・・ううん。 それは絶対にない。 アッくんを疑うなんて、 えていく。 よ ~ よ ~ よ ~ だけど頭の中では、嫌な妄想ばかりが浮かんでは消 アタシどうかしてるよ。 携帯は・・・・・・アッくんの名前を表示している。 1 階まで降りると携帯が鳴った。 ・・はい」 「勉強はどう ? 」 「・・・・・・まあまあ・ の ? 」 これから帰るって・・ えっ ? 「今 ? これから家に ・・あの、今はアッくん何してる ・・うん、家に帰るところ」 ねえ・ ・嘘・・・・・・ついた ? ・・あれ ? 聞こえる ? ・・き・・・・・・聞こえる ? 」 もしもし ? 芽衣 ? 」 聞こえているのかな ? アタシの耳、おかしいのかな ? 214 そして・・ アタシは何も考えれない。 ・泣くとか・ 切れるとか・ 思考回路がブツンと切れてしまったようだった。
上の階から、アッくんと麻美らしき男女の声が聞こえた。 その声に、アタシの足はピタッと止まる。 耳を澄ますと会話の内容も聞こえてきた。 「気をつけろよ」 「またな」 耳に届いてきたのは・ 信しられないようなふたりの会話。 ・・どうして ? なんで麻美チャンと ? 今、なんて言ったの ? すぐに駆け出してふたりのところへ行きたかった。 だけど・・・・・・足が震えて動かない。 そればかりではなく、思わず隠れるようにしやがみ込ん でいだ。 聞いてはいけないモノを聞いてしまった そんな気がして頭の中が混乱する。 目の前が暗くなって、意識が遠のいてしまいそうだった。 ふたりの声が聞こえなくなると、アタシは足音を立てな アッくんは麻美に会わないと言っていた。 これは何だったんだろう。 いように階段を降りた。 でも・ 今のは何 ? もしかして、ニ股 ? 罠 213
・・ないよ」 アタシたちの距離は・ ちゃうの ? このままどんどん離れていっ こんなに大事な話もしてくれないなんて。 美亜とアタシは親友じゃなかった ? そう思うのはアタシだけになっちゃったの ? ねえ、美亜。教えてよ 放課後、いつものように美亜の家を訪ねた。 昨日までと違うのは、鞄に入れていたルーズリーフがな いことだけ。 ピーンポーン・ 「はい ? 」 インターホンからは、いつものようにサバサ / ヾした美亜 ら」 「今日も来たの ? あの子はいないし学校も辞めたか のお母さんの声が聞こえてくる。 その言い方は、まるで他人事のようだった。 儚いモノ 157
新学期 翌朝 - ーー 「行ってくるね ! 」 玄関でローファーを履きながら、 をかけた。 「いってらっしゃい ! 」 「気をつけてね ! 」 リビングに向かって声 リビングからは、お母さんと春菜の声が聞こえた。 今日から、 2 学期が始まる。 頑張らなきゃ ! 久しぶりの制服に袖を通すと、新学期へのやる気がわい てきた。 気持ちも新たに、玄関のドアを開いた。 工ントランスを抜けてマンションを出ると、制服姿の学 生たちが何人も歩いていた。 その光景を見ると、もう夏休みの名残はない。 アタシは駅に向かって歩き出した。 そのとき 「芽衣、おはよ ! 」 新学期 049
儚し 絶対、 、モノ この手が離れないように 汗ばむほど、強く強く握り合った。 気分を変えたくて街に出てきたけれど、気分は晴れ ないまま時だけが過きていく。 まだショップが開くまでには時間があるため、近くのカ フェで簡単な食事を取った。 「今日は混んでるね」 「日曜だからな」 「そっか・ 会話も弾まず、黙々とサンドイッチを食べ続けた。 いつもは美味しく感じる食事・・・・・・それが今日は、とても 味気なかった。 よ ~ よ ~ よ ~ 携帯の着信音が聞こえ、 いた。 「もしもし」 アタシはサンドイッチを皿に置 アッシと一緒 ? 」 「おはよ ! 今、 電話の相手は海斗だった。 「海斗から・・・・・・」 140
「ア・・・・・・アタシ・ 伝えたい。 。あ、 あのね・・・・・」 伝えなきやいけないのに 上からアッくんの申し訳なさそうな声が降ってきた。 「ごめんな アタシは視線を落とし、下を向いた。 だけど胸は詰まり、言葉が続かなかった。 「ごめん・・・・・・芽衣に言わせてごめん」 ・こっちこそいきなりでごめ 「あ、あの・・ 胸がズキズキと刺すように痛み出した。 振られたってこと・・・・・・だよね ? それって 今、『ごめんな』って言った ? んつ・ 気がつけば、アタシの体は、アッくんの腕の中にあった。 振られて謝って、そして抱き締められて・・ ドキドキ・ 早い鼓動が聞こえる。 でもこれは、アッくんの心臓の音。 「オレ・・・・・・芽衣に言わせようとしたから・ たくて」 「ど、どういうこと ? 」 ・・また、 聞き アッくんは、さらに強くアタシの体を抱き締めた。 082
よ ~ よ ~ よ ~ あっ・ アッくんの携帯が鳴ってる。 アタシの耳には、さっきと同じ携帯の着信音が聞こえて きた。 そういえば、レストランで何度もかかってきた電話は、 誰からだったんだろう ? 少しだけ心に影がさす。 アタシはグラスを持ち、急いでアッくんの待つ部屋に 戻った。 開いたままの扉から、静かに室内を覗いた。 こんな覗きみたいなことはしたくないけど・・ よ。 ・気になる アッくんは携帯を持ち、誰かにメールを打っているよう だった。 カラン グラスの中の氷が溶け、小さく音を立てた。 あっ・・・・・・やばいっ アッくんはアタシの方を振り向き、ボタンを押す手を止 めた。 「あっ、ありがとな ! 」 「ううん、どうそ」 覗いていたこと、はれたかな ? 012
うようになってから。 多分、アッくんとアタシが会うことを気に入らなく思っ ている人が送り主。 それは、ひとりしか思い浮かはなかった。 ・・送り主は、麻美チャンだろう。 「キャハハハッ」 突然アタシの耳に、聞き覚えのある笑い声が入ってきた。 海斗も気づいたのか、急に足を止めた。 ・・。の円って・ 「ねえ・ アッくんは聞き逃したのか、不思議そうにふたりの顔を ・・だよな。空耳じゃないよな ? 」 見比べた。 「・・・・・・よねっ」 会話はよく聞こえないが、 る。 ・・なんで ? なんで美亜が ? 確かに美亜の声が近づいてく 今、アタシたちが立っているのは繁華街から少し外 れた場所。 まわりには、クラブとバーとコンビニくらいしかなかっ 106 まわりを見回していた海斗が、右斜め前を指した。 いたっ ! 」
美亜を見捨てることなんてできないよ。 親友なんだもん一一 クスリなんかに引き裂かれたくない。 でも、先を考えると怖いな。 この先、美亜が立ち直ってくれなかったら・ 信じてそばにいれるのかな ? あのときはショックだったけど・ アタシは、何度でも美亜を立ち直らせなきや。 アタシは不安を消すように、アッくんの胸に顔を埋めた。 ・・アタシは それに、麻美チャンも・・・・・・ずっとアッくんにつきまとう ことになったら、今みたいな考えはきっとできない。 イライラするだろうし、むかっくだろうし、アタシとアッ くんの仲だって、どうなるかわからないよ。 今だから、こんなキレイ事を思っていられるのかもしれ 「アッくん・・・・・」 どうした ? 」 よ ~ よ ~ よ ~ その間も、アッくんの携帯は鳴り続けている。 ごめん。サイレントにする」 122 聞こえるのは・・・・・・お互いの呼吸だけ。 携帯の音が消えた室内は、シンと静かになった。
なぜか口からは、乾いた笑い声が溢れた。 「・・・・・・どうした ? 」 「アハハツ・・ 「芽衣 ? 」 人間はショックや怒りを通りこすと、笑いが出ると聞い たことがある。 心は冷めたまま、アタシは喉で笑っていた。 「芽衣・・・・・・。笑ってないで話せよ」 「・・・・・・ねえ。イ可・・・・・・してんの ? 」 ただ、胸が痛かった。 ・・なんの涙 ? この涙は・ グッと胸が詰まって、頬に涙が流れた。 言葉を発した瞬間 「えっ ? 」 アタシはゆっくりと歩いてマンションを出た。 「なあ、芽衣 ? ・聞いてるのか ? 」 携帯からは、アッくんの声が聞こえ続けていた。 今、ロを開いたらアッくんに泣き叫んでしまいそう。 そんな姿は見せたくなかった。 アッくんに醜い姿を見せたくない こんなときにかっこつけても仕方ないのにね すると、マンションの向かいの歩道から笑顔の麻美が現 れた。 罠 215