日本 - みる会図書館


検索対象: 違法弁護
26件見つかりました。

1. 違法弁護

436 茶木則雄 世界で最初のミステリーが書かれたのは一八四一年ーーエドガー・アラン・ポーが自ら編 こうし 集する雑誌《グレアムズ・マガジン》に発表した「モルグ街の殺人」をもって嚆矢となす、 というのが定説だ。もちろん、それ以前にも殺人を扱った物語は数多く書かれていた。 ろうと思えば、ギリシア悲劇や旧約聖書の時代まで遡ることができる。しかし、論理を基調 とする謎の解明を主題に据えたのは、ポ 1 が初めてであった。 ひるがえ 翻って日本では、大正十一一年 ( 一九一一三年 ) 、開祖ポ 1 のをベンネームに摸した江尸 川乱歩が、雑誌《新青年》に三銭銅貨」を発表している。これが国産ミステリ 1 の第一号 である。世界から遅れること八十一一年後のスタ 1 トだった。 以来七十五年、日本のミステリーは、つねに欧米の後塵を拝してきた。五十年遅れている と言われた時代もあるし、一一十五年遅れていると言われた時代もあった。野球にたとえて言 えば、アメリカの大リ 1 グと日本のプロ野球くらいの差が、いつの時代もそこにあったので ある。が、野球にその差は徐々に縮まり、九〇年代に入ると、日本ミステリーは欧米の 解説

2. 違法弁護

はフィクションである。 執筆にあたっては野村一一響『日本の検『日本の検察官』などを 参考にしたが、実在の黒、団体、役職などについてもすべて脚色され ており、作者が生み出したフィクションである。 臼翡一、小、老川知岡圭介の罠にいたします。とく に臼と談社の岡圭介氏の尽力がなければ舎は完成しなかった。 ここにして深′いたします。 ( 著者 ) ・本書は一九九五年十一月、小社より単行本刊行されました。

3. 違法弁護

している町弁の連中は次々と没落していくにちがいない。 もともと弁護士の数が足りないという認識自体、バカバカしい幻想だったのだ。司法改革 協議会の場で、増員推進派は「アメリカには八十万人の弁護士がいる。日本ではたったの一 万五千人しかいない」とエキセントリックに叫び立てた。しかし、弁護士人数の単純比較が いかに現実ばなれをしたまやかしであるかは、渉外法務でアメリカの弁護士とやりあった経 験をもつ者なら誰にでもわかる。財則の立っている場所からはるか下方にひしめいている町 弁の多くは法廷弁護士にすぎない。だが、アメリカの弁護士は何でも屋だった。アメリカの 弁護士は法廷活動にとどまらず、税金処理、特許申請、不動産登録、官庁宛の書類、社 会保険請求など、およそ法律と名のつく仕事は何でも引き受ける。彼らは法廷の内外を問わ ず自由に仕事をあさることができた。それに対して、わが国の町弁は事務所と法廷の間だけ をひたすら往復している。法廷活動以外に職域をひろげようとしても、裁判所の外には税理 略士、弁理士、司法書士、行政書士、社会隘労務士など隣接職業の専門家がごろごろしてい 謀た。彼らはそれぞれが強固な細はりをもっている。弁護士制度の創設以来、日本の町弁はず 章っと法廷の中に閉じこめられていた。 五 窓ガラスに浮かぶ財則の顔に冷笑がひろがった。 第 問題は弁護士の人数ではなく、わが国の弁護士が大都市に偏在していることだ。いまでも 都市部は弁護士過剰になっている。そのうえ、日本の弁護士は圧倒的に職域がせまい。そん

4. 違法弁護

326 そめてつづけた。 「そして今度はロシア軍のサイレント・ガンだ。情況証拠から考えれば例の倉庫に隠してあ ったのはぶっそうな消音銃ということになる。これが連中のした品物だ」 「でしようね」 「ただ、税関がらみというのはどうかな」 「なぜ ? 税関署員の協力があった方が密輸は楽じゃない ? 「もっと簡単な方法があるだろう。どこかの海岸で陸揚げするとか、篶船は洋上に停泊し たまま日本の漁船に積みかえるとか」 「その方がずっと大変よ 。 ) い、相手はのために遠洋航海してくる。横浜の倉庫に隠し ておいたのだから、大陸に近い九州や新潟に陸揚げしたということはないでしよう。あの銃 がロシアから来たとして、太平洋岸に陸揚げするには日本をぐるっとまわってこなくちゃな らない。これは小型船だとむずかしい。ある程度は大きな船じゃないと・ : 「中型の貨物船だってどこかには陸揚げできるだろう」 「でも、停泊できる海岸線がすごく限られてくる。座礁の心配があるから。それに発見され るリスクも大きいじゃない。港もないのに貨物船がぶかぶか浮かんでいたら目立ってしま う。とくにそれが深夜じゃね」 「そんなものかな。で、もうひとつの方法が無理だっていうのは ?

5. 違法弁護

443 解説 『司法戦争』の完成までに三年の歳月を費やしたことが、その何よりの証左だろう。練りに 練り、推敲に推敲を重ねなければ、あれほどの傑作は上梓できるものではない。 奎曰はそういう意味で、日本のリ 1 ガル・サスペンスに真の夜明けを省ける原動力になっ た作品だ、と私は思っている。法曹三部作の第一一作という本書の構造的背景を知って読め ば、その評価は格段に上昇するはずだ。中嶋作品の文庫読者は、後に『司法戦争』という歴 史的傑作が控えていることを考慮したうえで、心ゆくまで堪能していただきたい。 ところで、グリシャムの『評決のとき』は、『法律事務所』が大ヒットしたあとペー バック化され、一一百万部を突破する大ベストセラ 1 になった。奎日もいずれその軌跡を追う 可能性はーーアメリカの莫大な部数は日本で望むべくもないがーー大いにある。そうならん ことを祈って解説の筆を置きたいと思う。

6. 違法弁護

328 「システム的にはアメリカの捜査で採用されているものと同じ」 「たしかに、向こうじゃ沿岸擎備隊が監視衛星を使って船を追尾している。かなりのハ イテク装置だぜ」 「そのハイテク装置が空を一一十四時間まわっているの。不が洋上で長時間停止したら、 密輸品の受け渡しをやっている可能性が大きい。そこで、巡視船や航空機が現場に直行す る。だいたい、外国船とする日本の船なんてもともと怪しげなやつが多いから、こっそ りと発信装置をとりつけておけば船の位置はどんびしやりでわかる」 「なるほど。そういう仕かけになっているのか。バカでかい海の上での積みかえも結構むず かしいんだ」 「昔ならともかく、いまじや見つかる心配が大きいでしようね」 「じゃあやつばりアゼック社は税関を通して : ・ 「それこそ無理よ」水島はびしやりといった。 「渉外セクションにいるときいやというほど経験したでしよう。日本の通関手続きは複雑だ し、パラノイア的に徹底している」 「きみが貿易関係を十分に調べたのはよくわかった」同僚アソシェイトはネクタイをつまみ あげ、白旗のようにひらひら振った。 「だから結論を頼む」

7. 違法弁護

232 「野坂巡査を殺した弾頭、そいっから割り出せませんか」 「弾頭についてはまだ科捜研の結果は出ていない。銃のタイプは不明だ」 「大量のとなると中国ルートのトカレフじゃないですかね」 「さあ、どうかな」捜査課長は疑わしげな顔をした。 「日本のプラック・マーケットはくさるほど金をもっている。最近じゃあらゆる種類の銃の 売りこみがあるんだ。いまさら粗悪な模造品を大量購入することもあるまい」 たしかに柳原課長のいうとおりだ。柴崎は窮屈な姿勢で脚を組みながら思った。トカレフ は旧ソ連の軍用拳銃だが、日本に入ってくるトカレフの大部分はトカレフそのものではな 。中国でライセンス製産された三十口径のコピーだった。これが一時期大量に流れこみ、 いまでは押収される銃総数の一一割近くに達していた。中国製トカレフはマ 1 ケットでも朋 れを起こし、末端価格で一丁十五万円を切っている。製造元が中国だから仕入れ値は安いに しても、篶という危険を冒すには利益幅が少なすぎる。入をするなら、もっと値の張 る高級品の方が割に合うはずだ。 「警察に勤めている人間なら自分のデスクに犯罪白書の一冊くらいは置いてあるだろう。も っとも実際に読んでいる人間が」柳原は部下の顔を見まわした。 「この中でどれだけいるかは疑問だがな。法務省の本にしては読みやすくなっているぞ。カ ラー印刷も増えて、うちの警察白書といい勝負だ」彼はにこりともせずにいった。

8. 違法弁護

講談社文庫刊行の辞 二十一世紀の到来を目睫に望みながら、われわれはいま、人類史上かって例を見ない巨大な転 換期をむかえようとしている。 世界も、日本も、激動の予兆に対する期待とおののきを内に蔵して、未知の時代に歩み入ろう としている。このときにあたり、創業の人野間清治の「ナショナル・エデュケイター」への志を 現代に甦らせようと意図して、われわれはここに古今の文芸作品はいうまでもなく、ひろく人文・ 社会・自然の諸科学から東西の名著を網羅する、新しい綜合文庫の発刊を決意した。 激動の転換期はまた断絶の時代である。われわれは戦後一一十五年間の出版文化のありかたへの 。いたすらに浮薄な 深い反省をこめて、この断絶の時代にあえて人間的な持続を求めようとする 商業主義のあだ花を追い求めることなく、長期にわたって良書に生命をあたえようとっとめると ころにしか、今後の出版文化の真の繁栄はあり得ないと信じるからである。 同時にわれわれはこの綜合文庫の刊行を通じて、人文・社会・自然の諸科学が、結局人間の学 にほかならないことを立証しようと願っている。かって知識とは、「汝自身を知る」ことにつきて 。現代社会の瑣末な情報の氾濫のなかから、力強い知識の源泉を掘り起し、技術文明のただ なかに、生きた人間の姿を復活させること。それこそわれわれの切なる希求である。 われわれは権威に盲従せす、俗流に媚びることなく、渾然一体となって日本の「草の根」をか たちづくる若く新しい世代の人々に、心をこめてこの新しい綜合文庫をおくり届けたい。それは 知識の泉であるとともに感受性のふるさとであり、もっとも有機的に組織され、社会に開かれた 万人のための大学をめざしている。大方の支援と協力を衷心より切望してやまない。 一九七一年七月 野間省一

9. 違法弁護

「エムザに ? 」 「そう。こいつでエムザ総合法律事務所に揺さぶりをかけましよう。向こうがどう反応する 「揺さぶりだって」岡戸は一瞬たじろいだ表情を浮かべた。 「アゼック社とエムザでは話が全然ちがう。相手は弁護士だぞ」 「別に弁護士を逮捕するわけじゃありません。とりあえずエムザの方も任意捜査でいけばい 「どうしてそんなに頭の中が単純にできているんだ。任意捜査にしたって変わりはない。工 ムザの弁護士たちは激怒するにきまっている」 「激怒のあまりポロを出すかもしれないでしよう。冷静な弁護士より、怒り狂っていた方が こっちにはかえって好都合ですよ」 染「バカいうな。好都合どころか危険が大きすぎる。へたをすると、捜査本部は日本最大の法 汚律事務所と一戦をまじえることになってしまう。少なくともいまの段階でそんなやっかいご とはごめんだ」 章 第「係長の考えはよくわかりました」柴崎は困惑している岡尸の目を直視した。 「それでも、この件は捜査会議にはかってください」 か

10. 違法弁護

「それじゃ司法取引になりませんよ」 「きみは罪のなさそうな顔をしてきわどいことをいう。もともと司法取引なんてアメリカの 話だ。日本の検察は相手が誰であっても取引などしない」 彼は微妙に変化したロぶりでつづけた。 「ただ、私がここに来るについては、上司からきみの協力をとりつけるように命じられてい る。さっきいったように協力者を保護するのがわれわれの立場でもある」 「保護する・ : ・ : ー協力者の保護と司法取引はどうちがうのか ? 水島の頭の中では両者は寸 分のズレもなく重なり合った。 , 彼女はいま録音テープがまわっていないことを海やんだ。 「わかりました」水島はべッドに身体を横たえたままでうなずいた。 「アゼック社の企業グル 1 プについて知っていることをお話しします。自分自身が殺されか けていますからね」彼女は左腕の鈍痛を意識しながらいった。 略「でも、まずわたしの質問に答えてください」 謀「この事件の北尸後関係か ? 」 章「それと咼検公安部が事件に関心を寄せる理由です」 五「きみは神奈川の所属だったな」重田が唐突にたずねた。 「えっ ? 「神奈川弁護士会の会員だろう」