GOEMON - みる会図書館


検索対象: ホステリングマガジン vol.10 Autumn 2017
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1. ホステリングマガジン vol.10 Autumn 2017

0. となると、紀里谷さんにとっては作品を作ることがゴー ルなのでしようか ? 情報は、自分の足で、 五感で、魂で手に入れる。 0. 「社会と関わりたくない」という想いがある一方で、作品 を作って世の中に発信していくというのは、ある意味で 相反している部分もある気がするのですが・・・ シンプルに、ものが作りたいだけなんです。もちろん、写 真・映画を始めた頃は、「売れたい」とか、「お金儲けしな きやいけない」とか、「この雑誌の表紙やりたい」とか、「興 行収入何億円の映画を撮りたい」とか、そういう気持ちが あリました。けれど、そっちが主の感情になってしまうと、そ こには本当に苦しみしかない。そうじゃなくて、「そもそも お前は何がしたかったの ? 」って話になってくると、単純に 「俺はただ、ものが作りたかっただけなんだ」という結論に なります。別に映画でなければいけなかったわけでもない し、写真でなければいけなかったわけでもなくて、何か作り たかっただけなんです。映画や写真がない 200 年前に生ま れていたら絵を描いていたでしようし、詩を書いていたか もしれないし。ただ、そういった衝動的な創作意欲を「職 業」という肩書きが超越していくわけです。それで苦しんで いる人たちが今の世の中ほとんどではないでしようか。 見た人が喜んでくれたら、それに越したことはありません。 でも、「喜んでもらうがためにやる」っていうのはサービス 業ですよね。やつばり、そこには自分の内側から湧き出る衝 動があって。それは人それぞれだと思うんです。山を見て登 りたいと思う人は、理屈もなくそう思うでしようし、恋人が好 きだっていう感情も理屈も何もないわけですよね。それと 同じことじゃないですか。その衝動を、人はないがしろにし ていると思うんです。僕の場合は、「こんなの作りたいな、凄 いだろうな」ってなんの根拠もない、非常に曖昧で抽象的 な衝動がものづくりの根源で、それを見てくださった方々 が「よかった」と喜んでくれれば、それに越したことはない けど、そこがすり替えられて「売れればいい」になってくる わけですよ。そうじゃなくて、作品も、このインタビューも、 見てくれた人たちの 99 % が「意味わかんない」って思った としても、 1 人の人間が今まで感じなかったものを感じてく れたらいい。そういう人に届けばいいし、僕はそれしかで きないと思っています。 紀里谷和明さん監督作品 『 CASSHERN 』『 GOEMON 』 『ラスト・ナイツ』 紀里谷和明さん 直筆サイン入り 抽選で 3 名様 ( 各作品 , 名様 ) に 映画 DVD プレゼント ! ご応募は日本ユースホステル協会 ホームページの専用お申込みフォームから ! http: 〃 www.jyh.or.jp/hm/ CASSHERN GOEMON 0 応募締切 2017 年Ⅱ月末日 ※なお、当選発表及びプレセントの作品は、 商品の発送を以てかえさせていただきます。 ラスト・ナイツ 0 07

2. ホステリングマガジン vol.10 Autumn 2017

圧倒的に違う状況に身を置くと、 新しい気づきに出会える。 Q. 紀里谷さんは旅をしたり、海外生活を経験することでど んな気づきを得てきたのでしようか ? 僕がすごく重要だと思うのは、「状況を変えることによって " 違い " が見えてくる」ということです。違いが見えない限り、 気づけないことがとても多い。ただ、すごく危険だと思うの が、「留学さえすればいい」という考え方。僕が若い頃に多 かったのは、「留学する = 箔がつく」みたいな人たちで、「ケ ンブリッジ行ってたんです」とか、「アメリカに留学してたん です」って、留学したことが付加価値というか肩書みたいに なっちゃって、それで満足しちゃっているような人たち。そ れって全然本質的じゃないですよね。「フェラーリ乗ってま す」みたいなことと変わらない。 旅行だろうが留学だろうが移住だろうがどうでもよくて、 「そこで違いがわかる」ってことがすごく重要。でも、それは この国にいてもできることです。例えは、自分がどこかの市 の、いわゆる普通のマンションみたいなところに住んでい るとします。それで、極端だけど、もしも同じ市内でホーム レスとして生活してみるってことをやったら、差異が見えて くるわけです。地理的状況じゃなくて、自分を圧倒的に違う 状況に置いて視点を変えてみることによって、「こんなに違 うのか」とか、「こういうことだったのか」という発見が必ず あるはず。「俺ってすごくいい生活してたんだな」とか、 「俺ってすごいつまんねー生活してたじゃん」とか。 世の中には好きなモノが自由に買えるお金持ちの人たち がいますよね。それはそれで別にいいんだけど、でも、それ ばっかりやってる人たちってめちゃくちゃっまんないですよ ね。逆に、「俺、コンビニの弁当しか食わないんで」って思っ てる人たちもめちゃくちゃっまんない。 仮に、コンビニの弁当しか買えない経済状況だとするじゃ ないですか。でも、そういう人たちって、時々居酒屋にも 行ったりしているわけですよ。じゃあ、毎回居酒屋に行く のもいいけど、 10 回我慢して 1 回でいいから人が言うとこ ろの「高級」だと呼ばれているものを食べてみる。食べて みて、「なんだ、言われているほど美味しくねーじゃねーか よ」と思えたら、ものすごい収穫ですよね。逆に「こんなに 美味しいものがあるんだ ! 」と思えるのも収穫ですよね。同 しように、毎日 5 万円の食事をしている人がいるとして、コ ンビニのおにぎりを買ってみたら同じことが起きるわけ ですよ。「こんなに美味しいのか」とか「なんだ、まずいね」 とか。なんでもいいんだけど、それがすごく重要で、それ をやらすに曖昧に過ごしているような、灰色の人たちが多 い気がします。 紀里谷和明 1968 年、熊本県生まれ。 15 歳の時に単身渡米し、マサチューセッツ州にある全米有数の アートスクールでデザイン、音楽、絵画、写真などを学び、 / ヾーソンズ美術大学では建築を 専攻した。ニューヨーク在住時の 1990 年代半ばに写真家として活動を開始。その後、数多 くのミュージック・ビデオを制作し、映像クリエイターとして脚光を浴びる一方、 CM 、広告、 雑誌のアートディレクションも手がける。 SF アクション『 CASSHERN 』 ( 04 ) で映画監督デビュー。アドベンチャー活劇『 GOEMON 』 ( 08 ) を発表。監督第 3 作『ラスト・ナイツ』 ( 15 ) でハリウッド・デビューを果たした。 05