けん 解説 げんざい せかい 現在、わたしたちがすんでいるこの世界とはちがうべつの世界 ( 異界 ) が、どこかに そうぞう あるにちがいない。すっとむかしから、人びとはそうしんして、さまざまな想像をめ じごく よりゅうぐうじよう ′」くらく ぐらしてきました。極楽、地獄をはじめ、あの世、竜宮城、よみの国、ニライカナ ヤ」とば イ、など異界をあらわす言葉はいろいろあります。 うらしまたろうむかしばなしゅうめい りゅう かいていりゅうぐうじよう せ カメの背にのって海底の竜宮城をたすねた、浦島太郎の昔話は有名ですが、竜 ぐうしゅんかしゅうとうどうじ せかい 宮は春夏秋冬が同時にあるという、とてもふしぎな世界です。太郎がそこでくらし りゅうぐう じかん ちじよう びやくねん ねんかん た三年間は、地上にもどってみると、三百年がすぎていたといいます。竜宮の時間 よ は、この世よりもゆっくりながれているのでしよう。 よ こうつうじこ はなしかくち あの世をみてきたという話も各地にったえられています。交通事故にあった人の体 はなばたけ いちめん 験では、くらいくらいトンネルのようなところをぬけると、一面のお花畑がひろが ふね り、目のま、んには日ゞ , 力ながれていたそうです。川にうかぶ船には死んだおじいちゃん し・カし せかい たろう し 常光徹 たい 1 38
ゅび 、」、つい 好意でとめた男かしつはとんでもないどろばうだった。「もえる指」では、どろば きみよう ゅび うは気づかれぬために奇妙な手の指に火をつけますが、このひからびた手はいったい みせ なにでできているのでしよ、つか。それにしても、このできごとのおかげで店がにぎわ つうろ し力し ゅめげんじっせかい ったというのはゆかいです。夢は現実世界と異界とをつなぐ通路といってよいでしょ ゅめ あくまのうふ 「ホタルになった宝」では、悪魔は農夫の夢の中にあらわれて話をもちかけてきます。 のうふ さくりやくしつばい たから たましいをわたさすに宝を手にいれようとした策略は失敗におわりますが、農夫の したたかさがかんしられる話です。 ふうしゅう そうしき しお お葬式からかえったら塩をまくというのは、ひろくおこなわれている風習です。 きょ しお 塩にはけがれたものをはらいきよめる力があるとされているからです。「清めの塩を ろう“は しお わすれたら : ・」では、その塩をまくのをわすれたために、あやしい老婆にとりつかれ すがた たのです。しかし「さっさとかえれ」とどなられて姿をけしたところをみると、気の 小さい霊だったのかもしれません。 たから はなし はなし しお 1 41
やおはあちゃんかのっていました。ちかっこうとすると、うしろのはうでだれかが しき こえ 「もどれーもどれー」とよんでいます。声のするはうにふりかえると、ふっと意識が びよういん もどり、気がつくと病院のべッドにねていたというのです。 みぢか ゅめ かな ほんしょ 本書のテーマである、金しばりや夢は、わたしたちにとって、もっとも身近な異界 しき 体験といってよいでしよう。金しばりは「意識ははっきりしているのに、からだがう たい げんいん たいけん がっこうかいだんだいじてん ごかせないとかんしるような体験」 ( 『学校の怪談大事典』 ) のことです。その原因は、大 9 けんきゅう のうせいりがく 脳生理学という研究によってあきらかにされているそうですが、しかし、体験者の 中には、なにか目にみえないふしぎな力によってひきおこされているとかんかえてい る人もすくなくありません。 ひさんげんじっ 「金しばりレストランかいまここにあるわけ」は、戦争という悲惨な現実が、ふたり の金しはり体験をとおしてたちあらわれてきます。このちょっとかわったレストラン おも どせんそう ししやこえ なまえ 一一度と戦争をくりかえさないという思いかこめ の名前には、死者の声をわすれない、 りようりあじ きやく られているのです。レストランがいつもお客さんでいつばいなのは、料理の味のよさ たいけん かな たいけん かな せんそう たいけんしゃ し力し
ロロ 0 釧 3 けしき だね。おふたりさん、景色のいし わらし 〃童子の間みにしときましたで」 わらし 「えつ、〃童子の間み ふみ子が、ききかえした。 わらし 「そうだよ。ときどき、童子があ そびにくるからな、そんときは、 なかよくしてくれさ」 わたしたち、おばさんにいわれ わらし るままに、いちばんおくの〃童子 あんない の間みに案内された。 5
女をとんだみ ぐんまけん ちゅうがく わたしたち、中学の夏休みに、群馬県のある村の《むかしゃ》とい みんしゆく う民宿にとまった。 なまえ 「ひろみちゃん、《むかしゃ》だって、へんてこな名前ね」 ) っしょにいったふみ子が、ケラケラとわらった。 みんしゆく すると、むかえにでてきた民宿のおばさんが、 「そんなにおかしいかね。そんでも、むかしから《むかしゃ》っていう なつやす もちづきしんざぶろう 望月新三郎 5
かめ かうな ・金しばソにかかった セ日ド手 ーまじつ り 71 ストは・ 耳はきこえマいる ′て・ていけ ! 」て嶇・な力、 目はけ 5 れるんと て " じなりつけ そうて・ないん力、 " いる
: し - ンビー 金一し、、は一一 ( リ ( 一に一あ ) ) つには ーを弋 ・金しばりにいやすいひと は " し , い弋ん ・金しばりにう 里よ、蚤旌 かかリやすいこ いわれていも ん いさ、し 中とる ~ よ目な うこうと私を しているこき 夜更かしをして つかれているん びもね
えの写真のように。 「しゃあ、あの女の人、ひつぎからでて : : : 」 と、ママをみると、ママは青い顔してうなすいた。 ゅめ 「そう、あれは夢じゃあなかったのよ。おなし日に亡くなった三人は、 まよなか いっしょに、あの世へいくわけでしよ。だから、真夜中にあって、あい さつをかわしていたんだわ」 しやしん かお 7 4
もちろんママも、いままであったことのない、人たちだったという。 「しゃあ、もうひとりの男の人は : : : 」 こえ ママの声がふるえている。わたしはママと、いちはんはじの、ひつぎ の写真をみにいった。 ゅめ やつばり、夢にでてきた、男の人だった。 よ、つふく しやしんきもの 写真は着物ではなく、洋服だったけれど。 こ、つつうじこ びようき ママがきいたところによると、女の人は交通事故で、男の人は、病気 た玉 で亡くなったということだった。 りようしん せいじんしき 女の人の両親は、むすめさんをひつぎにいれるとき、成人式できた、 せいじんしき ふりそでの着物を、きせてやったという。成人式にとった、ひつぎのま しやしん きもの 6 4
ゅめ 「みて、となりの写真 ! ゅうべ、わたしの夢に、でてきた人なの。あ ったことないのに」 しやしん するとママは、写真をみて、なんともいえないへんな顔して、わたし にきいた。 ゅめ 「どんな夢だった ? ゅめ 「おしいちゃんが、生きかえった夢」 ゅめ わたしは夢のことを、くわしくはなした。 ママは、しんじられないというようすで、 ゅめ 「おなしだわ。なにもかも。ママもゆうべ、まったくおなじ夢をみたの。 でも、そんな : : : 」 しやしん かお 5 4