ャーノンはとてもりこうで食べるためにはそのたびに変わるとびらの問だいをとかなければならない ので食べものをもらうためには新しいことをおぼえなくてはならないとバ ートはいった。もしおぼえ られなかったら食べられないからおなかがすくだろうとおもってぼくはかわいそうになった。 食べるのにテストにバスしなければならないなんておかしいとおもう。 ートだって食べたくなる たびにテストに。ハスしなければならないとしたらうれしいだろうかばくはアルジャーノンと友だち になりたいとおもう。 それでおもいだした。ストラウスはかせは夢とか考えたこととかはかせの研究室に行ったとき話が できるようにぜんぶ書きとめておくようにといった。ぼくはまだどうやって考えればいいのかわかり ませんというとはかせはばくが前に書いたことだけれどもぼくのお父さんやお母さんのこととかどう してキニアン先生のクラスに入るようになったかということや手術の前に起こったこととかそうゆう ことが考えることだといったのでぼくはそれを報告に書いた。 ばくはじぶんが考えたりおもいだしているのかわからない。でもきっと何かがばくに起こっている のだろう。変わったような気はしないがとても興ふんしているので眠れない。 ストラウスはかせはよく眠れるようにといってピンク色の丸薬をくれた。脳に変化がおこるのは眠 ーマンおじ っているあいただからきみはよく眠らなければいけないとストラウスはかせがいった。ハ さんは仕事のないときは客間の古いソフアでいつも眠ってばかりいたからそれはほんとうかもしれな 、。おじさんはふとっていてなかなか仕事をもらえないのはなぜかというとおじさんは人の家のペん きをぬる仕事なのではしごをあがったりおりたりするのがのろいのだ 昔ばくはお母さんにハ ーマンおじさんみたいなペんき屋になりたいというと妺のノーマがやーいチ ャリイが芸術家になるんだってさといった。するとお父さんが妹のほっぺたをひつばたいて兄さん
ぼくはいい子になろうとおもってる、女のひとを見ないようにしてる、と彼は言った、あれかパン ツの中でおこるたんびに、お母さんはいつもばくをぶつから : 彼はいまチャーリイの母親の鮮明な映像を見ている、革のベルトをつかんでわめきたてている、父 親が引きとめようとしている。「もう十分だ、ローズ ! この子を殺してしまうぞ ! もうほうって おいてやれ ! 母親はそれを振りきって、ベルトで打ちすえようとするが、手か届かず、ベルトは折 檻を逃れようと床で身をよじっているチャーリイの肩先をひゅうとかすめる。 「この子を見てよ ! ローズは金切り声をあげる。「読み書きはおばえられない、だのに女の子をあ んな眼で見ることは知っているんだから。あんな汚らわしい料簡はたたきだしてやるんだから」 「勃起するのは、しようがない。それが正常なんだ。あの子はなにもしやしなかった」 「この子は、女の子のことなんか考えなくていいんだ。妺の友だちが家にやってくると、あんな考え を起こすんだから ! ぜっこ、 オし忘れないようにようく教えてやるんだ。聞こえてるの ? もし女の子 に指一本ふれたりしたら、死ぬまで檻の中に閉じこめておくからね。聞こえてるの : いまでもあの声が聞こえる。だがおそらく私は解き放たれたのだろう。恐怖も吐き気ももはや溺れ る海ではなく、現在とともに過去を映しだすただの水たまりにすぎなくなったのかもしれない。私は 自由になったのか ? もしもーー・あのことを考えず、あれが私を挫けさせないうちにーーーアリスを抱くことができたら、 きっとあの。ハニックは起きないだろう。頭をからつばにできさえしたら。私は声をしぼりだした。 「きみが : : : きみがしてくれ ! ぼくを抱いて ! そして何が何やらわからないうちに彼女は私に接 123
れた反動か ? あるいは実験に根本的な欠陥があるのだろうか ? その法則を見つけなければならな もし私かそれを発見し、そしてもしそれが、精神遅滞についてすでに発見されている事実や、私の ような人々を救う可能性に、たとえひとにぎりのデータにしろ、つけくわえることになるならば、私 は満足するだろう。私に何が起ころうとも、まだ生まれてこない仲間たちに、何かを与えたことによ って、私は正常人千人分の一生を送ったことになるだろう。 それで十分だ。 七月一二十一日 , ーー私はいま崖つぶちに立っている。それが感じられる。みなは、こんなペースでや っていたらまいってしまうと考えているが、彼らが理解していないのは、私が、かってその存在を知 らなかった澄明さと美の極致に生きていることである。私のあらゆる部分がこの仕事に波長を合わせ さまざまな着想が花火 ている。昼間はそれを毛穴に吸収し、そして夜はーー睡りにおちる寸前に のように頭の中で炸裂する。問題の解がとっぜん浮かびあがることほど大きな歓びはない。 この沸きたっエネルギー、私がなすことすべてを満たすこの熱意を奪いさってしまうようなことが 起きるなどとは信じがたい。それはあたかもこの数カ月に吸収したすべての知識が合体して私を光明 と英知の高みへと引きあげてくれるかのようであった。これは美であり愛であり、真であり、それら がすべてひとつになったものだ。これは歓びである。それを発見したいま、どうしてそれがあきらめ られようか ? 人生と仕事は人間が所有しうるもっとも素晴しいものだ。私はいま自分がしているこ この私の頭の中にあるからだ、そしてま 9 とに愛着を感じている、なぜならこの問題の答は、ここに、 もなくーーーもうすぐにーーーそれは意識の表層に噴出するだろう。われをしてこのただひとつの問題を
三月十五日ーーーぼくは退いんしたけれどし事にはまだもどらない。なにも起こらない。てすとをた くさん受けてアルジャーノンといろんなれーすをやった。ぼくはあのねずみがきらいたいつだって ばくを負かすから。あのげーむはもっとどんどんやらなくちゃならないしてすとも何ども何ども受け なくちゃならないとニーマーきょー授がいった。 あんなめえろなんてばっからしい。それからあのしやしんもばっからしい 。ぼくは男の人と女の人 の絵ならかいてもいいけど人のことでうそをいうのはいやなのです。 それからばするも , つまくできない。 たくさん考えたりおもいだしたりしようとするとづっーがする。ストラウスはかせはぼくを助けて くれるといったのにちとも助けてくれない。何を考えたらいいのかとかいっ頭がよくなるかというよ うなことをなにもおしえてくれません。長いすにぼくを寝かせておしゃべりするだけだ。 キニアン先生は大学にもぼくにあいにきてくれた。なにも起こらないと先生にはなした。いつぼく の頭はよくなるのですか。あなたは、いぼーしなければいけないわチャーリイこういうことは時間がか かるのだからとキニアン先生はいった。とてもゆっくり起こるからいっ起こったのかわからない。 経過報告 8
井を叩いたりするので、足もとでガンガン響く。はじめは知らん顔をしていたが、ゆうべバスロープ 一時間後に彼は警官を連れ のままあがってきた。言い争って、私はドアをピシャリと閉めてやった。 ーナーの顔に浮かんだ笑 てきた。警官は朝の四時にレコードを大きく鳴らしてはいかんと言った。バ いを見て私はかっとなり、彼を殴らずにいるのが精一杯だった。彼らが帰ったあとで、レコードもス テレオも叩きこわしてやった。私は自分を欺いていた。こういう種類の音楽は、ほんとうはもう好き いしゃよ、 0 十月四日ーー・こんな奇妙な心理療法ははじめてだった。ストラウスはあわてふためいた。彼もまた 予期していないことだったのだ。 何があったかというと これを記憶とはあえて呼ばない 心霊体験、あるいは幻覚だろうか。 説明や解釈を試みようとは思わよ、、こ、こ オ ( オだ起こったことを記すだけだ。 彼の研究室に入っていったとき、私はかっかとしていたが、彼は気づかぬふりをしていた。 寝椅子に横になり、彼は、例によって、私の頭のほう ? ーー私から見えない位置に腰をおろし、私が、 心に堆積した毒をすっかり吐きだす儀式にとりかかるのを待っていた。 私は顎をあげて彼の方を見た。疲れたような、気力のない顔をしていて、なぜか理髪用の椅子にす わって客を待っているマットを思いださせた。ストラウスに、その連想を話すと彼はうなすいた 「あなたもお客を待っているんですか ? ーと私は訊いた。 「この寝椅子も床屋の椅子のような形にす るべきですよ。自由連想をさせるときには、床屋が客に石鹸の泡を塗るときみたいに患者をうしろに 倒せるじゃないですか、そうして五十分たったら、また椅子を起こして、鏡を渡してやる、そうすり 7 や患者は、自我を剃ったあとはどんな顔つきになっているか見られるというものだ」
ノーマは私の一一 = ロうことを聴いてはいなかった。夢見るような表情が浮かんでいた。「あたし、たっ たいま、奇妙な経験をしたわ、何かが起こるんだけど、それが起こるのがわかるような、まるでそれ か前に、起こったことがあるような、そしてそれがもう一度繰りかえされているのを見守っている : 「よくあることだよ」 彼女はかぶりを振った。 「たったいま、ナイフをもった母さんを見たとき、昔見た夢のようだっ あの夜、幼なかった彼女がちゃんと目を覚ましていて、自分の部屋から、すべてを見ていたのだと そしてそれが、空想であったと思いこむまでに、抑圧され、歪められてしまったのだと、いまさ ら彼女に話したとて何になろう。真実の重荷を負わせるいわれはない。 この先、母親といっしょに、 たつぶりと悲哀を味わうだろう。彼女の手から、それらの重荷や苦痛を取りさってやりたいと思う、 しかし最後までやりとげられないことをはじめてみても仕方がないだろう。私自身がこれから苦難の 道を歩まねばならないのだ。私の精神の砂時計から知識の砂がこぼれていくのを止める手だてはない のだ。 「もう行かなくちゃならない」と私は言った。「体を大事にして、母さんを頼むよー私は彼女の手を 握りしめた。外に出るとき、ナポレオンが吠えたてた。 なんとかこらえていたか、通りに出るともうこらえきれなかった。ここに記すのはむずかしいか、 子供のように泣きながら、車へ戻っていく私を道行く人たちが振りかえって見ていた。泣かず にはいられなかった、人に見られてもかまわなかった。 歩いているうちに、突拍子もない一一 = ロ葉が頭の中にくりかえしくりかえしうかび、リズミカルになり 284
やって連れてくるのかぼくにはまだわからない ) ぼくはいっしょにあそべるから赤んぼの弟がほしい といったのにどうして妹を連れてきたのかわからないがでも妺は人形みたいにかわいかった。ただの べつまくなし泣いていた。 ぼくは妹に手だしをしたこともないしなにもしていない。 お父さんたちは妺を自分たちのへやの小さなべッドにねかしたがいっかお父さんが心配するなチャ ーリイは手だしなんかしないよといっているのかきこえた。 彼女はどこもかしこもピンク色した荷物みたいでときどき泣きわめくのでぼくは眠れなかった。そ いつだったかお父さんたちが台所にいて してうまく眠れるとこんどは夜中にぼくを起こしてしまう。 ばくがべッドで寝ていると妹が泣きだした。ぼくは起きていつもお母さんがやるようにだまらせよう とおもって妹をだきあげた。するとお母さんがどなりながらすっとんできて妺をとりあげてしまった。 そしてばくを強くぶったのでばくはべッドの上にひっくりかえってしまった。 おまえはこ それからお母さんはきいきいわめきだした。もう一一度とこの子にさわっちゃいけよい。 ' あのときはわからなか の子にけがをさせるだろう。この子は赤んぼだ。この子にさわることはない。 オし力とおもったのでぼくかうんとばかなので自分 ったがお母さんはぼくが赤んぼにけがをさせやしよ、 ) のしていることもわからないとおもったからだ。いまになると悲しいとおもうぼくは妹にけがをさせ ようなんておもわなかったから。 ストラウスはかせの研究室へ行ったらこのことを話さなければならない。 四月六日ーーーへ . 「日、ぼくはならった、コンマを、これ、か、コンマ ( , ) 、ビリオドに、しっぽが いった。なぜかというと、文が、わかりや はえている、キニアン先生、が、これ、は大切です、と、
てもあなたに話さなくちゃならない」 彼女はコーヒーを飲みながらぼくの話にじっと耳をかたむけていた。ジンピイのごまかしをどうや って発見したか、そのときの自分の反応、そして研究室で得た相反する助一 = 〕。話しおえると彼女は椅 子の背によりかかり、かぶりを振った。 「チャーリイ、あなたには驚くわ。ある点ではあなたはとても進歩したけれども、判断を下すという ようなことになるとまるで子供ね。あなたのかわりに、あたしがきめることはできないわ、チャーリ イ。その答は本では見つからないしー・ー・・他人のところへもちこんでみても解决は得られないのよ。あ なたがこれから一生子供のままでいたいというなら話は別だけど。あなた自身で答を見つけなきゃい けないーー・正しい行為が直感できるようでなければ。チャーリイ、自分を信じることを学ばなくちゃ 、けないわ」 はじめは彼女のお説教が煩わしかったが、そのときーー突如として , ーー理解できたのである。「つ まり、ばく自身できめろというんですね ? 彼女はうなずいた。 「じっさい」とぼくは一一 = ロった。 「こうして考えてみると、ばくはすでに、あるところまで心を決めて いたんだと思う ! ニーマーもストラウスも一一人とも間違っていると田 5 う ! 彼女は目を輝かせてぼくをまじまじと見つめた。「いま何かがあなたに起こっているわ、チャーリ イ。あなたが自分の顔を見られたら」 「あなたの言うとおりだ、何かが起こった ! 目の前に雲がかかっていたのを、あなたが一息で吹き はらってくれた。簡単なことなんだ。吾を信じよ。こんなことが思いっかなかった」 「チャーリイ、素晴しいわ ー 0 2
したのを皮切りにべニーズ・ハイダウェイ、それからピンク・スリ ーへ : : : そのあと行ったとこ ろはいちいち覚えていないが、私がへたばるまでダンスをした。近頃だいぶ酒量があがったようだ。 チャーリイが現われるまでにかなりへべれけになっている。彼がアラカザム・クラブのステージで珍 妙なタップダンスをしたということしか覚えていない。 拍手喝采を浴びたあと支配人に追いだされた。 フェイの話だと、みんな、私をすばらしいコメディアンだと思いこみ、白痴の演技に大喜びしたそう いったい何が起こったのだ ? 背中の筋を痛めている。ダンスのせいかと思ったが、フェイが言う には、あのくそいまいましい寝椅子から落ちたそうだ。 アルジャーノンの行動がまたまたおかしくなってきた。ミニイは彼を怖がっているようだ。 七月九日ーーー今日おそろしいことが起こった。アルジャーノンがフェイに噛みついたのだ。かまっ てはいけないと注意しているのにいつも餌をやりたがる。ふだんは彼女が部屋へ人っていくと、彼は ばっと頭をあげて駈けよってくる。今日は様子が違った。隅の方で白い。ハフのように丸まっていた。 てつべんの落とし戸から手をつつこむと、体をちぢめて隅のほうに後じさって、 しく。フェイは迷路の 壁を開けてやって機嫌をとろうとした。ほうっておけと注意するひまもなく、フェイは彼を掴みあげ るために手を伸ばすという誤りを犯した。彼はフェイの親指に噛みついた。そしてわれわれを睨みつ けると、迷路の中へさっと走りこんだ。 ミニイは褒美箱のむこうの隅にいた。胸の傷から血が流れていたか、生きてはいた。取りだそうと 手をつつこむと、アルジャーノンが箱の中へ入ってきて飛びかかってきた。袖に食いついてこちらが 振り落とすまでぶらさがっている。 2 2 2
あなたが何かを説明してくれて、あたしにそれがおぼえられないと、あたしが興味かないから、そ うする気がないんだと考える。でもあなたは知らないのよ、あなたが帰ったあと、どれほどあたしが 苦しんでいるか。あたしが死に物狂いで読んだ本のことも、ビークマンでとっている講義のこともあ よたは知らない。なのに、あたしが何か一一 = ロうと、なんだ子供つばいことを言っているなという顔をし てあなたがいらいらしているのがわかるの。あなたが知能を高めることをあたしは望んでいたわ。あ なたに力を貸し、あなたと苦労をともにしたいと思ったわーーーところがあなたは、あなたの生活から あたしを締めだしてしまった」 彼女の話を聴いているうちに、事態の重大さかのみこめてきた。私は自分のこと、自分の身に起こ ったことに心を奪われていたので、彼女の身に起こったことにまで考えが及ばなかったのである。 学校を出ると彼女は声をしのばせて泣いた。そして私は一一一口葉もなかった。バスに乗っているあいだ、 いつのまにか立場が逆になってしまったのだと思った。彼女は私を恐れている。二人のあいだの氷が 割れて、私の心の潮流が私を速かに外海へ押し流すにつれ、その割れ目はどんどん広がっていったの 私といっしょにいることによって苦しむのはまっぴらだというのは当然であろう。もはやわれわれ に共通するものは何もよ、。、 オ ( 3 つうの会話も不自然になっていた。そしてわれわれのあいだにあるの は、暗くした部屋でのぎごちない沈黙と満たされない欲望ばかりであった。 「ひどく真剣になっちゃったのね」彼女は沈みこんだ気分をひきたてるように顔をあげた。 「ばくたちのことだ」 「そんなに考えこませたりしていけなかったわ。あなたの気持を乱したくはないの。あなたはたいへ んな試練に遭っているんですものね」彼女はむりやりほほえんでみせた。 リ 6