ハチベ - みる会図書館


検索対象: ズッコケ結婚相談所
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1. ズッコケ結婚相談所

モーちゃんのことばには、まるでためらいがなかった。きまりきったことを、そのまま 口にだしてるみたい冫 こ、すっきりしていた。 わみみ ハチベ工は、さいしよ、我が耳がおかしくなったのかと思って、指でほじくってみた。 それから、ゆっくりとおうかがいをたてた。 なりた 「おまえ、いま、なんてった ? 成田さんのこと、父さんて呼べないっていったよなあ。 さいこん て、いうことは、おばさんの再婚に反対するってことか ? 「母さんの再婚には、反対しないけど、成田さんは、・ほくの父さんじゃないよ。・ほくは、 もう父さんは、いらないんだ。」 けっこん なりたさんきち 母さんが結婚したら、おまえ、成田三吉になるんだぜ。 「いらないって、いっても : つまり、成田さんの子どもってことになるんだろう。」 「でも、・ほくは、父さんいらないもの。成田さんのこと、父さんだと思わないもの。」 いつも、むちゃくちゃなことをいうハチベェでさえ、モーちゃんのいってることは、よ くわからない。 「おまえなあ、自分のいってること、わかってんのか ? 」 184

2. ズッコケ結婚相談所

はなやましようてんがい やおや ( チベ工の家は、花山商店街の一角にある八百屋こ。、 たノチベ工が家にもどると、父 みせ ちゃんが店さきのキャベツをならべかえていた。 ちちおや ( チベ工は、すこしのあいだ、父親の仕事ぶりをながめていた。 「あれ、おまえ、なにつっ立ってるんだ。もどったときは、あいさつくらいしろ。」 「ただいま。」 ( チベ工は、ちらりと ( カセのよこ顔をぬすみ見た。 いけん ( カセは、それがいやだから、反対めいた意見をはいたのだろうか しあわせ 「でも、モーちゃんがほんとうに幸福になるんなら、しかたないな。」é_z 、 かお ( カセが、ため息まじりにつけたした。それから、ふと顔をあげた。 「あ、そうそう。土曜日のデートどうだった ? 女の子に会えたの ? わだい ハチベ工としては、 いま、いちばんふれられたくない話題である。 がお

3. ズッコケ結婚相談所

( チベ工が、あわててそばのメモ用紙に数字を書きうっすよこで、 ( カセが小声で、 と、教える。 「あ、きみ、きみ。十二。わかるかね。十二だよ。」 「ありがとう、じゃあ五十一ひく二十三は ? 」 三十八。」 すかさず ( カセが、 ( チベ工に教えた。 三十八だね。」 じゅわき これまたハチベ工が受話器にむかってこたえる。 もんだい 「じゃあ、つぎの問題。タロウさんは、ビー玉を二十二個 もっています。ジロウさんは、四十一個もっています。どちらが、いくつおおいでしよう。」 くび 」にいたって、ハチベ工もようやく首をかしけた。 「あのね、それ、もしかしたら、算数の問題じゃないのかね。」 しつもん ハチベ工先生の質問に、なやめる子どもはすました声でこたえた。 ようし 2 第ー

4. ズッコケ結婚相談所

ごうとう ハチベ工が、二号棟の二階をふりかえりながら、思いだしたようにつぶやく。 「ほくも、いい話だと思うよ。」 ハカセもめがねをずりあげた。 「なら、もっとすすめてやりゃあいいのに。」 あいてなりた むせきにん 「きみのように無責任なことはいえないさ。相手の成田ってひとも、見たことないんだ 「そりゃあ、まあ、そうだけど : くち ハチベ工も、ちょっとロごもる。 ノカセがしオ ふと、 けっこん てんきん ぎんこう 「銀行って、転勤がおおいんだってねえ。もし、モーちゃんの母さんが結婚したら、モー ちゃんとも、おわかれすることになるなあ。」 ハチベ工は、はっとして立ちどまった。 「そうか、そうだなあ。あいつ、どっか、よそにひっこしちまうのか。」 とうきようおおさか 「市内にいればいいけど、東京や大阪に転勤したら、もう一生あえなくなっちゃうね。」 - カし

5. ズッコケ結婚相談所

こすというのは、たしかにめずらしい 「ま、人門 日、いろいろあるさ。天気の日ばっかりじゃないもんなあ。」 ハチベ工が、ふたたびたたみの上にねころんだとき、また電話のベルが鳴った。 ハカセが、ビクンとからだをふるわせる。 「 ( チベ工くん、出てくれよ。さっきのおばさんだったら、・ほくは、もういないってね。」 じゅわき ハチベ工が受話器をとった。 「もし、もし。」 はな ややあって、みように鼻にかかった子どもの声がした。 でんわそうだんしつ 「あのう、子ども電話相談室でしようか。」 かいさん 、え、子ども電話相談室は、もう解散しましたよ。」 やくそく 「そんなあ : ・ きよう一日は、うけつけるって、約束したじゃない。」 ハチベ工は、あれっと田 5 った。 「なんだ、モーちゃんじゃねえか。どうしたんだ。」 「ほくは、モーちゃんではありません。悩みのある小学生です。」 なや

6. ズッコケ結婚相談所

おん 列車は、ごう音をたてながら、西にむかって走りつづけていた。 ハカセも、いまは、なにもいうことばがなかった。 ハチベ工も、 やがて、 ( カセが、ほっとため息をついた。 「タ工子姉さんには、もうしわけないけど、・ほくは、モーちゃんの味方になるよ。もっと も、・ほくには、なにもできないけどね。」 ハチベ工も、ぎよろりと目をむいた。 「おれだって。おれは、いつでも、こいつの味方だ・せ。こいつが、いやだっていうんなら、 しようがねえじゃねえか。だけど : ハチベ工が、クスリとわらう。 かお 「おまえ、顔ににあわず、すげえこと、へいきでいうなあ。」 でんえんちたい 外は、まだ雨がふっていた。列車は、田園地帯を走っている。しまいこむのをわすれた らしいこいの・ほりが、雨にぬれそ・ほって、たけざおにまつわりついているのが、ちらりと 見えた。 きようは、五月五日、こどもの日。 みかた 190

7. ズッコケ結婚相談所

るでちがう。 ( チベ工は、つい ロごもってしまった。 じじよ・つ 「そりゃあ、おまえ、いろいろ事情ってものがあるからさ。おまえだ・つて、さっき、 りこん たじゃないか。母さんが離婚したのは、いいことだったって。」 「うん、いったよ。あのふたりが離婚したのは、しようがないよ。でも、・ほくらまで、 しっしよくたにわかれわかれにすることないじゃよ、 オしか。ねえ、 ( チベ工ちゃん、そう思 わよい。 はイ、り・レ / 、 さすがのハチベ工も、モーちゃんの迫力にたじたじとなってしまった。 エスオーエス ハチベ工は、ハ カセに O をおくるべく、声をかけた。 「おまえ、こいつのいってること、わかるか。」 ハカセが、小さくうなずく。 ふうふかんけい 「そうだな、ようするにモーちゃんは、夫婦関係と親子 かんけい 関係は、べつだってことが、いいたいんじゃないかな。」 「へえ、おまえ、そんなむつかしいこといってたの ? 」 ハチベ工は、あらためてモーちゃんの顔をふりかえった。 くち かお おやこ 186

8. ズッコケ結婚相談所

していった。 ほうそうしつ のそばに、和服を着た小がらなおばさんが立って なるほど、放送室と書かれたプレート いて、ハチベ工のすがたを見ると、ビョンビョンととびあがって、両手をふっている。 りようへい 「良平ちゃん、ここよ。ここよ。」 おおごえ 「わかってるよ。そんなに大声ださなくても。おばちゃん、こんにちは。」 ハチベ工は、ふたりをふりかえる。 みようじ なかの 「中野のおばさんだ。うちの母ちゃんの姉さんでさ。ええと、名字なんていうんだっけ。」 よしの 「よくいらっしゃいました。良平のおばの、吉野でございます。」 おばさんが、ハ カセたちにあいさっした。 「そうそう、吉野っていうんだ。これがおれの親友、めがね / おくださんきち やまなかしようたろう かけてるほうが山中正太郎で、ふとってるほうが、奥田三吉。」 しょ - っ力し ハチベ工が、ふたりを紹介した。 「山中くんと、奥田くんね。長い旅で、くたびれたでしよう。 あと、すこしで家につくからがまんしてね。」 たび しんゅう わふく 143

9. ズッコケ結婚相談所

かのじよ ろって、かけてきた彼女にわたす。そのみじかい一瞬に、恋がめばえるのだ。 ハチベ工は、みじかい足をできるだけ長く見せるように、大またでポールに近づく。か しゆっげん た手でひょいと持ちあげると、少女の出現を待った。 ショートカットの女の子が、走ってきて、 ( チベ工の三メートルてまえで立ちどまった。 たしか四組の女の子だ。色のまっ黒けなタヌキみたいな かお 顔をしている。 ( チベ工は、げつそりしてしまった。 「サンキュー タヌキが、あっけらかんとした声でいった。 おとめ これが、恋する乙女のことばだろうか。 ハチベ工は、一瞬とまどってしまった。 「なにしてるのよ。はやくボールかえしてよ。」 ちょ・つし れんあい むかんけい タヌキがわめく。およそ恋愛とは無関係といった調子だ。 「うるせいや ! ハチベ工は、タヌキとは九十度ちがった方向にむかって、ポールをけっとばしてやった。 いっしゅん

10. ズッコケ結婚相談所

「なあによ、いやな子ねえ。ヘンターイ。」 タヌキが、すてぜりふをはきながらポールを追っかけて走りだした。 「へつ、あのタイプは、こっちでおことわりだね。」 ハチベ工は、ふたたびもとのポジションにもどった。 しゅ - つりよ - っ それにしてもおそい。そうじ終了のチャイムから、かれこれ一時間はたっている。運 ちゅうしよく 動場の子どもたちは、 いったんすがたがすくなくなったが、またふえてきた。家で昼食 をとった子が、もういちど学校に遊びにやってきているのだ。 ハチベ工のおなかも、もうタイムリミ ットに近づいていた。なにしろ今朝は、いつもよ り早めにごはんを食べていたから、そのぶんだけ、はやくすいてくるのだ。 いったい電話の少女は、なにをしているのだろう。まさか、昼ごはんを食べてからやっ てくるつもりではないだろう。 そのときハチベ工の耳に、女の子のしのび笑いがきこえた。 「ほら、やつばり : そんな声がした。思わずふりむくと、倉庫のかげから三人の少女がゆっくりとこっちに そうこ わら