トオル - みる会図書館


検索対象: 走る二宮金次郎のなぞ
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1. 走る二宮金次郎のなぞ

ている。トオルは自分の顔に向かって、ニッと 歯をむきだしてみせた。もちろん鏡の中の自分 も同じように歯をむきだす。 かがみ そのときだ。鏡に何か白いものが映った。そ れがユラュラゆれながら、だんだん自分の背後 に近づいてくる : か、とてもじ トオルはふり返ろうとした・ ゃないけどできなかった。目が鏡にすいつけら れて、どれだけはがそうとしても動かすことな んてできない 白いものは真後ろまで来ると、大きく両手を 上げて、トオルにおそいかかってきた。 こうしゃない 夜の校舎内に、トオルの悲鳴がこだました。 かがみ かがみ うつ 9

2. 走る二宮金次郎のなぞ

かがみ あな いかもしれない。このポイラー室わきにあるぬけ穴のことは、トオルの通うひばりが丘小学校 の高学年の子どもなら、だれでも知っていたのだ。 ) 」 - つかし ぶきみ トオルは、歩きだしてすぐに後悔した。夜の学校の不気味さはハンパじゃない。鳥小屋のそ はを通ったとき、鳥たちがははたく音に、思わず悲鳴を上げて飛びあがりそうになった。 けいびいん 警備員さんがもどってくるまで、おとなしく待っていればよかった。夜の学校なんてちょろ しぜ、といきかったのがまちかいだった。足音がヒタヒタと、自分についてくるように感じる かいだん 長いろうかか終わり、つきあたりの階段を上がりはじめる。ニ階から三階のおどり場にたど おおかがみ り着いたとき、取りつけてあった大鏡が目に入った。 った ふしぎかいだん トオルは、ここで思い出した。自分たちの学校に伝わる七不思議の怪談。このおどり場の大 おおかがみ 鏡は、その何番目だったかに登場する、いわくつきの代物だったことを。夜、この大鏡をのぞ あらわ かがみ くと中からあやしい人かけか現れ、鏡の中に引きずりこまれてしまうのだという 「じようだんだよね。」 ひじようぐちゅうどうと - っ つぶやくと、トオルは鏡をのぞきこんだ。非常ロ誘導灯の緑の光を受けて、自分の顔が映っ かがみ おか うつ おお

3. 走る二宮金次郎のなぞ

「どうせプールに入れはぬれちゃうんだから、水着なんて別にかわいてなくったっていいんだ よな。」 小声でささやいたつもりが、思いのほか大きくひびいて、トオルの足が止まった。 わす プールバッグを学校に忘れたのを、母親に命じられて、夜の学校にわざわざ取りにきたのだ。 こ - っしゃない けいびいん トオルの教室、五年三組は三階にある。本当は警備員さんにことわってから校舎内に入らな じゅんかいちゅう ければならないのだが、ちょうど巡回中のようで、どれだけ来客ブサーを鳴らしてもだれも出 てはくれなかった。しばらく待ってみたか、いつまで待ってももどってくる気配がなかったの しんにゆうぐち で、思いきってひみつの侵入口から、だまって入ってしまったのだ。いや、ひみつとはいえな わす プ 1 ルバッグの忘れ物 べっ

4. 走る二宮金次郎のなぞ

さくらばれい まつやまとしお ばくの名は、松山俊夫。ここ、「ひばりが丘小学校」の五年生だ。桜庭玲とは同じ三組、そ まえかわとおる して、朝会で全校のうわさになっているトオル前川徹とも同じクラスだ。 かいだん 」の、つ わす トオルは昨日の夜、忘れ物のプ 1 ルバッグを取りにきて、教室に向かうとちゅう、階段のお けいびいん おおかがみ どり場の所で大鏡の中に引きずりこまれそうになった。警備員さんがあわててかけつけて、何 とか無事だったが、ショックで入院してしまったといううわさだ。 玲は言うべきことを言ってしまうと、もうすすしい顔をして、朝礼台の方に顔を向けている かのじよ 列の間に立ったまま、自分の並ぶ場所にはもどる気はないようだ。横目でうかがうと、彼女の きりつとした小麦色の横顔が見える。くちびるはしつかりと引きしめられ、ショートカットの しよか サラサラへアが初夏の風にふかれて目元をかくすと、ちょっとうるさそうにかきあげる ノンプルな白のシャツからむきだしになってい 小麦色をしているのは、顔だけじゃない、、 ふしぎたんてい るうで、ジ 1 ンズ地のショートパンツからのびている長いあしも同じだ。玲は不思議探偵クラ しゆみ プというマニアックな趣味をもっているだけでなく、バスケットボールクラブのエースとい、つ スポ 1 ッ少女でもあるのだ。 なら おか

5. 走る二宮金次郎のなぞ

ご、つれい じど、つ 月曜日、全校朝会のために全校児童が校庭に集まっていた。週番の先生が何度も号令をかけ ていたが、子どもたちはヒソヒソ話をせんぜんやめようとしなかった。 わす まえかわ 「五年生の前川トオルって子いるだろう ? あの子、忘れ物取りにきてお化けにおそわれちゃ ったんだって。それで、こわくて学校来られなくなっちゃって、とうとう入院しちゃったんだ ってよ。」 かがみ かかみ おおかいだん 「聞いた、聞いた。あの大階段のおどり場のところの鏡だろ。あの鏡にお化けが映るんだろ。」 かがみ ふしぎ 「マジ ? うちの学校の七不思議の一つに、お化けの出る鏡の話があるのは知ってたけど、本 当のことだったの ? ( プ ) 全校朝会 こ、ってい うつ

6. 走る二宮金次郎のなぞ

ゆりこ 竹川の母親も、少しは百合子先生の体のことを気づかっているのか、まだ学校に文句を言い にきてはいないみたいだ。それとも、自分の子どもが万引きしたことがはすかしくて、学校に 来にくいだけなのかもしれない。 へいおん おおかかみ 学校に平穏な日がもどってきたような気がする。あれ以来、大鏡のうわさもすっかりなくな おおかがみ ってしまった。そうそう、プールバッグを取りにきて入院するはめになったトオルは、大鏡が ふつき やぎさわ なくなって元気に復帰した。八木沢もショックから立ち直って登校してきている ふしぎたんてい ばくが一番さびしいのは、玲がすっかり元気をなくしてしまったことだ。不思議探偵クラブ らんまる をもっと活発にすればいいのに、蘭丸先生がいなくなってからぜんせんやる気が出ないらしい。 おおかがみれい 実は、大鏡の霊について、ばくは玲にだまっていることがある じけん あの事件の次の日の昼休みのことだ。 けいびいん 体育係のばくは、体育館のかぎを主事室に取りにいったときに、蘭丸先生と警備員さんがひ そひそ話しているのを聞いてしまった。 かがみさくや 「あの鏡、昨夜のうちにもどしておきましたからね。」 たけかわ 7 0 らんまる 0 もんく

7. 走る二宮金次郎のなぞ

にいった。 大きなバッグが、すみにかためられて置いてあったり、ぬれたタオルがほしてあったりで、 わたしたちの部屋と同じような感じなのだが、でもどこかちがう。わたしたちの部屋だってお むね せじにもきれいとはいえないのだけれど、そのざっせんさに何だか、胸がキュンとなってしま った。 せいざ わたしたちは「おそろ」のヘアバンドをして、どういうわけだかきちんと正座をしてしまう ダンダダダダンダダンダダダダンダ : ・ みとこ、つもん とっせん、男の子たちが照れくさそうに「水戸黄門」のテーマを歌いだしたかと思うと、ふ こ、つもんさま すまが開いて、「黄門様ご行」が入ってきた。 おおわら こ、つもん わたしたちは、もう大笑い。黄門様にふんしているのは俊ちゃんだ。。 すきんをかぶって、つ すけ ひがしやま なかがわ えをもち、白いひげまでつけている。助さん、格さんには、東山君と中川君がふんしている しゆくしゃ しやくよ、つ 二人とも刀を差して、宿舎のゆかたを借用し、こしのところで、からげている。頭にはかつら までかぶっている。 とし