においてあ くち エリザベスは、しゃべるのをやめました。口がばかんとあきました。エリザベスは、 ゆかを見つめていました。下をむいたケアリイは、 きな黒い水たまりが、べッドか あし らエリザベスの足にむかって、ゆっくりとひろがっていくのを見ました。エリサベス の目は、流れてくる水を追 0 て、そのみなもとをつきとめました。口がいっそうたき くあき、その目は、べッドから子どもたちへと、ゆっくりうつっていきました。エリ さき あたま かお ザベスは、子どもたちを、頭のてつべんからつま先まで、よく見ました。よごれた顔、 てあし かみかわ ぬれた髪、皮のむけた鼻、日に焼けた手足にぐにやぐにやとからみついている、やぶ けたパジャマ。 しいました。「あきれた ! 」 「まあ , - ーー。」エリザベスは、ゆっくりと ) くち あお エリザベスは、ロをばくっととしました。目がぎらぎらしています。青ざめたほお に、ゆっくりと赤みがのばっていきます。 ~ こ はなひ 205
と、ケアリイ。エリザベスが、タごはんをおばんにのせて、やってきたのです。 「さ、シーツのわにこばしちゃだめですよ。」エリザベスは、息をきらせながらいいま した。「おばんは下にさげといてくださいな、ケアリイさん。きようはわたしの夜の外 しゆっぴ 出日ですから。 よるがいしゆっぴ 「夜の外出日 ? 」 ケアリイは、エリサベスのことばをくりかえしました。ケアリイはにこにこしはじ めました。 「なにも、おかしいことじゃありませんよ。ーと、エリザベスは、つんとしていいまし た。「そうい、つおやくそくになっているんですからね。さ、あなたがたのおばさまは、 くあいがわるくていらっしやるんだから、おいたをしてはいけませんよ。おばさまは した ゅう よるがい
に乗って、日ぐれがたに二階のまどのところにきて、子どもたちに中にいれてもら、つⅧ ことに医」士りました。 チャールズは、ポールのシャベルをなおしてやりました。えびをしやくうのにも むし なんにでもっかえそうな、虫とりあみも見つかりました。 子どもたちは、服をぬいつものようにおふろにはいりました。その夜、エリザ ベスは、自のねえさんの小さいむすこの手術について、しゃべりたが 0 ていました。 しんしつ エリザベスは、おふろばから寝室へと、子どもたちにくつついて歩き、もうみんなが よく知っているこまかなことを、話してきかせました。子どもたちはあとになって ゅうしよくきゅうじ 知ったのですが、そのあとで、エリサベスは、べアトリスおばさんの夕食の給仕をしな がら、ためいきをつき、「あの子たちをベッドにいれるので、くたくたになりました わ。」といったそうです。 かいだん けれど、そのエリザベスも、階段をどしんどしんとおりていってしまいました。 ひ ふく 力し み あ なか
しんしつ 自分たちがポールの寝室にもどっているとわかると、子どもたちは、ほんとうに ふく ほっとしました。ケアリイとチャールズは顔をあらい、ポールに服をきせてやり、エ あさ リザベスが朝ごはんを知らせるどらをならすのに、あやうく間にあったのでした。 朝ごはんのとき、ポールは、おかゆをまえにして、ねむってしまいそうでした ) はんのあと、ケアリイとチャールズは、ゆうべねむらなかったべッドのことで、べ、 ドをととのえておいてくれてありがとうと、エリザベスにお礼をいわれ、わるいよう な気持ちがしました。 あさ じぶん 7 二どめのばうけんへ かお 128
「これで、おしまいだわ。」 しました。 と、エリザベスはい ) しんちょうに、エリザベスは、もういちどあたりを見まわしました。はねぶとんの くろ あか しまでは黒すんだ赤い はしをつまみあげました。うすいピンクだったはねぶとんは、 ) 色になっています。はねぶとんは、エリザベスの親ゅびと人さしゅびのあいだに、すっ しりとたれていて、みかいたゆかのおには、ふとんからのすいてきか、とけいのように しん ただ きそく正しく、ゆっくりとおちています。エリザベスは、ふとんをはなしました。信し かお られない、 といった顔で、ちょっとふとんを見つめてから、もういちどポールとケア リイを見ました。エリザベスはほほえみましたが、すごみのある、まるで、あいてを おどすような、かすかなほほえみで、目はわらっていませんでした。 「わかりました。 エリザベスは留にそういうと、子どもたちに背をむけて、 ~ やをでていきました。 おや ひと 207
べッドにはいっておいでです。 「べッドにはいっておいで ? 」 ケアリイは、また、おうむかえしにい ) あやういところで、ひっこめました。 「おいたは、なしですよ。」エリザベスはくりかえしました。「あなたがたには、どこ かおかしいところがありますね。きっと、ねこをかぶっているんですね。 かいだん 子どもたちは、エリザベスが階段のおどり場で、ためいきをつくのをききました。 にん エリザベスが、角をまがるのをききました。それから三人はスリッパをぬぎすてて、 おと おどりました。音をたてずに、きんちょうして、息をころして、ぐるぐるまわり、と うえ びはね、それから、ハアハアあえぎながら、ポールのべッド の上にどさっとたおれま した。 「どこにいきましよ、つ。 かど しました。そして、のこりの「にこにこ , を、
か読 い感しがしました。 げんかん ひろかいだん 子どもたちは、家をいやがりました。大きな玄関ホールや、はばの広い階段をね。 くち エリザベスのこともいやがりました ( エリザベスというのは、ロやかましい、年とっ た政です ) 。おばさんのこともいやがりました。だ 0 て、おばさんは、ふちがピ あおめ ンクつばい色の、うす青い目をしており、ほほえむことなど、めったにないのですか ら。でも、甦や、甦をれる小川や、そのむこうの野原にある、おいしげつた生けが ば′、そう きや、 しいかおりのする牧草は気にいっていました。 にち そと 三人は、一日じゅう外にいました。納屋の中であそびました。 た。甦の小道であそび、おかのわであそびました。 じかん かえ 食事の時間には、きちんと帰りました。子どもたちはお客さんでしたし、それに、 しし子たちだったからです。 つぎからつぎへと日はすぎていき、どの日もおなじようでしたーー、ープライスさんが しょ′、じ なや おお なか きやく かわ 川べりであそびまし とし
とりあげて、つくえにもどりました。うっすらうかべたほほえみは、およそ、とりつ くしまもないものでした。 しました。「あなたたちのお 「も、フ、なにをいってもだめですよ。 , と、おばさんはい ) でんぼう かあさんに、電報をうちました。エリザベスは、荷物をつくっていますーーエリザベ スがわたしにしてくれる、さいごのサービスです。ここ何年も、やめたい、 やめたい といっていたのですから。」 「でも、ほんとうなんです、べアトリスおばさん。ーケアリイが、きゅうにいいだしま しようめい した。「海なんです。証明してごらんになれます。」 べアトリスおばさんは、半ふりむきました。小鳥のような手から、ペンがそっと ぶらさがっていました。 「どうやってでしようねえ。 おばさんは、ひにくをこめて、ききました。 うみ にもっ なんねん 211
ケアリイは、気がすすまないでいるプライスさんの手に、ほうきをおしこみました。 みんなは、プライスさんがまどじきいをこえるのをてつだいました。 「ああ、プライスさんは、とてもしんちょうに、ほうきのはしにしがみつきながら、 しいました。「こんなふうにやるんじゃないのに。 「わかってますプライスさんをちょっとおしながら、ケアリイはささやきました。 「でも、しかたがないでしよ。 三人は、プライスさんがゆっくりとただよいおりていくのを見ていました。それか ら、プライスさんがスカートをつまみあげ、ほうきをもって、しげみの中にかくれる にんあんしん のを見ました。プライスさんのすがたが見えなくなってしまうと、三人は安心して、 ほうっと息をつき、うしろをむいてー - ーーエリザベスの目に面とむかうことになりまし うえ ぶん しました。「三十分もテープルの上 あさ 「朝ごはんが、ー戸口に立っているエリザベスはい ) とぐちた めん なか 204
ゅう ) ? ポール。ケアリイは、まだいっていました。「もしもよ、エリザベスがタ そうしたら、どうな ごはんをもってあがってきたときに、べッドがなかったら : ようじん る ? あたしたちは、とても用心ぶかくやらなきゃいけないの。なんだかするいみた びるま いだけど、とにかくプライスさんにやくそくしたんだから。まっ昼間に、 ある 乗って、そのへんをやたらにとんで歩くようなことはできないのよ。」 くち みず ポールはロをすすぐと、いつものくせで、その水をのんでしまいました。 「わかってるの ? ポール。あたしたちは、おとながみんなべッドにはいるまで、待 たなきゃいけないのよ。いらっしゃい。髪がぬれているうちに、とかしてあげるわ。」 しんしつ ケアリイとチャールズは、ポールにくつついて、ポールの寝室にはいりました。三 ドの玉か 人はべッドにこしをおろし、ポールがねればちょうど右耳の五にくる、べ ざりを見つめました。それは、ほかの三つとそっくりに見えました。 ) ました。「ば 「魔法はきかないと思うな。」と、チャールズがいし く、なにをかけたっ の まほう かみ たま