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検索対象: 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート
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1. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

くすりえきたい りよがりの徘徊』ってやつだ。 むかしばなしそうふ かまなかさいしよみず 「まず、さっきの昔話で宗歩は、釜の中に最初、水しかいれてないってことがわかります。っ かまなかおうごんしこ かま まり、はしめから釜の中に黄金を仕込むことはできなかった。つづいて、釜にいれたのは粉末の 薬と液体だけ。 くすりいしおうごん 「だから、その薬が石を黄金にかえたんじゃないの ? りようて かた レーチが、わたしのことばに肩のところで両手をひろげる。 ( この「あきれてものもいえな いっか、やりかえしてあげる ! ) い」ってポーズ、おばえとくからねー なんかい やくひん そうふ 「何回もいうように、ほかの薬品から金をつくることはできない。となると、宗歩はいったいど いしほんものいし おうごん そうふ こから黄金をだしたか ? ほかに宗歩が釜にいれたものは石だけ。つまり、石は本物の石ではな おうごん 、黄金だったのです。」 なんにん ひと 「でも、何人もの人が石をたしかめたんでしょ ? 」 おうごんひょうめん そうふ てつぶん 「黄金の表面に、宗歩は鉄粉をまぶして、のりでかためたんだよ。いや、のりを使ったとはかぎ ゅ やくひん せっちゃくざいっか らないな。とにかく、お湯や薬品でとける接着剤を使ったのさ。 き ぶちょう 部長が、レーチのことばをニャニヤして聞いている。 いし にこ おうごんひょうめん 黄金の表面から鉄粉がとれたら、釜をひっくりか 「あとは、しばらく石をお湯で煮込めばいい。 はいかい ゅ きん かま いし てつぶん かま つか ふんまっ

2. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

ひかり らくたんげんいん レーチの落胆の原因がとってもよくわかるだけに、わたしはとってもうしろめたかった。 きよく ことしなつまっ れいねん いつもならぜったいにこないテレビ局まで、取材にき 今年の夏祭りは、例年にないにぎわい けいびけいさつかん ている。それに、警備の警察官もいつばいい そら やこうかいじんはんざいよこく それもこれもすべて、このあいだ空からまかれた、夜光怪人の犯罪予告のため。 まっ がめん にっぽん やこうかいじん こうほくちほうひと 祭りにきている虹北地方の人はもちろん、テレビ画面をとおして日本しゅうの人が、夜光怪人 かん の犯罪を見ようと、わくわくして待っているーーそんな感し。 「楽しい雰囲気ね、レーチ。」 レーチは答えない。なんか、すつごくまずい気分 : しようてんがい 商店街には夜店がでて、すごくにぎやかだ たいよう すがたけ さっきまで、しつこく地面をあぶっていた太陽も、すでに姿を消した。 アーケードについたライト。そして、それぞれの夜店につりさげられた、アセチレンランプの たの ふんいき こた よみせ じめん きぶん よみせ ひと しゅざい 242

3. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

ゅ そうふ すうかい 数回、釜の中をかきまわしてから、宗歩は釜の中の煮えたった湯を、バシャリと地面にあけ すると、人々のあいだから、「おー。」というどよめきがもれた。 かまなか 釜の中からお湯といっしょにころがりでてきたのは、石ではなく、月の光を浴びてかがやく、 おうごん 黄金のかたまりだったからだ。 せつめい そうふ おうごんむぞうさ 宗歩は黄金を無造作にひろいあげ、ふところにしまうと、人々になんの説明もせず、びんや釜 かえ をかたつけて帰っていった。 、しおうごん そうふ ひとびとまえ つぎの日も、またそのつぎの日も、宗歩は、縁日に集まった人々の前で、鉄色の石を黄金のか たまりにかえてみせた。 「すごい人だったんですね : わたしは、ため息といっしょに、 しゃないー たんじゅん 「まったく、おまえは単純だな : たんさいぼう あきれたレーチの声。なにがくやしいって、単細胞のレーチに単純といわれるくらい ひと かまなか ひとびと ゅ こえ 0 0 ことばをだした。石を鉄にかえることができたら、大金持ち かまなかに えんにちあっ いしてつ ひとびと たんじゅん つきひかりあ てついろし じめん おおがねも くやし かま

4. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

ちょうじようげんしようけんきゅうかいかいちょう 正確にはわからないけど百をかるくこえているはすだ。なかには、『超常現象研究会の会長、 きみよう なかむら けんきゅうかい 中村さんを研究する会』なんて、ずいぶん奇妙なのもある。 がっこうがわ どうこうかい もちろん、これだけのクラブ、サークル、同好会に、学校側がきちんと予算をだせるわけがな じきゅうじそく げ・んそくう しゼん 自然と〃自給自足〃の原則が生まれる じん じぶんく 『自分の食いぶちは自分でかせげ ! 』 どう ) 」うかいう こうほくがくえんでんとう れんめん これが、連綿とうけつがれる虹北学園の伝統だ。日々、小さなクラブ、サークル、同好会が生 じゃくにく しようめつ どうこうかい かつどうひ まれ、活動費をかせぎだすことのできなかったクラブ、サークル、同好会が消滅していく。弱肉 きようしよく 強食なんてことばではあらわせないくらい、きびしいものがある。 うらな こていきやく しょぞく ほしうらなどうこうかい かつどうひ ゅうが だけど、活動費が優雅にあるクラブもある。美衣の所属する星占い同好会は、占いの固定客を ま りくじようぶ あんてい ざいせいじようたい とくい こうちょうせんせい つかんで ( 校長先生までお得意さまになっている ) 、安定した財政状態だし、真衣がいる陸上部 にゆうしよう しようきん こうほくしようてんがい かね は、お金がなくなってくると、虹北商店街をスポンサーにして賞金レースをおこなう。入賞し りくじようぶいん しようきん て賞金をかせぐのは、もちろん陸上部員だ。 ひぐ ぶんげいぶ かねも ひかり 光あるところに陰があるように、お金持ちのクラブもあれば、文芸部みたいに、その日暮らし がっしゆく ぶんげいぶなつやす なつやすごうう のクラブもある。こんどの『それわた』夏休み号が売れなかったら、文芸部は夏休みの合宿にい ぶいんぜんいんにくたいろうどうちょう もしそれでもいこうと思ったら、部員全員で肉体労働の超きついバイトをしなければな 0 ひびちい よさん

5. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

さくらき なまえ おうりんこうえん 伊藤さんのいってるのは、桜林公園のことだ。名前のとおり、たくさん桜の木が植えてあっ ふんすい とけい」う . こうえんちゅうおうおお て、お花見のシーズンにはすいぶんもりあがる。公園の中央には大きな噴水と時計塔があって、 ゅうぐ じどうこうえん てんざい あとはべンチが点在している。児童公園じゃないから、ジャングルジムやぶらんこといった遊具 こうえん きのぼ はないけれど、小さなほこらもあって、木登りやかくれんばするには、もってこいの公園だ。 きようみ やこうかいじんはなし 「で、ちまたでは、いますごく夜光怪人の話がもりあがってるのよ。どう、興味わいてきた ? 」 み いとろ・ 身をのりだしてきた伊藤さんに、わたし、真衣、美衣は、大きくうなすく。 きようじゅ でも、教授だけはそっぱをむいてる。 きようじゅかんしん 「教授、関心ないの ? やこうかいじん ふしぎなぞ 「首のとれる夜光怪人なんて、不思議な謎でしょー 「おもしろそうじゃない ! 」 ひ わたしたちにいわれても、教授はタバコに火をつけて、知らん顔している。なぜだろう。 きこう やこうかいじん こんかい めいたんていゅめみずきよしろうなぞと いとう 「どうせ伊藤さんは、今回の『名探偵夢水清志郎の謎解き紀行』で、夜光怪人のことをとりあげ るつもりなんでしよ。 ことし れんさい きこ、フ ぎっし がっ めいたんていゅめみずきよしろうなぞと 『名探偵夢水清志郎の謎解き紀行』シリーズは、今年の二月から雑誌『セ・シーマ』に連載され めいたんてい きようじゅかいけっ みんかんでんしようでんせつ ている。テーマは、民間伝承や伝説にかくされた謎を、名探偵の教授が解決するというものだけ み いとろ・ はなみ きようじゅ なぞ し おお かお 、つ

6. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

はなしき 「おしようさんにも、ぜひお話を聞かせてほしいんですが、よろしいですか ? みずのじゅうしよく レーチのことばに、水野住職は、こころよくうなずいた。 せっそうはなし あっ ほんどうなか 「拙僧の話でよければ、どうぞどうぞ。ここでは暑いですから、本堂の中にはいりましようか みずのじゅうしよく はなし 水野住職は、とても楽しそうだ。わたしたちと話をするのが好きみたい。 「ど、っそ、ど、フぞ みずのじゅうしよく 袈裟を着てヘルメットを小わきにかかえた水野住職は、スキップでもしそうな雰囲気で、わ ほんどう たしたちを本堂にあげてくれた。 ほんどうなか くうきなが くろはしら 本堂の中は、ひんやりとした空気が流れていた。太くて大きな黒い柱にささえられた、おちっ くうかん いた空間。 しようめんおお っぞう ちしき によ 正面に大きな仏像がある。わたしには、その手の知識がまったく欠けているので、ナンタラ如 しやくそん なまえ しんちょう かお 来とかナンヤラ釈尊なんて名前はわからないけど、身長三メートルくらいの、やさしい顔をし ぶつぞう たおばさんみたいな仏像よ。 はなし 「で、どのような話をお聞きになりたいんですか ? 」 ぶつぞうせ みずのじゅうしよくきん おばさんみたいな仏像を背にして、水野住職は金ラメのざとんにあぐらをかいてすわった。 き たの き て ふと おお す か ふんいき 102

7. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

とっぜん、教授が口をひらいた。そして、うなすくわたしたちに、 じだい じだい かいじんかいとう 「そう、時代は二十一世紀をむかえようとしている。この時代に、怪人や怪盗があらわれると思 、フカい ? ・」 0 そういわれれば、たしかにそうだ。だけど : はんざい はんにん とうぜん よこくじようおく 「どんな犯罪にせよ、犯人はかくそうとするのが当然だろ。それなのに、わざわざ予告状を送っ びじゅっひんぬす かいじんなの おも て美術品を盗んだり、めだっかっこうをして怪人を名乗ったりするなんて、おかしいと思うだ ろ。 きようじゅ よ せいろん せいろん なか たしかに教授のいうことは正論だ。でも、正論だけじゃ、世の中さびしいじゃないー よなか きん ひかかいじん リアリティ 「それを、よりにもよって夜中に、金びかに光る怪人があらわれたってのは、あまりにも現実味 こんかい やこうかいじんしゅざい がなさすぎる。よって、ばくは今回の夜光怪人の取材は、きつばりおことわりします。 さい′」 いとう 最後のせりふは、伊藤さんにむけていった。 なぞと きこう 「でも、そろそろつぎの『謎解き紀行』のしめきりがせまってますし、はやいとこ中身を決めな ゅめみず だいあん なにか夢水さんに代案があるんですか ? 」 こえ いと、つ こえ きようじゅあか こまった声の伊藤さんに、教授が明るい声でいう。 0 0 きようじゅくち せいき なかみき

8. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

げ・んこう あべへんしゅうちょう 「あーあ、原稿まにあわんかったら、どないしよう : 。阿部編集長にどやされるわ : やこうかいじん 「夜光怪人のことを記事にするんですか ? 」 どうじようてき ぶんげいぶ 文芸部でしめきりの苦しさを知っているわたしは、伊藤さんに同情的だ。 なつやすごう かいだん はなし おも 「夏休み号としては、やつば怪談みたいな、ちょっとこわめの話がうけると思てるんやけどね。 ゅめみず げんこうか それも、夢水さんが原稿書いてくれへんかったら、なんにもならへん。 くら げんき かんべき へや いつでも完璧百パーセント、元気ギャルの伊藤さんがしすんでいると、部屋の雰囲気まで暗く なる。だから、わたしはいった。 やこうかいじん 「しゃあ、伊藤さん、わたしたちで夜光怪人をしらべにいきませんか ? 伊藤さんが写真をとっ げんこうだいひっ ておいて、いざとなったら、わたしが原稿を代筆したら、しめきりにまにあうでしよ。」 「ほんま ! 」 くら しと、つ 暗かった伊藤さんの顔が、パ ッとかがやく。まるで、ヒマワリが集団で一度に咲いたみたい 「はんまです。」 た わたしたちは立ちあがった。 きようじゅ あんごうかいどく 教授は、暗号解読でいそがしい。でも、わたしのしめきりはおわったし、真衣も美衣も、ひ いと、つ くる かお し いとう いと、つ しゅうだんいちど いと、つ ふんいき さ み しやしん 0 166

9. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

げん に きん そうふ こなぐすり ようい 宗歩は、大きな釜といくつかの薬のはいったびん、それと粉薬のはいった巾着ぶくろを用意し えんにち て、縁日にでかけていった。 たの ゅ ひとごえ じゅんび そうふ ひとびとなか 楽しそうに行きかう人々の中で、縁日のにぎやかな人声をまったく気にせす準備する宗歩を、 月だけが照らしている。 そうふ やがて、宗歩のまわりに、しだいに人が集まってきた。 みず みず ひとじゅうぶんあっ だんかい そうふ かましたひ 人が十分に集まった段階で、宗歩は、水だけをいれた釜の下で火をおこした。水がぐらぐらと きんちゃく こなぐすり かまなかくすり すうしゆくすりなが 煮えると、釜の中に薬びんから数種の薬を流しこみ、つづいて巾着ぶくろの粉薬もいれた おお ぼうかまなか そうふ そして大きな棒で釜の中をかきまわしたあと、宗歩はふところから、こぶしより小さな石ころ をとりだした。 てついろ いしそうふ ひと ひょうめん 表面がざらざらした、鉄色にかがやく石。宗歩はその石を、集まった人にたしかめさせた。 うえみぎて そうふ ひだりても いしすうにんて 石が数人の手をへてかえってくると、宗歩はそれを左手に持ち、その上に右手をかざした。頭 こえ 巾のおくからブップッという声がもれてくる。 ぶつきようよう だれも、は 0 きりとその声を聞きとれた者はいないが、だれとはなしに、「あれは真言教堋 しようちょうてきひょう き りを象徴的に表。 もんく こな。とい、フささやきか聞こ、えた。 現する文句のこと。 こえ そうふ いしかま 宗歩が石を釜にいれた。まわりにいる人はだれも、声をださない。 つき て おお かま くすり えんにち ひとあっ ひと いし き きんちゃく いし

10. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

ぶんぎやくむ 「二つめは置換法。もとの文を逆向きに書 あんごう りする暗号のこと。」 きようじゅくすりゆび 教授の薬指がのびる。 むかしすいり そうにゆうほう 「三つめは挿入法。もとの文の中に、関係ないことばや文字をはさみこむんだ。昔の推理クイズ あんごうか の本に、『てたんたさたいたゆためたみたずたきたよたしたろたう』なんて暗号が書いてあって、 え もんだい その横にたぬきの絵がかいてある問題がのってなかったかな ? 「それ、どんなふうに解けるの ? 」 美衣がきく。 「かんたんだよ。たぬきだから、「た』の文字をぬくだけだよ。」 「てたんたさたいたゆためたみたずたきたよたしたろたう」から、「た」をぬくと : : : 、 くだらないー いゅめみずきよしろう」・ だいひょうてき あんごう 「ほかにも、かくし文字やいろんな暗号があるけど、代表的なのは、この三つだね。」 ほん きようじゅなんさっ そして、教授は何冊かの本をとりだす。 かんぜんはん おぐりむしたろう えどがわらんぽ にせんどうか あんごう たんていしようせつゆうめい 「暗号をあっかった探偵小説で有名なのは、江戸川乱歩の『二銭銅貨』、小栗虫太郎の『完全犯 こがねむし こくしかんさつじんじけんがいこくさくひん 罪』、『黒死館殺人事件』。外国の作品では、エドガー = アラン日ポーの『黄金虫』、コナンⅱドイ ほん ちかんほう ぶんなか 0 かんけい いたり、横書きにしてから、たての列をならべかえた よ , 」が れつ 「てんさ