走りまわる。 やこうかいじんいちど きよくひと うおうさおう おなじようにテレビ局の人たちも、カメラを持って右往左往している。なにせ夜光怪人が一度 えいぞう はんだん にたくさんでたので、どんな映像をとったらいいのか、判断ができないんだろう。 こうほくしようてんがいたきはらでんきてん やこうかい 虹北商店街の滝原電気店のショーウインドーにかざられた十六台のテレビモニターに、夜光怪 き き くろききゅう じんこうほくしようてんがい ひと えいぞうめ 人、虹北商店街、ゆかたを着た人たち、黒い気球 , ーーそんな映像が目まぐるしくうつっては消 、疋る そして、それよりもっとひどいのか、おまわりさんたち。いったい、なにがどうなってるの か、まったくわからないんだろ、つ。とにかく、 ハニックをおこしている。 かわ 「川のほうにいくぞー エムがわ 「川のほうだー わたしたちは走る。 あか エムがわかせんしき ハトカーの赤いランプと、色とりどりのゆかたを着た人たち。川の河川敷は、たくさんの人 と色でうめられた。 どうじ とうじよう やこうかいじん 同時にあらわれた何人もの夜光怪人は、はでに登場して人々をおどろかせると、全員いっせい いろ 0 はし なんにん も き ひと ひとびと ぜんいん ひと 253
どくしゃ 第十六幕しつこく読者への挑戦 : : : ワ八八 どくしゃ というわけで、またしても読者への挑戦です。 やこうかいじん きようじゅなつまっ やこうかいじんおお 教授は夏祭りの夜に、夜光怪人の大さわぎをおこしました。それは、夜光怪人を一度みんなの いちれんそうどう まえしゆっげん 前に出現させて消すことで、一連の騒動をしすめるためでした。 みずのじゅうしよくやこうかいじん きようじゅ ひとびとやこうかいじん いま、教授のねらいどおりに、人々は夜光怪人のことをわすれました。水野住職が夜光怪人 がい だって気づいている人は、わたしたち以外にいません。 きようじゅ でも教授には、ほかにもねらいがあったんです。 めいたんていしんけんはんざい かんが ときどき、わたしは考えることがあります。名探偵が真剣に犯罪をおこなったらって。 なつまっ きようじゅ こんかい そして今回、教授は、わたしたちにもほんとうのねらいをかくして、夏祭りの夜のさわぎをお きようじゅ こしました。教授のほんとうのねらいー・ーあなたに解けますか ? たい き まく よる ひと ちょうせん ちょうせん よる ど 260
おどやこうかいじん せつめい 「だったら説明してよー いったいあの踊る夜光怪人は、なんなの ? きようじゅ きようじゅあたま 真衣が教授にかみつくと、教授は頭をかいたままポソボソいう。 かいじん かいじんかいとう 「このあいだ、ばくが怪人や屋盗のことについていったことを、おばえてる ? わざわざ怪人を はなし なの じぶんはんこうせんでん 名乗って自分の犯行を宣伝するようなことをするのは、おかしいって話。 わたしたちは、うなずいた。 やこうかいじん 「なのに、夜光屋人はでた。このことから、つぎのような推理ができる。 ろんりてきくちょう 、、ろんりがくきようじゅ この論理的な口調は、さすが、もと論理学教授。 やこうかいじん じぶんやこうかいじん 「つまり、夜光蚤人には、自分が夜光怪人であるってことを、まったくいし いってことさ。」 ・と、フい、つ一」 AJ ? ・ も′、げき やこうかいじん やこうかいじん じぶんじぶん 「だって夜光怪人は、自分で自分のことを夜光怪人とはいってないんだろ。目撃した人が、かっ なまえ やこうかいじん てに夜光蚤人って名前をつけてるだけだ。それに、どこにあらわれるのかも、よくわかってな おお だいだいてき やこうかいじん じぶん せけんせんでん い。ほんとうに自分のことを夜光怪人だと世間に宣伝したかったら、もっと大々的にさわぎを大 きくするはすさ。」 きようじゅしこうろんりてき なるほど、教授の思考は論理的だ。 すいり ) ふらす気持ちはな ひと
と、「なんなんだー おちついてよね、みつともないー と、えらそ、フにいいたいんだけど、わたしだってさけ くち こえ びだしたいのはおなじ。レーチに口をおさえられてるから、声がでないだけのことだ。 こえ やこうかいじん このまま、しすかにあともどりすれ でも、声をださなかったら、夜光怪人には気づかれない。 : はずだった。だけど、 「キャーツ。 ひめい やこうかいじんみ しゅんかんこうちよく とってもはでな悲鳴。夜光怪人を見た瞬間に硬直してしまい、しすかになっていた千秋が、は でにさけんじゃったの。 やこうかいじん 夜光怪人が一瞬ビクッと立ちどまり、みような手つきで踊りはじめた。 「にげるぞー レーチがどなるけど、ダメ : かたぎりぶちょう わたしと片桐部長は、かろうして動けるけど、千秋がすわりこんでしまった。 やこうかいじん ちか ぜったいぜっめい そんなわたしたちに、夜光怪人がザリ ザリッと近づいてくる。わたしたち、絶体絶命ー しろ やこうかいじんまえた そのとき スッと白いかたまりが、わたしたちの集団からぬけでて、夜光怪人の前に立ち 。こ、つこ 0 オカオ いっしゅん 0 た とてもいいたいんだろう。 0 ちあき て しゅうだん おど ちあき 155
やこうかいじん んなにもたくさんの夜光怪人があらわれた。 すいり 「その謎を、亜衣ちゃんは、どう推理するの ? 」 そくざ 教授にきかれて、わたしは即座に答える。 ほんものやこうかい ほんものやこうかいじん やこうかいじん 「たくさんの夜光怪人は、たったひとりの本物の夜光怪人をかくすためだったの。本物の夜光怪 ほんものおうごんぶつぞうて よるちか じん 人は、あの夜に地下におりて、本物の黄金の仏像を手にいれたんでしよ。」 はくしやく やこうかいじんえん ほんもの 「本物のかわりにたくさんの夜光怪人を演じたのは、伯爵とその部下の人たち。」 けいさつかん にんげん ひとりの人間をたくさんの警察官がっかまえるのはやさしい。でも、一度にあらわれた、たく やこうかいじん さんの夜光怪人をつかまえるのは : はくしやく ィリュ 1 ジョン はなびつか ききゅうつか そして、気球を使ったり、花火を使ったりーーあれだけはでな大魔術ができるのは、伯爵だ やこうかいじんみ もり こ 「木の葉は森にかくせってことばがあるわ。おおぜいあらわれた夜光怪人。見ているわたしたち すがため ひか は、その光る、はでな姿に目をうばわれる。でも、いったんそのはでな衣装をぬいでーー・・そう、 けいさつかんせいふくき たとえば警察官の制服を着たりしたら けいさつかん よるたすうけいさつかん あの夜の多数の警察官。あまりにたくさんいたために、わたしたちは警察官がいることになれ なぞ きようじゅ こた 0 0 ひと いちど しよう 264
やこうかいじんわらごえ 夜光怪人の笑い声がひびきわたる。 やこうかいじん おうごん っぞうみぎて たかだか そして夜光怪人は、黄金にかがやく仏像を右手に持ち、高々とかかげる。 おうごんぶつぞう 「黄金の仏像だ ! 」 そうふ のこ おうごんぶつぞう 「宗歩が残した黄金の仏像だ ! 」 よこくじよう やこうかいじんおうごんぶつぞうて 「予告状のとおり、夜光怪人は黄金の仏像を手にいれてるぞー お 「追えー ! 」 きよくひと けいさつかん ききゅうお テレビ局の人たちとたくさんの警察官が、気球を追いかけて走ってい 「おい、こっちにもいるぞー こえ み やこうかいじんた ゃねうえ わたしは声のしたほうを見た。二階建ての屋根の上、そこに夜光怪人が立っている。 「こっちもだー ろじ 路地のおくで、手をふっている夜光怪人 やこうかいじん 「夜光屋人って : : : こんなにたくさんいたのか ? 」 わたしの横でレーチがいうけど、わたしにも答えられない。 「つかまえろ ! 」 けいさつかん しようてんがい また、警察官の一団が走ってい つづいて商店街のほうから、 よこ て いちだんはし やこうかいじん かいだ 0 0 こた も 0 250
おうごんぶつぞう 「あなたは、やみくもに地下で黄金の仏像をさがした。黄泉の国は光の国ーー・あなたはヒカリゴ ちかどうやこうかいじん ケがふる地下道で夜光怪人になった。 きようじゅゅびみずのじゅうしよく 教授の指が水野住職をさす。 やこうかいじん 「あなたが、夜光怪人です。」 とき なったいよう えーっと : しばらく時がとまったみたいだった。外ではギラギラした夏の太陽ががんばっ ほんどう てるし、セミだってジャワジャワやかましい。なのに、この本堂だけは、みようにしすかで寒 じぶんやこうかいじんなの 「べつにわたしは、自分で夜光怪人を名乗ってるわけではありませんけどね : みずのじゅうしよくわら ほんどうくうき ようやく水野住職が笑った。本堂の空気がふっとなごむ。 「わかってますよ。それどころか、あなたは夜光怪人になろうと思ってなったんじゃない。それ もわかってます。 きようじゅ てら 教授のいう意味がわかったのは、このあと、みんなでお寺のほこらから地下におりてからだった。 「どうもあなたは、すべてをわかっているようだ。それなら、教えてほしいこともあります。わ やこうかいじん たしには不思議だったんですよ。夜光怪人といわれるのはしかたがないとしても、やれ首がとれ 0 0 そと よみ おし くにひかりくに ちか 0 さむ
み あか かいとう 付近にはまったく街灯もなく、月もでていないので、ぜんぜん明るさがない。 「こんなとこでー やこうかいじん みち 「だって、道のまんなかで、はりこむわけにいかないでしよ。夜光怪人がきても、わたしたちを 見て、おどろいてにげちゃうわ。」 やこうかいじんあ そりやそうだ。だけど、ほんとに夜光怪人に会ったら、わたしたちのほうが、 んじゃないかな ? むし 虫よけスプレー 「よい、 とっぜん、美衣がわたしと真衣にスプレーをふきつけてくる。 「ワャヤャヤャヤャヤャヤー ひめい びつくりした真衣が悲鳴をあげる。 「ちょっと美衣、びつくりさせないでよね。 やこうかいじん こえ 「真衣こそ、大きな声でさわがないでよ。夜光怪人がおどろいてにげちゃうでしよ。」 ・やこうかいじんちんじゅう 美衣にかかると、夜光怪人も珍獣なみのあっかいだ ようい 「さあ、亜衣も真衣も、しずかにして。お菓子も、ちゃんと用意してあるから。 せなか 美衣が背中のデイバックを、ガサッとひっくりかえす。 ふきん み つき にげだしちゃ、フ
こくじよう 告状をばらまいたのも、マスコミうけする手でした。」 あっ 「マスコミを集めたのは、なんのためだい ? おお き ひとやこうかいじんみ かくにん 「より多くの人に夜光怪人を見せて、消えるところを確認させるため。そして、もう一つのねら おうごんぶつぞうエムがわお み いは、黄金の仏像が川に落ちるのを見せるため。 きようじゅはんのうみ わたしはことばを切って、教授の反応を見た。 えだまめ こころ あいかわらす、からあげや枝豆をもぎゅもぎゅと食べてるけど、心なしか食べるスピードがお ぶつぞうエムがわお 「なぜ仏像が川に落ちるのを見せたかったかは、またあとでいうから。つぎに教授は、真木先 せい こうほくしようてんがいひと やこうかいじん 生をつうじて、虹北商店街の人たちを動かしました。なんといっても、夜光怪人をつかまらせる なんにん やこうかいじん ひと わけにはいかないもの。だから、レーチをはじめ、何人かの人たちが夜光怪人をつかまえようと しようてんがいひと すると、商店街の人たちが、さりげなくじゃまをしていました。」 じじっ 「それは事実だよ、みとめる。」 きようじゅかたて 教授が片手をあげた。 すいり わたしは、さらに推理をつづけた。 やこうかいじんけ なんにんやこうかいじんしゆっげん 「夜光怪人を消すだけなら、あんなふうに何人も夜光怪人を出現させる必要はない。なのに、あ き み うご て た ひつよう た きようじゅ まきせん 263
かわも はしがいとう ぎんいろ べランダから見える川面は、花火と、橋の街灯のあかりをうっして、銀色にかがやいている。 こんや はなびたいかい 「まあ、ややこしいことはおいといて、今夜は花火大会なんだし、楽しもうよ。 「あくまでも、とばける気ね。 真衣が教授をにらむ。 「しゃあ、 しいわ。いまから、わたしがかってに自分の推理を話すけど、気にしないで聞いてて そうどう おどやこうかいじん わたしは、ゆかたのうでを組むと、〔話しはじめた。『踊る夜光怪人』の騒動のうらにかくされ きようじゅ た、ほんとうの教授のねらいを。 やこうかいじんしようたいみずのじゅうしよく なつまっ やこうかいじんそうどう 「さて、夏祭りの夜におきた夜光怪人の騒動は、すべて、夜光怪人の正体が水野住職であるこ まえ め やこうかいじんけ とをかくしたまま、みんなの目の前から夜光怪人を消すことでした。」 めいたんてい やくしやみつか なかなかに、 しい気分だ。名探偵と役者は三日やったらやめられないっていうけど、その気持 0 ちかよくわかる きようりよく きようじゅ 「そのために、教授はいろんなところに連絡をとって、協力をたのみました。まず、『セ・シー ききゅう やこうかいじんよ いと、つ マ』の伊藤さんを動かすことで、マスコミ関係者を集めました。それに、気球から夜光怪人の予 ね。」 きようじゅ み よる きぶん き はなび れんらく かんけいしゃあっ じぶんすいり はな たの き き 262