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検索対象: ズッコケ結婚相談所
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1. ズッコケ結婚相談所

( チベ工がモーちゃんの顔をのぞきこんだ。 と、モーちゃんは、まんまるな顔をいくぶんしかめてから、ゆっくりたてにふった。 「うん、あるよ。」 「へえ、おどろいた。いつだい ? 「あれ、いつだったかなあ。すつごくおいしいアイスクリームをね、母さんが買ってきて れいと , っこ くれたんだ。・ほく、 一個はすぐに食べちゃったけど、もう一個は冷凍庫にしまっといたん だよ。つぎの日たべようと思ってね。そしたら : : : 」 お月さまみたいなモーちゃんの顔が、みるまにゆがんでいった。 「そしたら、タ工子姉さんが、・ほくが寝てるあいだに、アイスクリームを、食べちゃった かな もう、死んじゃおうかと思ったなあ。」 んだよ。あのときは、悲しくて、くやしくて : ハカセもブッ 本人が、どこまでもまじめな顔でしゃべってるから、なおさらおかしい と吹きだすし、 ( チベ工にいたっては、ゲラゲラ声をあげてわらいだした。 ほんみようはちやりようへい ところで、このハチベ工というのは、もちろんニックネームだ。本名は八谷良平とい こうどうりよく う。からだは六年生にしてはみじかめにできているが、そのぶんだけ行動力がある。た

2. ズッコケ結婚相談所

しやるんじゃないかと思いますよ。」 おばあさんは、そこまでいっきにしゃべると、そでロで目じりをふいた。 「ばあさんのいうとおりだと思うよ。タ工子ちゃん、ロをすべらせて、こんなことをたの むのは、虫のいい話だが、兄さんのことは、ここだけの話ということにしてくれんかね。」 老人の話をきいているのか、きいていないのか、タ工子姉さんは、ただただうつむいて、 たたみを見つめている。 金子老人の家を出たのは、それからまもなくだった。タごはんでも、 いっしょに食べて ろうふうふ し力ないかと、老夫婦はしきりにすすめたけれど、タ工子姉さんがことばすくなにこと くむらじゅんじ じんぶつ わったのである。ただ、久村順次という人物の住所と電話番号だけは、しつかりと書き とめた。 家を出たあとも、タ工子姉さんはだまりがちだった。 ( チベ工も ( カセも、彼女の気も かねころうじん ろうじん ぐち ゅう かのじよ 128

3. ズッコケ結婚相談所

「なんだい、あいつ。へんなの。」 かお カセと顔を見あわせる。 ドアのしまる音をききながら、ハチベ工は、ハ そうだんしっそんぞくしゅちょう 相談室の存続を主張しながら、のこのこ外出するというのは、 いったいどういうことなのだろう。 「そういえば、モーちゃん、けさから、ちょっとおかしかったなあ。」 ハカセは、思いだしたようにいナ 「いやに考えこんじゃったりしてさ。なにかあったんじゃないの。」 いっしゅん ハチベ工は、一瞬、 なにかあったという ( カセのせりふに、 自分のことをいわれたような気がしたから、 「べつに、なんにもないんじゃないの。」 と、こたえてしまった。 「そうかなあ。でも、ほら、おかしだって、あんまり食べてないし。」 ( カセがテープルの上のアルミのふくろをあごでしやくった。食べかけのポテトチップ スが、まだ三分の一ほどふくろのなかにのこされていた。モーちゃんが、おやつを食べの 8

4. ズッコケ結婚相談所

れいぞうこ 「そう、冷蔵庫にイチゴとケーキがあるから、おやつに食べなさい。」 「あのケーキとイチゴなら、もう食べちゃった。」 こんや ああ、今夜、帰りがおそくなるから、 「やつばりね。たぶん、そうだと思ったけど : タ工子にいって、なにかとって食べてちょうだいね。」 モーちゃんのお母さんの声は、べつに耳をすまさなくても、 きこえてきた。 じゅわき やがてモーちゃんが受話器をおいて、ほっとため息をつく。 「母さん、近ごろおそくなるんだよね。まえは、そうじゃなかったのに。」 「仕事がいそがしいんじゃないのか。」 へんじ ハチベ工が気のない返事をした。 むかんけい せつかくの電話が、無関係とわかって、がっかりしているのだ。 「仕事かなあ、お酒のんでるんだよ。」 「仕事で酒をのむこともあるんじゃないの。うちの父さんなんて、しよっちゅうだもの。」 ハカセがこたえた。 ハカセや ( チベ工にもよく

5. ズッコケ結婚相談所

「どうしたの ? なにか、おもしろいことあった ? にやついているふたりに、モーちゃんが、たずねる。 「おまえの腹が、また出てきたなって、うわさしてただけさ。」 はっき ( チベ工が、ひさかたぶりにロの悪いところを発揮した。 せわ 「ふん、大きなお世話だよ。さあ、チョコレートでも食べよかな。」 モーちゃんも、すかさずおうじて、やおらバッグのなかから新宿のデ。 ( つつみをひろげはじめた。 「あれ、そいつは、家のみやげじゃなかったのか。」 「おみやげは、こっち。これは、おやつに買ったんだもの。 ( チベ工ちゃんも食べる ? 」 はやくもチョコレートをかじりはじめたモーちゃんに、 ハカセもハチベ工も、なにやら、 ほっとしたものを感じたのであった。 しんじゅく しつ トで買った 0 178

6. ズッコケ結婚相談所

「なあによ、いやな子ねえ。ヘンターイ。」 タヌキが、すてぜりふをはきながらポールを追っかけて走りだした。 「へつ、あのタイプは、こっちでおことわりだね。」 ハチベ工は、ふたたびもとのポジションにもどった。 しゅ - つりよ - っ それにしてもおそい。そうじ終了のチャイムから、かれこれ一時間はたっている。運 ちゅうしよく 動場の子どもたちは、 いったんすがたがすくなくなったが、またふえてきた。家で昼食 をとった子が、もういちど学校に遊びにやってきているのだ。 ハチベ工のおなかも、もうタイムリミ ットに近づいていた。なにしろ今朝は、いつもよ り早めにごはんを食べていたから、そのぶんだけ、はやくすいてくるのだ。 いったい電話の少女は、なにをしているのだろう。まさか、昼ごはんを食べてからやっ てくるつもりではないだろう。 そのときハチベ工の耳に、女の子のしのび笑いがきこえた。 「ほら、やつばり : そんな声がした。思わずふりむくと、倉庫のかげから三人の少女がゆっくりとこっちに そうこ わら

7. ズッコケ結婚相談所

と・つきょ・つ しんじゅく 「おひる食べたら、新宿に出かけてみないかい。せつかく東京にきて、どこも見物しな いんじゃっまんないだろ。さあ、さあ、これでも飲んで元気をだして。」 おばさんが、ジュースをすすめてくれた。 、くぶん元気になってきた。モーちゃ おひるを食べるころには、 ( チベ工やハカセは、し んも、ざるそばを四はいたいらげたところをみると、なんとかショックから立ちなおった よ一つだ。 ′、む、らけ ただ、久村家のことは、ひとこともしゃべろうとしない お昼すぎ、三人はおばさんに連れられて、新宿にやってきた。 こうそう ふうけい ミドリ市などて 駅の西口にある高層ビル街を案内してもらったのだが、こんな風景は、 すうかい は、ちょっとお目にかかれないだろう。三十数階建てといった、のつ。ほビルが、たけのこ こびと みたいにによきによきとつったっている。その下を歩いていると、きゅうに小人になった みたいな気がする。 さいじよ・つ力い とあるビルの最上階にあるきっさ店で、ひと休みすることになった。このビルは、二 四六メートルあるのだそうだ。 えき てん けんぶつ 173

8. ズッコケ結婚相談所

きゅうしよく たらよ、こいつがいなくなったらこまるもの。給食があまったとき、食べてくれるやっ だいもんだい 、つばい出ちゃうもんなあ。六年一組としても、大問題ですよ、 がしないと、ざんばんがし これは : ( チベ工は、どこまでも口が悪い。しかし、ほんとは、 ( チベ工もうれしいのだ。うれ しさをだすのがてれくさいもんだから、わざとにくまれ口をたたいているのだ。 愛すべき友人が、よその町にひっこしていかないことがわかって : こ一を乙 c ( ぐち 202

9. ズッコケ結婚相談所

母さんも、モーちゃんの顔を見ていた さんきちなりた 「三吉、成田さんのこと、きらい ? 」 「きらいじゃないよ。だけど、知らないひとといくの、あんまり好きじゃないなあ。」 日曜日いっしょにごはん 「知らないことないじゃない。 食べたし、お話もしたんだから : 「うん。」 モーちゃんは、テレビに目をもどす。 「三吉、あのひとが、どういうひとか、わかってるわよねえ。もしかしたら、あんたのお 父さんになってくれるかもしれないひとなのよ。あんただって、よくおっきあいして、あ のひとをお父さんと呼んでもいいか、考えてくれなくちゃあ。」 母さんは、モーちゃんのそばにすわりこむと、モーちゃんの手をとった。 くろう 「あんたやタ = 子にも、ずいぶん苦労かけたけど、これからは、そのぶんだけしあわせに なってもらいたいの。わかるでしよ。」 「うん : かお 、 GG

10. ズッコケ結婚相談所

男の子が、のそのそとはいってきた。 「おい、あそこにも息をするのがめんどくさそうなやつがいる・せ。おい、モーちゃん、 モーちゃん。」 かお ( チベ工の声に、どこもかしこもまんまるな少年が、お月さまみたいな顔をほころばせ て近づいてきた。 「おはよう、 ( チベ工ちゃん、 ( カセちゃん。 ( カセちゃん、さっきはごめんね。」 でぶっちょ少年が、めがねにあやまった。 「どうした。モーちゃん、なんかやらかしたのか。」 ハチベ工がたずねる。 と・つこ・つ 冫いったら、モーちゃん、まだごはん食べてたから、さきに登校し 「ううん、けさむかえこ ただけさ。」 はなやまだんち しえい ( カセがこたえた。 ( カセと、このモーちゃんは、おなじ花山団地の市営ア。 ( ートに住 つうがく まいあさ んでいるから、毎朝、さそいあって通学している。 じさっ 「なあ、おまえ、自殺したいって考えたことあるか。」