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イトル「甲状腺がんの疫学」の通り , 現在の福島 県において問題となっている事故や放射線被ばく と甲状腺がん発生・検出の因果関係を論じる発表 ではなかったので深い討論はできなかった。放射 線や福島県に関するスライドは , 福島県の甲状腺 検診において期待値の数十倍の甲状腺がんが検出 されていることを示しているスライドおよびウク ライナにおける事故から 12 ~ 14 年後の線量とオ ッズ比の過剰の関連を示すデータとグラフを示し たスライドの 2 枚しかなかった。津金センター 長は , チェルノブイリ周辺ではあるが比較的低曝 露もしくは非曝露の集団において行われた超音波 工コーを用し、た 3 つの本言参 ( lt 。 1995 , Shiba [ a2001 , Demidchik2007) によっては , 18 歳以下計 4 万 7203 名の受診者から 1 例も甲状腺がん症例が見つか らなかったことに関してはご存じなかったか , あ まりその意味を深く考えておられなかったようで ある。また , 甲状腺検診が行われていないのにも かかわらず , チェルノブイリ事故の翌年 ( 1987 年 ) から , べラルーシ , ウクライナ , ロシアにおいて 甲状腺がんが増加していたという基本的な事項も 司識されていなかったようだ。チェルノブイリの 川い卩 検診データは , チェルノブイリ周辺での甲状腺が んの増加がスクリーニング検査の影響ではないと いうこと , つまり「チェルノブイリ事故によって 子どもの甲状腺がんが増加した」と報告され , 最 終的に , 小児甲状腺がんの増加が国際的に確認さ れたことの根拠となったデータである ( 長瀧 2016 ) 。 福島では , この最終決着のデータが最初から存在 しているのにもかかわらず , 現在は決断が延々と 先延ばしにされているのである。 今回の 3 回の意見交換と私どもの論文 (Tsuda 2016a ) に対する 7 つの批判的レタ—(Shibata2016,Jor- gensen 2016 , Wakeford 2016b , Körblein 2016 , Takahashi 2016 , Takamura2016,Suzuki2016) を読むという経験を通じて , ーっ気づいたことがある。いずれの方々も , 私ど もの論文が用いている有病割合 = 発生率 x 平均有 病期間 ( 厳密にはでつながれる ) という疫学では最も 古くからある理論式 , 医師国家試験の既出問題と して 1980 年代から試験対策資料にも載ってきた 理論式を , ご存じないかもしくは実感をもってお られないようだということである。物の動きやカ を推論したり予測したりするのにニュートンのカ 学法則やガリレオの落下法則の理論式を知らない もしくは実感をもっていなければ , 話はすれ違い になる。同様に , 人の病気の発生や因果関係を推 論するのに疫学の理論式を知らなかったり実感を もっていなければ話がすれ違う。同じ用語を使っ ていても , その用語の背景となる概念が , お互い にまったく異なっているからである。トーマス・ クーン ( 1971 ) が「共約 ( 通約 ) 不可能性 ( ・ 1nCOmmenSttrabil— ity) 」と呼んだ現象である。それが専門家同士の 間で起こっていることをリアルタイムで観察でき る機会はそう多くない。何十年に一度あるかない かの機会かもしれない。科学史や科学哲学にご興 味のある方々には絶好の歴史的機会とも言えるだ ろう。 私は教科書どおりにやっているだけである (Gregg 2008 , Rothman 2008 , MacDonald 2012 ) 。 ( まとんど の専門家を自称する人たちは , そんな教科書があ ることも , 専門領域があることすらもご存知ない かのようだ。『医学的根拠とは何か』 ( 岩波新書 ) で述 べた日本の医学保健領域の著しい遅滞がこれであ る。 なお , 『 PRESIDENT 』誌において , 越智医師 は , 「「子供の甲状腺がん」は , 本当に増えている のか ? 」と題して , 「わからないが科学的答え」 であることを強調しておられる。この論考には他 にも間違いがあるが , その中で特に , 「原発の事 故後に増えたかどうかを科学的に証明するのは非 常に難しいというのが現実 ( したがってまだ科学的に証 明されていない ) 」というくだりと「 ( 私どもの論文 Tsuda 2016a には ) その後 , 分析の妥当性について多くの 専門家が反証を行っています」のくだりは間違っ ている。査読付きの科学論文 ( Tsuda2016a ) は「科学 的に証明」したものである。そして , 私どもの論 文への批判的レター (Shibata 2016 , Jorgensen 2016 , wake- ford 2016b , Körblein 2016 , Takahashi 2016 , Takamura 2016 , Suzu- ki2016 ) においては , 反証は行われておらずほとん ど試みすらされていない ( データが福島県発表分にもと 甲状腺がんデータの分析結果科学 0803
広島原爆被爆者における健康障害の主要因 は放射性微粒子被曝である 大瀧慈 大谷敬子 被爆者調査をめぐる状況 原爆被爆者の健康障害に関して , これまでに 放射線影響研究所 ( 以下 , 放影研 ) , 広島大学 , 長崎 大学による 3 個の大規模コホート研究が独立に 行われており , 原爆被爆者における後障害による 死亡危険度と被爆線量との線量反応関係が検討さ れてきたト 4 これらの研究で使用されている被 爆線量は DS02 や DS86 と呼ばれている初期放射 線 ( 原爆を表すピカドーンのうちのピカ ) のみにもとづい た線量評価システム踟を用いて算出されており , 残留放射線や放射性降下物への曝露による影響は 無視されている。放影研の寿命調査 (LSS) 第 9 報 ( 1950 ~ 1978 年 ) では , 「誘導放射線による平均累積 線量は広島で高々 20 ~ 30mGy であり , 早期入 市者 ( 筆者注 : 放影研での定義では , 原爆投下後 1 カ月以内に 市内に入ってきた者とされている ) の全死因による死亡率 および固形がんによる死亡率は 0 mGy 群と比べ 有意差は認められず , 早期入市被爆による健康影 響は軽微であり実質的に存在しない」と報告され ている 7 。その後も現在に至るまで , 放影研では 統計解析上 , 入市被爆者は被爆者として扱われて いない。また , 間接被爆による健康影響は , その 放射線量の推定が困難 ( ほば不可能 ) であるという理 由により , 未解明のまま残されている。 その一方 , 原爆被爆者における急性放射線障害 ( 以下 , 急性症状 ) の発症や固形がん罹患 ( 死亡 ) 危険度 が初期被爆線量だけでは説明できないことについ て , 原爆被爆直後から着目していた臨床家や研究 おおたきめぐ 広島大学原爆放射線医科学研究所線量測定・評価研究分野客員教授 おおたにけいこ 広島大学原爆放射線医科学研究所計量生物研究分野研究員 者もいた。放射線医学の研究者であった永井は自 身が被爆した長崎原爆の投下直後の時点で爆心地 付近での放射化した粉塵による健康被害を認識し ていた % 広島の町医者であった於保は , 1957 年 に 4500 名を超える広島原爆被爆者と非被爆者を 対象に独自の訪問面接法によるアンケート調査を 実施し , 残留放射線被曝が急性症状発症危険度を 上昇させていたことを実証した % ( 最近 , 新しい観点 からの再解析の可能性を見据えて , 元データの存否を調査した が , 残念なことに既に廃棄されてしまっていることが判明し た。 ) その後 Sawada は , 於保らの研究結果を踏ま えて原爆被爆者の急性症状への残留放射線被曝の 影響の機序に関する仮説を提示しているプ % 近年 におけるデータ解析環境に進展に伴い , 広島と長 崎の被爆者における固形がん死亡危険度の分布の 爆心地を中心とする非円型対称性に関する定量的 手法による研究もいくっか試みられている。 1983 年に Peterson らは放影研の LSS データにも とづいて Cox 回帰分析を行い , 広島では爆心地 の西側で死亡危険度が高くなっていることを見出 している 11 。さらに最近 , Tonda らは広島大学原 爆被爆者データベース (ABS) を用いてより精密な セミパラメトリック手法による解析を行い , 同分 布における非円型対称性を視覚化した 12 。 大谷らは , 初期放射線 ( ピカ ) の影響がまったく考 えられない広島原爆の入市被爆者を対象とした 1970 ~ 2010 年の期間での ABS コホート研究によ り , 入市日が 8 月 9 日以降の場合に比べて 8 月 6 日および 8 月 7 日の固形がん死亡危険度が , そ れぞれ 18 % および 7 % 超過していたことを報告 広島原爆被爆者における健康障害の主要因は放射性微粒子被曝である科学 0819
0 シーズを見極める眼 日本の企業は日本の大学のシーズに投資するよりも , 海外の大学と連携する傾 向が高い , という報告が出されています * 私は , これは非常に残念なことで , 日本の大学には大変優れたシーズがあるに もかかわらす , 日本の企業にはそれを見極める眼をもった人が少ないのではない かと感じています。 とくに大きな企業になりますと , 賭けた投資をすることを躊躇する傾向があり ます。サラリーマン化した大企業の社員は , 失敗を恐れますから , ギャンプルを したがりません。 生命科学はギャンプルだと最初に申しあげたように , チャレンジ精神がなけれ ば画期的な製品は生まれません。そこで , 欧米では , べンチャー企業の存在が非 常に重視されています。ハイリスク・ハイリターンという考えで , 社運をかける までもなく , ある一定規模のチャレンジをするしくみであり , そこでは , 夢を求 める若者に資本家が資本を投じ , 大きな夢をめがけて挑戦する場が提供されてい ます。 日本では , 多くの資産家がその資産をどのように使っていいかわからない状況 が続いています。ふとしたことで大金を掴んだ人が , ロマネ・コンティを買い集 めるといった馬鹿げたことがおこるのは , 何にその資産を投じれば人類の幸福に つながるかをまったく考えていない投資家が多いことを示しています。非常に残 念なことです。 次世代のシーズを育むために さらに , 日本の製薬企業の将来を考えますと , アカデミアのシーズをベンチャ ーを通して企業化し大きな成果を生み出すという , 現在の方向に加えて , もうひ とつの努力が必要だと考えます。 つまり , アカデミアのシーズを一方的に企業に受け渡すしくみを強化しても , 日本の将来はやがてシーズの枯渇で終わってしまいます。 国や企業は , アカデミアのシーズをもとに生まれた企業の富を , アカデミアに 還元するしくみを , きちんと整備しなければなりません。 今日 , 大学は , 運営費交付金の削減などにより , 疲弊しています。この疲弊は , とりわけ若手研究者にしわ寄せがいっています。このままでは , 日本の将来は非 常に暗いと感じています。すでに国立大学の法人化以降 , 論文の発表数などの 様々なデータ指標が , 国際レベルで見て低下していることを如実に示しています。 私が見つけた PD-I の場合 , 1992 年に分子を発見し , 2002 年にその抗がん作 用を見つけています。これは , ちょうど国立大学法人化前のことです。つまり , いまわれわれが見ている成果は , 法人化前の比較的よい環境で生み出されたもの * 1 一文部科学省科学技術・学術政策研究所「アンケート調査から見た日本企業による国際産学共同 研究の現状」 DISCUSSION PAPER No. 125 , 2015 年 9 月 0 0770 KAGAKU Aug. 2016 VOL86 No. 8
たとえば , 人を月に送るという , ケネディ大統領が提案 ( 1961 年 ) したアポロ計 画は , 精緻なプランと膨大な予算を投入した結果 , 成功しました。ケネディの後 , ニクソン大統領は , 次の国家プロジェクトを考え , がん征圧プロジェクトを提案 しました ( 1971 年 ) 。アメリカ建国 200 年となる 5 年後のがん征圧を掲げて膨大な 研究費が投入されましたが , がんの制圧はなりませんでした。 つまり , ロケットや橋 , トンネルといった , 人がデザインをしてある明確なプ ランを立てる種類のプロジェクトと , 生命科学の成果をもとにして医薬品を生み 出すというプロジェクトは , 根本的に性格が異なると考えるほうがよいのです。 生命科学の特質 生命科学は , やってみないとわからない要素が非常に多い。私は , 生命科学の 研究においては , なるべく多くの「種」をまく必要があると思っています。 実際 , PD ー 1 抗体治療は , がんの研究者ではなかった私の研究から生まれてき 0 1 万個の種をまいて , そのうち芽を出すのは 1 / 5 以下かもしれません。芽を出 したものが , きちんと植物に育っ割合はさらにその何分の 1 かになるでしよう。 さらにそれが実をつけるのは , そのまた何分の 1 , 実がなったとしても , おいし い実になるのは , さらに何分の 1 かでしよう。最終的には 1 万粒の種をまいても , おいしい実をつけてくれるのは , たった数本の樹である可能性は十分にあります。 このように , 生命科学の研究から医薬品という果実を得ることは , 平たく言え ばギャンプル的です。したがって , 多くの種をまくこと , すなわち基礎研究を重 視しなければなりません。 このことを忘れて , 5 年のプロジェクトでどの病気の治療をするといったプロ ジェクトを , 生命科学に持ち込むべきではないと考えています。 基礎研究の深堀りと製品化 問題となるのは , 基礎研究の中から , どれが大きな実をつけるようになるかを 選別する能力が必要となることです。さらに , その実の中からどれが本当におい しい実であるのか , その樹を育て見分ける力が必要です。 第一の段階は , 基礎研究を様々な試みの中から , さらに深堀りしていくという 段階であり , 生命科学の基礎研究では , どの研究者も必死で取り組むところです。 第二の段階は , ひょっとして , この実はおいしい実になるかもしれないという 見込みがでてきた段階で , これを医薬品等に製品化するステップです。 前者は , 主として大学の中における基礎研究の評価にあたりますが , 後者は , アカデミアから企業につなぎ , 実社会で製品として生み出される選別が必要です。 この製品化のステップは , 現在 , わが国においても非常に重視され , 様々な新 しいしくみが立ち上げられていますが , 残念ながらまだ , 非常にうまくいってい るというわけではありません。 また , 第二の段階ばかりに懸命に取り組んでも , 早々に実は尽きてしまうでし よう。多くの実を結ばせるために , 大きな枠組みで全体を捉えることが必要です。 0 0 がんは治る科学 0769
づいているので反証のしようがないからであるが ) ことを越 智医師は見逃している。また , 批判的レターのす ぐ後には私どもの回答 ( Tsud 靆 2016b ) が掲載されてお り , これらの批判的レターの疑問に対してすべて 答えていることにも気づいておられないのである。 越智医師は医学論文を書かれたこともあるにもか かわらず , このような勘違いをされるとは , まっ たく理解しがたいことである。 付記 3 回目の日本プレスセンターで開かれた公開で の意見交換の後 , 主催者の日本科学ジャーナリス ト会議方々と懇談中にこんなやりとりがあった。 私が何気なく「私 ( 津田のこと ) は , 反原発運動の一 環でこの研究をしているわけではないのですけど ね」とつぶやいたら , 主催者の方が「エッ ! ? 」 ととても驚かれたのである。この方が驚く様を見 て今度は私のほうが「エッ ! ? そんな風に思っ ておられたんですか ? 」と驚く番であった。ジャ ーナリストの方々までが , 私が反原発運動の一環 としてこの研究をやり国際雑誌に論文を投稿して 受理されたと思っておられたのに驚いたのである。 少し考えればわかるが , 運動の思い込みでトッ プクラスの国際専門医学雑誌に掲載されるなどは ありえない。それならば , 大学院に行くよりも運 動団体で時間を過ごした方が学術的業績を挙げら れるというものである。私の動機は , これまでに も『科学』において書いてきたように , 日本国内 において 2011 年以降 , 海外とは著しく異なる放 射線の健康影響や放射線防御の誤った知識 ( 危険な 方向に誤った知識 ) が流布しているからである。この 誤った知識は日本国内の諸法令とも矛盾し , 日本 産業衛生学会許容濃度委員会の勧告とも矛盾して いる。さらに , すでに桁違いのレベルで多発して いる甲状腺がんが , 見せかけの増加としてやり過 ごされている。このような危険で誤った知識が科 学的であるかのように語られている現状は , 環境 医学・産業医学・疫学の専門家として , 早めに是 2016 VOL86 NO. 8 正するように意見を言うべきであるので言ってい 0804 KAGAKU Aug るのである。 本件に関して学術論文を英文で書いたり『科 学』を通じて日本語でも報告を行っているのも , 自らの業績を挙げるためと思っていただいても構 わないが , いずれにしても , 人体の安全を守る学 問領域 ( これは過去に危険を増加させる曝露にさらされた人々 のデータ分析とそれを厳密に記した学術論文から構成される ) を専門としている研究者・大学教員としての当然 の業務の一つとも言える。そのような当然の業務 を当然のこととして行う研究者が , 今の日本では 非常に少ないように思われる。現在のところ他の 研究に多忙なためか何かわからないが , とにかく 正常な修正機能が働いていないから , 科学的根拠 に反する政策を推進・支持している人たちの説得 を続けてきた。ただそれだけである。 「そのこと ( 反原発運動の一環としてやっているのではな く専門分野の研究としてやっていること ) は , ちゃんとプ レゼンする前に明言したほうがいいですよ。ジャ ーナリストたちには津田さんが反原発運動の一環 としてやっていると信じている人も多いから」と , この主催者の方からもアドバイスされた。そこで , ーーに付記として記した。私には利益相反はない し , 反原発運動の一環としてこの研究をやってい るのではない。専門領域の研究の一環として研 究・発表・論文執筆を行っている。そもそも岡山 県には原子力発電所はなく , 原子力施設の一部と しての人形峠があるのみで , 反原発運動はあまり 目立っていない ( 少なくとも私は知らない ) 。私が原子 力の問題と関係していたとしたら , 人形峠の事業 所が動燃 ( 動力炉・核燃料開発事業団 ) と呼ばれていた当 時に , その事業所で産業医活動を行う研究室の活 動に参画していたことだけである。動燃と反原発 運動とは関係はなかったと思う。 参考文献 Demidchik YE, Saenk0 VA, Yamashita S. : Childhood thyroid can- cer in BeIarus, Russia, and Ukraine after Chernobyl and at present. Arq Bras EndocrinoI Metabol. 2007 ; 51 : 748 ー 762. Gregg MB (ed) : Field Epidemiology. 3 「 d ed. Oxford lJniversity Press, New York, 2008. Hayashida N,lmaizumi M, Shimura H, Furuya F, Okubo N, Asari Y, Nigawara T, Midorikawa S, KOtani K, Nakaji S, Ohtsuru A Akamizu T, Kitaoka M, Suzuki S, Taniguchi N Yamashita S,
ーを整備し , その中に RI 治療の行える入院施設 cles/2016030400001. html 3 一日本学術会議臨床医学委員会放射線・臨床検査分科会 を 9 床設ける計画を進めている。医大によると , ( 2014 ) 提言「緊急被ばく医療に対応できるアイソトープ内用療 RI 病床を含む「ふくしまいのちと未来のメデ 法拠点の整備」 , http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohY022t 1901. pdf イカルセンター棟」の竣工時期は今年 10 月下旬。 4 ー絹谷清剛 ( 2013 ) 「環境改善に向けた活動」日本内分泌・甲状 実際の運用開始は , 年度内を目指している。 腺外科学会雑誌 30 : 130 ー 136 検診や治療のあり方が現在のままでよいのか。 5—Higashi T, Nishii R, Yamada S, et al. ( 2011 ) Delayed initialra- dioactive iOdine therapy resulted in P00 「 survivalin patients with 事故から 5 年を超えた今こそ , 様々な情報を開 metastatic differentiated thyroid carcinoma: A retrospective sta- 示した上で冷静に判断される必要があるだろう。 tistical analysis Of 198 cases. J Nucl Med 52 : 683-689 誤った政策による医療資源の不足や , 十分な検討 を欠いた治療によって , 患者の予後や QOL ( 生命 の質 ) が低下することはあってはならない。 白石草 早稲田大学卒業後 , テレビ局勤務などを経て , 2001 年 10 月 に非営利のインターネット放送局「 OurPIanet-TV 」を設立。 橋大学大学院地球社会研究科客員准教授。 2012 年に放送ウー マン賞 , JCJ 賞 , やよりジャーナリスト賞特別賞 , 2014 年に 『ルポチェルノブイ 科学ジャーナリスト大賞を受賞。著書に リ 28 年目の子どもたち - ーーウクライナの取り組みに学ぶ』 『メディアをつくる一一「小さな声」を伝えるために』 ( 以上岩波 ブックレット ) , 『ビデオカメラでいこうゼロから始めるドキュ メンタリー制作』 ( 七つ森書館 ) など。 しらいしはじめ 文献 1 ー「【復興の道標・ 5 年の歴史】甲状腺検査の在り方は「受けな い意思も尊重」」 ( 2016 年 06 月 15 日 ) 福島民友新聞 , http://www minyu-net.com/news/news/FM20160615-084349. php 2 ー長瀧重信 ( 2016 ) 「甲状腺がんとチェルノブイリ , そして福島 ~ 小児甲状腺がんの増加が国際的に確認されるまでの道のりを 振り返る」 WEBRONZA, http://webronza.asahi.com/science/arti 特集甲状腺がん 172 人の現実 原発事故と甲状腺がんを めぐる 30 年 吉田山布子 よしだゆうこ 「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク シアとウクライナの険悪な国際関係を反映してか , 2016 年 4 月 18 ~ 19 日 , ウクライナの首都キ ウクライナの研究者中心の会議となった。在ウク ェフにあるウクライナ医学アカデミー放射線医学 ライナ WHO センターが協力し , ウクライナ医 研究センターにおいて , チェルノブイリ原発事故 学アカデミー国立放射線医学研究センターが主催 30 周年の国際会議が開催された 1 。 25 周年は , 折 して「健康影響」に特化した会議として実施され しも東京電力福島第一原発事故の発生からひと月 た。筆者は福島原発事故後の放射線防護や甲状腺 という時期であったが , 同じくキエフで国際会議 がんをめぐる日本の混乱した状況について報告し が開かれ , パン・ギムン国連事務総長および天野 之弥 IAEA ( 国際原子力機関 ) 事務局長も出席しウクラ た。 1 日目 , 午前中の本 イナ , べラルーシ , ロシアの研究者らが一堂に会 会議の後 , 午後は同 していた。ところが 30 周年の今年は , 近年のロ 時並行して 2 つの セッションが開かれ た。筆者は「チェル 原発事故と甲状腺がんをめぐる 30 年科学 0789 甲状腺がん : 30 年を概括したス ビーチ 30 years ove 「 the nuclear accident and thyroid cance 「 YukO YOSHIDA
東京電力によると , 3 月に作業従事した「ヤウ チ」「イイヤマ」の 2 名は , 走り書きの名字のメ モが残されているのみ。この 10 名はすべて協力 企業の作業員で , 会社を退職して所在がわからな いという 0 活用できていなかった 原発事故現場でも安定ョウ素剤は 「福島第一原子力発電慮の被ばく線量管理について」 , 2013 年 「福島原子力事故調査報告書」 , 2012 年 6 月 20 日 , 東京電力 東京電力 「福島第一原子力発電所この一年の振り返り」 , 2012 年 3 月 , 会 , 第 30 回被ばく医療分科会資料 , 東京電力産業医 : 菊地央 ウ素剤内服等について」 , 2012 年 2 月 7 日 , 原子力安全委員 「福島第一原子力発電所での緊急作業に従事した作業員の安定ョ 2011 年 12 月 17 日 , 東京電力報道配布資料 「内部被ばく線量の検査が未測定のまま連絡が取れない方」 , 報道配布資料 発防止対策の策定について」 , 2011 年 6 月 17 日 , 東京電力 務従事者の線量限度を超える被ばくに係る原因究明および再 「福島第一原子力発電所における緊急時作業に従事した放射線業 参考資料 は改善されることを望む。 にあたる方々の防護のため , 安定ョウ素剤の運用 発事故というのは混乱して当たり前である。作業 用は適切ではなかったことがわかる。しかし , 原 常に混乱した状態だったため , 安定ョウ素剤の運 原発事故が発生した福島第一原発の現場は , 非 や , 内部被ばくを測定していない作業員もいる。 そして , 記録せずにヨウ素剤を服用した作業員 者も発生した。 など , 本来 , 服用すべき作業員で服用していない 満で甲状腺預託等価線量が 100mSv を超えた者 自で署名して服用する運用だったため , 40 歳未 の机に安定ョウ素剤があり , そこから作業員が各 また , 免震重要棟 2 階の緊急対策本部医療班 名は , 安定ョウ素剤の効果は低いと考えられる。 示が出された。少なくとも 250mSv を超過した 6 況になった 3 月 12 日の翌日 , 13 日から , 服用指 時期に出ていなかった。高線量内部被ばくする状 このように , 安定ョウ素剤の服用指示は適切な 12 月 3 日 , 内閣府原子力委員会第 44 回資料 0818 KAGAKU Aug. 2016 Vol.86 NO. 8 「線量限度を超える作業者の被ばく線量の変更について」 , 2015 年 1 月 30 日 , 東京電力報道配布資料 おしどりマコ 兵庫県神戸市生まれ , 鳥取大学医学部生命科学科中退。横山ホ ットプラザーズの弟子。夫婦音曲漫才としてよしもとクリエイ テイプ・エーシェンシー , 漫才協会所属。 2010 年ローランド インターナショナルアコーディオンコンクール 3 位 , 審査員 特別賞。東日本大震災後 , 主に原発事故の取材を始める。加え て , 水俣病 , アスベスト , 米軍基地問題などの取材にも取り組 む。フォトジャーナリズム誌「 DAYS JAPAN 」編集委員。 2014 , 15 , 16 年と IPPNW など国際会議にジャーナリストとし て招聘される。 9 月号予告 9 月 1 日発行 ( 8 月 25 日出 庫・販売開始 ) 予定 * 特集 2016 年熊本地震 8 月 25 日は小社出庫日で店頭でご覧いただけるま でに数日かかります。店頭での在庫はお近くの書店 にご確認ください。 『科学』バックナンバー く 2016 年〉 7 月号 6 月号 5 月号 4 月号 3 月号 2 月号 I 月号 く 2015 年〉 6 月号 7 月号 8 月号 9 月号 10 月号 Ⅱ月号 12 月号 地球温暖化をめぐるく力学〉 日本の原子力安全を評価する 重力波検出 / 理解と思考の危機 大学と利益 原発事故下の 5 年 土壌微生物がもたらした奇跡の薬 2015 ノーヘル生理学・医学賞より 有用性の罠 : 軍事と科学 100 ミリシーベルト神話を問い直す 論理が活きる社会へ 国際土壌年に寄せて 土の現在 , 土の未来 ニュートリノ物理歴史と展望 人間の論理・自然の摂理 『大陸と海洋の起源』 100 年 大陸移動説からプレートテクトニクスへ 宇宙を駆けめぐる贈り物 一般相対論 100 年 ( 価格はいずれも本体 1333 円 + 税です。 )
部被曝の状況では従来法による測定そのものが困 難であったことを付記しておく。 以上 , 本論文では原爆被爆者の固形がん死亡危 険度超過の要因として , 粉塵に含まれていた放射 性微粒子の吸飲による内部被曝が大きく関与して いることについて検討したが , 初期放射線 ( ピカ ) は被爆者の急性症状発症や固形がん死亡危険度に 影響を否定するものではないことについて , 誤解 を避けるためにここで強調しておきたい。近距離 でピカを浴びた被爆者は放射線と同時に強い熱線 や衝撃波を伴う爆風にも晒されている確率が高く , 物理的な要因での圧死や火傷による死亡に至った 場合も多いと想像される。したがって , 今回のわ れわれの解析の対象になりえた直爆者は , そのほ とんどの場合 , 初期放射線曝露に対して何らかの 遮蔽により緩和されていた人々に限られていたの 結語 ではないかと想われる。 229 ー 243. 2012. Of Cancer and Noncancer Diseases. Radiation Research 177 Of Atomic Bomb Survivors, Report 14 , 1950 ー 2003 : An Overview Sakata 日 , Sugiyama H and Kodama K: Studies of the MortaIity 2—Ozasa K, Shimizu Y, Suyama A, Kasagi F, Soda M, Grant EJ, cer: 1950-1990. Radiation Research 146 1 ー 27 , 1996. Of the mortality Of atomic bomb survivors. Report 12 , part 1. Can- 1—Pierce D, Shimizu Y, Preston D, Vaeth M, Mabuchi K: Studies 文献 である。 ている ABS 研究グループによる研究結果にもとづくもの 治 ( 広島県立大学 ) , 佐藤裕也 ( 下関市立大学 ) により構成され 行 , 川上秀史 , 瀧原義宏 , 星正治 , 佐藤健一 ) および冨田哲 著者と広島大学原爆放射線医科学研究所のスタッフ ( 原憲 受けている。なお , 本論文の第 2 章の内容は , 本論文の 放射線医科学研究所共同研究重点プログラムからの援助を 15H0 引 37 , ( C ) 課題番号 26460747 および広島大学原爆 題番号 21249041 , ( A ) 課題番号 26257501 , ( B ) 課題番号 謝辞本研究は , 文部科学省科学研究費の基盤研究 ( A ) 課 きく関与しているものと思われる。 きす , 残留放射能を含む放射性微粒子の曝露が大 死亡の超過危険度は , 初期放射線だけでは説明で 広島原爆被爆者の急性症状発症状況や固形がん 3—Matsuura M, Hoshi M, Hayakawa N, Shimokata H, Ohtaki M, lkeuchi M, Kasagi F: Analysis Of cancer mortality among atomic bomb survivors registered at Hiroshima University. lnternationa/ JournaI Of Radiation B / 0 / 0gY71 , 603 ー 611 , 1997. 4—Ohtaki M, Tonda T, Aihara K: A Two-Phase Poisson Process MOdel and lts Application tO Analysis of Cancer Mortality among A-bomb Survivors. Mathematical Biosciences 268 31 ー 37 , 2015. 5¯Japan-United States Research Organization: Reassessment Of the Atomic Bomb Radiation Dosimetry fo 「 Hiroshima and Na- gasaki? Dosimetry System 2002 -Report Of the Joint US-Japan Working Group (eds: Young RW, Kerr (D), RERF, 2003. 6 ・—Hoshi M, Matsuura M, Hayakawa N,lto C, Kamada N: Esti- mation Of radiation dose fO 「 atomic-bomb survivors in the Hiroshi- ma University Registry. Health Physics 70 735 ー 740 , 1996. 7—Kato H, Schull W: Studies of the mortality of A-bomb survi- vors 7. Mortality, 1950 ー 78 : Part 1 . Cancer mortality. Radiation Research 90. 395 ー 432 , 1982. 8 ー永井隆 : 長崎の鐘 , アルバ文庫 , 1995. ( 初版は , 1946 年 8 月 ) http://www.aozora.g蔔P/CardS/000924/fⅱeS/50659 42787. htm ー 9 ー於保源作 : 原爆残留放射能障碍の統計的観察 . 日本医事新報 , 1746 , 21 一 25 , 1957. 10—Sawada S: Estimation of residual nuclear radiation effects on survivors Of Hiroshima atomic bombing from incidence 0f acute radiation disease. Study Of Social Medicine 29 47 ー 62 2011. 11—Peterson A, Prentice R,lshimaru T, Kato H, Mason M:lnves- tigation Of circular asymmetry in cancer mortality of Hiroshima and Nagasaki A-bomb survivors. Radiation Research, 93 184 ー 199 , 1983. 12—Tonda T, Satoh K. , Otani K. Sato Y, Maruyama H, Kawakami H, Tashiro S, HOShi M, Ohtaki M: lnvestigation on circular asym- metry Of geographical distribution in cancer mortality of Hiroshi- ma atomic bomb survivors based on riSk maps: analysis 0f spa- tial survival data. Radiation and Environmental Biophysics, 51 133 ー 141 , 2012. DO い 0.1007 / S00411-012-0402-4. 13 ー大谷敬子 , 冨田哲治 , 佐藤健一 , 佐藤裕也 , 原憲行 , 丸山 博文 , 川上秀史 , 田代聡 , 星正治 , 大瀧慈 : 広島入市被爆者の 死亡リスクに関する統計的解析 . 長崎医学雑誌 87 , 261 ー 264 , 2012. 14 ー鎌田七男 , 大北威 , 蔵本淳 , 川上秀史 , 島本武嗣 , 冨田哲 治 , 大瀧慈 : 8 月 6 日入市被爆者白血病の発生増加について . 長 崎医学会雑誌 81 , 特集号 , 245-249 , 2006. 15—Tanaka K, Ohtaki M Hoshi M: Chromosome aberrations in Japanese fishermen exposed tO fallout radiation 420-1200 km distant from the nuclear explosion test site at Bikini Atoll: Report 60 years after the incident. Radiation and Environmental Bio- physics, DOI 10.100 刀 S00411-016-0648-3 , 2016. 16—Ohtaki M: Re-construction of spatial-time distribution of black rain in Hiroshima based on statistical analysis of witness of survivors from atomic bomb.ln Aoyama M, Oochi Y (eds), Revisit The Hiroshima A-bomb with a database, Hiroshima City, 1 31 ー 144 , 2011. 17 ー大瀧慈 , 冨田哲治 , 大谷敬子 , 佐藤裕也 , 原憲行 , 川上秀 史 , 田代聡 , 星正治 , 合原ー幸 , 佐藤健一 : 広島大学原爆被爆 広島原爆被爆者における健康障害の主要因は放射性微粒子被曝である 科学 0829
生物圏の変化遺伝的多様 性の減少 種・生態系 多様性の減少 土地利用変化 淡水利用量 の増大 リン負荷 気候変動 新しい化学物質 の増加 ェアロゾル負荷 大気中の の減少 成層圏オゾン 図一地球・人間システムの状態を示すい くっかの指標 生物多様性の減少 , 気候変動 , 窒素負荷 は , 安定状態の限界 ( 内側の円 ) を超えて いる。他の要素についても , 近い将来限 界を超える可能性が指摘されている。図 窒素負荷 生物化学的循環 の増加も予測されています。 海洋の酸性化 中の ? 印は , データの不足などで限界が 不明な要素を示している。出典 : (Stef- fenetal. 2015 ) 3 ■限界を超えた危険な状態 ■限界を超えつつある状態 ロ限界内で安全な状態 ロ限界が不明 図は , 地球システムを構成する重要な 9 つの 要素が , 完新世における地球レベルでの平衡状態 が維持できる限界 (planetary boundaries) を超えて臨界 (tipping points) に達しているかどうかを示してい ます 3 。気候変動だけではなく , 生物圏 ( 生物多様性 ) の変化や窒素負荷などの生物化学的循環について は , すでに限界を超えており , 地球システム自体 が変わりつつあるという可能性も指摘されていま こで重要な点は , 人類活動の地球システムへ 複雑な地球システムの統合的理解が必要で すが , 果たしてどうなのでしようか。他の要素も 存続 , 持続性にとって大きな脅威あるいは危機で す。このような事態がもし生じれば , 人類文明の す。 含め , 0758 KAGAKU Aug. 2016 VOL86 No. 8 どう対処していくべきか , ということです。しか さらに重要な課題は , そのような脅威に人類は 持続可能な発展に向けて 地球システムの維持と人類の 変化の理解と予測には欠かせません。 解し , 定量的に評価することが , 今後の地球環境 別的 , 部分的に評価するのではなく , 統合的に理 このような相互作用も含めて , 地球システムを個 変化などが , 相互に複雑に絡んでいることです。 の影響は , 気候変化 , 生態系の変化 , 物質循環の し , 複雑な地球システムの変動を抑えながら , ど のように持続可能な地球社会を構築できるのでし ようか。そのためには前述の地球システムの要素 間の相互作用を考慮するだけでなく , 資源 , 人口 , 工業生産 , 食糧 , 汚染などに関与する社会経済シ ステムの抱える問題やその持続性にも視野を広げ , 人間と自然の相互作用に関する様々な要因を , 人 間活動を含めた地球システムとして統合的に解明 する必要があります。 このような地球システムの統合的理解と , 人類 がめざすべき未来の地球社会像の共有 , そしてそ れをふまえた持続可能な社会を実現するためには , 地球環境に関する革新的な研究はもちろんのこと , 文理の壁を越えた学際 (interdisciplinary) 研究を飛躍的 に進め , さらに , 個別の研究者コミュニティの視 野の限界を克服するために , 問題の発見から解決 ( 持続可能な社会の実現 ) にいたる研究の全過程を , 社 会各層の関係者と協働でデザインする超学際 (transdisciplinary) 研究の推進体制を構築する必要が あります。 FutureEarth(FE) はこのような課題に 取り組むことにより , 地球に依存する私たち人類 社会の持続可能性を追求するために提案されたの です 4 。 FE の特徴は , 自然科学 ( 理工学 , 農学 , 医学など ) , 人文・社会科学にまたがる学際的研究により地球 と社会についての知の提供を行うだけでなく , 研 究者コミュニティと社会の様々なステークホルダ