マンモス , 同じく絶滅 したマストドン , アフリ カゾウ , アジアゾウの DNA の研究によれば , マンモスに一番近いのは アジアゾウだそうです。 両者は 580 万年前から 780 万年前に分岐した可 能性が高いようです。か っては汎世界的に分布し ていたゾウ類も , 現在は アフリカとアジアにしか 生息していません。アフ リカのゾウは , サバンナ にすむサバンナゾウと , 森林にすむ小型のマルミ ゾウがいます ( 図 6 ) 。 図 6 ーサバンナゾウ ( 上 ) とマルミミゾウ ( 撮影 : 西 この二つは同じ種に分類 原恵美子 ) 。ケニア・アンボセリ国立公園を遊動す るサバンナゾウの群れ ( 上 ) と , 中央アフリカ共和国 されることもありますが , ザンガ・バイを歩く野生のマルミミゾウの母子。 核の DNA ではかなり違 いがあることがわかりました。 DNA から分岐年代を推定すると , アフ リカの二つに違いが現れるようになったのは , アジアゾウとマンモスが 分かれたのと同じくらい古かったらしいことが明らかになりました ( 文献 3 ) 。異なる環境に適応し , それぞれ独自の進化を長く続けたのに , 形は 大きく変わらす , 絶滅せすに今日まで存続してきたことが判明しました。 文献 1 ー長谷川政美 , 2014. 系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 . べレ出版 : 191 p. 文献 2—Zazula, G. D. et al. , 2003. Palaeobotany:Ice-age steppe vegetation in east Beringia. Nature, 423 : 603 文献 3—Rohland, N. et al. , 2010. Genomic DNA Sequences from Mastodon and Woolly Mammoth Reveal Deep Speciation Of Forest and Savanna Elephants. PLOS Bi010gy, 8 ( 12 ) : el 000564 イラスト Copyright ◎ 1962 by Virginia Lee Demetrios Copyright renewed ◎ 1990 by Aristides Demetrios and Michael B. Demetrios 図 3 : bIueringmedia/123RF 写真素材をもとに改変 科学 0775 深読み ! 「せし、めし、のれきし改訂版」
きたように , ホストーパラサイト 関係は長い共進化の過程を経て築 き上げられ , その中で互いに悪さ をしない程度に折り合いをつけて いくものである。しかし本来は地 理的に離れた場所に分布していた , 共進化の歴史を持たない近縁種に そのパラサイトが乗り移った場合 , 致命的な病原体となることがある。 今回紹介した 3 つのケース , 現 象にはいすれも複合的な要因が絡 まりあってはいるが , グローバル 化の進展によってホストとともに パラサイトが広範囲に移動したこ とが原因の一つであることは間違 いない。それ以外の数々の要因も , すべて人為によるものであること もまた心しておきたい。 〈参考文献〉 IUCN Red List : http://www.iucnredlist. org 水産庁 : ウナギに関する情報 , http:// www.j fa. ma 圧 go. jp/. j /saibai/unagi ・ html 50 年前には 日本養鰻漁業協同組合連合会 : 鰻養殖の 歴史 , http://www.wbs.ne.jp/bt/nichiman ren/rekishi. htm 塚本勝巳 . 『世界で一番詳しいウナギの 話』 , 飛鳥新社 , 2012 NOBANIS : lnvasive Alien Species Fact Shee [ 一爿〃 g 〃〃房房厖“バ Franf0is Lefebvre et al. : "On the origin of 爿〃〃 / 0 / 房イぉげゞ , the invasive nem- atode of anguillid eels", 爿ク / 襯第加 , 7 ( 4 ) , 2012 Jun Aoyama ・ "Life History and Evolution of Migration in Catadromous Eels ( Genus 爿〃″な ) " , 爿〃 4 ー召加 & / 砌化財 0 〃 0 絋孕ん , 2 (1) , 2009 Tammy Horn ・ "Bees in America", The University Press of Kentucky, 2005 Tammy Horn ・ "Honey Bees : A History , New York Times, Apri111 , 2008 A. S. Michael : "Federal and State Bee Laws and Regulations", 召比孕 / 切ど U 〃″どイ S 爿な〃″〃尾〃れ〃側ん , NO. 335 , 1980 Gennaro Di Prisco et al. : "A. mutualistic symbiosis between a parasitic mite and a pathogenic Virus undermines honey bee immunity and health", 乃“〃イど 4 行 0 〃 4 / 爿 c 〃リイ & 〃 c ぉ , 113 ( 12 ) , 2016 Saija Piiroinen and Dave Goulson "Chronic neonicotinoid pesticide exposure and parasite stress differentially affects learning in honeybees and bumblebees" , 283 , 20160246 , 2016 Ché WeIdon et al. : "Origin of the Am- phibian Chytrid Fungus", ん〃ど愈方 c ー D など小ぉ , 10 ( 12 ) , 2004 A. Martel et al. . "Recent introduction Of a chytrid fungus endangers Western Palearc- tic salamanders ” , & 〃化 , 346 ( 6209 ) , 2014 カエルッポカピフォーラム 2007 : 発表抄 録集 , 麻布大学 , 2007 年 6 月 10 日 五箇公一 : 「両生類の新興感染症カエルツ ポカビ騒動のその後」 , 科学 , 82 ( 8 ) , 2012 小澤祥司おざわ・しようじ 環境ジャーナリスト。 1956 年静岡県生ま れ。東京大学農学部卒業。主に生物多様 性 , 自然エネルギー , 持続可能な社会を テーマに執筆活動。以前から福島県飯舘 村の村づくりに関わってきたことから , 福島原発事故直後から村の放射能汚染調 査 , 村民支援活動に取り組み , 村に通い 続けている。飯舘村放射能ェコロジー研 究会共同世話人。主書『メダカが消える 日』「エネルギーを選びなおす』『「水素社 会」はなぜ問題か』『電力自由化で何が変 わるか』 ( 以上岩波書店 ) , 『飯舘村 6000 人が美しい村を追われた』 ( 七つ森書館 ) 。 再び同じ公害を繰り返さないために 宮木高明 ぎっしりと道につまって動きのとれない車列の さなかで異様なガスの臭気を覚え私はりつ然とし た。排気ガスに含まれるニトロオレフィンの毒性 を想起したためである。そうした毒性を知ってい るがゆえに私は恐怖した。しかし , こうしたガス を長期間呼吸する環境におかれた人びとはほとん どこの毒性を意識していない。ときたまジャーナ リズムがとり上げてはいるが , そして大気汚染の 問題点として行政関係でも地域を限って対策を検 討しているのだが , 積極的な施策のごときは一向 に見られない。その害毒を恐怖するにしても自ら ガスマスクをつける以外にない状態である。研究 者にせよ , 行政者にせよ手をこまねいている間に 自分自身にその害毒は迫ってくるのである。 この排気ガスのことばかりではない。食性病害 の原因としての残留農薬あるいは工場廃棄物の問 題また然りである。たしかに問題視され , 論議さ れてはいるが , その追究とそれによって行なわれ るべき施策のありようを見るとまだるこしさに焦 立ちすら感じられよう。その促進のために今こそ 『科学』第 36 巻第 5 号 ( 1966 ) 巻頭言より ( 後略 ) 適切な手をうたねばならないのではないか。 0854 KAGAKU Aug. 2016 VOI.86 NO. 8
た際には , かけがえのない資源になるだろう。 このような簡便な方法による土壌シードバンク の調査・保全を , もっと多くの場所で展開したい。 かって豊かな植物相が存在した場所や , 多くの種 子が運ばれて蓄積しそうな場所で土壌を採取し , 適切な条件で培養し , 発芽した植物を丁寧に育成 する。あるいは土壌シードバンクが残存している 場所で , 小規模でもよいので環境改善の取り組み を進める。これらにより , 本格的な再生の可能性 を将来に残すことができるだろう。 図 4 の曲線は , 「今なら間に合う」、「早く着手 20 40 50 60 消失してからの時間 ( 年 ) すればそれだけ大きな効果がある」ことを示唆し 図 4 一地上植生から消失して以来の経過時間と植物の再生可能 ている。回復の「タネ」が残っているうちに土壌 性の関係 シードバンクを活かした自然再生への取り組みが 霞ヶ浦と印旛沼における結果に基づき , 一般化線形混合モデル によって推定曲線を得た 3 。プロットは各植物種 , 実線は予測 進めば , 将来の社会がとれる選択肢を拡げること の中央値 , 濃い灰色と薄い灰色はそれぞれ 50 % , 95 % 信用区 ができるだろう。 間を表す。 開発によって地形や地質が改変された場所や , 文献 1 ー西廣淳 : 自然再生ハンドブック , 日本生態学会 ( 編 ) , 地人書 水質が悪化してしまった湖や池において多様な植 館 ( 2010 ) pp. 79 ー 87 物が生育できる環境を取り戻すのには , たいてい 2 一 ( 財 ) 河川環境管理財団 : 河川環境総合研究所資料 30 号 http://kasen.securesite.jp/c—study/pdf_study02b/study02b_30.pdf 長い時間が必要になる。そのための取り組みを進 3 ー西廣淳・他 : 保全生態学研究 ( 印刷中 ) めている間に , 土壌シードバンクは枯渇してしま 4 ー S. Sallon et al.: Science, 320 1464 ( 2008 ) うかもしれない。環境改善の取り組みと並行して , 5 ー F. W. Telewski & A. D. Zeevaart: Am. J. Bot. , 89 1285 ( 2002 ) 「土壌シードバンクを保全する」ことが重要にな 6 ー - J. Nishihiro et al.: Ecol. Res. , 29 , 369(Data paper) ( 2014 ) るだろう。 http://db.cger.nies.go.jp/JaLTER/ER DataPapers/archives/2014 / 土壌シードバンクを保全するには , そこへのイ E 日 DP -2014-01 ンブットを増やすこと , すなわち , シードバンク から発芽させ , 成長・開花させ , 新たな種子を土 壌に供給することが有効だ ( 図 2 ) 。「一粒万倍」と いう言葉があるが , 植物は良好な環境で生育でき れば , 数少ない種子から数桁多い種子を生産し , 再び土壌に供給することが可能なのである。 冒頭で紹介した井の頭池での「べランダでシー ドバンク調査 ! 」は , 実は , 調査のプロジェクト であると同時に , 保全の活動そのものでもある。 貴重な植物が発芽したら丁寧に育成し , 新たな種 子を形成させることを目指したいと考えている。 フレッシュな種子を高密度で含む土壌シードバン クが創成できれば , 将来 , 池の水質改善や湧水の 復活などが進み , 植物を導入することが計画され 100 十十 十・ + 霞ヶ浦 ・印旛沼 80 0 4 ・ ( ) 当 9 レ超 20 0 十 十 30 0 科学 0767 科学通信
ゴメリ州の 4 つの地区のすべての学校およびゴ メリ市の 7 つの学校で検査が行われた。生徒の 両親には教師を通じてこの調査の目的が説明され たという。超音波検査だけでなく血液検査も行わ れている。チェルノブイリ後の甲状腺がん増加の 問題を科学的に解明するために実施されたであろ うこの研究のように , 日本国内でも同様の「科学 的態度」が必要であろう。 福島の近隣県やホットスポット地域を抱える県 では , 甲状腺検査を含む子どもへの健康保健対策 を国の責任で実施してほしいと望む住民は多い。 しかし「症状のない小児に甲状腺検査を実施すれ ば放射線被ばくとは無関係に結果として生命予後 に影響を及ばさない甲状腺がんが一定の頻度で発 見され得ることや , 偽陽性に伴う様々な問題を生 じ得る」こともあるため , 「まずは福島県民健康 調査の『甲状腺検査』の状況を見守る必要があ る」というのが環境省に設けられた専門家会議 ( 座長 : 長瀧重信氏 ) の結論であった 14 これも 1991 年当時と同様の論旨と言えるが , 福島県ですでに 170 例以上の甲状腺がんまたはその疑い例が見つ かっており ( 2016 年 6 月発表時点 ) , 近隣自治体が独 自に取り組んだ検査でも数例の甲状腺がんが発見 されている 15 。これらの状況をふまえれば , 機は とうに熟しているであろう。 文献および注 1 ・—lnternational scientific conference "Health effects Of the Cher- nobyl accident—30 years aftermath", ( 16 ー 18 April, 2016 , Kiev). 要旨集および英文発表スライドはウクライナ放射線医学研究セ ンターのサイトで公表されている ( ロシア語・ウクライナ語のス ライドはウクライナ語サイトに掲載 ) : http://nrcrm.gov.ua/en/ publications/proceedings/o 健康影響についての 30 周年国家報 告書の英語版も 6 月に同サイトで公表された : http://nrcrm.gov. ua/en/news-2016_05/0 また , 25 周年に長崎大学山下俊一氏と 共編で出版された "HEALTH EFFECTS OFTHE CHORNOBYL ACClDENT—a Quarter of Century Aftermath"(f チェ丿レノブイリ 事故の健康影響一四半世紀後の結果』 ) も公表されている : h 叩 : 〃 nrcrm. gov. ua/en/publications/monographs/o 2 ー℃日 P PubIication40, 『大規模放射線事故の際の公衆の防護 : 計画のための原則』日本アイソトープ協会訳 , 1984 ( 原本 ) 。 IAEA や WHO も同じ。なお福島原発事故時 , 日本の基準は甲状 腺被ばく量 100 msv が予測される場合はヨウ素剤投与という基 準であったが , WHO はチェルノブイリ事故後 , 18 歳未満およ び妊婦と授乳婦についてはその基準を 10 mSv に改訂していた。 0796 KAGAKU Aug. 2016 VOL86 No. 8 3 ーー L. A. llyin and 0. A. PavIovskij, RadioIogicaI consequences 0 ー the ChernobyI accident 加 the Soviet Union and measures taken わ mitigate theirimpact,IAEA Bulletin, 4 , 17 ー 24 , 1987 4—Proceedings of an All-Union Conference "Medical Aspects Of the ChernobyI Accident", (Kiev, 1 1 ー 13 May, 1988),IAEA-TAC DOC -516 , 1989 5—THE INTERNATIONAL CHERNOBYL PROJECT TECHNI- CAL REPORT—Assessment Of Radiological Consequences and EvaIuation Of Protection Measures, Report by the lnternational Advisory Committee, 1991 6—THE INTERNATIONAL CHERNOBYL PROJECT, Proceed- ings Of an lnternational Conference fO 「 presentation and discus- sion Of the TechnicaI Report, (Vienna, 21 ー 24 May, 1991 ). ケ ニク博士 , トロンコ教授の発言日本語訳は , 今中哲ニ「放射能 汚染と災厄ー終わりなきチェルノブイリ原発事故の記録』 pp 364 ~ 366 , 明石書店 , 2013 年より 7 ー内閣府ほか 9 省庁 , 「放射線リスクに関する基礎的情報』 2016 年版 , p. 22 8 ー S. Nagataki & K. Ashizawa, Screening fO 「 Thyroid Cancer in Children, The RadioIogical consequences Of the ChernobyI acci- dent, Proceedings Of the first international conference, (Minsk, 1 8 ー 22 March, 1996 ) , pp. 749 ~ 754 , 1996 9 ーインタビュー ( 長瀧重信 , 聞き手尾崎正直 ) , 「 10 年たったチ ェルノブイリ事故の健康影響の実態は」 , 原子力文化 1996 年 7 月号 , pp. 3 ~ 1 1 , 日本原子力文化振興財団 1 0 ーー Y. Shibata et al., プ 5 years after Chernobyl: new evidence Of 物 y 「 0 / d cancer, The Lancet, 358 1965 ー 1966 , 2001 11—UNSCEAR,"Source and Effects Of lonizing radiation, UN SCEAR 2008 Repot tO the General Assembly with Scientific An- nexes" Volume 日 , Annex C, D & E, 2011 12 一一 A. Bouville, l. Likhtarev et al., Radiation dosimetry わ「 highly contaminated Belarusian, Russian and lJkrainian populations, and わ「 /ess contaminated populations in Europe, Health Physics, 93 ( 5 ) , 487 ー 501 , 2007 13- 原子力災害専門家グループ , http://www.kantei.go.jp/saigai/ senmonka. html 14 ー「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管 理のあり方に関する専門家会議・中間とりまとめ」 , 2014 年 12 月 15 ー震災時 0 ~ 18 歳の子どもを対象とした検査で , 茨城県北茨 城市で 3 例の甲状腺がん ( 2015 年 8 月 ) , 宮城県丸森町で 2 例 のがんとその疑い例 ( 2016 年 3 月 ) が発見されている。 吉田由布子 「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク・事務局 長。 1953 年生まれ。千葉大学教育学部卒。 1990 年「チェルノ プイリ女性ネットワーク ( 略称 ) 」 ( 代表綿貫礼子・故人 ) 設立当 初より参加。放射能汚染地域で生まれた事故後世代 ( 未来世代 ) の健康影響をテーマに調査を続けている。著作に ( いずれも共 著 ) 「未来世代への「戦争」が始まっている』 ( 岩波書店 ) , 「放射 能汚染が未来世代に及ぼすもの』 ( 新評論 ) , 『原爆調査の歴史を 問い直す』 ( NPO 法人市民科学研究室 ) など。 よしだゆうこ
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ー ( 国際援助機関 , 政策担当者 ( 政府 / 地方自治体 ) , 研究資金提 供者 , 産業界 , メディア , 市民団体など ) との超学際的な 連携 ( 協働 ) を通じて , 持続可能な社会へむけた転 換をめざすところにその特色があります。「超学 際 (transdisciplinary) 」という表現は , 学術コミュニ ティと社会の連携・協働で進めようとする FE の キーワードとして用いられています。すなわち , 研究者コミュニティと社会の様々なコミュニティ が , 問題に対し共通の視点を共有しつつ , 研究の 立案の段階から成果の普及にいたるまで協働する ことにより , 問題解決にむけた新たな知の創出と 統合を進めるという , 協働企画・協働生産のプロ セスを重視するところにあります。このためには , 研究の目的や方法を社会と共有する必要があり , これが 19 世紀から続いてきた「科学のための科 学」とは大きく異なる点です 4 。日本では , 3. 1 1 の東日本大震災をきっかけに , 防災・減災の側面 からも , この「社会のための科学」への転換が問 われています。 「地理学」は何をしてきたのか ? ところで , このリレーエッセイは , 「地球を俯 瞰する自然地理学」が主題となっています。私は , 地球上の自然と人の関わり合いを俯瞰するという , 地理学本来の精神は大好きです。そのことをやり たいために , 地球学とか地球環境学と称して , や ってきたつもりです。ただ , 19 世紀のアレキサ ンダー・フォン・フンポルトやチャールス・ダー ウインなどが目指した , 地球の自然を , その歴史 性・空間性を含めて俯瞰し , 統合的に理解すると いう姿勢は , 「古臭い博物学」として , その後の 近代科学は , 「地理学」も含めて , すっかり忘れ てしまっています。ダーウインの進化論だけは , 生物学の分野で切り取られたかたちで残っていま すが。「地理学」 ( 特に日本の「地理学」 ) は , 自然地理 学も人文地理学も , 二元論と細分化を前提とする 近代科学として地球の自然と人間の「俯瞰」を試 みるという矛盾のために , 他の近代諸科学以上に 地球の理解にはほど遠いものになってしまってい ないでしようか。自然と人の関わり合いを , その 系統的な理解もせず , あるべき姿への洞察もなく , 単に枚挙的な記述に終始してきたため , 自然災害 や地球環境問題に対し , 「地理学」は , 他の地球 科学 , 環境科学以上に無力ではなかったでしよう か。 FutureEarth や統合的防災・減災の超学際的研 究にこそ , 地理学は本来 , 大きく貢献できるはす であり , すべきではないでしようか。「人新世」 を迎え , 地理学は地球と人間の存続のための学 際・超学際研究を進める学へ再生・再構築される ことを期待してやみません。 参考文献 I—IPCC: Climate Change 2013 : Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA(2013 ) 2 ー W. Steffen et al.: The Anthropocene: Are humans now over- whelming the great forces Of Nature? AmbiO 36 614 ー 621 ( 2007 ). doi: 10.1579 / 0044 ー 7447 ( 2007 ) 36 3—W Steffen et al.: Planetary boundaries: Guiding human de- velopment on a changing planet. Science, dOi: 10.1126 / sci ence. 1259855. Science 347 ( 2015 ) 4 一日本学術会議 2016 : 「提言持続可能な地球社会の実現をめざ して—FutureEarth( フューチャー・アース ) の推進一一」 , 2016 年 コラム東京電力原発事故の情報公開 No. 4 月 の連鎖』 ( 岩波書店 ) 。 ジャーナリスト。近著に「検証福島原発事故・記者会見 3 ーー欺瞞 きのりゆういち 木野龍逸 閭の晴れない炉心溶融問題 たうえ , きちんと検証されていないことに対する は , 東電が繰り返してきた情報隠しがまた行われ 立石雅昭委員は強い調子で批判した。その言葉に 居並んだ東電第三者委員会の弁護士に向かって , 安全管理に関する技術委員会」 ( 以下 , 技術委員会 ) で , 6 月 28 日に開かれた「新潟県原子力発電所の ない」 意味で , 国民を愚弄した報告書だと言わざるをえ 「結果的に東京電力を免罪している。そういう 苛立ちがにじみ出ていた。 科学通信 科学 0759
56 Mn 56 Mn 遠方まで 飛散 56 Mn ( 半減期 2.6 h) 原子爆弾 ( 日本家屋 ) Mn, AI 、→ 28A 中性子線 27 55 AI 爆心地近 傍に局在 ( 半減 .2 min) 28 図 7 ー広島原爆の被爆者におけるがん死亡の超過の原因となったと想われる主な放射性核種微粒 子の発生および飛散に関して想定された機序 のか ? という重要な問題について論ずる。これ まで得られている知見と放射性核種の放射能の半 減期の長さに関する情報を突き合わせて検討した 結果として , 2 つの放射性核種 , 56Mn ( 半減期は 2.6 時間 ) および 28Al( 半減期は 2.2 分 ) , が本質的な因子と して浮かび上がる 1 乙幻。その他の因子の候補と して 24Na ( 半減期は 15.0 時間 ) の影響も否定できない が , 入市被爆者の入市日別固形がん危険度の変化 を推定した結果 , 8 月 9 日入市者に比べて 8 月 6 日入市者における超過相対危険度が 20 % 近い高 値であったのに対して , 翌日および翌々日の同危 険度はそれぞれ数 % の水準にまで低下している ことを考慮すると , 15 時間という ( 比較的長い ) 半減 期をもつ 24Na による被曝の重大な影響があった とは考えにくい 1 % なお , 身近な環境中に 28Al の 半減期よりも長く 56Mn の半減期よりも短い半減 期をもっ放射性核種は存在しないことは既に報告 されている 24 , 25 。広島原爆の場合 , プルトニウム 微粒子による放射能汚染は問題になっていないが , 28 や 56Mn を含んだ微粒子が , Tamplin らによ って提唱されたいわゆる H pa ⅲ cle 効果 22 , 23 を 引き起こし , 急性症状の危険度を高くしていたこ とも考えられる。図 7 に現段階で想定される広 島原爆被爆者の健康被害に大きな影響を与えたと 想われる放射性微粒子の発生と飛散に関する機序 を示す。 原爆炸裂直後の爆心地付近では土埃で太陽光が Aug. 2016 VOL86 NO. 8 遮断され暗闇になったとの多数の報告がある 823 0828 KAGAKU これらの放射性微粒子は , 爆心地近傍にあった日 本家屋の上壁や屋根瓦の下に敷かれていた粘土に 含まれていた安定型の元素 55Mn およひ 27 川が原 爆による中性子照射を受けて放射化し生成された ものと考えられる 26 。それらの微粒子が衝撃波と 爆風により一瞬にして空中に舞い上がり , その一 部は上空の東風に運ばれて飛散したのであろう。 28A1 は半減期が短いために作用時間はほば 20 分 間に収まるはすであり , その影響は爆心地近傍 ( 1.2km 以内程度 ) に限局されたものの , 爆心地近傍 で被爆した人々にとって遮蔽状況の如何に依らず 曝露は不可避であっただろう。一方 , 56Mn は原 爆炸裂の 5 時間後でも約 1 / 4 の放射能の強さを保 持していたために , 近距離で被爆した直接被爆者 だけでなく遠距離被爆者や入市者までも巻き込ん だ曝露影響を及ばしたと考えられる 9 , 1 い 3 , 胸 , ~ プ 9 これまでに報告されている研究によれば , 原爆 被爆者のうち遠距離被爆者や入市者の場合に推定 されている放射線量は高々数十 mG メであるとい うことになっている 2 / この程度の低線量放射線 被曝が , ほんとうに急性症状発症の頻発や 20 近い固形がん死亡超過危険度をもたらしたのであ ろうか ? この疑問に対して , われわれは , 曝露 源が微粒子である場合の放射線量が桁違いに過小 評価されていることが問題の根源であり , それを 適正化すれば , 自然に解決できるものと考えてい る。特に , 放射線の線種が線や線の電荷を もった粒子線の場合には , 透過力が弱いために内
人がいない状況でも , 体を起こして座れるように なった。こうして寝たきりの状態を脱すると , 床 ずれの傷はどんどん小さくなっていった。 レオが腕のカで動けるようになると , 小さな治 療用ケージでは狭すぎた。発症からおよそ 2 年 半で , レオを広いリハビリルームに移動させた 広い部屋には , 今までと同じようにべッドを置き , ロープなどもたくさん設置した。レオは , それま でに鍛えた腕の力を使って , プラキエーション ( 腕 渡り ) で広い部屋の中を移動するようになった。人 がいなくても , ほとんど体を起こしているように 図ー同室してのリハビリの合間にカメラに手をのばすレオ。 撮影 : 兼子明久。 なった。ところが , 寝たきりになって以来 , 狭い ケージの中にいたためか , レオは何もない広い床 痛めて一時的に課題をお休みする以外は , レオは の上に行くのを嫌がった。ロープや丸太 , 木の椅 毎日課題に参加してせっせと歩くリハビリを続け 子などにつかまっていないと歩けない。もし倒れ ている。 たらっかまるものがないので , 体を起こせなくな はじめは上半身もかたく平たい板のようで , レ るのでは , と怖がっているようにみえた。足の関 オはまるでペンギンのように体を左右に振ってよ 節も曲がったまま固まっている。 ちょちと歩いていた。今では , 手も補助的に使い レオには , 他のチンパンジーたちと同じように つつ , やや背中を丸めて足を使って歩くようにな 足を使って歩けるようになってほしい。そこで , り , スピードも速くなった。まだ他のチンパンジ レオが若いころにしていたコンピューター課題を ーのように動くことは難しいが , 寝たきりのころ 取り入れて , 歩行のためのリハビリプログラムを に比べれば , よくここまで回復したと感心する。 考えることにした。ところが , レオは最初うまく 同室してのリハビリも含めて ( 図 ) , 多くの人がレ タッチパネルに触ることができなかった。どうや オの回復を願って今も努力を続けている。 ら久しぶりすぎて , 画面を触るのが怖くなってし まだ他のチンパンジーと同じ空間ですごすこと まったようだ。人が励ますと , 一瞬だけ指先でつ はできないが , 月に数回 , レオの部屋を他のチン つくように画面を触るようになった。画面に出て パンジーが訪問して , 格子越しに面会の場を設け きた問題に正解すると , 2 m 離れたところにある ている。レオはこの時間が楽しみなようで , 準備 フィーダーから食べ物のかけらが 1 個出てくる。 のときからそわそわしているらしい。レオの熱い 課題の難しさや , 問題と次の問題との間隔などを , 思いだけが空回りして , 他のチンパンジーがつれ レオの行動をみながら細かく調整した。計 7 回 ない態度をとることもある。回を重ねることで , の調整をへて , 最終的にレオは , 午前 10 時から 障害を克服しようとしているレオという存在が , と午後 2 時からの 1 日 2 回 , 1 回 100 問ずつの 他のイ中間たちにも受け入れられる日がくることを 認知課題を解くようになった。この最終設定の則 期待している。 後でレオの行動を比較してみると , 課題のないと 最後に , これまでレオにかかわったすべての きに比べて , 課題をしているときに移動距離が増 人々に深く感謝する。甘える人という役割を筆者 加した。また , 課題をしているときには , 足を使 に与えてくれて , いつもかわいく耳そうじをせが って床の上を歩く行動の割合も増えた。レオ用に むレオにもこの場を借りて感謝する。 カスタマイズされたリハビリプログラムが成功し 参考文献 : Y. Sakuraba et al.: primates, online first(201 6 ) doi: 10.100 刀 sl 0329-016-0541-3 ( 参考文献参照 ) , それから 6 年半ものあいだ , 足を ちびっこチンバンジーと仲間たち科学 0777
だった。 アメリカに定着したミッパチは , 受粉に蜂蜜の生産にと大忙しに働 かされ , 「ミッパチのように働く (worklikeabee) 」 , 「ミッパチのよう に忙しい ( ぉ busy as a bee) 」という 言葉まで生まれた。このため CCD の原因として「働かされす ぎてストレスにより逃亡したので はないか」という説まで出てきた。 農薬も CCD の有力な容疑者の ーっとして挙げられている。中で も , 近年広く使用されるようにな ったネオニコチノイド系殺虫剤が やり玉に挙げられている。まかれ た殺虫剤が蜜や花粉に含まれるこ ともあるだろう。直接死ぬほどで はなくても , 農薬の成分がハチの 方向感覚に影響を与えるという報 告もある。 遺伝子組み換え作物も疑われた。 アメリカでは昆虫に毒性のある Bt タンパクを作る細菌の遺伝子 を組み込んだ Bt トウモロコシが 広範囲に栽培されている。その葉 や茎をかじった虫は死んでしまう のだ。 Bt タンパクは花粉にも含 まれ , 花粉が降りかかった葉を食 べたチョウの幼虫が死んだという 実験結果もある。トウモロコシは 風媒花だがミッパチがその花粉を 集めることもあるようだ。 セイヨウミッパチの新しいバ ラサイト ミッパチに寄生するダニが原因 とする説もある。ヴァロアダニ なイおな和名 : ミッパチへギ イタダニ ) は体長 1 mm ほどの小さ Ⅳ osema 属の生活環消化管から細胞内に侵入し増殖する ( 出典 : SebastianGisderet al. ・ "A cell culture model for ル群〃 4 化〃 and Ⅳ 0 〃孕な allows new insights into the life cycle ofthese important honey bee-pathogenic microsporidia", 〃川〃な / 外イな房ー 房 , 1 引 2 ) , 2011 ) なダニで , ミッパチの幼虫の体表 に取り付きその体液を吸いながら 幼虫とともに成長する。このダニ に寄生されると足や羽が不完全な 成虫になってしまい , あまり長生 きできず , 蜜や花粉を集めたり , 幼虫の世話したりすることもでき なくなる。ヴァロアダニには RNA ウイルスの一種 DWV(De- formed Wing Virus) が共生していて , 羽が縮れるのはこのウイルスが原 因だということが最近わかった。 ヴァロアダニは , 20 世紀の初 めにインドネシアで , トウョウミ ツバチな化加の寄生虫とし て発見された。それが 1960 年代 に香港やフィリピンで養蜂のため に飼われていたセイヨウミッパチ に寄生するようになった。セイヨ ウミッパチは飼いやすく採蜜量も 多いため , アジア各地に広まって いた。その後ヴァロアダニはアジ ア全域のセイヨウミッパチに感染 するようになり , 70 年代にはヨ ーロッパや中近東 , そして南米に まで広がってしまった。ヴァロア ダニは 87 年にアメリカに侵入す ると , またたく間に全米に拡散し た。 亜種ニホンミッパチを含むトウ ョウミッパチはこのダニに寄生さ れても , 大きな被害は出ないとい われている。ニホンウナギとトガ リウキプクロセンチュウの関係同 様 , 長い間にパラサイトとのつき あい方 ( 抵抗力 ) を身につけたとい うことだろう。 さらに新たなパラサイトが , 2007 年にアメリカで報告された。 死んだミッパチから見つかったの は微胞子虫 (Microsporidia) というグ ループに属するⅣ。襯 4 化〃 という単細胞生物だった。微胞子 虫は主に昆虫に細胞内寄生するパ ラサイトの一群で , 特殊化した菌 類の仲間だと考えられている。甲 殻類や魚類に感染するものもある。 Ⅳ化〃に寄生されたハチは 数日間で弱って死んでしまう。蜜 や花粉を集めに行っている間に体 力を失って戻ってこられなくなる ことも多い。このⅣ化な〃も , その種名でわかる通り , もともと はトウョウミッパチのパラサイト だった。それが 2004 年にスペイ ンでセイヨウミッパチへの感染か 記録され , 2006 年にはフランス やドイツでも見つかっていた。い まではこれが CCD の原因の有力 候補の一つとされている。 バラサイトの惑星一学 0851
ーを整備し , その中に RI 治療の行える入院施設 cles/2016030400001. html 3 一日本学術会議臨床医学委員会放射線・臨床検査分科会 を 9 床設ける計画を進めている。医大によると , ( 2014 ) 提言「緊急被ばく医療に対応できるアイソトープ内用療 RI 病床を含む「ふくしまいのちと未来のメデ 法拠点の整備」 , http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohY022t 1901. pdf イカルセンター棟」の竣工時期は今年 10 月下旬。 4 ー絹谷清剛 ( 2013 ) 「環境改善に向けた活動」日本内分泌・甲状 実際の運用開始は , 年度内を目指している。 腺外科学会雑誌 30 : 130 ー 136 検診や治療のあり方が現在のままでよいのか。 5—Higashi T, Nishii R, Yamada S, et al. ( 2011 ) Delayed initialra- dioactive iOdine therapy resulted in P00 「 survivalin patients with 事故から 5 年を超えた今こそ , 様々な情報を開 metastatic differentiated thyroid carcinoma: A retrospective sta- 示した上で冷静に判断される必要があるだろう。 tistical analysis Of 198 cases. J Nucl Med 52 : 683-689 誤った政策による医療資源の不足や , 十分な検討 を欠いた治療によって , 患者の予後や QOL ( 生命 の質 ) が低下することはあってはならない。 白石草 早稲田大学卒業後 , テレビ局勤務などを経て , 2001 年 10 月 に非営利のインターネット放送局「 OurPIanet-TV 」を設立。 橋大学大学院地球社会研究科客員准教授。 2012 年に放送ウー マン賞 , JCJ 賞 , やよりジャーナリスト賞特別賞 , 2014 年に 『ルポチェルノブイ 科学ジャーナリスト大賞を受賞。著書に リ 28 年目の子どもたち - ーーウクライナの取り組みに学ぶ』 『メディアをつくる一一「小さな声」を伝えるために』 ( 以上岩波 ブックレット ) , 『ビデオカメラでいこうゼロから始めるドキュ メンタリー制作』 ( 七つ森書館 ) など。 しらいしはじめ 文献 1 ー「【復興の道標・ 5 年の歴史】甲状腺検査の在り方は「受けな い意思も尊重」」 ( 2016 年 06 月 15 日 ) 福島民友新聞 , http://www minyu-net.com/news/news/FM20160615-084349. php 2 ー長瀧重信 ( 2016 ) 「甲状腺がんとチェルノブイリ , そして福島 ~ 小児甲状腺がんの増加が国際的に確認されるまでの道のりを 振り返る」 WEBRONZA, http://webronza.asahi.com/science/arti 特集甲状腺がん 172 人の現実 原発事故と甲状腺がんを めぐる 30 年 吉田山布子 よしだゆうこ 「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク シアとウクライナの険悪な国際関係を反映してか , 2016 年 4 月 18 ~ 19 日 , ウクライナの首都キ ウクライナの研究者中心の会議となった。在ウク ェフにあるウクライナ医学アカデミー放射線医学 ライナ WHO センターが協力し , ウクライナ医 研究センターにおいて , チェルノブイリ原発事故 学アカデミー国立放射線医学研究センターが主催 30 周年の国際会議が開催された 1 。 25 周年は , 折 して「健康影響」に特化した会議として実施され しも東京電力福島第一原発事故の発生からひと月 た。筆者は福島原発事故後の放射線防護や甲状腺 という時期であったが , 同じくキエフで国際会議 がんをめぐる日本の混乱した状況について報告し が開かれ , パン・ギムン国連事務総長および天野 之弥 IAEA ( 国際原子力機関 ) 事務局長も出席しウクラ た。 1 日目 , 午前中の本 イナ , べラルーシ , ロシアの研究者らが一堂に会 会議の後 , 午後は同 していた。ところが 30 周年の今年は , 近年のロ 時並行して 2 つの セッションが開かれ た。筆者は「チェル 原発事故と甲状腺がんをめぐる 30 年科学 0789 甲状腺がん : 30 年を概括したス ビーチ 30 years ove 「 the nuclear accident and thyroid cance 「 YukO YOSHIDA