アズレージョ - みる会図書館


検索対象: ポルトガル夢ホテル紀行
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1. ポルトガル夢ホテル紀行

ーナーの祖先がこのあたり一帯の広大な土地を購入したが、その際もこの修道院に気づく者はいなかった。 近年になってようやくこの修道院の存在をオーナーが知り、そのまれに見る美しさと保存状態の良さに 驚き、それを人々と分かち合うと同時に後世に残すためにホテルへオープンへ至った。歴史の深さや価値 の高さで国営ホテルのボウサダに決して引けを取らない。組織的にプロモートしているボウサダに比べ、 プライベートホテルゆえ、ほとんど宣伝らしい宣伝はしていないが、一度訪れた人のロコミで徐々にその 名を知られるようになり、知る人ぞ知る夢ホテルのひとっとなったのである。 アズレージョの美しいホールを抜けると、中央にナチュラルウォーターの湧き出る噴水のある中庭に出 る。四角い空から穏やかな陽光が中庭の緑に注ぐ。左手のレセプションでチェックインを済まし、部屋に 案内してもらう。レセプション以降しばしば感じたのだが、ホテルマンやウーマン、ここで働く人が皆、 秘やかに息をひそめたようなこのホテルに似つかわしい、物静かなサービスをしてくれるのである。これ も「ザ・ベスト」と呼ぶ一つの理由であるが。回廊をまわり、 いくつかのドアを通り過ぎ、階段を登り、 もう一つのドアを開ける。そして私もマヌエルも一 = ロ葉を失う。薄暗い光の中に見えるのは、ア 1 チ型の白 い天井、真っ直ぐに伸びる深紅のカーベット、そしてはるか向こうまで続く廊下両側の藍色のアズレージ ョ。六〇〇年は経ていると思われるアズレージョがここまで良いコンディションで保存されているのにも 驚くが、この廊下の空気は中世そのもの、ただ黙って立ち尽くすのみ。何がどう、と説明するのが不可能、 この際無能なライターと言われてもしようがない、私は一一一一口葉を失ってしまったのだから。通常、簡単に感 激するポジテイプな私に対し、ネガテイプな面から思考に入るマヌエルでさえ、ここではフォトグラファ ーにとっての優れた題材としてだけではなく、一人のゲストとしても終始楽しみ、満足していた。 154

2. ポルトガル夢ホテル紀行

に宿泊することを告げると入場料は払わなくてもよい。ゲートを過ぎ、うねうねとした道を数分走ると、 深い森が開け、威厳に満ちた建物と、美しく手入れされた庭園がその姿を現す。建築年数から = 一口うとさほ ど古い建物ではないのだが、ネオ・マヌエル様式の装飾と、あたりを包む神聖な森のカのためか、二〇世 紀の喧騒から完璧に切り離された空間がある。建物のまわりを飾るデコラテイプなアーチをくぐり、エン トランスドアを開くと、そこには高い天井と、再び見事なアーチと、アズレージョで飾られたホールが広 かる。 アズレージョとは装飾タイルのことで、もともとはイスラム文化が起源のモザイクタイルがスペインに 渡り、白地に藍色で紋様や絵を描いたイベリアスタイルに変化したもので、ポルトガルでは一八世紀に旧 約聖書を題材にした、この国独特のアズレージョが完成し、多くの教会や宮殿を飾ったのである。ここプ サコ・ ハレス・ホテルではレセプションから客室に向かう途中、白地に藍色と黄色のアズレージョ ( 内容 庭園からホテルを望む ( 上 ) ネオ・マヌエル様式が美し、エントランスホール ( 下 ) 進級、卒業を祝うコインプラ大学の学生たち ( 右 ) 学部ごとに色分けされたリポンを燃やす ( 左 )

3. ポルトガル夢ホテル紀行

をへ洋 ボウサダ内にある教会 アズレージョが美し、 ( 上 ) アレイオロスの街角で ( 下右 ) シンプルな客室 ( 下左 )

4. ポルトガル夢ホテル紀行

そしてこの廊下には電灯が設備されていない。夕暮れ時になるとところどころにあるオイルランプに一 つ一つ灯りがともされる。ちらちらとまたたくオイルランプの向こう、暗がりの中から僧服をまとった修 道僧がふっと現れても少しも不思議ではない。その衣擦れの音を聞いたような気さえする。 この廊下は十字型を形成していてその両側に、もと僧坊だった客室が並ぶ。客室は全部で一一一室。僧坊 自体は小さな部屋だったが、二つないし三つの部屋をぶち抜いて造られた客室は十分な広さがある。私が 案内されたのは眺めのよいスーベリアルームで、ドアを開けると手前が暖炉のあるサロン、奥にツインべ ッドの置かれたワンルームである。ゆったりしたソフアにアンティークなクロゼット、そして窓辺に石造 りの腰掛けのついた修道院特有の窓。奥のバスルームは広くはないが、白い陶器のバスタブに真鍮の蛇ロ とシャワ 1 ヘッド、チャーミングにアレンジされたアメニティーグッズ。すべてが豪華ではないが、この 建物の持っ特別なムードを決して損なわないように細やかな気が配られている。言葉少なに「どうぞこの ひとときをお楽しみください」とささやいているような心地よいサ 1 ビスと一一 = ロえる。 撮影したのは同じスーベリアだが、サロンとべッドルームが分かれているタイプの部屋で、各部屋とも 造りやフアプリック類の色調、家具など異なる雰囲気があり、七室ほど見せてもらったが、どの部屋もそ れぞれ魅力的であった。もちろんスタンダードルームはサロンがないため狭く感じるし、窓からの眺めも 落ちるが、このホテルの雰囲気は存分に味わえる。どのクラスの部屋も価格以上の居心地を約束してくれ る ( スーベリア 31 、 5 0 0 エスクード、スタンダード 2 9 、 000 エスクード、ともに二名一泊朝食込 み ) 。 スーツケースを広げた後は修道院内の散策に出る。例の廊下に出てアズレージョが何を物語っているの コンべント・デ・サン % ハウロ

5. ポルトガル夢ホテル紀行

とても小さいが、その分客室、バスル 1 ムともに十分な広さが確保されている。部屋にはアンティークの べッドや大きなクロゼットとソフア、それにこじんまりしたテープルと椅子が置かれているが、それでも なお余裕のある広さである。 ポルトガルを北から南までたくさんのホテルやッ 1 リズモ・デ・ハビタサオを訪れたが、いくつかのス ィートルームを除き、これほどの広さの客室はほかにない。とくに念入りに改装された床は少しもきしま ず ( というのも古い屋敷の多くは歩くときしむのだ ) 、厚い石壁は隣りの部屋とこの部屋を完璧に分けてい る。アズレージョで飾られたバスルームも使い勝手が良いし、すべての部屋はダイレクトに外に出られる ドアがあり、昼でも夜でも誰にも気がねせずに出入りができる。また、屋敷の一階はプレックファースト ルーム、リビングルーム、ビリャードルーム、 バーがあり、すべてゲストのためのスペースとなっている。 昨年まではプレックファ 1 ストルームのみ二階にあったが、よりゲストにリラックスしてほしいというオ ーナーの意向で、一階の出入りしやすい南面に移動したのである。 以上からも分かるようにこのカサ・ダス・トレスは、一八世紀の威厳を保ちつつ一階フロアすべてがゲ ストの居心地を最優先して改築されている。一泊の予定で来たゲストがもう一泊、もう一泊と滞在を延ば すだけの理由が確かにあるのだ。家族連れやカップル二組など四—五人のグループには別棟のアパートメ ントが良いだろう。バスルームつきのダブルルームが二部屋にキッチン、リビングルームにバ ーベキュー ができるテラスがある。四人で 19 、 500 エスクード、これは安い。 国道とは反対側、屋敷の南側にはこの屋敷自慢のプ 1 ルがある。ナチュラルウォーターが注ぐプールは 一年中きれいに手入れされており、季節にこだわらずお望みなら春でも秋でも泳げる。私がこのカサ・ダ カサ・ダス・トレス

6. ポルトガル夢ホテル紀行

中で職人がろくろを回している光景や、成型の終わった器を天日で干しているのを見かける。機械をいっ さい使わない本当のハンドクラフトである。この町の人同様、すましたところがない暖かな皿やボウル。 値段も手頃で実用的なので、おみやげに欲しいのだが、いかんせん重く、割れ物ときている。頭を悩ます ところだがせつかくここまで来たのだ、ごっちやり並ぶ皿の山の中からたった一枚だけ気に入った皿を見 つけよう。しつかり梱包して手荷物の中に押し込めばよいのだから。 さてこのルドンドの町から国道 381 をエストレモス方面、北へと向かう。小さな集落を抜けオリープ の間の道を十分ほど行くと、ゆるやかなカープの手前右側に白塗りの門が見えてくる。これがコンべント・ デ・サン・パウロの入口である。門を過ぎると、やがて前方にしつかりと閉じられた門が現れる。レセプ ションがビデオで客を確認次第門を開くが、時折時間がかかる場合もある。いらいらせずに待とう、待て ば待つほど期待はふくらみ、後で味わう感動も大きい 門を通り過ぎカープを曲がると建物が見えてくる。車を停めて、玄関に向かう。古い大きな木のドアが 開かれ、ホールへと導かれる。目に飛び込んで来るのは見事なアズレージョの壁。正面のアンティークデ この美しいホールはこのホテルの序章に過ぎない。 スクと数脚の椅子以外何も置かれていない、 その名のとおり、この建物は一三七六年に建てられた修道院であった。当時の修道僧たちが祈りに専念 できる、より静かな地を求めこの地に修道院を建てたのであろう。そのことは二〇世紀末の今日でさえ、 まわりに何もない立地が証明している。しかも中世の時代にすでにアレンテ 1 ジョの中心となっていたエ ヴォラやエストレモスからもそう遠くはない。彼らにとって最高の環境であったに違いない。その後政情 の大きな変化により修道僧がここを去った後、長い間誰からも忘れ去られていたという。やがて現在のオ 152 ロ 0 ロロ ロ 0 ロロ

7. ポルトガル夢ホテル紀行

して町はずれに建つ、もう一つ別のボウサダを推薦する。それがボウサダ・デ・サンタ・マリ 1 ニヤである。 町の中心から車で十分足らず、ペ 1 ニヤ自然公園内の低い山の中腹に建つこのボウサダは一二世紀まで 歴史をさかのばる修道院をもとにしたもので、美しいサンタ・マリーニヤ教会を併せ持つ。ボウサダ正面 八世紀のアズ の左手に建つこの教会は、典型的な中世カトリック様式の美しい祭壇を持つ。また一六 レージョのコレクションを多く持っボウサダとしても知られる。 客室数は四九室、現在ボウサダ一の規模を誇るが、この部屋数は決してこのボウサダの静寂な雰囲気の 邪魔をしていない。レセプション横の階段を昇り、奥へ進むとアズレージョの美しい広間に出る。私はこ のおごそかな空間が大好きで、しばしこの部屋にたたずむ。次に高いア 1 チ型天井の広い廊下に出る。端 から端まで何メートルあるのだろうか、かけっこができるほどである。この廊下の両側に客室が並び、右 側はギマランイスの町を見おろし、左側は山を眺める部屋となる。 客室にはアンティークタイプとモダンタイプがあり、もちろんアンティークタイプをお薦めする。これ は他の、もと修道院を改築したホテルすべてに言えるのだが、インターナショナルホテルに比べると、客 室は狭い。だが中世の雰囲気を楽しみ、かっリラックスするには十分の広さである。アンティ 1 クなクロ ゼットに天蓋つきのべッドが二つ、フアプリックはシックな物でまとめられている。それに両側に石造り ) 。バスルームは大理石造りでス の小さなべンチがある修道院特有の窓。しましまのパジャマは似合わなし ペ 1 スも広く、大きな窓がありとても明るい。ゆったりしたバスタブにトイレとビデ、広い洗面台。バス ルームで過ごす時間も楽しい ダイニングルームは一階、サロンの奥にある。ダイニングルーム入口の向かい側にはナチュラルウォー 骨董市にありそうな 教会入口の鍵引

8. ポルトガル夢ホテル紀行

このエヴォラにポルトガル一おいしいと一言われる レストラン、フィア 1 リョがある。リスポンはもと より、遠くはポルト近辺からもここの料理を目当て にエヴォラまで車を飛ばして来る客も多い ヾ 1 になっていて、カウンタ 1 には 入口を入るとノ 十種以上の前菜が並んでいる。どのメインディッシ ュも間違いなくお薦めできるが、一一—三人で十数種 の前菜のみをオ 1 ダーし、ワインで楽しむ方法もあ ーの奥と地下が落ち着いた雰 高級レストランといわれているが、そんな気さくな楽しみ方もできる。 囲気の部屋となっていて、壁には数々のメダルや表彰状が飾ってある。いかにこのレストランが有名かを 見せびらかしているわけで、そういうのが大嫌いなマヌエルはふふん、と何か言いたそうな顔をしていた しし力」と が、撮影後に幾皿かの前菜を実際に味見した後「自慢するにもちゃんと根拠があるから、ま、 うなずいていた。ボウサダからも近い距離なので、散歩がてらランチかディナーを楽しみに行くのもよい 、ころ一つ フィアーリョ Fialho Travessa d()S Mascarenhas 16, Évoma tel 066 ー 23 07 9/fax 066 ー 74 48 73 Ⅱ 8 エヴォラの有名レストラン、 フィアーリョの料理 ( 上 ) 1 店名を記したアズレージ ( 下 )