成長著しい企業法務が花形 海外進出巡りわかれる戦略 、業界の中では歴史が浅いものの、日本経済の最先端にかかわり、 酒兆雅浩 報酬も高い企業法務は司法試験合格者が最初に目指す道た ( 編集部 ) 業が目的を達するために、法最低ラインだ。日本弁護士連合会のの大手法律事務所「チャンドラ 1 企 律的な側面から創造性のある調査 ( 2014 年 ) によると、弁護アンド・トンエック」を買収、経営 を提案するのが、日本の大手法士年収の霙値は 1430 万円。企統合し、弁護士約人の事務所をグ 律事務所が携わる「企業法務」だ。業法務は、司法試験合格者がまず「就ル 1 プ下に収めた。日本の法務 所が、舞の大規模有力事務所を「吸 弁護士を多数抱えて企業法務を受け職」を目指す弁護士の花形業界だ。 国内統合を終えた大手事務所が本収」するのは初めてとなる。 持っ業態は、幻世紀に入って確立さ 格的に舞に目を向け始めたのは川 日本の法務所が舞に進出す れ、まだ歴史は浅い。 るのは「日本企業の現地でのサポ 1 欧米では数百人規模の法律事務所年前後。それまで来只にしかなかっ , が珍しくない中で、日本で初めて 1 た事務所が、ここ 657 年で一気にト」 ( パ 1 トナ 1 弁護士 ) という面が 00 人を超える事務所が生まれたのアジア各国へ広がった。企業のグロ大きい。企業側から見ると、舞案 は 2000 年だ。 1990 年代後半 1 バル化に沿い、大手事務所の舞件には「日本語で話したい」「現地の 弁護士は日本企業のことを理解して 以降、日本経済は転落、低迷を続け事務所は一般的になった。 たことから、企業の求めるリ 1 ガル 弁護士数を含めた大規模化、舞くれない」という丕女がある。その ため、日本の舞拠点に相談に訪れ サ 1 ビスが拡大。年の北海道拓殖進出と「横並び」で発展を続けてき 銀行や山一証券の破綻など、歪債た大手法務所で、新たに大きなるという一一】ズだ。 権処理問題が注目を集めた。また不動きがあった。 しかし、舞では当然、その国のス 動産の証券化、 ( ム拂・買収 ) . 弁護士数で国内 4 位の森・濱田松法律がべ 1 スになる。日本の士 といった新たなビジネススタイルが本法務所は 1 月 1 日付で、タイ だけで対応できることは少なく、結コ 局現地の弁護士に頼まざるエ 生まれたことも大 きな要因だ。 を得ない。これまでは、そ ャ コイ一ガ ンバボンス の間を取り持つ「つなぎ」 企業法務は案件 バドガシンペ ( 企業が依頼する の役割でしかなかった。 森・濱田松本法律事務所 業務 ) の複雑化、 チカクンク『 はそれをすべてワンストッ 大型化により、専 、ヨ氿ミコ む 含 プでやろうという取り組み 門性を求められる 所 務 ことから、報酬は だ。マネ 1 ジングパ 1 トナ 事 港一ホルノノボ 連成 高額だ。事務所に 1 の棚橋元弁護士は「アジ 香、、、ホタれカ 2 ハガ 関作 、ノ、レャ 出資するなど経営 集「アの中で日本の法務所 海 fl 海加レジ、、ゾ し編 上ン上ャ に携わるパ 1 トナ として、質、規模で一定の 執基 1 弁護士は年収が ぼ ( プレゼンスを持ちたいと考 駐取 常の 億単位も珍しくな えている。それを実現する 8 がヘ 公合 一つの形だ」と話す。 。新人弁護士で 江護務 も 1000 万円が 大属各、事務所。」の統合につ 注出 ーユ白ーク・ ・シリコンバレー
弁護士 vs 会計士司法書士 る。グローバルで成長する いて、他の大手法務所に具物「企業から「舞に な動きはなく、「機会があれば否定し人を置いていると という視点を持ち続けなけ 点 い、つことをアピー ないが、喫緊の課題とは考えていな ればならない」。大手法 拠 ルしたいだけでは 務所で経営にかかわるパ い」との立場だ。 外 トナー士は強調する。 ないか』と批判さ 海 れることも多い」 一方で「国際水準」は、 翻訳屋との批判も の と話す。現状では、 何も舞進出だけで求めら これまで日本の法務所の舞日本企業の活動は - れるものではない。日本企 業がグローバル展開してい 進出については、外資務所からアジアよりも米国 事 や欧州のポリュ 1 る現状では、国内にとどま 疑問の目で見られていた。 律 っても、国際的な水準でサ どこかがその国に初めて進出すムが圧倒的に多 一 ( 法 それなのに、 る。すると他の事務所も「うちもや 1 ビスを提供することが求 手 ります」と続く。それを数カ国に作日本の法務所 められる。日本企業同士で 大 がニュ 1 ョ 1 クや る。一つの国に 2 、 3 人置くだけな も、大規模な取引では日本 らそれほど難しくない。現地で真剣ロンドンに事務所 の伝統的な契約ではなく、 トの問題が日常的に生じる状況だ に企業法務に携わるためには、一定を設けないためだ。その理由につい 欧米から「輸入」されて日本語に翻ス の規模が必要にもかかわらず「最初て、このパートナー士は「欧米 その場合の調整幺は「総合的判訳された形式が用いられるのが一般ミ の数人規模が何年も続いているだけでは数百人規模の事務所がある中断」 ( 大手法律事務所パ 1 トナ 1 弁護的になっているからだ。 で、まったく意味がない」という指で、こっちが 5 人、人では影響力士 ) 。純粋に早く依頼があった側を優多数の弁護士を抱えて組織化するエ 摘だ は保てず、まったく意味がない」と先するならやむをえないが、「案件の大規模法律事務所「ロ 1 ファ 1 ム」 外資第務所のパ 1 トナ 1 弁護士明かす。 金額、社会的影響、依頼者との関係という形態は、欧米で発展したもの は「中途半端にコストのかかる一舞それでも今後日本の大手法務の深さ、さらにはパ 1 トナーの発言だ。日本の法務所はそれを「後 に拠点を置くのではなく、国内での所は、発展のためには「舞」に目力」によって左右されている。調整追い」している。 リ 1 ガルサービス充実に努めたほうを向けざるをえない。その大きな理は煩雑になるだけでなく、依頼者に 日本の法律事務所が力を入れてい が日本企業のためになるのではない 由は、コンフリクト ( 依頼者間の利悪影響を及ばしかねない。 るアジアで、ロ 1 ファ 1 ムは現地の か。現状は『高価な翻訳屋』でしか害対立 ) だ。 法律サ 1 ピスを「内製」するという ない」と厳しい。日本の大手法現在、企業が求める大規模案件を国内でも問われる国際水準日本の法務所にはない発想で取 務所でも、一舞へは進出せず、そのこなすためには、「弁護士数 100 り組んでいる。日本企業に最高のサ 代わりに各国の有力法律事務所との人」が不可欠とされる。企業法務に 「日本の中だけでも、ある程度はや ービスを提供できるという、日本の 提携強化に力を入れるところもあ対応できる事務所では、国内に 8 事っていける気もしないではない。た法律事務所の優位性はどこまで維持 る。 務所しかない。依頼者側に選択肢が だ、国内にとどまると決めたら、日できるのか。そのために、舞に進 上場企業の社外取締役を務める大少ないことに加ん、大規模になった本企業だけでなく、日本に展開する出するのか、国内で勝負するのか。 手法律事務所パ 1 トナー弁護士は ことで、同じ事務所内でコンフリク海外企業のニ 1 ズを失うことにな結果で問われることになる。 北京 香港 .. ャンゴノ・バンコクノンペン ハノイ ジャカルダー第 シンガポール / 2
安定たけではない企業内弁護士 外部起用の門戸とバイ広げる 企業に雇用される弁護士が増えている。弁護士としての能力や人脈を 生かしながら、】事業に直接携わるやりがいがあるようた。 法科大 1 期生以降で企業内弁護士が急増 60 期台 ( 08 ~ 1 6 年に登録 ) から、自分の提案を会社全体で共有 してもら、つとい、つ「プロジェクトの すべて」に携わることがやりがいだ 企業内弁護士との最大の違いは、 法律事務所は「外部」だということ だ。顧客のために最善をつくすのは 当然だが、 法律事務所 A 」してのリス クを冒せない。「何かを実現するため には、企業の内部にいなければでき ない」と実感している。 業や自治体など組織に所属すている。女性が 4 割と弁護士全体に いたものの、弁護士のリ 1 ガルサ 1 日本と外国、企と法律事務所 る弁護士は、 2001 年の占める割合の倍に上り、所属弁護士ビスは、何か起こったときにサポ 1 の双方を見てきて、「日本の弁護士 人から、年には 1707 人まで増会は來 3 会が 8 割を占める。 トするのが基本。「顧客とは一定の距は、まだ弁護士 = 事務所というイメ え、弁護士全体の 5 % 弱を占めるま 増えた背景には、司法試験合格者離があり、さみしさを感じていた」 1 ジが強いが、キャリアを固定化し でになった ( 図 ) 。特に、法科大学院の増加で弁護士事務所への就職が厳という。 なくてもいいのではないか」と話す。 1 期生が登録した年以降、急増ししくなったことや、個人事業、王であ転機は、年から 2 年間の米国留 る弁護士にはない「安定」の魅学だ。シリコンバレ 1 の名門スタン人脈と人選眼 ( 0 力があるようだ。 フォ 1 ド大学では、学生はみな、起 5 一方で、より前向きに企業の業に興味を持っていた。日本で起業「もはや企業内弁護士を一つのイメ 4 世界に飛び込む人もいる。日本と聞くと、いまだに「危ない橋」と 1 ジで語ることは難しくなってい 最大の人数を誇る西村あさひ法 CV いうイメ 1 ジを抱くが、米国では、 る」と話すのは、企弁護士の先 律事務所を辞めて、フリマ ( 個若くて優秀な人ほど起業を目指す。駆けであるユ 1 ・エス・ジェイ法務 0 人間売買 ) アプリのべンチャー 失敗でキャリアに傷がつくのではな部長の片岡詳子弁護士 ( 期 ) だ。 9 メルカリに移ったのが、岡本杏 0 く、むしろ「失敗も経験になる」と法律事務所」独立事務所を経て、似 8 0 莉弁護士 ( 旧礙期 ) だ。 いう考え方だ。 年に松下電器産業 ( 現・パナソ一一ッ 0 ニュ 1 ョ 1 クの法律事務所で研修 6 0 ののち、年 3 月の帰国と同時に、 サポートから実現へ 5 0 創業 3 年目のメルカリに移った。法 会 0 協 社会人になる前は「リスクを務だけでなく、資金調達やも担 3 護 2 怖がっていた」と大手法律事務当する。法律事務所時代は企業が決 0 織 1 組所を選んだ。主に企業の & 定したことについて、法的な面だけ 0 本 ( 合併・買収 ) 案件に携わり、さでかかわっていたのと違い、「そもそ 所 仙まざまな経験を積んで充実してもこの事業が必要か」という一歩目 メルカリの岡本杏莉弁護士 企 ( 人 ) 2 , 000 1 , 500 1 , 000 50 期台 ( 98 ~ 2007 年に登録 ) 500 50 期未満 ( 1997 年以前に登録 ) 、その他 0 ( 年 )
CONTENTS 2017 本誌記事は日経テレコン 21 、 ELNET 、ジー・サーチ、ダウ・ジョーンズ・ファ クティバ、ジャパンナレッジ、毎日 News パックのデータベースに収録されていま す。また、週刊工コノミストのホームページで最新号とバックナンバーの目次を 読むことができます。 URL は、 http://www.weekly-economi st.com/ 本誌掲載記事の無断転載を禁じます◎毎日新聞出版 2017 2 28 vs ー 0 20 聖域失い敵陣で戦うサムライ業 = ・冖弁護士ランキング 22 23 スター弁護士の仕事術岩自正壽 0 TM 聡合法律事務所大野聖ニ大野総合法律事務所 25 法律事務所ランキングチェンバース & バートナーズランキング 26 成長著しい企業法務が花形海外進出巡りわかれる戦略 ・酒井雅浩 28 8 大法律事務所トップに聞く業界の展望次の一手 西村あさひ保坂雅樹 / アンダ - ソン・毛利・友常伊藤哲哉・三村藤明 / 長島・大野・常松杉本文秀 / 森・濱田松本 棚橋元 /TMI 田中克郎 / シティユーワ片山典之・栗林康幸大江橋国谷史朗 / べーカ - & マッケンジー武藤佳昭 外部起用の門戸とバイ広げる 32 ・黒崎亜弓 / 酒井雅浩 日比卻←ク久保利英明 / モリソン・フォースターケン・シーゲル 34 転ばぬ先の弁護士活用 35 36 ネットで簡単アクセス 38 周防正行監督「密室の映像は証拠にならない」 40 TV ドラマの法律監修弁護士を魅力ある職業に 引く手あまたの公認会計士 ■磯山 友幸 78 社会福祉・医療法人へ進出 ■磯山 友幸 79 会計監査の「チャイナリスク」 ・伊藤 歩 81 「制御不能」の現地監査法人 ・伊藤 歩 増える司法書士の成年後見人 82 ■黒崎 亜弓 「過払いバブル」の余波アディーレ石丸幸人 / べリーベスト酒井将 84 弁護士ドットコムの次の手 86 ■黒崎亜弓 87 この弁護士、大丈夫 ? 懲戒処分歴をチェック 金融商品の「売り方」問う訴訟のカ 88 工コノミスト 0 ー酒井雅浩 / 稲留正英 / 黒崎亜弓 第 1 部井護士 企業弁護士の本質 契約 定着した第三者委員会 刑事弁護 インタヒュー ■酒井 雅浩 ■国広 正 ・酒井 雅浩 雅 井 酒 第 2 部弁護士 vs 会計士、司法書士 会計士 vs 弁護士 司法書士 vs 弁護士 司法書士 vs 弁護士 弁護士 vs 弁護士 弁護士 vs 弁護士 ■黒崎亜弓 2017.2.28 9
、考は るの 企業弁護士の本質崋 業を売らずに済んだかもしれない。当時は、 行などが経営破綻し、監督官庁である大蔵 省の指導に従っていた経営者が罪に問われ まだ特設注意市場銘柄に指定されてし、なか た。「法の支配」がないと、大変なことに ったから、公募増資で資金調達することは なると経済界が気付いた。私は 97 年、『法 可能だった。 化社会へ日本が変わる』という本を出版し 私は企業が正しく伸びてほしいと思う。 私は、「すき家」のゼンショーで、「蟹工船 て、それを推し進めようとした。 ソフトローの部分では、第三者委員会を 報告書」とまで呼ばれたものすごく厳しい 報告書を作成したが、それを「ありがとう」 しつかりと定着させるため、日本弁護士連 合会で指針を策定した。ところがそれでも、 と言ってくれる人には価値があったはず だ。同社の小川賢太郎会長は、「日本一厳 経営者の保身に使われるおかしな委員会が たくさん出てきたので、委員会を格付けす しいからこそ頼んだ」と言った。報告書が る第三者委員会報告書格付け委員会を作っ 出た後、株価は一時 1000 円を割り込んだ た。あまりお金にならず、報われない仕事 ところで下げ止まり、今では、 2000 円近 をしてきたが、私は日本のためにやるべき くまで回復し時価総額は 3005 意円になっ が企業法務に関わった当初、コーポ と思ってやったのだから、後悔はしていな た。株主などのステークホルダーの利益を レートガバナンスという言葉は世間 い。それが、結果的に企業法務の先駆者と 考えれば、第三者委員会の費用など微々た に広まっていなかった。 1994 年に私やオ いう立場につながった。 るものだ。 リックスの宮内義彦社長 ( 当時 ) らが一生 残念だが、東芝をはじめ、指名委員会等 弁護士が請け負う以上は、単に企業にお 懸命、日本コーポレート・ガバナンス・フ 設置会社などの外形ばかりを整えて、本当 願いされたからコンサルをするのではな ォーラム ( 現日本コーポレート・ガバナン に新しい時代が来たことを理解していない く、企業価値の向上にどれだけ寄与するか ス・ネットワーク ) を立ち上げたりして、 会社が次々と問題を起こしている。東芝は を考えなければならない。企業の顔色をう かいしや 活動を続け、人口に膾炙するようになった。 不正会計が発覚した 2015 年にきちんと独 かがった報告書を書いて、報酬をたくさん もらったとしてもいそれは弁護士の仕事で 97 ~ 98 年の金融危機が一つの転機にな 立性の高い第三者委員会を設置して、全部 うみを出していればい医療事業や平導体事 った。日本長期信用銀行や日本債券信用銀 , 、 はない。 企業弁護士のあるべき姿は何か。日本の企業 法務の先駆けである久保利英明弁護士と、外 国法事務弁護士事務所代表のケン・シーゲル 氏に話を聞いた。 ( 聞き手 = 酒井雅浩 / 稲留正英・編集部 ) 人以上の弁護士チムを擁し - = 社内で法律 リソン・フォースター東京オフィス い結果に導くために顧客よりもハードに働 の強みは、 = 米国をはじめと一した海外 事務所と同じような業務を行っている。そ く必要がある。同時に労働災害を起こさな の弁護士資格を持った外国法事務弁護士が こで、法律事務所に持ち込まれるのは、自 いために、パートナー弁護士が常に気配り 約 80 人常駐していることだ。国際的に 分たちでは対応が難しい、これまで以上に し、特定の弁護士に業務が偏っている危惧 いレベルで M & A ( 合併・買収 ) をはじめと 極めて専門的な内容になってきている。 があった場合何らかのサポートをしている。 した法取引をする企業に対して、我々は日 一方、日本企業は米国企業に比べると、 本でそのサービスを提供することができ 国境を超えた大きな取引や訴訟を行わない る。日本と海外間での取引は、さまざまな 傾向があるため、法務部門が比較的小さか 局面において統合されたアドバイスが必要 ったり、他の業務により注力している。そ だ。我々は幅広い分野でその経験に長けて こで、国境を超えた大きな案件に対応する 場合には、積極的に法律事務所に任せるよ 日本企業は、東日本大震災以来、最も活 うになっており、海外でのリスクの特定を 動的な状況にある。多くの国境を超えた M はじめ、我々の役割はより幅広いものとな & A が食品、テクノロジー、メティア、テ っている。 レコムなど業界・業種を問わずに行われて 採用については、「サマーアソシェイト いる。それがここ数年の顕著な変化だ。財 プログラム」を導入している。これは、我々 務状況が良くなるにつれ、アベノミクスが の事務所の弁護士 8 ~ 1 0 人が、米国のハー 海外での日本企業の活動を牽引しており、 バード、エール、スタンフォードなどのロ より良い機会は海外にあることが多い。 ースクールを訪れ、学生をインタビューし、 米国企業と日本企業では弁護士の使し、方 選定した 10 ~ 12 人の学生に夏の時期の 3 が違う。米国では 08 年のリーマン・ショッ カ月間、日本で実際に業務にあたってもら ク以来、主要企業が法律事務所から弁護士 うものだ。一方、日本でも毎年 3 ~ 4 人の を雇い、インハウス化する動きが多く見ら 弁護士を採用している。 れた。例えばある米国の大引 T 企業は 300 良い弁護士になるためには顧客をより良 モ 必な 要る モリソン・フォースター 東京オフィス代表 ケン・シーゲル 外国法事務弁護士 ( 58 ) けんいん ェゴーミ
一護術 ~ 産価 財評 峅事 的高 知最 小野雄作 ( べーカー & マッケンジー ) 坂田絵里子 ( リンクレーターズ ) マーク・ディヴィス ( キング & スポールディング ) クリストファー・ウ工ルズ ( モルガン・ルイス・アンド・バッキアス ) ◎前田博 ( 西村あさひ ) 赤羽貴 ( アンダーソン・毛利・友常 ) 江口直明 ( べーカー & マッケンジー ) 高橋玲路 ( アンダーソン・毛利・友常 ) ジェイムス・アトキン ( ヴィンソン・アンド・エルキンス ) ジョセフ・ビバッシュ ( レイサムアンドワトキンス ) アレッド・ディヴィス ( ミルバンク・ツィード・ハドリー & マックロイ ) ジョン・マクレナハン ( キング & スポールディング ) ◎熊倉禎男 ( 中村合同特許 ) 片山英ニ ( 阿部・井窪・片山 ) 日本大野聖ニ ( 大野総合 ) 城山康文 ( アンダーソン・毛利・友常 ) 末吉亙 ( 潮見坂綜合 ) 弁理士日野真美 ( 阿部・井窪・片山 ) 弁理士稲葉良幸 ( T Ⅶ総合 ) 萩原弘之 ( ポールヘイスティングス ) 国際 ロイド・バーカー ( ホーガン・ロヴェルズ ) 松嶋英機 ( 西村あさひ ) : 瀬英雄 ( 00 ) 小林信明 ( 長島・大野・常松 ) 坂井秀行 ( アンダーソン・毛利・友常 ) 上田裕康 ( 大江橋 ) 藤枝純 ( 長島・大野・常松 ) 藤田耕司 ( アンダーソン・毛利・友常 ) 井上康ー ( ジョーンズ・ディ ) 日本宮武敏夫 ( 足立・ヘンダーソン・宮武・藤田 ) 宮崎裕子 ( 長島・大野・常松 ) 仲谷栄一郎 ( アンダーソン・毛利・友常 ) 大石篤史 ( 森・濱田松本 ) 工リック・ルース ( ウィサース・ジャパン ) 工ドウイン・ワトレー ( べーカー & マッケンジー ) 日本 国際 事業再生・倒産処理 Restructuring/lnsolvency 日本 税務 Ta x 国際 知的財産 lntellectual Property 国際 、日本の特許守る自負 る」と履き違えてはいけない。 学入学は理系 が将来生きると思った。米国留学では、複 いまでは「末期がんの専門医」で、誰も手 数の国で同時に進む国際並行訴訟が今後の で、バイオテ 主流になると聞き「とにかく誰もできないこと に負えなくなった案件の依頼が来る。常時 クノロジーの研究 を」と修業先の事務所で経験させてもらった。 50 ~ 60 件を担当し、日本で一番知財訴訟に 者になろうと思っ かかわっている。知財訴訟は書面と証拠を ていた。研究の過 帰国すると、韓国サムスン電子とカナダ・ 読み込み、突き詰めることが不可欠。スペ 程で法律と技術の ノーサンテレコム社の特許侵害訴訟が日米 シャリストを目指し、ようやく欧米の一流 独で起こった。サムスン側が日本での訴訟 かかわりに触れ、 興味を持ち始めた 代理人を探したものの、誰もやりたがらな 事務所にひけをとらないレベルまできた。 私たちが渡り合わなければ、日本企業の特 いと聞き、自分で売り込んだ。まだ 30 代で、 ころ、検察官の兄 許は海外に踏みにじられてしまう。 に「法律の世界はお 経験を積むチャンスだと考えた。ところが、 もしろいよ」と勧められて、弁護士を目指し 米独は負けたのに、日本だけサム た。法律は非科学的でおもしろくなく「だま スンの勝訴。たまたま、相手の手 された」と思った ( 笑 ) 。 続きの不備を突けただけだと思う。 弁護士として知的財産を専門にすると決 サムスンとはそれ以来、長い付き めていた。当時、日本に知財専門家は珍し 合いをさせてもらっている。 く「ブルーオーシャン ( 誰もいない市場 ) 」に 勝ち負けがすべての訴訟に携わ なると思った。 2 年目以降は、知財以外は一 る中で、矛盾するが、一番やりが 切やらず、使いにくかったと思うが、わが いを感じるのは負けたのに顧客か ままを聞いてくれた事務所のおかげだ。 ら「あなたに頼んだのだからしか 私はこれまで、訴訟ばかりを扱ってきた。 たない」と納得してもらえた時だ。 訴訟は医者でいえば「外科医」。とにかく腕 弁護士がかかわるのは企業戦略の ごく一部。自分の名を売ろうと強 を問われ、どれだけ数をこなしたかがすべ 引な訴訟活動を進める弁護士はそ てだ。若いうちはどんなに忙しくても、人 を押しのけてでも手を挙げて事件を受けた。 の結果、企業イメージを損ねるか もしれない。「すべてをわかってい 休みはほとんどなかったが、経験を積むこと 大 大野聖ニ 弁護士 ( 57 ) 大野総合法律事務所 1959 年愛媛県生まれ。東京大学法学 部卒業。 91 年湯浅・原法律特許事務 所 ( 現ュアサハラ法律特許事務所 ) 。 96 年ニューヨーク州弁護士。 2000 年大 野総合法律事務所設立、代表パート ナー。サムスンとアップルのスマートフォン 特許を巡る訴訟、医薬品の特許延長登 録の効力を争った初の知財高裁判決な どに携わる 2 イ 第工コノミスト 2017.2.28
契約 イ、転はぬ先の を弁護士活用 る日本と海外の考え方は大きく違 弁護士 vs 会計士司法書士 訴状によると、両者は年 8 月か り込めなかった以上は、期待通りのあり、意図せずに法を犯してしまう ら出店交渉をしており、年月に答えは得られない覚悟をしなければもある。そ、ついうリスクは取引 いけない」と指摘する。重要なのは金額の大小とは関係なく「疑問への は「基本疋書」の主要部分に合意 しんし した。しかし !2 年 3 月、売り上げの交渉過程でどんな合意があったかで問い合わせに真摯に対応してくれる 減少により「世界的な新規投資停止はなく、あくまでどんな契約を結ん日本の当局と違い、一舞は自己責任 ヾ、ヾ、 だのかだ。 ) 1 側は を決定した」としてノ を問われる」 ( スミス弁護士 ) 。 しかし日本は、契約についての認 契約締結を拒否した。 入居「よ疋だったのは、霙通りに 識か甘い。日本企業同士の場合、継契約のわな 面した地下 1 階から地上 4 階までの続的に取引があれば、わざわざ契約 施設の「顔」となる区画で、開発側書を作らないことも多い。中小零細契約時に心がけるべきなのは、弁 は店舗内専用エレベ 1 タ 1 の設置工企業では、ネット上にあるひな型を、護士とコミュニケ 1 ションを取るこ とだ。理解できない内容は、細かい 事も進めていた。着工後の交渉決裂そのまま使っている例もあるとい ことでも聞く。また弁護士は企業の う。その背景にあるのは、訴訟が一 により、開発主は設計変更費用や、 一後継テナントとの賃料差額の遺失利般的ではないことだ。問題が発生し実情をすべて理解できるわけではな 益を求めている。 た場合、契約書に規定されていない く、契約に当たって「ここは譲れな 開発主側は「コメントはできな ことについても、話し合いで解決し い」「多少譲歩してでもまとめたい」 ~ ス - しノノ といったことをきちんと伝える必要 1 ) ー側は「提訴の事実もようと模索する。それなら、事前に さまざまなことをした契約書をがある。 含めてノーコメント」としている。 大手法律事務所の弁護士は「基本作っておく必要はない。 舞企業の日本法人の代理人とし 合意はできていたという信義則違反 海外との取引ではそうはいかなて、日本企業との契約に携わったあ 約の恐ろしさが明らかになつを主張しているものの、開業に間に い。クロスポ 1 ダ 1 ( 国際間 ) 取ー リる大手法律事務所の弁護士は「こち らに有利な条件をすべて盛り込み、 た「事件」が、 2016 年 7 合わせるために契約締結前でも工事に詳しい米法律事務所「モリソン・ 月に発覚した。松坂屋銀座店 ( 壅只早しなければならないという弱みフォースタ 1 」のゲ 1 リ 1 ・スミスこれをたたき台にと思った案を、担 都霙区 ) の跡地に片年 4 月の開業があり、結局は足元を見られた」と外国法事務弁護士によるとコ貝契当役員がろくに目を通さずサイン を目指して建設中の商業施設とオフ分析する。 約ひとつでも、契約書は 100 ハーにし、本当に大丈夫かと気の毒になっ イスビル、文化交流施設からなる大一舞企業相手の交渉は、一筋縄でもなる。訴訟リスクをなるべく抑えた」と明かす。 型複合施設が舞台。開業を進めよ、、 るために、『万が一』ということまで ( し力ない。外資系法律事務所のパ スミス弁護士は、一舞 A 」の取引で る大丸松坂屋百貨店、森ビルなどが 1 トナ 1 弁護士は「交渉の中で、両細かく契約書に入れておくためとい求められる弁護士の資質に、▽市場 うのが理由の一つだ」という。 出資する会社が、英国の高級プラン者がなかなか合意できない事柄につ 環境や法律を把握していること▽交 、ーバリ 1 の日本法人、 いて、全体の決裂を避けるため『こ ) 一での「リスク」について、特渉前に、リスクがどの程度のものか ) 1 ・ジャパンを相手取り、 4 億 6 こはひとまず置いておいて、ほかのにアジアでは国ごとの規制の煩雑さを事前に予想できること▽早急な対 150 万円の損害賠償を求めて来ところを先に進めましよう』というが挙げられる。民間企業同士の交渉応ーー」挙げる。 地裁に提訴した。 ことは一般的によくある。契約に盛でも、当局の許可が必要なケースが ( 酒井雅浩・編集部 )
弁護士 vs 会計士司法書士 部門が存在感を増し、管轄する領域 . よ、、 ( しろいろな発想ができる経験を が広がるので、外部弁護士にとって持った弁護士が求められる。積極的 もパイが広がる」と片岡部長。従来、 に法律事務所の外の世界に目を向け 会社内での法務案件は各部署に散らることで、リ 1 ガルニーズを掘り起 ばっていることが多く、法務部が扱こすことができる」と話す。 うのは訴訟や契約に限られた。労務 ュー・エス・ジェイの片岡部長も、 は人事部、特許は知財部、情報セキ「企業の組織内での経験は、法律事務 ュリティ 1 はシステム部といったよ所で顧客目線のリーガルサービスを うに各部署で対応していた法的業務提供することにつながるのではない が、弁護士を擁する法務部に集まっ か」と話す。外部弁護士と企弁 当初は一法務部員として業務てくるという。 護士では、企業経営に伴う法的リス をこなすとしても、勤続年数 社内の法務案件を集約し、弁護士クに対する姿勢に違いを感じている 8 ー 6 6 6 3 2 ー 2 一 2 からだ。 を重ねるなかで出世し、外部業界と企業の媒介となる役目を担う れ 例として挙げるのは、ユー・エス・ 証の弁護士起用に権限を持つよ企寓弁護士。それゆえに、「弁護士 券 ぶ 顔 、つになっているのだ。 会の活動に積極的に参茄するなどしジェイで携わったチケット不正転売 る 券証券 企弁護士がその会社のて、弁護士ネットワ 1 クを保つことへの対処だ。まず問題を把握すると え ッ ミ会法務すべてをカバ 1 できるわが大事」 ( 片岡部長 ) 。その点、法律ころから始まり、転売チケットでの 一タ「バ気トス 入場を無効とすることで撲滅を図っ チ ~ ンビス一電ノ ( ンけではないので、専門性を要事務所の経験は有利だ た。購入者のクレームなど法的リス 士点 ル床やンカ ( する案件では外部の弁護士を 護時 ) 一丿一 ~ 本ル cn ( 丿 イ知織起用する。その際、同業者目 クもはらんでいたが、結果、不正転 リスクへの姿勢に違い 、刄ゴ「日 ~ モ ( ア ~ マ日組 弁明 内年 線の選別や、弁護士人脈が生 売は 9 製滅できたという。「外部弁 業 5 位 1 一 2 ー 2 一 2 5 」 ) 6 ~ 6 6 咄きるとい、つわけだ。片岡部長 ただ、法律事務所から企弁護護士ならば、その対策にはリスクが は分野ごとに弁護士をリスト 士への転職は増えていても、その逆あると指摘するのかもしれないが、 ク ) に入社。年にはファ 1 ストリテアップし、固定化しないよう意識しはまれで「一方通行」なのが現状。ビジネスのスピ 1 ド感では、リスク ィリングの法務部チ 1 ムリーダーとているという。 メルカリの岡本弁護士は「これからを限りなく減らすために何ができる なり、肥年に現在のポストに就いた。 ともすれば、顧問弁護士や経営者、 かを考える」 ( 片岡部長 ) 。企弁 弁護士を多く抱える企業の顔ぶれ幹部との個人的なつながりで起用さ 護士は、法的判断と経営感覚を併せ はこの年で様変わりした ( 表 ) 。当れていた外部弁護士が、企弁護 持っことが求められている。 初は外資系証券が中心だったが、今士の存在によって門戸が開かれ、実 海外では弁護士資格を持っ経営者 は商社や金融機関、新興企業などさ力主義へと向かう傾向がうかがえ は珍しくない。日本でも、企弁 まざまだ。 る。 護士が定着した先は、弁護士経営者 企弁護士の変化は、企業外に といっても、業界にとって厳しい が次々と登場してくるのかもしれな も影響を及ばすと片岡部長は見る。 ばかりでもないようだ。「社内の法務 。 ( 黒崎亜弓 / 酒井雅浩・編集部 ) 全 847 社 全 39 社 2016 年 6 月時点 順位企業名人数 1 三菱商事 20 2 ヤフー 3 野村証券 3 三井住友銀行 1 8 5 丸紅 5 三井物産 5 ゆうちょ銀行 8 SMBC 日興証券 14 8 三菱東京 UFJ 銀行 1 4 10 伊藤忠商事 10 みずほ銀行 1 2 12 第一生命保険 1 1 12 三菱 UFJ 信託銀行 1 1 14 豊田通商 1 - 三菱自動車 14 LINE ュー・エス・ジェイの片岡詳子弁護士 一ノ
弁護士 vs 会計士司法書士 東京・大阪二極の強み 史袋 法 律 朗バ 雍ナ務 士 所 ( 59 ) う。目が届かず、問題が起きることのない る。しかし他の事務所は、大阪はあくまで ようにしなければならない。 支店。われわれは東京、大阪のバランスの アソシェイトの働き方もそうだ。弁護士 よさが強みだ。ニ極をより充実させ、それ は依頼者の求めに応えるために早朝、深夜 ぞれの規模を生かした一体となった仕事で に働くことはあるが、健全でなければ続か がんばりたい。 教育には特に力を入れている。新人採用 ない。短期的にいい仕事をすることではな く、いい仕事を継続するのがプロとしての は 1 0 人ほどだが、じっくり教育できるのが 弁護士だ。若手の実態をみて助言をするた その人数だからだ。他の大手のように大量 採用し、競争して強者が残るというやり方 めに、個別の指導担当をつけている。 現状では、例えば「一つの案件で 50 人動 のほうが経済合理性があるかもしれないが、 みんなで切磋隊してやっていくというの 員する M & A 」は容易ではないが、それくら 95 年に上海事務所を開いたが、東京 いの力も付けたい。規模を追求するのが目 進出したのは弁護士法改正で複数事 が事務所のポリシーだ。 的ではないが、私が入ったのは事務所がで その結果、いくつかの専門性を備えた高 務所開設ができるようになった 2002 年。そ れまでは東京へ拠点を移転する関西の依頼 度なジェネラリストを育てられる。専門化 きて 2 年目で、 4 人しかいなかった。そこか 者から「大江橋も東京に来てください」と声 ら 100 人を超えるところまできたことを考 しすぎると、全体像が見えないことがある。 をかけられながらできず、東京での仕事を えれば、それほど難しいとは思わない。そ 依頼者から「大手は分野が変わるたびに別の ういう意気込みでやっていきたい。 弁護士が出てくる」と聞くことがある。われ 他の事務所に紹介するしかなかった。 「 10 人くらいの事務所に」と思っていたが、 われは、 5 人で担当するとこ 東京も 60 人を超え、大阪と並ぶ規模だ。東 ろを 2 、 3 人で済む。コスト面 京では関西と縁がない依頼者も多く、東京 でも大きな効果だ。 西村あさひ 528 ( 男 427 、女 101 ) 47 事務所を組織としてどう維 の事務所として認められていると思う。 アンダーソン・毛利・友常 416 ( 男 339 、女 77 ) 26 今は逆に、東京の事務所が大阪に出てい 持するかは大きな課題だと思 長島・大野・常松 376 ( 男 314 、女 62 ) 26 森・濱田松本 374 ( 男 319 、女 55 ) TMI 総合 362 ( 男 286 、女 76 ) 25 139 ( 男 103 、女 36 ) シティユーワ ローバルネットワークが何よりも強み ている全ての国で、デューテ 4 だ。世界 47 カ国、 77 事務所に 5600 リジェンス ( 資産査定 ) や独 大江橋 134 ( 男 107 、女 27 ) 6 人の弁護士がいる。世界中どこでもトップ 禁法などの規制対応が必要 べーカー & マッケンジー 1 12 ( 男 86 、女 26 ) 31 レベルのリーガルサービスが受けられる態 だ。 ( 注 ) 2 月 14 日現在。外国法弁護士は、外国法事務弁護士と、登録のない外国法弁護士資格者 勢は、他にない唯一無ニの資産だ。 また米司法省が追及姿勢を 議するときなど「待ち」の時間も多いため、 具体例では製品不具合やリコールの問題 強めている海外の汚職防止でも、米国の元 だ。グローバル化の時代、例えば米国で問 司法省の弁護士とタッグを組んで対応がで 自宅でも執務ができるように、セキュリテ ィー対策を完璧にほどこし、自宅から事務 題が起きれば、すぐに世界中に広がる。わ きる。 所のネットワークにアクセスできる仕組み れわれには世界中にリコールやコンプライ 弁護士は、伝統的に会社法、訴訟、証券 と法律分野ごとに専門化しているが、それ を構築した。 アンス対策に即応できる弁護士がいる。 同じことが M & A にも言える。ある国の企 だけだと、業界特有の問題に対処できない。 法律事務所でのの活用が欧米では非常 業を買収するためには相手がビジネスをし われわれには、製薬、自動車、情報通信な に進んでいる。 M & A 案件では、いまや会社 ど業界独特の問題に精通している弁護士が の資料は、メールサーバーに何千万件とい う単位で入っており、「プリントアウトして おり、顧客と同じ目線で協議ができる。 人海戦術」というのは不可能だ。 新人の採用は、ここ数年間 5 ~ 6 人で推移 設定したことを機械的に検索するだけで していたが、最近は事務所全体の業務が多 忙となり、採用を増やす考えだ。われわれ なく、 AI が自己判断して、必要のあるもの の事務所では、日本の法律問題ではなく、 だけを絞り込むことができるシステムを活 用している。最終的な検討は必ず弁護士が 日本企業が最も必要としているクロスポー ダー ( 国際間取引 ) の法律業務を初日から体 行うが、効率的に、弁護士としての必要な 業務に専念することで的確に結果を出すこ 験できる。 働き方については、弁護士は依頼者が協 とができる。 10 日本法弁護士数 名称 グ 0 澎 経営委員会メンバ 武藤佳昭弁護士 2017.2.28 / 工コノミスト
西村あさひ法律事務所 執行バートナー 、「保坂雅樹弁護士調 坂から大手町に事務所を移転して 1 年 対応しなければならない。 「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が たった。特に金融分野で、利便性が高 まったことの効果が依頼という形で直接出 ある。「ワーク」と「ライフ」は相反したもの ているようだ。また日本のビジネスの集積地 で、どちらを減らすとどちらが増えるとい に身を置くことで、所属する弁護士一人一 う発想ではなく、仕事をしている間の「プロ 人が、何をすべきか意欲的に考えて実行に フェッショナルライフ」の質を上げる。仕事 移す意識、実践力が高まったと感じている。 は生活の大きな軸だから、その質を高める 移転の大きな目的はもうーっ、大規模化 ' とそ弃実した「ライフ」となるために の過程で分散したフロアを集約し、より個 重要だ。 の力と組織の力を集約することにある。象 弁護士に、単純に時間の長短で執務環境 徴的なのは、これまで 2 人までだった部屋割 のよしあしを測るという発想はなじまない。 をどう引き継いでいけるかだ。事務所の人 りを、最大 4 人にして、弁護士間でよりコミ プロフェッショナルの世界なので、生産性、 員構成、持続可能性を考え、どの世代に、 効率性、充実度を上げていくことによって、 ュニケーションを取れるようにした。 どの段階で、どのように仕向けるのかを考 それは事務所から仕事の委託を受けるア おのずといい仕事を、時間が短くできるよ えていく必要がある。 ソシェイトのケアにもつながる。弁護士の 大規模化、グローバル化、多拠点による うになるということに取り組みたい。 キャリアは多様化しており、やりがいをも 多様性、複雑性をフルに生かしていくため これまで日本の法律事務所では、運営、 って仕事をしているのかなど、きめ細かく 経営が主題になっていなかったと思う。世 には、弁護士だけではない新しい発想、経 代交代をどう進めるか、真剣 営知見が必要な段階になったと考えている。 に議論を始めたところだ。わ 2016 年 1 2 月から、元ファーストリティリ れわれは収支共同制を取り、 ング執行役員の宮坂彰ー氏を招き、創造的 継承しやすい制度設計になっ な組織の構築に加わってもらっている。そ ているものの、依頼者の信頼 れが大きな一手だと確信している。 赤 トップに聞く 「スター弁護士」が集まる企業法務。世界を 相手に日々競争を繰り広げているたけに、 労働環境も過酷た。日本の上位 8 事務所トッ プに、戦略や事務所運営について聞いた。 ( 聞き手 = 酒井雅浩 / 稲留正英 / 黒崎亜弓・編集部 ) ( 業務執行担当弁護士 ) は ることが大切」ということだ。心身を健全に 順番に交代し、柔軟に対応し 保ち、仕事とプライベートをしつかり両立 ていくやり方を採用してい することが弁護士に期待されている。 る。 毎年採用する多数の若手弁 夏ごろをめどに、大阪事務所を開く。 護士に対して、いかにいい教育をするか、 マ東京からの異動だけでなく、現地でわ 法律家としていい経験を積んでもらえるか れわれと同じような発想、資質を持った弁 を重視している。相手がべテランのパート 護士にも参画してもらう予定だ。 ナーであっても気負うことなく議論できる 東京と同様に、大阪でもリーガルサービ ことがわれわれの特徴だ。 スのより高度な専門性が求められるように 各分野ごとのグループで、頻繁に研究会 なってきた。事業再生・アジアビジネスの工 を開催し、活発な発表や討議を行っている。 キスパートをそろえ、西日本、アジア案件 自分の意思でそのグループを決定しており、 に積極的に取り組む。 将来の専門性を考える上で大きな参考とな 弁護士という資格は、若手もシニアもま る。 ったく同じ。根本的な価値観を共有し、切 また、過去の例など業務の糧となる情報 さたくま 磋琢磨することで事務所は成り立っている。 を集約し、アクセスする環境を整えるため 重要なことはきちんと議論し、若手でもべ の専門チームを設けている。弁護士のカの テランでも隔たりなく意見は傾聴する。 底上げと最先端の知識、経験の共有に向け、 理的な議論ができることで、自然と収れん ー T を積極的に取り入れている。 していく。 よくアソシェイトに言うのは「高いクオリ 現状、アドミニストレーション・パートナ ティーで、できるだけ効率的に仕事を進め アンダーソン・毛利・友常法律事務所 アドミニストレーション 伊藤哲哉弁護士⑩三村藤明弁護士 2 ・バートナー 事業再生武器に大阪進出 工コノミスト