懐中電灯 - みる会図書館


検索対象: 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート
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1. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

かいちゅうでんとうぜんぼうて れつ 列のうしろからわたしがきくと、レーチはことばで答えないで、懐中電灯で前方を照らして こうけい その光景を見て、わたしと千秋はことばをのんだ。 おお レーチが照らした道のむこうに、大きな池がひろがっている。地下道の天井も、それにあわせ てドームのようにひろがっている。 「こんな地下に : : : 池が : くち いけみ かたぎりぶちょう 片桐部長も、ロをあけて池を見つめている。 みず さいしゅうてき ちかどう 「この地下道をつくった水が、最終的にここに集まったんだろうな。そして、こんな池になっ おそらく、レーチのいうとおりだろう。 ほんおも しようがっこう わたしは、小学校のときに読んだ『地底探検』という本を思いだした。あの本には、もっと大 ちかうみ きな地下の海がでてきたわ。 かいちゅうでんとうひかり レーチが、懐中電灯の光を、ひろがっている天井にむけた。 ひか ところどころが光りかかやいてる。 ひかり 「なんなの、あの光 ? み みち ちあき ちていたんけん あっ てんじよう こた ちかどうてんじよう ほん おお 149

2. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

かたぎりぶちょう 片桐部長がわたしのほうをふりあおぐ よこく ぶちょうせなか しゅんかん その瞬間わたしは、なんの予告もなく、部長の背中をけりこんだ。 まえすす ぶちょう おと ひめい 「ワギャギャギャギャ ! 」という悲鳴と、はでな音をたてて、部長とその前を進んでいたレーチ かいだん カ階段をころがり落ちていく。 「だいしようぶですか ? 」 じかん ちょうたい すうびようかいだんそこ 数秒で階段の底についたレーチと部長に対して、わたしと千秋、ジュン爺は、ゆっくり時間を しんちょう かけて慎重におりた。 いわさき ほね 「あぶないじゃないか、岩崎くん。骨でも折れたら、どうするつもりだ。」 ひ もんく かたぎりぶちょう 文句をいう片桐部長に、わたしは冷ややかにいった。 「スカートのぞいたら、けりをいれるって、いってあったでしよ。」 「のぞいてない ! 」 じようきようしようこ 「さっきふりかえったでしよ。状況証拠は、それで十分です。 しんばい 部長とちがって、レーチは心配のしかたがちがう。 かいちゅうでんとう 「よかった、懐中電灯はこわれてない。 ひじよろ・ かいちゅうでんとうしんばい 自分のからだより懐中電灯の心配をしている。たいしたもんだ。ほんとうに、レーチは非常 ぶちょう じぶん お お じゅうぶん ちあき じい

3. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

かいだんなが る。すいぶん火が小さく見えるから、かなり階段は長いことになる。 さんそ 「底で火が燃えてるだろ。つまり、酸素があるってことさ。 べんり ひじようじたい にちじようせいかっ なるほど。だけど、日常生活では役にたたないけど、こういう非常事態には、ずいん便利 おと , 」 な男だわ、レーチってやつは じゅんばんき でも、こんどはおりる順番を決めることで、ひともんちゃく。 かたぎりぶちょう かいちゅうでんとうも 懐中電灯を持ってるレーチ、つぎに片桐部長がおりることになったんだけど、わたしは反対 おも ちあき した。 ( 千秋だって、反対したかったと思う。 ) あんぜん 「なんでだよ、おれたちがさきにおりたほうが、なにかあったときに、おまえたちが安全だろ。 レーチカいうけど、こいつはよくわかってない。 せいふくき ちあき 「わたしと千秋のファッションを見てよ、制服着てんのよ。」 じよし こうほくがくえんせいふく 虹北学園の制服は、男子はともかく、女子はかわいいミニスカートだ。階段の下からのぞかれ す るのは好きしゃない。 いわさきちあき 「しゃあ、岩崎と千秋がさきにいけよ。 かいちゅうでんとう レーチが懐中電灯をわたそうとする。でも、それもいやだ。さきにおりたら、あぶないこと があったときに、すぐににげられないしゃない。 そこひ も ひ はんたい だんし み 0 み かいだんした はんたい 143

4. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

そとごぜんじ きおん あっ 外は午前十時くらい。だんだん気温があがり、暑くなってくる。 なつやす ごぜんじ べんきようあさ ( 夏休みの午前十時って、かならす、『勉強は朝のすずしいうちにやって、十時までは友だちを あそ なつやす れんそう 遊びにさそいにいかない。』っていう、夏休みのきまりを連想させる。 ) さむ でも地下は、半そででは寒いくらい、すすしい 「すごい冷気ですね。」 きようじゅ れいき 教授が、『冷気』のところを強めていった。 じゅんばん せんとう みずのじゅうしよく 地下におりる順番は、先頭が、 e シャッと短パンに着かえた水野住職、つぎが教授。そのあ じゅん とにわたしたちーー亜衣、真衣、美衣の順。 せんとう みずのじゅうしよく かいちゅうでんとう 先頭にいた水野住職が、懐中電灯のあかりを消した。 やみいちど 闇が一度におしよせてくる かいちゅうでんとう 「もうすぐ、懐中電灯がいらなくなるんです。 みずのじゅうしよく ちかどうさき 水野住職のことばどおり、地下道の先がばんやりあかるくなってきた。そして : かんせい わたしたちは歓声をあげた。 ちかどうぜんたい ひかり いぜんちか 地下道全体が光につつまれていた。以前、地下の池で見たのとおなじヒカリゴケが、地下道全 0 ちか はん ま 0 つよ たん いけみ き きようじゅ 0 とも ちかどうぜん 214

5. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

こ、」ろ こうえん、、、、、 美衣はお気楽だ。でも、わたしの心にはとてもひっかかる。どうして、この公園は暑くないの い / 、よ 「亜衣、立ちどまってないで、 かいちゅうでんとう せなか 背中のデイバックから懐中電灯をだした真衣が、わたしのうでをひつばる。 こうえん こうえん ほそみち にんあしおと 公園の、しやりがしきつめられた細い道。わたしたち三人の足音が、だれもいない公園にしず かにひびく よこはば すると、道のわきに、ほこらが見えてきた。けっこう大きい高さが二メート ル、横幅が三 メーーールど、、らい 「ねえ、おまいりしていこうよ。」 美衣が立ちどまる。 りやく 「ほこらって : : : おまいりしたらご利益あるの ? ってい、フカ ぎもん わたしの疑問に、 「知らない。でも、なにもしないより、おがんどいたほうがいいんじゃない。 なるほどね。 みち きらく おお : ほこらって、なんのためにある たか

6. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

「いきますか。」 かいちゅうでんとう がくせいふく レーチは、学生服のポケットから小さな懐中電灯をとりだす。 「あんた、い つもそんなもの、ポケットにいれてるの ? 「まあね、あとは : こゅび 、こ、、指より小さいポケットナイフだっ つづいてとりだしたのは、きれいな貝のかざりがっしオ月 「ぶっそうな男ね。 「それは、ナイフに対する偏見だね。ナイフがあぶないんじゃない。ナイフの使い方を知らない も つか ハカか持ったときに、ぶっそ、フってことばを使ってほしいね。 だから使ってるんだけどな : ・ いわさき 「それから、マッチ。岩崎、なにか紙きれ持ってるか ? 」 「ティッシュでもいい ? 」 わたしからティッシュをうけとると、レーチはそれにマッチで火をつけた。 「なにする気 ? 」 き あなそこな ひ 火のついたティッシュを、穴の底に投げる。火は消えることなく き おとこ たい 0 へんけん 0 かみ も ひ ひ も あなそこ 、穴の底のほうで燃えてい つかかたし 142

7. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

かいちゅうでんとう レーチが懐中電灯で、まわりを照らす。 みず むかしちかすいしんしよく 「すっと昔に地下水の浸食があって、そのあと水はなくなり、こんなじようぶなトンネルが残っ たーー・そんなとこだろう。」 かたぎりぶちょう 片桐部長が、うれしそうだ。 どうくつほらあなたんけんす おとここ ぶちょう レーチにしろ部長にしろ、どうして男の子って、こんな洞窟や洞穴の探検が好きなのかな ? やがて、道が二つにわかれているところにでた。どっちにいくか : ぶちょう 「部長、どうします ? 」 みぎ みち 「とりあえす、わかれ道にきたら、かならす右にいくことにしよう。そうすれば、帰りは左の道 をえらべば、まよわずもどってこられるだろ。」 かたぎりぶちょう しようねんたんていだん なるほど、さすが少年探偵団ファンの片桐部長。 みぎみち だけど、右の道をえらんだのは、ひょっとすると、とてつもない失敗だったのかもしれない。 みち ほそ 道は、だんだん細くなって、やがてレーチが、 ストップだ。 と、わたしたちをとめた。 「どうしたのよ、レーチ。」 みち て しつばい 0 かえ ひだりみち のこ 148

8. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

たい ゆき 体をおおっている。そして、ふわふわと雪のように天井からふってくるヒカリゴケ。 「きれい 美衣が手をのばす。 よみ くにひかりくに 「黄泉の国は光の国 : : : 。」 そうふ あんごう いっせつ みずのじゅうしよく 水野住職が、宗歩の暗号の一節をつぶやく きようじゅみずのじゅうしよく 教授も水野住職も、わたしたちも、ヒカリゴケに全身をおおわれた。わたしたちのからだが こがねいろひか 黄金色に光る。 やこうかいじんしようたい 「これが、夜光怪人の正体だよ。ー きようじゅ くろ いつもま 0 黒けのファッシ , ンの教授が、いまは黄色だ おうごんぶつぞう そうふ 「さあつぎは、いよいよ宗歩のかくした黄金の仏像だよ。 かいちゅうでんとうひつよう ばしよとお ヒカリゴケの場所を通りすぎても、懐中電灯は必要なかった。わたしたちのからだをおおっ ちかどうて ているヒカリゴケが、地下道を照らしだしてくれるからだ。 やこうかいじん べんり 「夜光怪人って便利だね。ー きようじゅ 教授はうれしそう。 て 0 てんじよう が ろ ぜんしん 215

9. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

じゅんばん かたぎりぶちょう ちあき けつきよく順番は、レーチ、片桐部長、わたし、千秋ということに決まった。 かたぎりぶちょう なか 「レーチに片桐部長 ! もしふりかえってスカートの中をのぞいたら、けりをいれるからねー ちかん 「おれは痴漢しゃない ! 」 しんよう レーチがどなるけど、信用できない。 あな こんなふうに、ひともんちゃくあったものの、なんとか穴におりることになった。 穴にはい「てすぐに思 0 たのは、すごくすすしい 0 てこと。階段の下のほうから、冷たい飃カ かすかに吹きあげてくる。 かいだん 」け 階段は、すこし苔がついていて、すべりやすくなってるけど、慎重におりるぶんには、あぶな っち こけ くない。まわりは土のかべで、そこにも苔がはりついている。 かいちゅうでんとう ちあき 明かりは、レーチの懐中電灯だけ。うしろをふりむくと、わたしのあとを、こわごわ、千秋 かついてくる。そして、そのうしろ おと ジュン爺がカチャカチャとつめの音をたてて、わたしたちのあとからおりてくる。 るすばん 「あれ、ジュン爺 ? ついてきたらダメでしよ。お留守番ー かお わたしが手でしっしっとやっても、ジュン爺は知らん顔。へいきでついてくる。 「もうすぐっくぞ。 じい じいし しんちょう 144

10. 踊る夜光怪人 : 名探偵夢水清志郎事件ノート

じたい 事態に強い。 かいだん ひろ ある 階段をおりたところは、畳が二枚くらいしける広さがあった。そして、人が立って歩けるくら さき つうろ うえみ あな いの通路が、先にのびている。上を見てみると、はいってきた穴がバレーポールくらいの大きさ に見えた。 「どうする ? 」 ぶちょうある レーチがわたしたちにきいたけど、答えるよりさきに、部長は歩きだそうとしている 「ここまできて、ひきかえす手はないだろう。」 かたぎりぶちょうせいかく じゅんぶんがくじゅんぶんがく ぶちょうぶんがくたいけん 片桐部長の性格がよくわかった。ふだんは純文学、純文学といってるくせに、部長の文学体験 えどがわらんぽ しようねんたんていだん は、ぜったいに江戸川乱歩からはじまってる。いまのこの乗りは、少年探偵団だ。 しようねんたんていだん 「ほっ、ばつ、ばくらは少年探偵団ー こ′」えうた ぶちょう お 小声で歌いながら、わたしは部長のあとを追った。 みちたんちょうぽんみち かいちゅうでんとうも ぶちょうちあき 道は単調な一本道だ。懐中電灯を持ったレーチのあとに、わたし、部長、千秋、ジュン爺の じゅんばんすす 順番で進む。 ちかどう にんげんて 「これは、しぜんにできた地下道に、あとで人間が手をいれたんだろうな。」 み つよ たたみ て こた ひとた 0 おお 146