そのとき 「ミャビ ! ! 芽衣っ ! ! 」 智輝が愁と美亜の腕を掴んで叫ふ。 「行こうつ ! ! 」 「うん ! ! 」 ミャビの声に合わせ、アタシはコンビニに向かって走り 出した。 「一一痛ってえ ! 離せよ ! ! 」 「キャーツ ! ! 」 近づくにつれ、愁と美亜の声が鮮明に聞こえてきた。 ・・何があったんだよーーー」 隣では、愁が智輝とミャビに押さえ込まれていた。 に押さえ込むことができた。 抵抗する美亜の体はガリガリというくらいに細く、すぐ 「やめてよお ! ! 」 「嫌あ ! ! 」 「美亜っ ! ! もうやめてっ ! ! 」 アタシは必死に美亜に掴みかかって押さえた。 後を追ってきたたかチャンは、呆然として 5 人の姿を見 たかチャンも、 その後・ ていた。 みんなを気にしながらバイトへと戻って 愁は、智輝とミャビに連れられて地元へ帰って行った。 美亜を探して 173
輝もいた。 「・・・・・・久しぶり」 智輝と会うのは愁と初めて会った日以来で・・ アタシは気まずくなりながら、ミャビに問いかけた。 「なんで智輝が ? 」 「さっき、智輝の携帯に愁から電話があったんだって」 「えっ ? 本当に ! ? 」 目を大きく見開き、智輝に視線を向けた。 「そうなんだよ。金貸してくれって・・・・・・」 「それで ! ? あと、美亜は一緒だったの ? 」 「うん・・・・・・。愁はパクった金を全部シャプに注き込んで、 もうふたりには金がないらしいんだ。アイツ、なんでそ こまでしたんだろうーー」 智輝は目を伏せながら言った。 きっと智輝にとって愁は地元の大事な友だちなんだろ つ。 クスリ遊びの域を越えた愁に、悲しんでいるように思え 「ねえ・ ・・。ふたりはどこにいるの ? 」 「わかんねえ。だけど、今日の 7 時に金を貸す約束した から。ミャビに話聞いてたし、貸すつもりはないけど呼 び出しといたよ」 168
くごめん。今日は無理だよ〉 すぐにメールを打ち返す。 くそっか。最近、朝しか会ってないな。昨日も電話を折 り返すって言ったのに、かかってこなかったし。近いう ちに時間作って〉 そのメールには・・ いろいろな気持ちがこもっているように思えた。 つき合ってからの 1 カ月間、アタシは週の半分近く アッくんと遊んでいた。 でも、こんな状況になって・・ 会ってない。 ・・もう 1 週間以上朝しか 、アタシは美亜のことを優先したかった。 それはアッくんだってわかってくれている。 だけど・・・・・・アタシはその優しさに甘えて、アッくんを 放ったらかしにしてるのかも ? く折り返すのを忘れてごめんね。アタシも会いたいから 明日は会おう ! 〉 ごめん。 心からそう思い、 翌日の放課後 ミャビと一緒に教室を出た。 早く声が聞きたい。 会いたい。 166
ミャビも美亜同様、今までずっと学校を休んでいたんだ。 「久しぶりの学校だね。あれからどうだった ? 」 落ち着かなそうに座っているミャビに駆け寄り、声をか けた。 「芽衣チャンおはよ ! 昨日は連絡できなくてごめん ね。誰も居場所を知らなくてさあ・・・・・・」 「そっか。アタシもダメだったよ」 ふたりは揃って朝から溜め息を漏らした。 「もっと探してみる。後、学校もしつかり来るね」 「アハハッ、そうだね。今日が 2 学期初登校でしよ ? 」 「うんつ。留年決定かも ? 」 ミャビは少しだけ笑った。 ・・クスリをやめてから、 する。 ミャビの笑顔は変わった気が 美亜も一瞬だけはそうだった。 自然で、クスリを常用していたころとは違う笑顔。 嫌いだったミャビに対して、どんどんアタシの心は開け ていった 放課後になると、アッくんから 1 通のメールが届いた。 内容は放課後に会おうという誘い。 ・・・だけど、今日もアタシは美亜の家を訪ねようと決め ていた。 美亜を探して 165
そう思うたびに、不安で胸がザワザワとする。 何もせす、ただミャビからの連絡を待つなんてできない。 アタシは、美亜と共通の友人に片っ端から電話をかけた。 「最近美亜を見た ? 」 何十回もその言葉を繰り返した。 だけど、誰一人として、美亜の居場所を知っている人は いない。 メモリに入っていて、まだかけていない人は残り 3 人。 本音を言うと、この人たちには電話をかけたくなかった。 たかチャンとミッとコータ。 たかチャンには、アッくんとつき合ったことも言ってい 携帯の画面に表示される電話帳を見つめる。 ますくて連絡を取りづらい。 コータはアタシのいろいろな過去を知っているから、 ミツは美亜を苦しませている原因のひとり。 ないし疎遠なまま。 親指を通話ボタンの上に置いても押すことができなくて 164 翌朝 すっとその繰り返し。 悩みながら親指を離した。 重い気分で教室に行くと、久しぶりにミャビの姿があっ
寒さで体が震えた。 このまま待っていても、美亜が帰ってくるとは限らない。 ほかに美亜の居場所がわかりそうな人は・・ アタシは鞄から携帯を取り出し、ミャビに電話をかけた。 本当は、ミャビの声なんて聞きたくない。 ミャビも愁と同じように嫌いだよ。 だけど・・・・・・もうミャビしか、美亜の居場所を知ってそう な人はいなかった。 「・・・・・・芽衣チャン ? 」 「ミャビ ! ? 」 ミャビはすぐに電 出ないだろうなという思いに反して、 話に出た。 「あのさ、美亜に連絡つけたいの。 ミャビは一緒にクス リしてるんだからわかるよね ? 」 思わす嫌味になる口調。 ミャビは感じが悪い問いに対して静かに答えた。 「・・・・・・あたしやめたんだ。クスリやめたの。具合が悪く なって、ヤ / ヾい幻覚とか見て。だから、美亜の居場所は わかんない。何があったの ? 」 ミャビがクスリをやめた ? 昨日今日の出来事を話すと、ミャビは静かに聞いてから ー舌し出した。 「愁は頭がいかれてる。タマだけしゃなくて、シャプ ニ一口 美亜を探して 159
ルーズリーフに授業内容や黒板の文字を書き写して届け ることくらいしかなかった。 1 枚の手紙を添え、毎日美亜の家へ届け続ける。 いつも美亜は留守だから、ポストに投函するか美亜のお 母さんに渡して帰ることばかりだけど・・ そして 1 カ月記念日から 8 日後の月曜日の朝。 遅刻して登校したアタシを待っていたのは、驚く知らせ だった。 「美亜がっ 美亜が学校辞めたっ ! 何か聞いてる 教室に入った瞬間、海斗が駆け寄ってきて叫んだ。 ポトツ。 ・・は ? 嘘でしょ ! ? 」 突然の出来事に、持っていた鞄を床に落としてしまった。 156 「何も連絡なかった ? 」 「芽衣 ! 」って、明るく声をかけてくるのに いつもは休み時間になるとあそこから顔を出して・・ 教室のドアを見つめるが、そこに美亜の姿はない。 ・・嘘でしよ ? 」 「信じられない ! ! じゃなかったけど、筆跡は美亜のモノだって一一 - 」 「親が学校に退学届を持ってきたらしいそ。美亜は一緒 なんでいきなり・ 美亜が・・・・・・学校を辞めた ?
そんな美亜は、 アタシたちの元へ帰ってきてくれるのか その後、アタシはアッくんに送られて家に帰った。 気持ちの整理がつかなくて・・・・・・まだ一緒にいたい気持ち より、ひとりになりたい気持ちが強かった。 数えきれないほど美亜に電話をかけても、呼び出し音が 鳴るだけで繋がらない。 麻美の姿・ 美亜と愁を乗せて消えたタクシー もう、何も考えたくなかった。 机の中に閉まっておいた睡眠導入剤を取り出す。 アタシは決められた使用量よりも少し多めに飲み込ん もう使うことはないと思っていたのに 久しぶりに使った導入剤はすぐに効き始める。 そしてアタシは、携帯を握り締めたまま眠りについてい だけど・・ その間、 翌日・ ・・連絡も取れない美亜にできることといえば、 アタシは自分にできることを考え続けていた。 美亜は今週一度も学校に姿を現さなかった。 ・・そしてまた翌日 儚いモノ 155
さあ・ 「あ、 だけど・・・・・・その会話はアタシの耳に全然届かなかった。 いる。 アッくんが先に見える白いラプホを指さして何か言って そして・・・・・・血と涙の混ざった味。 臭かったデブのロ臭。 無理やり脱がされた服。 「い・・・・嫌っ・ 。やつばラプホは嫌・ 「芽衣 ? どうしたんだよ・・・・・・」 「あ、あの・・・・・・恥ずかしくて・・・・・・」 その場に立ち止まり、アッくんの腕にしがみついた。 「大丈夫だって」 「ううん、嫌っ・・・・・・」 ・今がタ暮れで本当に良かった。 太陽のオレンジ色がなかったら、アタシの顔が青ざめて 知られたら・・・・・・絶対に汚いと思われてしまう。 アッくんは・・・・・・レイプされたことを知らない。 いることに気づかれただろう。 「・・・・・・そっか。いきなりごめんな」 「本当にごめん・・・・・・」 「ううん・・ いけどっ・ アタシだって・・・・・・エッチ・ アッくんちに行かない ? 」 ・・した もうあれから 3 年以上も経った。 148
「やった ! ペアリングが写ったあ ! 」 。そうだな」 「あ・ 「次は肩抱いてっ ! ラブラブな感しなのを撮りたい の ! 」 アッくんに寄り添い、カメラに向かってニコッと笑う。 次第にアッくんも慣れてきたようで、おちゃらけたりア タシの頭に手を乗せたりしていた。 「一一一あっ ! あと 1 枚しか撮れないよお・・・・・・」 画面には残り 1 ショットで撮影終了と表示されている。 「もうつ。どんなポーズにする ? 」 「はあ・・・・・・やっと終わるっ ! 」 ギュッ 「えっ ? 」 急に抱き寄せられて・・ の顔を見上げた。 そのとき チュッ / ヾシャ ・・アタシは驚きながら、 アッくん キスと同時に最後の撮影が終了。 「ラブラブがいいんだろ ? 」 アッくんは意地悪そうに笑った。 アタシの頬が真っ赤に染まっていった。 「恥ずかしいっ・・・・・・」 儚いモノ 145