部みゆき准 9 7 8 4 1 6 7 5 4 9 0 6 0 誰か Somebody 宮部みゆき 文春文庫 我らが隣人の犯罪 とり残されて 蒲生邸事件 人質カノン チチンプイプイ供著・室井滋 ) ー隹力、 Somebody 責任編集 松本清張傑作短篇コレクション上・中・下 今多コンツェルン広報室の杉村三 郎は、事故死した同社の運転手・ 梶田信夫の娘たちの相談を受ける。 亡き父について本を書きたいとい う彼女らの思いにほだされ、一見 普通な梶田の人生をたどり始めた 三郎の前に、意外な情景が広がり 始める一一。稀代のストー ラーが丁寧に紡ぎだした、心揺る がすミステリー。解説・杉江松恋 著者紹介 宮部みゆき ( みやべ・みゆき ) 1960 年生まれ、東京・ : 刹日育ち。 法律事務所勤務を経て、 87 年「我 らが隣人の犯罪」て、オール讀牛刎隹 理小言斤人賞を受賞しデビュー 以降、「龍は眠る」て、日本推理作家 協会賞 ( 92 年 ) 、「本所刹日ふしぎ 草紙」て吉川英治文学新人賞 ( 同 年 ) 、「火車」て、山本周五郵賞 ( 93 年 ) 、「蒲生邸事件」て、日本 S F 大賞 ( 97 年 ) 、「理由」て直木賞 ( 99 年 ) 、 「模倣犯」て毎日出版文化賞特別賞 ( 2001 年 ) 、「名もなき毒」て吉川英 治文学賞 ( 07 年 ) を受賞。最新作 に「楽園」がある。 宮部みゆき公式ホームページ ( 大 沢オフィス「大極宮」 ) http://www.osawa-office.co.jp/ 宮部みゆきの本 1 S 0 m e b 0 d y 800 興・ 0 ドド 日 0 一 0- IIIIIIIIIIIIIIIIIII 1 9 2 0 1 9 5 0 0 6 4 8 5 二 1 ロ 旧 BN978-4-16-754906-0 C0193 ¥ 648E 定価 ( 本体 648 円 + 税 ) み 17 6 文春文庫 み 0 17 6 文春文庫 美子 呂明 ヒ呆 し亠ィー 田久 杉大 トン スイ ラザ イデ カカ 文春文庫 648 文春文庫 十税
文春文庫 ミステリー 宮部みゆき 我らが隣人の犯罪 宮部みゆき とり残されて 宮部みゆき 蒲生邸事件 宮部みゆき 人質カノン 結城五郎 心室細動 横山秀夫 陰の季節 ( ) 内は解説者。品切の節はご容赦下さい。 僕たち一家の悩みは隣家の大の鳴き声。そこでワナをしかけた のだが、子想もっかぬ展開に : : : 。他に豪華ーこの子誰の子」 「祝・殺人」などューモア推理の名篇四作の競演。 ( 北村薫 ) み 婚約者を自動車事故で喪った女性教師は「あそぼ」とささやく 2 : 。他に「いつも二 子供の幻にあう。そしてプールに変死体が : 人で」「囁く」など心にしみいるミステリー全七篇。 ( 北上次郎 ) み 。受験の 二・二六事件で戒厳令下の帝都にタイムトリップ ため上京した孝史はホテル火災に見舞われ、謎の男に救助され たが、目の前には : 。日本大賞受賞作 ! ( 関川夏央 ) み 深夜のコンビニにピストル強盗 ! そのとき、犯人が落とした 4 意外な物とは ? 街の片隅の小さな大事件と都会人の孤独な肖 像を描いたよりすぐりの都市ミステリー七篇。 ( 西上心太 ) み 一一十年前の事件を暴く脅迫状。関係者は次々に心室細動を起こ し急死する : ・ : ・。過去の罪に怯え、破滅 ( と向かう男のリアル な恐怖を描くサントリーミステリー大賞受賞作。 ( 長部日出雄 ) 「全く新しい警察小説の誕生 ! 」と選考委員の激賞を浴びた第 五回松本清張賞受賞作「陰の季節」など、テレビ化で話題を呼 んだ一一渡が活躍する県警シリーズ全四篇を収録。 ( 北上次郎 ) よ
ることを起こる順番で目撃する、平凡人の目に徹していかなければならないのである。 逆説的な物言いになるが、そうした凡人の視点以外から「全体」を見通すことは本来で きない。ましてや、描かれた物語が一読者の心に浸透するほどの切迫感を持っことも不 可能なのであります。 もともと宮部作品には、私たちが生きる現実の、どうしようもなく残酷な側面が必ず 盛りこまれる傾向があった。受け入れるのは辛いが、「ある」以上は目をそらすことが できない現実である。一九九八年の『理由』 ( 朝日文庫ほか ) で宮部がルポルタージュ 的文体を採用して鳥瞰的に事件を描こうとしたのは、非情の視点を入手し、すべてを描 こうとしたためだったでしよう。もちろん『理由』は、十分な成功をおさめた作品だ。 しかし、宮部は挑戦を止めなかったのである。『理由』から『模倣犯』に加えられたもの、 それは推移を見守る「個人」の存在であった。不安に耐え、すべてを見届けることを決 意した「誰か」が、宮部小説には必要だったのです。それは宮部が現実に向き合うこと を選択した時点で、作家としての必然事となっていた。 『誰か』は、宮部がそうした態度を作品の形で初めて表明した、記念すべき作品である。 作者に成り代わり、そして読者の代弁者として、事件の一部始終を見届ける杉村三郎こそ は、宮部みゆきが初めて書いたハードボイルド・ミステリーの主人公なのだといえます。 ードボイルドという小説のスタイルには様々な定義があり、残念ながら完全な統一 見解というものはない。便宜的にあえて定義するならば「複雑かっ多様で見渡すことの
文春文庫 誰か Someb0dY 宮部みゆき 文藝春秋
文春文庫 隹力。 Someb0dY 宮部みゆき 一三ロ 文藝春秋
文春文庫 だれ 誰か Somebody 2007 年 12 月 10 日第 1 刷 みやべ 著者宮部みゆき 発行者村上和宏 発行所株式会社文藝春秋 OMiyuki Mryabe 2g7 定価はカバーに 表示してあります 東京都千代田区紀尾井町 3-23 〒 102 ー 888 T E L 03 ・ 3265 ・ 1211 文藝春秋ホームページ http://www.bunshun.co.jp 文春ウエプ文庫 http: 〃 www.bunshunplaza.com 落丁、乱丁本は、お手数ですが小社製作部宛お送り下さい。送料小社負担でお取替致します。 印刷・凸版印刷製本・加藤製本 Printed in Japan ISBN978 一 4 ー 16 ー 7 ー 0
宮部みゆき高炉の神様宿老・田中熊吉伝佐木隆三 誰か Somebody 平凡な生活の小さな事件から深みにはまる、宮部みゆきの真髄九十八歳まで、八幡製鉄の現役製鉄マンとして生きた男 春、バ 1 ニ 1 ズで吉田修一オレたちバブル入行組池井戸潤 銀行の逆境と減給にさらされる男たちの意地と挑戦を描く長篇 子連れの女性と結婚し、父になった主人公の幸福と危険 おめでとう 川上弘美寺田屋騒動海音寺潮五郎 幕末の京都伏見。薩摩誠忠組と藩との朋友相討っ悲劇が起きる 今という一瞬を楽しんで生きる人々を描く十一一の短篇集 ためらいもイエス山崎マキコ胤佐和子 0 会えばなるほど阿川佐和子 週刊文春連載の選り抜き第六弾。聞き上手アガワの真骨頂 彼氏いない歴一一十九年のは、恋と昇進のどちらを選ぶか ? 最 神立尚紀 星の玉子さま森博嗣戦士の肖像 特攻隊員や戦艦大和の砲撃手などの刻明な体験証言 庫字宙の星々をたずねて旅をする玉子さんと愛大の絵本 」村田喜代子傑作短篇集村田喜代子お世継ぎ世界の王室・日本の皇室八幡和郎 春八つのハ鍋 世界の王室の合理的な後継者制度を見て皇室制度を考える 生きることのたくましさと可笑しさを描いた八篇 文 野坂昭如脳がめざめる食事生田哲 死刑長寿 最新研究によるメニュー改善で、沈んだ脳もやる気もアップ ! 長寿日本一は死刑確定囚炸裂する風刺と哄笑 坪内祐三 マイ・ベスト・ミステリ 1 Ⅵ日本推理作家協会編文庫本福袋 有栖川有栖・折原一・加納朋子・都筑道夫・法月綸太郎・横溝正史古典から話題作まで、硬軟とりまぜた一九四冊の文庫本を紹介 高橋直樹夢を食った男たち阿久悠 霊鬼頼朝 平家を滅ばし鎌倉に幕府を開いた源氏もまた三代で滅びた 山口百恵から小泉今日子まで次々とスタ 1 を生んだ男の物語
解説ーーー破れた世界を小糸でかがる 彼女は、素描の名手である。 そして、知の探求に熱心でもある。ひらたく言えば、たいへんな「知りたがり」だ。 宮部みゆきは、そんな作家です。登場人物に魅力があるとか、稀代のストーリーテラ ーであるとか、ロ当たりは柔らかいのに機能的な文章を書くとか、いろいろ言葉を費や して作風を説明することはできるのだが、右の通りにまとめてかまわないと私は思う。 素描がうまいというのはつまり、耳や目がばけていなくて手がよく動くということだ。 だから聴いたこと、見たものの印象を、ひとふでがきで表現できる。ご存じのとおり、 これは人物描写にたいへん役立っ能力なのである。『誰か』の中から「ひとふでがき」 の良い例をあげてみましようか。ええと、主人公・杉村三郎の妻である菜穂子について。 本書は、杉村が菜穂子の父親・今多嘉親の意を汲み、彼の運転手として勤めていた梶 田の遺児姉妹に便宜を図ることから始まる物語だ。姉妹は、梶田の伝記を出版すること で、父親を自転車で轢いて殺した犯人をあぶり出そうとしているのである。彼女たちと 関わるうちに、杉村は梶田の死の背後にある複雑な事情を知るようになる。 杉江松恋
一九九二年の『火車』 ( 新潮文庫 ) がその好例。これは、婚約者のもとから突然姿を 消した関根彰子という女性の行方を追う、人捜し小説である。「関根彰子」の秘密は二 段重ね、三段重ねになっていて、彼女について知れば知るほど謎は深まっていく。 この小説で探偵役を務めるのは、本間という休職中の刑事である。しかし作者は、彼 を衝き動かしているものが職務意識ではなく、依頼者への義務感でもなく ( 本間に調査 を依頼した人物は、舞台から早々に退くのだ ) 、純粋な好奇心である、と作中で宣言して いる。「関根彰子」がとった不可思議な行動の意味を知りたいという欲求が、彼を動か しているわけです。もちろんこの衝動は、本間一人のものではない。その背後にいる宮 部自身が、激しく知ることを欲しているのだ。作者の餓えはもちろん読者にも伝染し、 真相解明を強く願わせる。これが、宮部作品が持つ「ページを繰らせる」カの正体なの である。宮部作品を読むと、誰もがみな、その先を「知りたく」なってしまう。 こうした小説の構造を支えているものが、先に挙げた素描の技なのである。技、とい っても宮部が採っている手法は単純だ。知っていることだけを書く。知らないことは書 つも同じものを見せるということだけな かない。ただそれだけ。登場人物と読者に、い のである。ただし、その視点にぶれを生じさせないために宮部は細心の注意を払って描 写を統御している。 たとえば『誰か』の冒頭では、杉村の義父である嘉親の個人運転手・梶田が暴走自転 しかし、 車に轢かれて死んだ、という以外に事件に関する情報はほとんど与えられない。
けでもない。にもかかわらず物語に対する読者の関心は決して減じることがないのであ る。卓越した技のなせる芸当というしかないでしよう。 少々脱線するが、こうした職人芸を表現するのに、もってこいの言葉がある。「下手 の長糸・上手の小糸」というのだ。私はこれを小関智弘の『職人ことばの「技と粋」』 ( 東京書籍 ) という本から教わった ( 小関は、旋盤工としての長い職歴があり、東京の職人 事情について詳しい作家だ ) 。もともとは裁縫の教えについての言葉で、縫いものをする ときに、糸とおしの回数を減らそうとして針にいちどに長い糸を通しておくと、糸がか らむなどしてかえって余分な手間がかかる。上手な人はむしろ手間をおしまずに適当な 長さの糸で縫うのだそうである。上手の小糸でちょこちょこと縫い合わせていくという 地味な努力が、作品の出来映えを下支えしているわけです。上手の小糸とはつまり、場 面場面でおろそかにされることがない、的確で緊密な描写のことである。宮部という作 家の真価は、こうした細部にこそ見てとることができるのです。 『誰か』という作品の成立背景について、少し書いておきたい。本書は二〇〇三年十一 月に書き下ろし長篇として実業之日本社から上梓された作品である。執筆時期から見て、 作品が二〇〇一年の『模倣犯』 ( 新潮文庫ほか ) と連続性を持っことは間違いないでし よう。本書の中には、『模倣犯』で宮部が得たものが多く盛りこまれている。 『模倣犯』は、毎日出版文化賞、芸術選奨文部科学大臣賞などの栄誉に輝いた、宮部作