その姿に一点の優しさを添えている。こうのとりが子育てをしているその下、入口を入ると外の明るさか ら一転、薄暗い空間とひんやりした空気に包まれる。目が慣れぬのに闇雲に進むと石造りの床につまずく ことになるので、ゆっくりと異なる時代への玄関口を楽しもう。中に進んで行くと、放射形を形作る天井 を支える柱やオリジナルの煉瓦天井、いかにも数世紀を経たことを示す貫禄のある石壁などが私を迎える。 やがて再び明るい中庭へと出、左手にレセプションの案内がある。一階中庭のまわりにはいくつかに区切 られた部屋状の空間があり、一部立入禁止の場所を除いて中に入り、薄暗く湿っぱい雰囲気を味わえるが、 足下は湿った土、靴底が土だらけになり、その後回廊を汚すことになる。当時の雰囲気をそのまま残す意 味なのか、それとも将来何か改装予定があるのかは分からないが、毎日回廊の掃除が大変だろうにと、ひ とごとながら心配してしまった。 客室は全部で二四部屋のこじんまりしたボウサダで、そのうち一一部屋がこの本館内にある。二階中庭 を取り囲む形で八部屋、建物正面から見て左手のタワ 1 部分に三部屋がある。ボウサダではこの三部屋を スイートと呼んではいないが、他の部屋に比べると贅沢感が数段高く、スイートと呼んでよいだろう。撮 影したのはおそらく城主ドン・フレイの寝室だった部屋であろう、客室の中でも城の一室にいる雰囲気が いちばん味わえる部屋である。ドアを開けるとホ 1 ルがあり、その先が広いバスルームとなり、バスルー ムからはプライベートテラスへと出られる。ホールの左手、一段下がったところが広々したべッドルーム で、古い石壁と背の高い大きな窓が二面ある。器が一六世紀を固持しているのに対し、置かれている家具 は余計な装飾のいっさいないシンプルモダン、そのコントラストが独特の雰囲気を生み出している、新し いタイプのボウサダの成功例と言える。 138 ボウサダとスイミングプール
Ⅳは特殊なスタイルを維持している。それは現代建築技術によるモダンな修復の中、オリジナルの細かい ディテールがそこかしこに残されているところにある。 例えば、完全に修復された白壁の上方片隅に三〇センチ四方のレリーフが手を加えられずに残っていた り、中庭を囲む回廊にある暖炉のようだが、もとは聖人像などがまつられていたスペースなどなど、次は どこにどんな一六世紀が隠されているんだろうと好奇心がくすぐられ、ついついボウサダ内をうろうろし てしまう。そして私がいちばん好きなのは、二階の階段から回廊への曲がり角に残されている天使のフレ スコ画。美術館のガラスケースの中に入っていても不思議ではないような年月を経たフレスコ画が、ホテ ルへと姿を変えてしまった尼僧院の片隅で、スニーカーを履き、ペちゃくちゃしながら階段を登って来る ゲストに優しい眼差しを注いでいる。脂っこい手でべたべた触ったりしては、絶対に、絶対にいけない。 客室はスタンダード二八室、スイート三室だが、スタンダードルームとスイートの中間にラグジュアリ ールームというのが五部屋あり、断然これをお薦めする。造りは異なるが五部屋とも、一部屋が階段によ って上下のスペースに分けられているデュプロックスタイプで、各部屋にはルームナンバーではなく「音 楽家」とか「天文学者」のように故事にちなんだ職業の名前がつけられていて、インテリアにはそれにち なんだアクセントが添えられている。「音楽家」の部屋のフアプリックは五線譜模様、「天文学者」の部屋に はアンティーク風な天体儀が置かれているなど、遊び心に溢れている。撮影したのはこの「天文学者」の ~ 耋 ' 部屋でツインべッドの脇の壁面には、これまた一六世紀のフレスコ画が保存状態もよく残されている。決 して広くはないべッドルームだが、もうそんなことは気にしない、中世の時代の優しげなフレスコ画に見 守られながら眠りにつけるのだから。 134
このオーナーは女性で、ポルトでオークションハウスを経営してもいるのだ。客室は六室 ( ダブル五、ツ イン一、各 12 、 500 エスクード ) うち二室は別棟にあり、もとオリーブオイルを作る作業場だったと ころをリビングルームとした広い部屋があり、グループで借り切ることもできる。他の四部屋は母屋にあ 、石壁の小さな部屋だが、センスの良いアンティーク家具の置かれた素敵な部屋である。ただし古い屋 敷ゆえ一階にある一一部屋は湿気が多いので、予約の時に一一階か別棟の部屋とリクエストした方がよい。 私が滞在したのは二階の南に面した明るい部屋で、フォ 1 フォスターのアンティークベッドに繊細なレ ースのべッドリネンが掛けられ、ヴィジアル的には申し分ないのだが、いかんせん古い家具なので多少 きしむ。客室のみならずエントランスホ 1 ルやリビングルーム、ダイニングル 1 ムともに隅々までコーデ ィネ 1 トされ、インテリアやアンティ 1 クに興味がある人には垂涎ものである。大きな家具はもとよりこ まごまとした小物まで、高価な物ばかりを並べるのではなく、オーナーのティストで選ばれたすべてのも のが調和していて美しい。それまであちこちでアンティ 1 クの品々を見る機会に恵まれ、その都度感激し ていた私の横で、「こういうがらくたのどこがいいのかねえ」と無関心だったマヌエルも、この屋敷には一 目おいたようである。 レストランがあるような町からは離れているので、ディナーはここでとることにした。スコットランド とオランダからの二組のゲストとともに、三メートルはあろうかと思われる大きなダイニングテープルに つく。今夜のメニュ 1 はポイルした海老のたつぶり入った畑のサラダ ( レタス、トマト、アスパラガス、 いんげん豆、にんじん、コーン ) と生鱈をマッシ = ポテトで包み、マヨネーズをのせてオープンで焼いた もの、デザ 1 トにカスタードプリンとメロン、そしてコーヒーと食後酒のアグアデンテで締めくくる。以 ソラー・一丁・ミラガイア 9
そしてこの廊下には電灯が設備されていない。夕暮れ時になるとところどころにあるオイルランプに一 つ一つ灯りがともされる。ちらちらとまたたくオイルランプの向こう、暗がりの中から僧服をまとった修 道僧がふっと現れても少しも不思議ではない。その衣擦れの音を聞いたような気さえする。 この廊下は十字型を形成していてその両側に、もと僧坊だった客室が並ぶ。客室は全部で一一一室。僧坊 自体は小さな部屋だったが、二つないし三つの部屋をぶち抜いて造られた客室は十分な広さがある。私が 案内されたのは眺めのよいスーベリアルームで、ドアを開けると手前が暖炉のあるサロン、奥にツインべ ッドの置かれたワンルームである。ゆったりしたソフアにアンティークなクロゼット、そして窓辺に石造 りの腰掛けのついた修道院特有の窓。奥のバスルームは広くはないが、白い陶器のバスタブに真鍮の蛇ロ とシャワ 1 ヘッド、チャーミングにアレンジされたアメニティーグッズ。すべてが豪華ではないが、この 建物の持っ特別なムードを決して損なわないように細やかな気が配られている。言葉少なに「どうぞこの ひとときをお楽しみください」とささやいているような心地よいサ 1 ビスと一一 = ロえる。 撮影したのは同じスーベリアだが、サロンとべッドルームが分かれているタイプの部屋で、各部屋とも 造りやフアプリック類の色調、家具など異なる雰囲気があり、七室ほど見せてもらったが、どの部屋もそ れぞれ魅力的であった。もちろんスタンダードルームはサロンがないため狭く感じるし、窓からの眺めも 落ちるが、このホテルの雰囲気は存分に味わえる。どのクラスの部屋も価格以上の居心地を約束してくれ る ( スーベリア 31 、 5 0 0 エスクード、スタンダード 2 9 、 000 エスクード、ともに二名一泊朝食込 み ) 。 スーツケースを広げた後は修道院内の散策に出る。例の廊下に出てアズレージョが何を物語っているの コンべント・デ・サン % ハウロ
れ、一部屋しかない。真ん中の部分がへこんだ階段をみしみしと登りドアを開け、まず目に入るのは白い オ 1 ガンジ 1 レースで飾られたフォーフォスタ 1 べッド。少女趣味のない私が少々気恥ずかしくも嬉しく なり「シンデレラの間」と名づけた部屋である。部屋はとても広く庭と中庭の双方に面して窓があり明る 他の客室から完全に離れているので物音ひとっ聞こえず、本を読んだり絵を描いたり、はたまた旅先 の物思いにふけるには最高の部屋である。この部屋はしばしばハネム 1 ンのゲストを迎えるそうで、きっ と素敵な思い出になるだろうと一人うなずく。 ぐっすり眠った翌朝、庭に面した窓を開けると、庭先に鴨にしては妙に大きい鳥が一羽、ばんやりたた ずんでいる。こんなに静かな所にいれば皆ばんやりしたくなっちゃうよねと、こちらもばんやりしてしま 朝食は先述のプレックファーストル 1 ムでサービスされる。ゲストが降りて来たのを確かめて、メイド さんがパンを暖め、熱いコーヒーかお茶を運んでくれる。フレッシュオレンジジュースとハム、それに近 隣のチーズ。丸いチーズを四分の一に切った物がそのまま出てくるので、まわりのワックス部分をナイフ で削っていただく。おいしいパンとチ 1 ズがあればもうそれで十分。そしてもう一度、数世紀のすすのし みこんだ暖炉や天井、柱をしみじみと見回す。これほど古い屋敷に滞在するチャンスはそう多くはあるま 日中は広大な敷地を散策するも良し、夏場であれば屋敷の裏側にあるプ 1 ルで遊ぶも良し。ギマランイ スの町中に滞在するのとはまた別の楽しみ方ができる小さなホテルである。 パソ・デ・シプリアノ
とても小さいが、その分客室、バスル 1 ムともに十分な広さが確保されている。部屋にはアンティークの べッドや大きなクロゼットとソフア、それにこじんまりしたテープルと椅子が置かれているが、それでも なお余裕のある広さである。 ポルトガルを北から南までたくさんのホテルやッ 1 リズモ・デ・ハビタサオを訪れたが、いくつかのス ィートルームを除き、これほどの広さの客室はほかにない。とくに念入りに改装された床は少しもきしま ず ( というのも古い屋敷の多くは歩くときしむのだ ) 、厚い石壁は隣りの部屋とこの部屋を完璧に分けてい る。アズレージョで飾られたバスルームも使い勝手が良いし、すべての部屋はダイレクトに外に出られる ドアがあり、昼でも夜でも誰にも気がねせずに出入りができる。また、屋敷の一階はプレックファースト ルーム、リビングルーム、ビリャードルーム、 バーがあり、すべてゲストのためのスペースとなっている。 昨年まではプレックファ 1 ストルームのみ二階にあったが、よりゲストにリラックスしてほしいというオ ーナーの意向で、一階の出入りしやすい南面に移動したのである。 以上からも分かるようにこのカサ・ダス・トレスは、一八世紀の威厳を保ちつつ一階フロアすべてがゲ ストの居心地を最優先して改築されている。一泊の予定で来たゲストがもう一泊、もう一泊と滞在を延ば すだけの理由が確かにあるのだ。家族連れやカップル二組など四—五人のグループには別棟のアパートメ ントが良いだろう。バスルームつきのダブルルームが二部屋にキッチン、リビングルームにバ ーベキュー ができるテラスがある。四人で 19 、 500 エスクード、これは安い。 国道とは反対側、屋敷の南側にはこの屋敷自慢のプ 1 ルがある。ナチュラルウォーターが注ぐプールは 一年中きれいに手入れされており、季節にこだわらずお望みなら春でも秋でも泳げる。私がこのカサ・ダ カサ・ダス・トレス
たが、このパソ・デ・シプリアノは一種独特の雰囲気を持つ。 中庭からもともとはキッチンだった所をプレックファーストルームとした部屋に招かれ、ここの主人、 ソットメイヤーご夫妻とお会いする。ひげをたくわえパイプをくゆらすソットメイヤー氏と、美しい銀髪 にユーモアと威厳を合わせ持っチャーミングな夫人。このお二人の存在抜きではこの屋敷の魅力も半減す る。このソットメイヤー氏、被写体としては最高のモデルで、インタビューがてら撮影させてもらうこと になった。はじめは照れながらもモデルになるのを楽しんでくれていたが、乗りに乗ってるマヌエルとは 反対に、時間とともに疲れてもくるし、飽きてもくる。かわいそうなソットメイヤー氏、今さら逃げ出す わけにもいかず、見るからに居心地が悪そうになってきた。最高潮のマヌエルの背中をちょんちょんとた たき、おしまいにしよう、と合図を送って撮影は終了。と同時にソットメイヤ 1 氏はそそくさと部屋を出 たのであった。 , 後日、撮影フィルムを現像したら、ずらーっとソットメイヤー氏の顔が並び、マヌエルを 思う存分からかった。「ソットメイヤ 1 さんのこと、大好きだったんだねえ」と。 一五世紀築といえば約五百年はたとうとしている屋敷である。それを維持し、しかもゲストを迎えるの は、毎日休む暇もない戦争のようなものだと言う。割れた窓ガラス一枚を修理するのも一苦労、一枚だけ 近代のガラスを入れる訳にはいかず、昔ながらの手作り品を注文しなければならない。古びた柱の一本一 本、床板の一枚一枚が五百年の月日を見守ってきたのだ。 客室は五部屋 ( ダブル二ツイン一一 l) 、各部屋バスルーム付きだが、残念なことにバスタブなしのシャワー のみ。でもシャワーは熱い湯がたつぶりでるので、まあ問題はない。寒い冬の夜はバスタブが欲しいとこ ろだが。そしてここに滞在するなら何と言ってもタワ 1 にある部屋に限る。その名もタワールームと呼ば
てはなかなか大きなサイズである。北部地方のほとんどのマナーハウスにはプールがあり、海から離れた 山間部の夏の間の贅沢なのである。 さて、私が今回ここパソ・ダ・グロリアで過ごしたのは、写真のような屋敷内の客室ではなく七客室の ために建てられた新館であった。はっきり言ってこの新館の客室にはほんの少しの魅力すらない。しかも 高いのである ( 17 、 000 エスク 1 ド ) 。はじめに屋敷内の雰囲気をさんざん堪能したのちに新館に案内 され、「よゝ、 ここがあなたの部屋ですよ」といわれた日には、がつくり来てしまう。そんなわけでパソ・ ダ・グロリアにおいては、屋敷内の三部屋 ( 19 、 000 エスクード ) のうちいずれかに滞在できるのな ら十分に価値あり、お部屋は新館ですよと言われたらさっさと別のホテルをあたる方がよい。新館へ案内 されるまではふんぞり返っていたマヌエルだが、自分の部屋を見た途端に姿勢ももとに戻り、こんなに差 があるのは許せんと、演説 ( 文句 ) を始めたのであった。 またディナーは予約時にリクエストすれば 3 、 500 エスクードで用意してくれる。私たちも町にでる のをやめて、ここでゆっくりとディナーをとることにした。ダイニングルームは二階ホール脇にあるが、 希望に応じて外のテラスや庭にもテープルを用意してくれる。今回は魚料理をリクエストしたのだが、こ れがなかなか豪華でポリュームもあり大当たりであった。メインに大きな鯛のグリルに野菜の付け合わせ ー、いんげん豆 ) がたつぶり、それにサラダとライス。野菜がおいし いのはほとんどがここの畑で採れたものだから。料理としてはいたってシンプルなのだが、台所をあずか るマリアおばさんが腕をふるって作る料理はどれも文句なしにおいしい ! 新館客室への文句をしばし忘 れたひとときであった。 ( じゃがいも、にんじん、カリフラワ
つ」と感嘆の声をあげたと同時に、「ポルトガルには素敵な所がまだまだたくさん隠されているのだ」と実 感し、「今夜はここにお泊まりするのだ」とわくわくした私であった。 実はマメエルの知り合いを通じ、ひょんなことからこの , ホテルの存在を知ったのだが、事前にパンフレ ットも写真の一枚も見る機会がなく、ただ単に誰かの「すごいらしい」というコメントを信じて、はるば るやって来たのである。だから屋敷を前に感激している私を見て、マヌエルは「ほーらね、僕の選択に間 違いはないのだ」とふんぞり返っていた。 車寄せ前の階段を登りドアを開くと、そこは細長く広いホールで、年代物の石がびかびかに磨きあげら れた床、両側には大理石像が並び、ホ 1 ル中央にはグランドピアノが置かれている。庭に面した突き当た りの窓からは、ほの暗い室内に静かに陽が注ぐ。そんなにたくさんのアンティ 1 クの調度品が置かれてい るわけでもないのに、どっしりした重量感や落ちついた雰囲気はこの部屋自体が持つのであろう、無言の まましばしこの興奮を楽しむ。ホール中程の階段を降りた一階には客室が三部屋とリビングルームとビリ ャードルームがある。屋敷内の三部屋はあいにくすべてふさがっていて滞在できなかったが、いちばん豪 華な雰囲気の角部屋を撮影できた。 ドアを開けると正面にアーチ型の入口のクロゼットルームがあり、右手がバスルームとなっている。通 常のドアなどなくスコーンとそこにバスルームがあるのだが、大理石の床と壁に真っ白な漆喰の天井、突 き当たりには磨りガラスの大きな窓があり外の明かりがさし込む。この広々した空間とシンプルさは滅多 にお目にかかれるものではなく、こんなバスルームで日中、しかもローズオイルの香りのお風呂に入れた ら、それこそ至福のひとときであろうな、と思いつつ、でも真冬は寒いだろうなとも少々心配する。 パソ・ダ・グロリア
のが大変だったろうな」と思いつつ、カリエイロスの夜は更けてゆく。 客室にテレビは置かれていないが、客室棟の突き当たりに暖炉のあるリビングルームがあり、ゲスト用 の大きなテレビが置かれている。このテレビが唯一現代を感じさせる物で、そのテレビのスイッチを入れ るのも気が引けるほど静寂があたりを包んでいる。 朝食は前日のうちに時刻を指定し、翌朝その時刻にメイドが部屋まで運んでくれるシステムで、メニュ 1 はフレッシュオレンジジュースにコーヒーか紅茶、パンとチーズ、ハムとシンプルなもの。確かに食堂 まで出かける面倒がなくゆっくりと朝のひとときを過ごせるが、反面他のゲストと顔を会わせる機会がほ とんどない。そんな付き合いが苦手な人には誰にも邪魔されない静かな時間をここ、カリエイロスは約束 してくれる。 屋敷内のアンティ 1 クな部屋とは別に新築された別棟があり、二人用のアパートメントタイプの部屋が 六部屋ある。それぞれ独立した玄関ドアがあり、一階はキッチン、ダイニングルームとバスルーム、小さ な二階がべッドルームとなっている。夕食は自炊するのんびり型滞在を楽しむヨーロッパ人ゲストの利用 が多い。二階からも外へ出られるようになっていて、ここからは丘の上にあるプ 1 ルが近い。階段をてく てく登って行くと右手にテニスコート、左手に広々した芝生に囲まれたプールが現れる。撮影、取材の後、 日没前に少々の時間を作り、心地よいプールに飛び込む。この仕事にありついた幸せと喜びに包まれるひ とときである。ばちやばちゃとプールを二 5 三往復すると満足してしまう私と違い、このチャンスを逃す まいと、マヌエルはむきになって休むことなく泳ぎ続ける。後になって聞かされる、疲れた疲れたという 文句を予想しながら、うとうとしながら今日の疲れを癒す。 ハソ・デ・カリエイロス 8