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検索対象: ズッコケ三人組の大運動会
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1. ズッコケ三人組の大運動会

「兄ちゃん、気をつけな。こいつ、どっかの中学校にたのまれて、兄ちゃんのことさぐっ おくだ てるらしいんだぜ。おい、奥田。まだ、こりてないようだなあ。」 みやした 「ち、ちがうよ。宮下くん、ぼく、どこの中学にもたのまれちゃいないよ。」 モーちゃんは、あわてて手をふった。 「ふうん。そんなら、なにしにきた。」 みま 「だから、お見舞いだよ。」 「へつ、よくいうぜ。どこの世界に、なぐられたやつのとこに見舞いにいくばかがいるか よ。ああ、そうか、おまえ、ハチベ工とかにたのまれて、おれのけがのようすを見にきた ほねお のか。なら、もどっていってやれよ。おれは足の骨が折れちゃって、運動会にはでられな 努は、そこで、ぎよろりと目を光らせた。 「ううん、やつばりな。おれも、まさかって思ってたけど、おまえが、おれのようすを見 なかま やまなか にきたんで、わかったよ。きのうのは、おまえの仲間のしわざだろう。ええと、山中って やつ。あいつが、わざとタワーをくずしたんだろ。おれには、ちゃんとわかってるんだか せかい 136

2. ズッコケ三人組の大運動会

「それで : : : ? 「う、うん。さいしよ、足をすべらせたの、 ( カセちゃんだったんじゃないの。」 かた あせ せきもと 「下の子ども、たしか関本くんだったと思うけど、肩をうごかしたんだ。汗でべとついて せきにん るだろ。だから足のうらがすべってね。そうか、やつばり、あの事故は、・ほくの責任だっ たのか。・ほくも、そうじゃないかと思ってたんだけど : カセカを : 、まっとためをついた。 。いくらハカセちゃんの足がすべっても、 「 ( カセちゃん、ひとりの責任じゃないと思うよ ほ力のひとが、ハ ランスをくずさなけりゃあ、タワーがくずれることないもの。でもね うわめ 、こ、カセを見た。 モーちゃんは、上目づかし冫一 みやした 「ほく、宮下くんがけがをしたってきいたとき、ドキッとしちゃった。ひょっとしたら、 ハカセちゃんがこないだの敵をとったのかと思って : 「こないだの敵 : : : ? 」 っとむ 「ほくが、努くんにひつばたかれたとき、 ( カセちゃん、すごく怒ってたもの。この敵は、 かたき 121

3. ズッコケ三人組の大運動会

店番をしていた母親が、ちらりとおくを見る。 「それどころじゃなかったんだ。ああ、腹へった。めし、めし : : : 」 ちゃ かお 茶の間にとびこんだとたん、ふきげんな顔で、 ちちおや ビールを飲んでいる父親と目があってしまった。 ゆくえふめい 「あ、ごめんよ。だって友だちが行方不明になっちゃってさ。 いままで、さがしまわってたんだ。」 しいかげんなこといいやがって。どうして正直にいえないんだ。 「へつ、 おど 踊りのへたくそなおやじとはっきあっていられなくて、あそんでましたって : 「いやだなあ、すねてんのかい。そんなんじゃないって。ほんとにほんと、友だちが行方 にゆういん 不明になったんだよ。足を折って、入院してたのが、病院からぬけだしちゃって : おうたい ハチベ工が、そこまでしゃべりたてたとき、店の電話が鳴った。母親が応対にでたらし ちゃ そのうち、あたふたと茶の間にあがってきた。 みやした 「おまえ、たいへんだったんだねえ。いま宮下さんて家から電話があってさ。くれぐれも 、 0 みせばん ははおや 174

4. ズッコケ三人組の大運動会

だんち さかみちたっ ふたりの自転車は、すでに団地の長い坂道に達していた。さきをいく ( カセは、自転車 ひだ莎がわ ぞうき をおしながら歩きはじめている。坂道の左側は、雑木のしげみになっていて、人間のひと りやふたり、 いくらでも身をかくせそうだ。 さかや 坂をのぼりきったところに、酒屋があった。 てんいん ハカセは、店のまえにいた店員となにごとか話していたが、じきに首をふりながらモー ちゃんのそばにやってきた。 まつばづえ 「この坂道には、あらわれてないらしいな。松葉杖の子どもは、見かけなかったって。 もっとも、タクシーかなにかにのってたら、わかんないけどね。」 ハカセはそういうと、自転車にまたがった。 しえい はなやまだんち 五分後、ふたりはわが家のある市営ア。 ( ートにもどってきた。花山団地の市営ア。 ( ート は、ぜんぶで七棟ある。ハカセの家は、三号棟の三階、モーちゃんの家は二号棟の二階に あった。 みやしたっとむ もし、宮下努がここにやってきたとしても、 いったいどうやって敵をうっというのだろ う。正面きってチャイムをおし、でてきたところをアツ。、 ーカットをくらわす。これは、 と・つ や かたき 166

5. ズッコケ三人組の大運動会

じようほ - っ みやした う青報がはいってるんだが、それが宮下くんかどうかわからないんだ。ただ、もといた名 かのうせい 古屋の町が恋しくなって、ふらふらっと列車にのった可能性もあるし、しんせきの家にい くつもりで列車にのった可能性もあるからね。」 っとむ 先生は、努の兄さんをちらりと見た。 「とにかく、先生は、これから、町のなかをさがしてみるつもりだ。きみたちも心あたり をあたってみてくれないか。」 ことし そっぎよう わか あし 今年大学を卒業したばかりの若い先生は、そういうと、かけ足でア。ハート していった。 「おい、おれたちも、さがそうぜ。」 ( チベ工が、自転車のほうに歩きかけようとしたときだ。努の兄さんが、ロをひらいた。 「あのな、この話は、だれにもしてないんだけど : : : 。努が病院をとびだしたのは、おれ のせいじゃないかと思うんだ。」 おざきひろし かおちゅうもく ハチベ工もハカセもモーちゃんも、尾崎浩も、 いっしゅん努の兄さんの顔を注目した。 みま し冫しったとき、つ 「きようの午後、見舞、こ、 いトレーニングの話をしたのさ。おまえたちと の門をとびだ 163

6. ズッコケ三人組の大運動会

「ううん、みんなよりおくれてたよ。」 「ふうん : ( カセは、なにごとかかんがえていたが、やがてモーちゃんのほうをふりかえった。 「ありがとう。ほかに気がついたこと、ない ? たとえば ( チベ工くんと、・ほくのフォー ムで、あきらかにちがってるところ。」 「どうかなあ。そんなに気をつけて見てたわけじゃないから。でも、スタートのとき、 チベ工ちゃんは、いちばんにとびだしたね。やつばり、足の速い子は、スタートもはやい んじゃないのかなあ。」 「なるほどねえ。」 ( カセは、ふたたびかんがえこんでしまった。 してき が、ひとよりおくれているとは モーちゃんに指摘されるまで、 ( カセは自分のスタート ひょうじゅんてき が、他人よりもおそ 気づかなかった。しかし、自分ではごく標準的と思っていたスタート いとわかっても、はたしてどうやってなおせばいいのか。あんまりあせってとびだせば、 ここは、他人のスタートをとっくりと観察してみよう。 やりなおしになるにちがいない かんさっ 103

7. ズッコケ三人組の大運動会

ぜったいとってやるって : : : 」 ( カセは、めがねのおくの小さな目を二、三どしばたこ、こ。 「そうか、きみも、そう思ったのか。」 「え ? っとむ 「さっきから、・ほくもそのことかんがえてたのさ。もしかしたら、努くんもうたがってる かもしれないなあって。」 みやした 「宮下くんが ? ー 「うん。・ ほくのせいでタワーがくずれたって知ったら、あの子も、そう思うんじゃないの。 なかま だって・ほくが、きみや ( チベ・エくんの仲間だってことはしようちしてるだろう。」 「で、でもさあ。そんなこと、ますむりだよ。わざとタワーをたおすなんて へたし こら、 ( カセちゃんだって、大けがしてたかもしれないもの。ハカセちゃんが、わざと やったなんてだれも思うわけないよ。」 ぜんげんひてい モーちゃんは、大あわてにあわてて、前一一 = 口を否定した。まさか ( カセが、こんなことを かんがえていたなんて思ってもみなかった。 122

8. ズッコケ三人組の大運動会

よろしくって : 。子どもが病院からぬけだしたんだってね。それを、おまえたちがさが して連れもどしたんだって ? かお 母さんのことばに、父さんもいつのまにか、へえっという顔つきにかわっていた 「ね、だからいったとおりだろ。べつに、父ちゃんの踊りにつきあうのがいやになったわ けじゃないんだからね。」 ちちおや がお ハチベ工がいうと、父親もなっとく顔でうなすいた。 めし 「わかった、わかった。おい、母ちゃん、こいつに飯をよそってやれ。腹へらしてるん じゃねえのか。」 みやしたっとむ おなじころ、ハカセやモーちゃんの家にも、宮下努の家から、お礼の電話がかかってき うんてん 努は、 いったん家にもどったあと、父親の運転する車で、ぶじ病院にもどったらしい 母親がききだしたところによると、きようの昼すぎ、兄の学が学校の帰り、病院によっ だっしゆっ て三十分ほど話したという。そのあと、むしように病院を脱出したくなり、服を着かえて かんじゃ 病室をでた。一階は外来の患者もたくさん出入りしているから、だれにも見とがめられる ははおや 力し 力いら ( おど 175

9. ズッコケ三人組の大運動会

く走りだした。ハ カセは、立ちあが . ってみがまえる。 きしゅ しようめんしようとっ 馬と馬が、ほとんど正面衝突するくらい接近したかと思うと、あいての騎手が、両手を ていこう あげておそいかかってきた。、 , カセもひっしに抵抗したが、たちまちねじふせられて、ぼ うしをとられてしまった。 むねん 馬の頭とうしろ足が、無念のため息をついた。 ぼうしをとられたチームは、その場で馬をといて、もとの場所にもどらなくてはならぬ。 みれば、モーちゃんの馬も ( チベ工の馬も、はやばやと解散していた。 しゅうりようじゅうせい やがて終了の銃声が、二度なりわたった。 ま のこった馬は、赤組二頭、白組三頭。女子の勝負を待たずして、赤組の負けが決定した のである。 きばせん しかし、女子は赤組が大健闘して勝ちをおさめ、けつきよく、騎馬戦だけを見れば、 き分けということになった。 はなやま かくして、花山第二小学校の秋の大運動会は、つつがなく終了したのである。勝ったも だいけんとう せつきん よ う 力いさん しゅうりよう けってい 200

10. ズッコケ三人組の大運動会

「ほくも、つきあうよ。」 おざきひろし 尾崎浩も、こっくりうなずいた。 むごんかお のこるハカセとモーちゃんは、しばしたがいの腹をさぐりあうようにして、無言で顔を ハカセが、めがねをずりあげた。 力やがてのこと、 見あわせていた。 : 、 「あのう、ちょっとかんがえさせてくれませんか。」 ぶかっ 「べつに、しんこくにかんがえなくていいぜ。部活じゃ ないんだから。気がむいたとき、やってこいよ。」 みやした 宮下コーチが、わらいだした。 さんか 「あ、それいいよ。ぼくも、目がさめたとき参加しよっと。」 っこ。 モーちゃんが、ほっとしたようにいナ この一週間、毎朝六時前に起きるというのは、 」りよく モーちゃんにとっては、たいへんな努力であったのだ。 ートまで、ジョギングでもどるそ。」 「さあ、それじゃあア。 ( コーチがかろやかな足どりで走りだした。 まいあさ 179