Thyroid - みる会図書館


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1. 科学 2016年8月号

and Takamura N: Thyroid ultrasound findings in a follow-up survey Of children from three Japanese prefectures: Aomori, Yamanashi, and Nagasaki. Sci Rep 2015 ; 5 : 1 ー 5. は 0 M, Yamashita S, Ashizawa K, et al.: Childhood thyroid diseas- es around ChernobyI evaluated by ultrasound examination and fine needle aspiration cytology. Thyroid. 1995 ; 5 : 365 ー 368. Jorgensen TJ: Re: Thyroid Cancer Among Young People in Fu- kushima. Epidemiology 2016 ; 28 e17. KörbIein A: Re: Thyroid Cancer among Young PeopIe in Fuku- shima. EpidemioIogy 2016 ; 28 ・ e18 ー e19. Kreyberg L: HistologicalIung cancer types. A morphological and biological correlation. Acta PathOl Microbiol Scand 1962 ; Sup pl. 157. Lentner C: 95 % Confidence limits fO 「スコ n ; Geigy scientific ta- bles. volume 2.lntroduction tO statistics, Statistical tables, MathmaticaI formulae. Chiba-Geigy Ltd. Basle, 1982 , p. 152. MacDonald PDM: Methods in FieId Epidemiology. Jones & BartIett Learning, BurIington, 2012. Rothman KJ, Greenland S, Lash TL: Modern Epidemiology. 3 「 d ed. Lippincott WiIIiams & WiIkins, PhiIadeIphia, 2008. Shibata Y, Yamashita S, Masyakin VB, Panasyuk GD, Nagataki S. : 15 years after Chernobyl: new evidence of thyroid cancer. Lancet. 2001 ; 358. 1965 ー 1966. Shibata Y: Re: Thyroid Cancer Among Young People in Fukushi- ma. Epidemiology 2016 ; 28 ; el 9- e20. nobyl accident. Nature Rev Cancer 2002 ; 2 : 543 ー 549. Williams D: Cancer after nuclear fallout: lessons from the Cher- 2016b; 28 ; e20 ー e21. Cancer Among Young PeopIe in Fukushima. EpidemioIogy Laurier D, Schüz, J, Shore R, Walsh L, Zhang W: Re: Thyroid Wakeford R, Auvinen A, Gent, R. Nick GR, Peter J Kesminiene A, Radiol. Prot. 2016a ; 36. EI ー E5. Wakeford R: Chernobyl and Fukushima—where are we now? spond. EpidemioIogy 2016b; 28 ; e21 ー e23. Tsuda T, Tokinobu A, Suzuki E, Yamamoto E: The Authors Re- 2016a; 28 ; 316 ー 322. Younger in Fukushima, Japan: 2011 tO 2014. EpidemioIogy Detection by UItrasound among Residents Aged 18 Years and Tsuda T, Tokinobu A, Suzuki E, Yamamoto E: Thyroid Cancer 1548. CO-Fukushima Diichi NPP Accident. Thyroid 2014 ; 24 : 1547 ー tients in Ukraine after ChernobyI and Fukushima after the TEP Yamashita S: Age distribution Of childhood Thyroid cancer pa- Tronko MD, Saenko VA, Shpak VM, Bogdanova TI, Suzuki S, and shima. Epidemiology 2016 ; 28 ・ el 8. Takamura N: Re: Thyroid Cancer Among Young People in Fuku- Fukushima. EpidemioIogy 2016 ; 28 ; e21. K, Abe M, OhtO H: Re: Thyroid Cancer Among Young People in Takahashi H, Ohira T, Yasumura S, NOllet K, Ohtsuru A, Tanigawa ma. EpidemioIogy 2016 ; 28 , e19. Suzuki S: Re: Thyroid Cancer Among Young PeopIe in Fukushi- years on Clin. Oncol. 2016 ; 28 : 263 ー 271. ma after the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident: 5 Suzuki S: ChiIdhood and adolescent thyroid cancer in Fukushi- WiIIiams D: Thyroid growth and cancer. Eur Thyroid J 2015 ; 4. 164-173. 越智小枝 : 「子供の甲状腺がん」は , 本当に増えているのか ? PRESIDENT 2016 年 5 月 16 日号 : 66 ー 67. 北茨城市情報源 : http://www.city.kitaibaraki 」 g. jp/docs/20150825 00032/fiIes/koujousenn. pdf 津田敏秀 , 山本英ニ : 多発と因果関係ーー原発事故と甲状腺が ん発生の事例を用いて . 科学 2013 ; 83 : 497 ー 503. 津田敏秀 : 2015 年 5 月 18 日第 19 回福島県「県民健康調査」検 討委員会発表の甲状腺データの分析結果 . 科学 2015 ; 85. 650 ー 654. トーマス・クーン著 , 中山茂訳 : 科学革命の構造 . みすず書房 , 東京 , 1971. 長瀧重信 : 甲状腺がんとチェルノブイリ , そして福島一一一小児 甲状腺がんの増加が国際的に確認されるまでの道のりを振り 返る . 朝日新聞 WEBRONZA 2016 年 3 月 7 日 . 丸森町情報源 : http://www.town.marumori.miyagi jp/hokenhuku shi/yokenyobou/kojosen. html 津田敏秀 岡山大学大学院環境生命科学研究科教授。 1985 年岡山大学医 学部卒業 , 同年 , 医師免許取得。 1989 年岡山大学医学部医学 研究科修了 , 医学博士。 1990 年同大学衛生学教室助手として 採用 , 講師を経て 2005 年同大学環境学研究科教授 , 現在に至 る。著書に「医学者は公害事件で何をしてきたのか』 ( 岩波現代 文庫 ) , 『医学と仮説ーー原因と結果の科学を考える』 ( 岩波科学 ライプラリー ) , 『医学的根拠とは何か』 ( 岩波新書 ) など。 2013 年日本学術振興会「有意義な審査意見を付した審査委員」受賞。 つだとしひで 甲状腺がんデータの分析結果 策 , 因果推論。 専門分野は , 疫学 , 環境医学 , 環境保健政策・健康危機管理政 科学 0805

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ーを整備し , その中に RI 治療の行える入院施設 cles/2016030400001. html 3 一日本学術会議臨床医学委員会放射線・臨床検査分科会 を 9 床設ける計画を進めている。医大によると , ( 2014 ) 提言「緊急被ばく医療に対応できるアイソトープ内用療 RI 病床を含む「ふくしまいのちと未来のメデ 法拠点の整備」 , http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohY022t 1901. pdf イカルセンター棟」の竣工時期は今年 10 月下旬。 4 ー絹谷清剛 ( 2013 ) 「環境改善に向けた活動」日本内分泌・甲状 実際の運用開始は , 年度内を目指している。 腺外科学会雑誌 30 : 130 ー 136 検診や治療のあり方が現在のままでよいのか。 5—Higashi T, Nishii R, Yamada S, et al. ( 2011 ) Delayed initialra- dioactive iOdine therapy resulted in P00 「 survivalin patients with 事故から 5 年を超えた今こそ , 様々な情報を開 metastatic differentiated thyroid carcinoma: A retrospective sta- 示した上で冷静に判断される必要があるだろう。 tistical analysis Of 198 cases. J Nucl Med 52 : 683-689 誤った政策による医療資源の不足や , 十分な検討 を欠いた治療によって , 患者の予後や QOL ( 生命 の質 ) が低下することはあってはならない。 白石草 早稲田大学卒業後 , テレビ局勤務などを経て , 2001 年 10 月 に非営利のインターネット放送局「 OurPIanet-TV 」を設立。 橋大学大学院地球社会研究科客員准教授。 2012 年に放送ウー マン賞 , JCJ 賞 , やよりジャーナリスト賞特別賞 , 2014 年に 『ルポチェルノブイ 科学ジャーナリスト大賞を受賞。著書に リ 28 年目の子どもたち - ーーウクライナの取り組みに学ぶ』 『メディアをつくる一一「小さな声」を伝えるために』 ( 以上岩波 ブックレット ) , 『ビデオカメラでいこうゼロから始めるドキュ メンタリー制作』 ( 七つ森書館 ) など。 しらいしはじめ 文献 1 ー「【復興の道標・ 5 年の歴史】甲状腺検査の在り方は「受けな い意思も尊重」」 ( 2016 年 06 月 15 日 ) 福島民友新聞 , http://www minyu-net.com/news/news/FM20160615-084349. php 2 ー長瀧重信 ( 2016 ) 「甲状腺がんとチェルノブイリ , そして福島 ~ 小児甲状腺がんの増加が国際的に確認されるまでの道のりを 振り返る」 WEBRONZA, http://webronza.asahi.com/science/arti 特集甲状腺がん 172 人の現実 原発事故と甲状腺がんを めぐる 30 年 吉田山布子 よしだゆうこ 「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク シアとウクライナの険悪な国際関係を反映してか , 2016 年 4 月 18 ~ 19 日 , ウクライナの首都キ ウクライナの研究者中心の会議となった。在ウク ェフにあるウクライナ医学アカデミー放射線医学 ライナ WHO センターが協力し , ウクライナ医 研究センターにおいて , チェルノブイリ原発事故 学アカデミー国立放射線医学研究センターが主催 30 周年の国際会議が開催された 1 。 25 周年は , 折 して「健康影響」に特化した会議として実施され しも東京電力福島第一原発事故の発生からひと月 た。筆者は福島原発事故後の放射線防護や甲状腺 という時期であったが , 同じくキエフで国際会議 がんをめぐる日本の混乱した状況について報告し が開かれ , パン・ギムン国連事務総長および天野 之弥 IAEA ( 国際原子力機関 ) 事務局長も出席しウクラ た。 1 日目 , 午前中の本 イナ , べラルーシ , ロシアの研究者らが一堂に会 会議の後 , 午後は同 していた。ところが 30 周年の今年は , 近年のロ 時並行して 2 つの セッションが開かれ た。筆者は「チェル 原発事故と甲状腺がんをめぐる 30 年科学 0789 甲状腺がん : 30 年を概括したス ビーチ 30 years ove 「 the nuclear accident and thyroid cance 「 YukO YOSHIDA

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25 ロチェルノブイリ ■福島 20 5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 事故時年齢 ( 歳 ) 図 1 ー W Ⅲ iams ( 2015 ) より : チェルノブイリ周辺と福島県における甲状腺がん症例の事 故時年齢分布の比較 今回の発表では , 本格検査で甲状腺がん確定症 甲状腺がん細胞 ( いわゆる「スクリー ニング効果」を引き起 例数 ( 手術が行われ病理組織診断で甲状腺がんと確認された症 こす ) は , 先行検査ですでにほとんど検出されきっ 例数 ) が 30 例に達したこと ( 細胞診によるがん症例を含め ている ( 刈り取り効果 ha Ⅳ飛 ct ) 。本格検査ではスク ると 57 例 ) 以外に , 事故当時 5 歳以下の甲状腺がん ニング効果はあまり起きようがないのである。 症例が検出されたことが注目された。 したがって , 先行検査の発生率比を上回るような この症例が注目されたことに関してすこし解説 現象が , スクリーニング効果によって本格検査で が必要であろう。『科学』でもすでに紹介したが 観察されることはあり得ないことになる。 ( 津田 2015 ) , 『 Thyroid 』誌で Tronko らのレターと 表 1 を見ると , 本格検査においても , すでに して 2 つのグラフが発表され ( 2014 年 ) , これと同 相双地域 , 中通り北地区 ( 福島市を含んでいる ) , 中通 様のものが , 引 liams ( 2015 ) により図 1 に示すよ り中部地区 , 郡山市 , いわき市 , 福島県南東部 ( い うな 1 つのグラフとして発表された。これを わき市を除く ) において , 全国の発生率と比較して統 Wakeford(2016a) , Suzuki(2016) が引用する形で次々 計的に有意にがんが多発していることがわかる。 と発表していった。この図は , 福島県の甲状腺が その点推定値はいわき市が 9 倍 ( 95 % 信頼区間 : 2.5 ~ ん症例がチェルノブイリの甲状腺がん症例とは異 23.2 倍 ) , 相双地域が 39 倍 ( 95 % 信頼区間 : 23 ~ 63 倍 ) と , なり , 放射線被ばくもしくは原子力発電所事故の 発表途上にもかかわらず , 先行検査の倍率に近づ 影響を受けていないこと示す証拠であるかのよう いている。相双地域はすでに先行検査の倍率を超 に福島県県民健康調査検討委員会でも用いられて えているが , この地域の先行検査は事故後半年か ら 1 年 1 カ月の間という比較的早期に行われた 0 しかし , 考えてみてほしい。これらの図を原論 ことを考えると , 早くも倍率を超えるのは無理も 文やその引用 ( Wi Ⅱ iams2002 ) で実際に確かめればわ ない。 2 年目 , 3 年目という遅さで先行検査が行 かるが , この図はチェルノブイリの事故後 12 年 われた地域ほどその検査結果に事故の影響がすで 間を追跡した甲状腺がん症例の事故時年齢分布と に現れ始めることを考えると , 早期に先行検査を 福島の事故後 3 年間追跡して蓄積した甲状腺が 行えた地域ほど , 本格検査での結果による増加が ん症例の事故時年齢分布とを比較することによっ いち早く確認されるはずだからである。言うまで て生まれてきた後付けのものにすぎない。 5 歳以 もなくこの相双地域での結果は , 事故による甲状 下での多発とはいってもそれは事故時の年齢であ 腺がんの多発を示している。 0800 KAGAKU Aug. 2016 VOL86 No. 8

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特集甲状腺かん 172 人の現実 何が起きているのか ? 「過剰診断」論の背後で ーーー甲状腺がんの再発予後と治療 自石草 Ou 「 Planet-TV 毎週火曜日。朝 8 時半を過ぎると , 福島県立 医科大学 ( 以下 , 福島医大 ) 附属病院 2 階にある外来 病棟の 10 番診察室前は , 診察を待っ患者であふ れる。中高年層が大半を占めるなか , 目立つのは 子ども連れ家族の姿だ。福島県民健康調査の甲状 腺検査で , 「 2 次検査の必要あり」と診断を受け て精密検査を受ける子どもや , 甲状腺の摘出手術 を受けた後 , 経過観察をしている子どもたちだ。 両親だけでなく , 祖父母が付き添っているケース もある。最近は , 小学生の年ごろの子どもも目に つくようになった。 福島県民健康調査の甲状腺検査をめぐり , いま 何が起きているか。 3 カ月に 1 回の割合で , 福島 県が開催している「検討委員会」では見えてこな い治療の実情を報告する。 1 30 例の手術はムダなのか ? 東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い , 福島県は「県民健康調査」を実施し , 18 歳以下 の子どもたち 38 万人を対象に , 超音波による甲 状腺検査が行われている。 今年 3 月末までに確定したデータによると , 2011 年から 2013 年までの 3 年間に実施された 「先行検査 ( 1 巡目 ) 」で , 「悪性」ないし「悪性疑 い」と診断された子どもは 116 人で , そのうち 102 人がすでに摘出手術を受けた。手術後の組織 診断結果によると , 1 人が良性結節と診断された が , 残り 100 人は乳頭がん , 1 人は低分化がんと Realities behind the overdiagnosis discourse: Recurrence and しらいしはじめ Hajime SH 旧 A旧印 treatment Of thyroid cancer 診断されている。また 2013 年から 2014 年 にかけて実施された「本格検査 ( 2 巡目 ) 」で , 0 「過剰診断」論の背後で何が起きているのか ? 科学 0783 は , 甲状腺検査について , 「検査実施による「死 けない意思も尊重」」との記事を掲載した 1 。記事 新聞は 6 月 15 日 , 「甲状腺検査の在り方は「受 こうした状況に呼応するかのように , 福島民友 一生続く経過観察 か」との声があがっている。 住民からは , 「受診率を下げようとしているの は「送付を希望しない」という項目が登場した。 た。」と記載しているのである。また , 同意書に る検診は , 一般的には行われてきませんでし す。」などとした上で , 「甲状腺の超音波検査によ とになり , ご心配をお掛けすることもありま の特性上 , 治療の必要のない変化も多数認めるこ 見早期治療につながることもありますが , 甲状腺 査の結果 , 治療が必要な変化が発見され , 早期発 の受診を躊躇させるような文言が登場した。「検 この提言を受け , 3 巡目の検査通知には , 検査 を見つけている可能性がある」というのだ 集団検診により , 「将来 , 治療の必要のないがん 考えにくい」との見解を示している。精度の高い 月に「中間とりまとめ」を公表。「被曝影響とは これらの数字について , 検討委員会は今年 3 という状況にある。 1 引人となり , 悪性が疑われる 41 人が手術待ち を合わせると , 甲状腺がんと確定した子どもは の結果は , 全員乳頭がんだった。 1 巡目と 2 巡目 は 57 人で , 30 人が手術を終えている。組織診断 ' 第 「悪性」ないし「悪性疑い」と診断された子ども

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特集甲状腺がん 172 人の現実 第のツ甲状腺検査を求める すを拿福島県外の被災者たち ーー栃木県からの報告 朝清水奈名子 しみずななこ 宇都宮大学国際学部 ( 国際関係論・国際機構論 ) ・。 0 これまでに公表されてきた多くの汚染マッ プが示しているように , 東京電力福島第一原発 0 Needs of the thyroid examination beyond Fukushima prefecture: 地域を環境省が市町村単位で指定したものであ 均的な放射線量が , 1 時間あたり 0.23 ″ Sv 以上の 状況重点調査地域」がある。これはその地域の平 つに , 環境省が 2011 年 12 月に指定した「汚染 県境を越えて拡がる汚染の範囲を知る目安の一 県境を越えて拡がる汚染 ーズを明らかにする。 紹介しながら , 「低認知被災地」の住民の支援ニ した聞き取り調査およびアンケート調査の結果を どもたちの甲状腺検査を求める住民を対象に実施 本稿は , 福島の隣県である栃木県において , 子 過ぎない。 基礎自治体が住民の要望を受けて実施しているに ごくわずかな 例外的に , 北茨城市や日光市など , くの健康影響に関する調査は実施されていない。 ルの事業として , 甲状腺検査をはじめとする被ば いる。ところが福島県とは異なり , 政府や県レベ 被ばくによる健康影響を懸念する声が寄せられて これらの汚染地域に暮らす住民からも , 低線量 「低認知被災地」となってきたプ。 域はその被害の実態が十分に認知されていない よる報道量も少ないことから , 福島県外の汚染地 の中心は福島県内に限定されており , メディアに にも拡がっている。しかし , 日本政府の汚染対策 事故による放射能汚染は , 県境を越えて福島県外 る 2 。この基準を当てはめた結果 , 福島県だけで った。栃木県が 2011 年 5 月に県内の教育施設の ず , 政府や県・自治体による対策は遅れがちであ このような深刻な汚染がみられるにもかかわら 汚染に関わる対策と認識の遅れ 超えるセシウムが検出されている 6 らは , 現在でも 1 kg あたり数百から 1000 Bq を たが , 路地栽培のキノコや山菜 , 野生動物の肉か えるセシウムが検出されたことがニュースとなっ ノコに県北産が混ざっていたために , 基準値を超 5 月には , 字都宮市の小学校給食に使われたタケ れたことを受け , 出荷制限が敷かれた 5 。 2016 年 Bq を超える放射性セシウム 134 と 137 が検出さ 3000 Bq を超える放射性ョウ素 1 引および 500 ホウレンソウなどの葉物野菜から 1 kg あたり さらに事故直後の 3 月 20 日には , 栃木県産の 域よりも高い。 中通り地域と同程度の汚染を示しており , 会津地 ら 10 万 Bq と推定されている 4 。これは福島県の セシウム 134 と 137 の合計で 1 m あたり 6 万か る航空機モニタリングによって , 土壌中の放射性 域では , 2011 年 7 月の文部科学省と栃木県によ が指定された。これらのうち最も汚染が深刻な地 大田原市 , 矢板市 , 那須塩原市 , 塩谷町 , 那須町 中心に , 佐野市 ( 2016 年 3 月に解除 ) , 鹿沼市 , 日光市 , 栃木県では , 福島県と県境を接する県北地域を 年 5 月現在は 97 市町村となっている 3 ) 。 を受けることになった ( その後の指定解除を受けて , 2016 千葉の 8 県 , 合計 104 市町村に及ぶ地域が指定 なく , 岩手 , 宮城 , 茨城 , ・栃木 , ・群馬 , 埼玉 , A report from Tochigi prefecture Nanako SHIMIZU 0810 KAGAKU Aug. 2016 VOL86 No. 8

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づいているので反証のしようがないからであるが ) ことを越 智医師は見逃している。また , 批判的レターのす ぐ後には私どもの回答 ( Tsud 靆 2016b ) が掲載されてお り , これらの批判的レターの疑問に対してすべて 答えていることにも気づいておられないのである。 越智医師は医学論文を書かれたこともあるにもか かわらず , このような勘違いをされるとは , まっ たく理解しがたいことである。 付記 3 回目の日本プレスセンターで開かれた公開で の意見交換の後 , 主催者の日本科学ジャーナリス ト会議方々と懇談中にこんなやりとりがあった。 私が何気なく「私 ( 津田のこと ) は , 反原発運動の一 環でこの研究をしているわけではないのですけど ね」とつぶやいたら , 主催者の方が「エッ ! ? 」 ととても驚かれたのである。この方が驚く様を見 て今度は私のほうが「エッ ! ? そんな風に思っ ておられたんですか ? 」と驚く番であった。ジャ ーナリストの方々までが , 私が反原発運動の一環 としてこの研究をやり国際雑誌に論文を投稿して 受理されたと思っておられたのに驚いたのである。 少し考えればわかるが , 運動の思い込みでトッ プクラスの国際専門医学雑誌に掲載されるなどは ありえない。それならば , 大学院に行くよりも運 動団体で時間を過ごした方が学術的業績を挙げら れるというものである。私の動機は , これまでに も『科学』において書いてきたように , 日本国内 において 2011 年以降 , 海外とは著しく異なる放 射線の健康影響や放射線防御の誤った知識 ( 危険な 方向に誤った知識 ) が流布しているからである。この 誤った知識は日本国内の諸法令とも矛盾し , 日本 産業衛生学会許容濃度委員会の勧告とも矛盾して いる。さらに , すでに桁違いのレベルで多発して いる甲状腺がんが , 見せかけの増加としてやり過 ごされている。このような危険で誤った知識が科 学的であるかのように語られている現状は , 環境 医学・産業医学・疫学の専門家として , 早めに是 2016 VOL86 NO. 8 正するように意見を言うべきであるので言ってい 0804 KAGAKU Aug るのである。 本件に関して学術論文を英文で書いたり『科 学』を通じて日本語でも報告を行っているのも , 自らの業績を挙げるためと思っていただいても構 わないが , いずれにしても , 人体の安全を守る学 問領域 ( これは過去に危険を増加させる曝露にさらされた人々 のデータ分析とそれを厳密に記した学術論文から構成される ) を専門としている研究者・大学教員としての当然 の業務の一つとも言える。そのような当然の業務 を当然のこととして行う研究者が , 今の日本では 非常に少ないように思われる。現在のところ他の 研究に多忙なためか何かわからないが , とにかく 正常な修正機能が働いていないから , 科学的根拠 に反する政策を推進・支持している人たちの説得 を続けてきた。ただそれだけである。 「そのこと ( 反原発運動の一環としてやっているのではな く専門分野の研究としてやっていること ) は , ちゃんとプ レゼンする前に明言したほうがいいですよ。ジャ ーナリストたちには津田さんが反原発運動の一環 としてやっていると信じている人も多いから」と , この主催者の方からもアドバイスされた。そこで , ーーに付記として記した。私には利益相反はない し , 反原発運動の一環としてこの研究をやってい るのではない。専門領域の研究の一環として研 究・発表・論文執筆を行っている。そもそも岡山 県には原子力発電所はなく , 原子力施設の一部と しての人形峠があるのみで , 反原発運動はあまり 目立っていない ( 少なくとも私は知らない ) 。私が原子 力の問題と関係していたとしたら , 人形峠の事業 所が動燃 ( 動力炉・核燃料開発事業団 ) と呼ばれていた当 時に , その事業所で産業医活動を行う研究室の活 動に参画していたことだけである。動燃と反原発 運動とは関係はなかったと思う。 参考文献 Demidchik YE, Saenk0 VA, Yamashita S. : Childhood thyroid can- cer in BeIarus, Russia, and Ukraine after Chernobyl and at present. Arq Bras EndocrinoI Metabol. 2007 ; 51 : 748 ー 762. Gregg MB (ed) : Field Epidemiology. 3 「 d ed. Oxford lJniversity Press, New York, 2008. Hayashida N,lmaizumi M, Shimura H, Furuya F, Okubo N, Asari Y, Nigawara T, Midorikawa S, KOtani K, Nakaji S, Ohtsuru A Akamizu T, Kitaoka M, Suzuki S, Taniguchi N Yamashita S,

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特集甲状腺がん 172 人の現実 甲状腺がんデータの分析結果強ミミ —2016 年 6 月 6 日第 23 回福島県「県民健康調査」 検討委員会発表より 津田敏秀 2016 年 6 月 6 日に福島県から発表された , 福 島県「県民健康調査」の甲状腺スクリーニング検 診の結果について分析する。検診結果は , 前回同 様の「資料 2 ー 1 県民健康調査『甲状腺検査 ( 本格 検査 ) 』実施状況」と記された 2 巡目の甲状腺がん スクリーニング検査 ( 2014 ( 平成 26 ) 年度と 2015 ( 平成 27 ) 年度に実施 ) の集計だけでなく , 遅れていた 1 巡目 の検診結果の追補版である「資料 2 ー 2 県民健康 調査『甲状腺検査 ( 先行検査 ) 』結果概要【平成 27 年 度追補版】」も併せて発表された。 1 巡目の甲状腺スクリーニング検査 ( 2011 ( 平成 23 ) 年度から 201 引平成 25 ) 年度に実施の先行検査 ) は , 第 20 回 ( 2015 年 8 月引日 ) の検討委員会で【確定版】として 発表されていたが , その後の検討委員会で新たに 悪性ないし悪性疑いとされた 3 例についての発 表が , 口頭でのみ行われていた。今回発表された 「資料 2 ー 2 県民健康調査『甲状腺検査 ( 先行検 査 ) 』結果概要【平成 27 年度追補版】」は , 先の【確 定版】のどの部分が修正されたのかを黄色のハイ ライトで示している。そこで今回は , 先行検査と 本格検査の外部比較 ( 全国がん統計との比較 ) での分析 結果に加えて , 先行検査の【平成 27 年度追補版】 にもとづき , 内部比較の表も本稿に添付する。 福島県の県民健康調査「甲状腺検査」の詳細に ついては , 福島県ホームページに公開されている Thyroid cancer among 18 years and under residents at the nu- clear accident in Fukushima: An analysis Of data released in the 23 「 d Prefectural Oversight Committee Meeting for Fukushi- ma HeaIth Management Survey on June 6 , 2016 Toshihide TSUDA つだとしひで、 ⑧福島県西部地区 ( 会津地方 ) , ⑨福島県北東部地区 いわき市 , ⑦福島県南東部地区 ( いわき市を除く ) , ③中通り中地区 , ④郡山市 , ⑤中通り南地区 , ⑥ 同様 , ①相双地域 , ②中通り北地区 ( 福島市を含む ) , ( Tsuda2016a ) および『科学』でのこれまでの報告と 民も含まれている。地域の分割は , 私どもの論文 事故後およそ 1 年の間に新たに誕生した福島県 先行検査の対象者に加えて 2011 年 3 月 1 1 日の 成 24 ) 年 4 月 1 日までに生まれた福島県民であり , 本格検査の対象者は , 1992 ( 平成 4 ) 年から 2012 ( 平 概ね 0 歳から 18 歳までの福島県民である。一方 , まれた住民 , すなわち 2011 年 3 月 1 1 日時点で 年 4 月 2 日から 2011 ( 平成 23 ) 年 4 月 1 日までに生 先行検査の対象者は , 福島県内で 1992 ( 平成 4 ) 告した分析結果 ( Tsuda2016a ) の通りである。 ことについては , 『 Epidemiology 誌において報 い。 1 巡目においてさえ多発がすでに認められる ずしも適切なものとは言えないことに変わりはな 味が込められた「先行検査」という呼び方は , 必 「べースライン」レベルの検診有病割合を知る意 多発はないという根拠のない前提にもとづいた と「本格検査」と呼んでいるが , 1 巡目における い。本稿では福島県の呼び方に従い「先行検査」 の事例を用いて」 ( 津田 2013 ) を参照していただきた 「多発と因果関係ーー原発事故と甲状腺がん発生 は , 『科学』 2013 年 5 月号 497 ~ 503 ページの 果報告を参照していただきたい。分析方法の詳細 『科学』にほば 3 カ月ごとに発表してきた分析結 上記資料もしくは , 2013 年 5 月号以来これまで 岡山大学大学院環境生命科学研究科 ( 相馬地区 ) の 9 地域に分割して分析した。 甲状腺がんデータの分析結果科学 0797

8. 科学 2016年8月号

ゴメリ州の 4 つの地区のすべての学校およびゴ メリ市の 7 つの学校で検査が行われた。生徒の 両親には教師を通じてこの調査の目的が説明され たという。超音波検査だけでなく血液検査も行わ れている。チェルノブイリ後の甲状腺がん増加の 問題を科学的に解明するために実施されたであろ うこの研究のように , 日本国内でも同様の「科学 的態度」が必要であろう。 福島の近隣県やホットスポット地域を抱える県 では , 甲状腺検査を含む子どもへの健康保健対策 を国の責任で実施してほしいと望む住民は多い。 しかし「症状のない小児に甲状腺検査を実施すれ ば放射線被ばくとは無関係に結果として生命予後 に影響を及ばさない甲状腺がんが一定の頻度で発 見され得ることや , 偽陽性に伴う様々な問題を生 じ得る」こともあるため , 「まずは福島県民健康 調査の『甲状腺検査』の状況を見守る必要があ る」というのが環境省に設けられた専門家会議 ( 座長 : 長瀧重信氏 ) の結論であった 14 これも 1991 年当時と同様の論旨と言えるが , 福島県ですでに 170 例以上の甲状腺がんまたはその疑い例が見つ かっており ( 2016 年 6 月発表時点 ) , 近隣自治体が独 自に取り組んだ検査でも数例の甲状腺がんが発見 されている 15 。これらの状況をふまえれば , 機は とうに熟しているであろう。 文献および注 1 ・—lnternational scientific conference "Health effects Of the Cher- nobyl accident—30 years aftermath", ( 16 ー 18 April, 2016 , Kiev). 要旨集および英文発表スライドはウクライナ放射線医学研究セ ンターのサイトで公表されている ( ロシア語・ウクライナ語のス ライドはウクライナ語サイトに掲載 ) : http://nrcrm.gov.ua/en/ publications/proceedings/o 健康影響についての 30 周年国家報 告書の英語版も 6 月に同サイトで公表された : http://nrcrm.gov. ua/en/news-2016_05/0 また , 25 周年に長崎大学山下俊一氏と 共編で出版された "HEALTH EFFECTS OFTHE CHORNOBYL ACClDENT—a Quarter of Century Aftermath"(f チェ丿レノブイリ 事故の健康影響一四半世紀後の結果』 ) も公表されている : h 叩 : 〃 nrcrm. gov. ua/en/publications/monographs/o 2 ー℃日 P PubIication40, 『大規模放射線事故の際の公衆の防護 : 計画のための原則』日本アイソトープ協会訳 , 1984 ( 原本 ) 。 IAEA や WHO も同じ。なお福島原発事故時 , 日本の基準は甲状 腺被ばく量 100 msv が予測される場合はヨウ素剤投与という基 準であったが , WHO はチェルノブイリ事故後 , 18 歳未満およ び妊婦と授乳婦についてはその基準を 10 mSv に改訂していた。 0796 KAGAKU Aug. 2016 VOL86 No. 8 3 ーー L. A. llyin and 0. A. PavIovskij, RadioIogicaI consequences 0 ー the ChernobyI accident 加 the Soviet Union and measures taken わ mitigate theirimpact,IAEA Bulletin, 4 , 17 ー 24 , 1987 4—Proceedings of an All-Union Conference "Medical Aspects Of the ChernobyI Accident", (Kiev, 1 1 ー 13 May, 1988),IAEA-TAC DOC -516 , 1989 5—THE INTERNATIONAL CHERNOBYL PROJECT TECHNI- CAL REPORT—Assessment Of Radiological Consequences and EvaIuation Of Protection Measures, Report by the lnternational Advisory Committee, 1991 6—THE INTERNATIONAL CHERNOBYL PROJECT, Proceed- ings Of an lnternational Conference fO 「 presentation and discus- sion Of the TechnicaI Report, (Vienna, 21 ー 24 May, 1991 ). ケ ニク博士 , トロンコ教授の発言日本語訳は , 今中哲ニ「放射能 汚染と災厄ー終わりなきチェルノブイリ原発事故の記録』 pp 364 ~ 366 , 明石書店 , 2013 年より 7 ー内閣府ほか 9 省庁 , 「放射線リスクに関する基礎的情報』 2016 年版 , p. 22 8 ー S. Nagataki & K. Ashizawa, Screening fO 「 Thyroid Cancer in Children, The RadioIogical consequences Of the ChernobyI acci- dent, Proceedings Of the first international conference, (Minsk, 1 8 ー 22 March, 1996 ) , pp. 749 ~ 754 , 1996 9 ーインタビュー ( 長瀧重信 , 聞き手尾崎正直 ) , 「 10 年たったチ ェルノブイリ事故の健康影響の実態は」 , 原子力文化 1996 年 7 月号 , pp. 3 ~ 1 1 , 日本原子力文化振興財団 1 0 ーー Y. Shibata et al., プ 5 years after Chernobyl: new evidence Of 物 y 「 0 / d cancer, The Lancet, 358 1965 ー 1966 , 2001 11—UNSCEAR,"Source and Effects Of lonizing radiation, UN SCEAR 2008 Repot tO the General Assembly with Scientific An- nexes" Volume 日 , Annex C, D & E, 2011 12 一一 A. Bouville, l. Likhtarev et al., Radiation dosimetry わ「 highly contaminated Belarusian, Russian and lJkrainian populations, and わ「 /ess contaminated populations in Europe, Health Physics, 93 ( 5 ) , 487 ー 501 , 2007 13- 原子力災害専門家グループ , http://www.kantei.go.jp/saigai/ senmonka. html 14 ー「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管 理のあり方に関する専門家会議・中間とりまとめ」 , 2014 年 12 月 15 ー震災時 0 ~ 18 歳の子どもを対象とした検査で , 茨城県北茨 城市で 3 例の甲状腺がん ( 2015 年 8 月 ) , 宮城県丸森町で 2 例 のがんとその疑い例 ( 2016 年 3 月 ) が発見されている。 吉田由布子 「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク・事務局 長。 1953 年生まれ。千葉大学教育学部卒。 1990 年「チェルノ プイリ女性ネットワーク ( 略称 ) 」 ( 代表綿貫礼子・故人 ) 設立当 初より参加。放射能汚染地域で生まれた事故後世代 ( 未来世代 ) の健康影響をテーマに調査を続けている。著作に ( いずれも共 著 ) 「未来世代への「戦争」が始まっている』 ( 岩波書店 ) , 「放射 能汚染が未来世代に及ぼすもの』 ( 新評論 ) , 『原爆調査の歴史を 問い直す』 ( NPO 法人市民科学研究室 ) など。 よしだゆうこ