子どもを見つめる、ひどく年とった人のよう な目をしていた。 。ほう おなどし ( そうか。ウリ坊って、あたしと同い年ぐらいに見えるけど、じつは、とても長いド ューレイやってきてるんだ。 ) じんせいさいだい 「おまえの人生最大の危機のときも、そばにおった。」 うし ただ こ とし ながあいだ 209

10. 若おかみは小学生!

とも たんや。こら、ええ友だちかできたわ ! うれしつ ! と て ぼうなの かってあくしゅ ウリ坊と名乗ったそのユーレイは、おっこの手を取って、勝手に握手した。 て かんしよく かぜ ウリ坊の手ざわりは、ほとんどなくて、ふわっと風がふいたような感触しかなかった。 「よろしくな。おっこ ! 」 めまえ 言われておっこは目の前がくらくらっとゆれた。 ( いったい、なにがおこったの ? ) ばんやりしてしまったおっこを、ウリ坊はただにこやかに、笑って見ているのだった。 ・ほう わら み