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検索対象: 赤い糸destiny 下
161件見つかりました。

1. 赤い糸destiny 下

バスが停留所に着くと、マンションへ向かって走り 出した。 「すいません ! ! ごめんなさいっ ! ! 」 そう叫び、道行く人を次々と掻き別ける。 アッくんの元へ・・・・・・ 1 秒でも早く着きたい。 次第に呼吸が荒くなり、胸は締めつけられるように痛く なった。 それでも足だけは前へ前へと動き続ける マンションの前に着くと、そこには誰もいなかった。 もちろん、オートロックの扉は固く閉ざされている。 しはらく悩んだ後 アタシはまわりを見渡し、廊下の脇にあるフェンスを乗 り越えた。 みつともなくてもいい。 それより早く行かなくちゃ・ マンション内への侵入が成功すると、次は目の前にあっ た階段をひたすら駆け上がる。 体は疲れきり、油断すると今にも倒れてしまいそうだ。 そう思ったときだった。 あと 1 フロア・・ ・・から・ ・は・ ・・だな」 212

2. 赤い糸destiny 下

「また電話・・・・・・」 「ごめんな。クラスのヤツだよ」 「本当にそう ? 電話鳴りすぎだよね」 影とは、この電話のこと。 アッくんと一緒にいるときにはいつも携帯が鳴ってい 一度やニ度しゃない。 それに、アッくんは一度だってアタシの前で電話に出て いないんだ。 アッくんと一緒にノブさんのお店へ行った日もそう。 思えばっき合う前から、頻繁に携帯が鳴っていた。 あのころはそこまで気にならなかったけど、彼氏になっ てからは妙に気になる。 なんでいつも出ないんだろう。 「出なくていいの ? 」 遠慮がちに尋ねると、アッくんは笑いながら答えた。 「芽衣と一緒のときは邪魔されたくないし」 「そっか・ アッくんは不安がるアタシの手を握った。 前に聞いたときも、同じような答えが返ってきた。 ねえ、アッくん。 本当にそれだけ ? 今日は、これでもう 4 回目の電話だよ そう言いたかったけど、ロには出せなかった。 このまますっと 089

3. 赤い糸destiny 下

忘れてるよー」 「アハハハハッ、可愛いっ ! やっぱ笑っちゃうよ ! めんね ! アハハッ ! ! 」 美亜はお腹を抱えて爆笑している。 「相談する相手を間違ったーっ」 「アハハッ ! こめんってば。まあ、あたしなら勝負下 着とムダ毛の処理するかなあ。前より見た目悪い体だと、 なんか幻滅されそうじゃない ? 」 笑いすぎの美亜は、涙目になりながら言った。 「確かにそうだよね ! アタシ、胸が小さくなったんだ。 しばらく前に食事とれなくて痩せたから・・・・・・」 「胸 ? 見た目じやわかんないけど」 男の人って、胸が大きい人が好きっていうイメージが あった。 前より小さくなってたら、ショック受けちゃうかな ? そう思うと、工ッチというより体を見せることに対して 臆病になってきた。 「胸のことは、海斗にでも相談しよっか。勝負下着はあ る ? 」 「あっ・・・・・・それは一応あるっ ! 」 「アハハッ ! やらしいっ ! なんか、自分のことみた いに恥ずかしくなるよ」 ふたりで一緒に笑いながら、その後も工ッチに必要なモ ノについて語り合った。 このまますっと 093

4. 赤い糸destiny 下

帰宅したアタシの肩や腕には、 かっていた。 ちょっと奮発しちゃった。 3 店のショップの袋がか でも、気に入るものがあって良かったよ。 アタシはべッドの上に袋の中身を広げる。 タグがついた服や靴で、べッドの上は埋まっていった。 「明日はコレとコレを合わせて、このパンプスを履こう かなあ」 明日のことを想像すると、思わずニヤけてしまう。 この前は最悪な姿を見せちゃったから、次は可愛い格好 で会いたい・ これらは、そう思って急きょ揃えた物だ。 化粧も髪も完璧にして、少しでもいいから、アッくんの 気持ちを惹きたい。 アタシは鏡の前に立ち、買った服を 1 着ずつ合わせる。 そして明日の服が決まると、前のようにバッグの中に ンカチとポケットティッシュを詰めた。 早く明日にならないかな・・ 用意が進むにつれ、会いたい気持ちが強まる。 自然と胸が高鳴り、小さく痛んだ。 メールを知らせるメロディが流れる。 「はあい・・・・・・え ? 」 目に飛び込んできたのは、く死ね〉という文字だった。 そばにいて 025

5. 赤い糸destiny 下

記憶の中にすらいないふたりを抱き締めるように、アタ シは両手で写真を胸に当てた。 街に着いたアタシは、開店前のノブさんの店のドアを開 「すいません ! ノブさんいらっしゃいますか ! ? 」 マンション前でタクシーを拾うと街へ向かう。 手紙と写真を鞄に詰め、急いで家を飛び出した。 「あれ ? ここって一一まさか ! ? 」 るらしく、その施設の住所も便箋に書かれている。 父は 10 年以上前に出所して児童養護施設を運営してい のことが書かれていた。 そして、ニ度と会えることがない母の眠る墓の住所と父 写真に写っている男の子がそうなのだろう。 いた。 そこには、アタシに春菜と同じ年の兄がいると書かれて 手紙に目を通した。 その後、止まらない涙で頬を濡らしながら、お父さんの すぐに厨房の奥からノブさんが姿を現す。 けて叫んだ。 「来てくれたのか」 「一一一あのっ ! マチ子・ てください ! 」 ・・ていうか両親のことを教え 「まあ、 こに座って。話は長くなるから・ destiny ・・ 235

6. 赤い糸destiny 下

アタシの体は前と同しように拒否反応を示していた。 「ねえ、愁。なんで芽衣を知ってるの ? 」 「ああ、前にちょっと」 美亜は愁の腕に手を伸はし、甘えたように腕を組む。 とっさにふたりを引き離し、間に入った。 「一一一ねえ、美亜。ちょっと話そうよ ! 」 もしかして、美亜の彼氏って、愁 ? やっぱり美亜はおかしい・ なんか変だよ。 「ねえ、美亜。ふたりで話せない ? 」 「愁もいるし、また連絡するよお」 「だから、今話したいんだってば ! るからっ」 愁。美亜借り アタシはそう言い、美亜の手を強引に引いた。 「ち、ちょっと ! 」 「いいから来てよ ! 」 抵抗する美亜の手をさらに強く握る。 「早くこっち来て ! 」 038 少し離れたビルの非常階段に並んで座った。 腕を掴んだまま、コンビニの前から美亜を連れ出し、 美亜はアタシの剣幕に驚きながら、トボトボと歩き出し 「もう、なんで一一一愁、後で連絡するからっ ! 」

7. 赤い糸destiny 下

切り替わり、不安で埋め尽されていった。 ・・ねえ、なんで ? いつもアタシの前じや出ないよね。 今日はこんなときだから出ないの ? 「どうしたの ? 」 「一一一あっ ! 」 アッくんはメールの画面を開き、驚いたように声をあげ 次はメールの受信音が鳴る。 それとも、アタシの前だから ? アタシは体に回されたアッくんの腕を離し、少し距離を る様子。 なんでもないとごまかしたアッくんは、明らかに何かあ ・・。な、なんでもない」 「あの・・・・・・あのさ・ おいて座り直した。 抜け出せない 115

8. 赤い糸destiny 下

屋上へ もう、 3 年以上も前のことになっちゃうんだね。 ふたりで屋上に行くなんて、まるであの日のよう。 「着いた ! 」 アタシたちの目の前に、屋上へのドアが現れた。 アッくんはそのドアを思いきり開いた。 「うわっ。誰もいないな ! 」 「校内はあんなに混んでるのにねえ」 「適当に座るか」 ふたりは屋上に出て、少し奥の方に座った。 アスファルトの地面は日光を浴びてあたたかい。 「なんか、横になっちゃいたくなるね ! 昼寝したいっ」 「アハハツ。寝て起きたら文化祭は終わってそうだよな」 078 心臓がまた高鳴り始めた。 トクン の光に目を細めた。 アッくんは、空を見上けて気持ち良さそうに言い、太陽 「マジ寝たくなる・・・・・・」 そう言いながらも、アッくんは地面に寝転がった。

9. 赤い糸destiny 下

涙 麻美がアッくんの目の前で両手を広げると 「一一一芽衣 ! ! 危ないっ ! ! 」 アッくんはその手を振り払い、叫びながらアタシに向 かって走ってきた。 キキキイ それと同時に、左側から激しいクラクションの音とプ レーキの音がした。 「え ? 」 反射的に音のほうを見ると、 車があった。 目の前に近づいてくる赤い すごい形相をしている若い運転手と目が合った。 足がすくんで、逃げなきやいけないってわかるのに動け ない。 目に映る景色がスローモーションの映像のようにゆっく りと流れた アッくんが近づいて、車が近づいて・・ アタシはあまりの恐怖に身を縮めてギュッと瞼を閉じ 涙 219

10. 赤い糸destiny 下

なんか、いつもと違う・ その様子は、いつもの美亜しゃない気がした。 。ずっと心配してたから毎日連絡してた 「別につて・・ ゆうり んだよ。ミツのことで嫌な思いをさせてごめんね。優梨 も気にしてるから」 アタシはそう言いながら、美亜の前にしやがみ込んだ。 よく見ると、美亜の頬は、前より少し痩けているようだっ つらくてこ飯もしつかり食べれなかったんだろうな 「・・・・・・ああ。うん。別にもういいや」 美亜はだるそうに言うと、吸い終わったタバコを地面に 「本当にごめんね。ずっと謝りたかったの」 アタシの口からは、謝罪の言葉がこぼれた。 なんで ? ・・えつ ? 投げ捨てる。 「は ! ? 」 「あたし、彼氏できたの」 「もういいって、どういう・ 思いもしなかった返事にアタシは眉をひそめた。 「・・・・・・どういうこと ? 」 「そのまんま。 036 しゅう あっ ! 愁、 こっちだよ ! 」