携帯 - みる会図書館


検索対象: ハードラック
126件見つかりました。

1. ハードラック

は思っていませんでしたがね」 森下が愉快そうに笑った。 「公衆電話から着信があったときにはいったい誰だろうと思いましたけどね : : : それにしても、とう とう携帯まで売ってしまったんですか」 「ちがいます。携帯は持ってますよ」 仁はポケットから携帯を出して見せた。 「それは失礼」 ディスカウントショップのトクノヤが見えてきた。駐車場に車を入れる 「で : : : わたしにお願いというのはいったい何でしよう」 エンジンを止めると森下がこちらに目を向けて訊いた。 「あなたは以前、携帯の番号からいろいろなことを調べられると言ってましたよね」 「ええ」 「この携帯番号を調べてほしいんです」 仁はメモ用紙を差し出した。ラムとテキ 1 ラとバーポンの携帯番号が書いてある。 「理由は ? 森下がル 1 ムライトをつけた。メモを見つめている。 「知りたいだけです。それだけじゃだめですか」 頼みごとをするにしても、この男を信用しているわけではない。 森下がメモに据えていた視線を仁に向けてにやっと笑った。 「それで : : : この番号の何を知りたいというんです ? 」 188

2. ハードラック

自分ももうすぐああなってしまうのだろうか そんなことを想像するとやり切れなくなった。自分は何も悪いことはしていない。ただ、不運なだ チャンスが欲しい もう一度、やり直せるチャンスが欲しい 目の前にネットカフェの看板が見えた。一時間、四百円と出ている。 とにかく携帯を充電しよう。携帯が使えなければ仕事を探すことだってできない。 仁は雑居ビルに入ってエレベータ 1 に乗った。受付に行くと、立っていた従業員が少し顔を歪めた。 そんなに今の自分は臭うだろうか。自尊心を傷つけられながら、免許証を差し出して受付を済ませ 仁はドリンクバーで一気にコーラを三杯飲むとすぐに個室に入り、携帯の充電器をコンセントにつ ないだ。 たった一時間しかない。携帯を充電しながら、 ハソコンで求人情報を探し、片っ端から電話をかけ ていった。 時間が残り十五分になっても仕事は決まらない。胃のあたりがきりきりと痛んだ。 仕事が欲しいーー何でもいいから仕事を探さなければ 仁は最後の手段としてあることを思いついた。だが、携帯を見つめながらそこにアクセスするのをク ためらっている。 ちょっと覗いてみるだけだ 仁は携帯のネットにつなぎ、「裏』『求職』と検索をかけた。 携帯の画面にいくつかの『闇の掲示板』が出てきた。ニュ 1 スなどで観たことがあるが、実際にこ

3. ハードラック

仁は森下という人物に頼んで、三人の携帯番号から契約者の名前と住所を調べてもらったと話し 「そんなことが簡単にできるんだ : : : 何だか布いね : その話をすると、ラムがうつむいた。 「どうして彼女の携帯を使ってるんだ ? 」 「前の男が原因 : : : 」 ラムがばそっと呟いた。 どうせい 「前に付き合ってた男が何て言うのかなあ : : : 最低な奴だったんだよね。同棲していたことがあった んだけど、何かというとすぐに暴力を振るう男でね : : : いい加減耐えられなくなって家を飛び出 したんだ。だけど : : : それからスト 1 カーみたいになっちゃって : ラムの表情がどんどん険しくなっていく。 : どういうわけかあいつに突き止められ 「新しいアパートを借りて、携帯の番号も替えたんだけど : 、こよ友人とも連絡を取らない ちゃったの。そのたびに引っ越しを繰り返して、番号を替えて、しまし ( ( ようにしたんだけど、それでも : : : 」 「その男がきみの目の前に現れる : : : ? 「そう : : : おまえはおれから一生逃げられない。どこに行こうが簡単におまえを見つけだせるって : わたしの名前で家や携帯を契約するかぎり必ず突き止められてしまう。そうこうしているうちに ネットカフェやホテルを渡り歩くような生活になった。それで : : : 友達のゆかりに頼んでわたしの代 わりに携帯を契約してもらうことにしたの。携帯がなければ何もできないからね。とにかくお金が欲

4. ハードラック

森下の目は笑っていない。 その現実をあらためて突きつけられて、胸が苦しくなった。 「殺されてたまるか : : : 」 仁は精一杯の言葉を吐き出した。 冗談じゃない やってもいない罪でどうして殺されなければならないのだ。 「そのためにこいつらを捜さなきゃならないんです。だから : : : 」 「かぎりなく細い糸ですよね。この番号の契約者がバーボンやらテキーラやらという、あなたが知っ ている人物とはかぎらない。そうでしよう」 それは森下に言われるまでもなくわかっている。 最初から誰かを嵌めるつもりであったのなら、自分名義の携帯を使うはずがない。どこかで他人名 義のとばしの携帯を手に入れているだろう。そんなことは百も承知だが : 「他に方法がないんですー ーポン、ラム、テキーラの三人がグルですべてとばしの携帯を使っていたとしたら、もう自分に 打つ手はない。ひとりでもグルではない人物が、今の仁のように不安に駆られている人物がいること に賭けるしかなかった。 「明日の昼頃までには何とかしますよ。わかったら携帯に連絡しましよう」 森下がメモをポケットにしまいながら言った。 「いや : : : 携帯の電源は : 入れるわけにはい、 「そうですね。警察がすでにあなたにたどり着いているとしたら命取りになる」 ノ 94

5. ハードラック

テッの言葉に、菅野は我に返った。 目の前に置いた携帯のことを言っているのだろう。自分の携帯は上着の左ポケットに入れている。 菅野はテッの質問には答えず、サカイから提供された携帯を見つめた。 この携帯とつながっているサカイのことを考えるだけで、身の毛がよだってくる。 あの家に火をつけたのはサカイなのだろうか。三人の命を奪ったのはサカイで、自分たちはその手 助けをさせられたということなのか それを考えると、恐ろしさで気が変になってしまいそうになる。 金は奪っても、人を殺さず傷つけずというのが自分の信条だったはずだ。 あの家から抜け出した後、いったい何があったのだ とうしても知りたかった。 知りたい。。 この携帯の電源を入れればサカイと連絡が取れるかもしれない。、、、 況を聞けるかもしれない。 だが、今は電源を入れてみる勇気がなかった。 菅野はポケットからメモリーを取り出した。神谷家の金庫に大事そうに保管されていたもの 神谷という人物はいったい何者なのだろう。いったいあの男は誰からどんな恨みを買ったのだろう 「なあ、テッーーー店にノ 1 トパソコンを置いてたよな」 ヾ、」 0 ノノや、ラムや、テキ 1 ラから状 186

6. ハードラック

仲間求む。 今の生活にもがき苦しんでいる人たち。一発逆転を狙って一緒に大きなことをやりませんか 一発逆転を狙ってーー何とも浅はかな行動をしたものだ。 しようす・い 母親の憔悴しきった姿を思い出して、相沢に対して腹立たしさがこみ上げてくる。 この書き込みがされた後、相沢と連絡を取り合っていた携帯の名義人である坂口邦彦の身柄が確保 されたと報告があった。本人から事情を聞くと、相沢と連絡を取り合っていた携帯は、小遣い稼ぎの ために何台か契約したものを闇の業者に流したのだという。坂口は事件への関与を否認し、また事件 当夜のアリバイも確認されたとのことだ。 牧村哲司という五十六歳の男の身柄も本日確保されたが、こちらも闇金の借金苦から契約した携帯 を闇の業者に売り渡したのだと話したそうだ。牧村に関しても、事件当夜のアリバイは確認されたと 報告された。 この二つの携帯に関しては闇の業者を介しているため、現在の所有者を特定するにはかなりの困難 を伴、つことが予想される。 鈴木明宏に関しては、登録している住所。 ( こよ現在住んでおらず、まだ所在が確認できないでいると のことだ。 続いて、勝瀬も立ち上がった。 まずは前園ゆかりから聞いた北代舞に関することから報告した。 ゆかりが代わりに携帯を契約した北代舞ーー偽名である可能性も高いと思われるーーーが、料金所で 撮影された助手席の女性に間違いないとの証言を得られたこと。 また、相沢は北代舞を捜してゆかりのもとを訪ねており、現在一一人は一緒に行動している可能性が 2

7. ハードラック

「どうしましたか」 「運転席に座っているこの男の人 : : : 昨日、わたしの家に訪ねてきました」 「本当ですか ? 相沢がゆかりの家を訪ねていた 「やつばり刑事さんと同じように携帯から彼女のことを捜していたみたいです」 「それで」 勝瀬は先を促した。 : いや、もとはわたしの携帯なんですが : : : 通話ができなくなってい 「そのときには彼女の携帯が : て : : : それで彼女がいそうなネットカフェを捜してそのことを伝えたんです。彼女は自分の携帯は使 えないからこの男の人に東板橋公園で待っていると連絡してくれって : ということは、相沢と北代舞は今現在一緒に行動しているのだろうか 「北代舞さんの写真なんかは持ってませんか」 「プリクラで撮ったものなら ゆかりがバッグから手帳を取り出した。開くとあちこちに小さなシ 1 ルが貼られている。その一枚 を指さした。 ゆかりと一緒に写っている北代舞は、艶つほい顔立ちをしたなかなかの美女だ 「他に彼女に関して何か聞きませんでしたか。どんな友達がいるとか、どういう店に出入りしている A 」か : 「池袋のネットカフェによくいるとは聞きましたけど、それ以上のことは : ゆかりは北代舞が出入りしていたというネットカフェをいくつか告げた。若林がその店名をメモし

8. ハードラック

しかも、菅野は手を下していないが、その男が殺されている。 今回の襲撃を持ちかけたサカイも犯罪組織に属する人間なのだろうか。自分は犯罪組織の手駒にさ れてしまったとい、つことなのか サカイとはいったい何者なのだ 菅野はファミレスでの光景を思い出していた。 サカイからメールで指示があったとき、ファミレスの店内にはそれらしい人物は見当たらなかった。 店内の様子は外から双眼鏡か何かで見ればわかるかもしれない。だが、サカイは店内での会話まで把 握していたのだ。 いったいど、ついうことなのだろ、つ 「何かさっきから難しそうな顔をしてるな」 声をかけてきた岩井を見て、菅野はあることを思いついた。 岩井はフリーライターをしている。パソコンや携帯電話の雑誌に記事を書いているから通信機器に 詳しいと以前聞いたことがあった。 「岩井さん、ちょっと訊きたいんだけど : : : 」 ポケットから携帯を取り出しながらそこまで言って慌てて口を閉ざした。 もしこの携帯の中に盗聴器が仕込まれているとしたら、たとえ電源を切った状態であっても、この 会話をサカイに聞かれている可能性がある。 菅野はテッからメモ用紙とペンを借りて用件を書いた 『この携帯の中に盗聴器を仕込むことは可能ですか ? 』 「ああ、可能だよ。盗聴器といっても : : : 」 幻 7 ハードラック

9. ハードラック

さすがに裏の住人らしく、すぐに察した。 「そうだ。使っていないカードが何枚かあった」 「カ 1 ド ? 仁は訊いた。 「携帯の中に入っているカードを入れ替えると、同じ携帯であってもちがう電話番号として使 用できるんです」 つまり、名義が変わるわけだから、携帯を使用しても警察に仁の居場所を知られる心配はないとい 、つ、」 A 」カ 「あいにくですが、カードは今持っていません。これから事務所に行って入れ替えてきますよ」 森下が手を差し出してきたので、仁は携帯を渡した。 「三十分ほどで戻ってきますから、ここで待っててくださいー 仁が降りると森下がすぐに車を出した。車が駐車場を出て行くのを見て、仁はディスカウントショ ップの建物に入った。店内をうろついて、ニット帽と風邪用のマスクを買った。 もしかしたら、もうすぐテレビのニュースに自分の顔が映されるかもしれない。 殺人事件の容疑者として サングラスも買おうかと思ったが、よけいに怪しく見えるのではないかと思い直した。 駐車場に出ると森下の車が停まっていた。仁が近づいていくと運転席の窓ガラスが下りて森下が携 帯を差し出した。 「これで大丈夫でしよう」 「いくらですか : 195 ハードラック

10. ハードラック

そう言うと、女性の顔が少し反応した。心当たりがあるようだ。 「彼女はこのアパートに住んでいるんでしようか。どうしても会って話をしなければならないんで幻 「そんな女性は知りません。帰ってくださいー 「だけど : : : 」 「警察に通報しますよ」 女性がハンドバッグから携帯を取り出した。 「いいんですか ? 噛みつくような鋭い眼差しで言った。 「それはマズイです。だけど、そんなことをしたら彼女にとってもやばい事態になってしまいます 仁が言い返すと、女性の表情が変わった。 「ど、つい、つこと ノンといえばわかります。彼女 「それは彼女に会ったら説明します。彼女と連絡を取ってください。、、 の居場所を教えろとは言いません。彼女にばくの携帯番号を知らせてくれればいいです。それでどう ですか」 「連絡っていっても : ・ : この数日、マイの携帯に電話してもつながらないの」 女性は言った後で、あっという顔をした。 マイーーーとい、つのか 「お願いします。一刻を争うことなんですー