を開ける。その音が、やけに大きくひびく。その後は大きな音をたてるのをおそれて、三人で ・ : そのまま三十分ほ じっと息をこらした。俊がグビっとジュ 1 スを飲む音だけが聞こえる。 ーし・刀 、 0 : : : Ⅱも起こらなし どが経過しただろうか わたしはこらえきれずに、あくびをかみころした。やつばり榊原さんの見まちがえだったの らんまる もうちょっとしたら、蘭丸先生にはすしてもらっ か。ちょっとがっかりするが : : : でもいい。 すなお じきゅうそ、つ て、俊と持久走の話をしよう。こういうシチュエ 1 ションだと、二人とも素直に話ができる 「大鏡」の時もそうだった。わたしが俊のこと、一生けんめい考えているんだということをわ ひとさ かってもらおう。そんなことをば 1 っと考えていたら、蘭丸先生がシッと人差し指をくちびる に当てた。 ザッザッザッザッ : : と足音がこっちに向かってくる。わたしはプルっと身ぶるいをしてし としらんまる まった。さけびだしたい気持ちをおさえて、すき間からそっと様子をうかがう。俊と蘭丸先生 かんせんみっちゃく と、完全密着で足音の主が現れるのを待った。 目の前をかげが三つ通りすぎた。三人とも背中に大きな荷物、手には本、頭にはちょんまげ おおかがみ とし とし あらわ せなか ノめ らんまる さかきばら
ろ′、じよう 「はつ、それでも佐藤先生が、どうしても五年三組のつきそいは、六條先生がいいとおっしゃ いまして : : : 。」 0 と、さかんに言いわけしている ゆりこ つめ しせん 校長先生の冷たい視線が、百合子先生に向けられる。 らんまる 「だって、わたしがお休みしている間、蘭丸先生が五年三組のめんどうを見てくださって、子 ぞんじ しさとい、つと癶」に、とて どもたちのことを番よくご存知なんですもの。それに蘭丸先生は、 : もたよりになる方なんですよ。」 らんまる ゆりこ 蘭丸先生が、わたしたちのクラスのつきそいになったのは、百合子先生のすいせんのせいだ ったの ? 蘭丸先生がいっしょに日光に行けることになって、わたしは超うれしかったんだけ ど、今のを聞いて、何だかおもしろくなかった。校長先生も、 「いざとい、つときたよりになる方が、ど、つしていざとい、つときに、必すちこくなさるんでしょ うかね。」 と、皮肉を言って、さっさと一号車に乗りこんでしまった。 らんまる 当一 A 一、つ につこ、つ わイ らんまる かなら ちょう
、っちの校長先生が平謝りだった。 そのぶん、校長先生はパ 1 キングエリアで、蘭丸先生にガミガミ説教を始めた。 「大体、そんなかっこうしてくるから、バスジャック犯とまちがえられるんだ。あんたは、、つ めいよ きす ちの学校の名誉を大いに傷つけた。あんたは、うちの学校のはじさらしだ。」 とか、ナントカ、カントカ まど ゆりこ 百合子先生が窓を開けて、 「校長先生、そろそろ出発しませんと、スケジュールがくるってしまいます。」 と、絶妙のタイミングで、校長先生の説教をさえぎった。どうして、あのポンポンポンポン飛 ゆりこ びでてくる、にくまれロの合間に、百合子先生のテンボのすれたのんびりポイスが割りこめた ふしぎ のか、不思議でたまらない。 さえぎられた校長先生は、しばらく口を開けたままハフハフ息をしていたが、やがてフンと かたをいからせて、一号車に歩いていった。 らんまる 蘭丸先生は、神妙な様子だったが、校長先生がいなくなってしまうと、ステップも軽く、 ぜっみよう しんみよう ひらあやま せつきよう わ 8 らんまる はん せつきよう
四年生の山本先生のおなかが大きくなった。赤ちゃんを産むためにお休みに入るのだそうだ。 りんじ ほ、つ一」ノ、 金曜日に臨時の集会があって、校長先生からそのことについてばくたちに報告があった。まあ、 かんしん ちがう学年の先生なので、ばくはとくに関、いもなかった。 よ第、しゅう しよう、かし 翌週の月曜日。校長先生が朝礼台に上がって新しい先生の紹介をしようとした。 やま、もと 「え 1 つ、金曜日に山本先生が赤ちゃんを産むためにお休みになられるという話はしましたね。 しよう、刀し そこで、今日は代わりにおいでになられる先生を紹介したいのですが : : : その、まだ、おいで ばくは、こんなシーンはいっか見たことがあるような気がしてきた。 巧また、もどってきたの ? やま 6 ・もと 、つ
す ゆりこ 蘭丸先生が学校をやめて、百合子先生がもどってから何日かが過ぎた。 け・つきよく たけかわ 蘭丸先生がやめることについて、ばくは竹川たちにけんかを売るつもりだったが、結局はや らんまる ふつき ゆりこ らんまる めた。蘭丸先生が言ったように百合子先生が復帰するのなら、どちらにしても蘭丸先生はやめ なければならないのだから : じしん ゆりこ 百合子先生は、初めのうちはおそるおそるだったが、少しずつ自信を取りもどしているよう け - んいら、 たけかわ 竹川たちは、あの件以来おとなしくしている。とくにばくたちが真相を知っていると感じて いるのか、なんとなく玲とばくをさけている感じがする らんまる らんまる 、目 はじ 0 7 0
と車内にも聞こえるような大声で、そばのお母さんたちにしゃべっている ところが、わたしたち三組の二人の引率の先生方ときたら、蘭丸先生が、 こ心配をおかけして。」 「申しわけない。、 ゆりこ と、ルックスに合わない、みようにさわやかな声で、百合子先生に話しかけると、 「いいえ、でも、もしいらっしやらないと、この先ど、つなるかしらと、ちょっと心配しました と、こちらもにつこりとほほ、んんでいる 何、二人だけの世界に入っているんだよ、と頭にきたわたしは、 「蘭丸先生、こっち、こっち。」 ほじよせき と、手招きし、わざわざ補助席を出して、わたしが座り、わたしとのぞピ 1 の間の席に、蘭丸 らんまる ゆりこ 先生をおしこんだ。これで、百合子先生と蘭丸先生を引きはなすことに成功だ。安心してのぞ こくひょう ピ 1 と二人で、ゆっくり蘭丸先生のファッションを酷評しはじめた。 ちゅうしゃいち きゅうけい らんまる 蘭丸先生は、とちゅうのトイレ休憩でもやってくれました。駐車位置と、バスの会社名を確 らんまる 0 てまね らんまる いんそっ 0 ノ 36 ・ すわ らんまる せいこ、つ 0 らんまる
「ああ、本当だよ。」 びつくりするくらい明るい声で先生は言った。まるで、この学校におさらばするのが、せい せいするって言ってるよ、つに、ばくには聞こえた。ちょっと頭にきて、 たけかわ 「先生はくやしくないんですか ? まるで竹川の母親に追いだされるみたいじゃないですか。」 と、ばくは先生につめよった。 たんにんゆりこ 「それは関ないんだ。もともと、お前さんたちの担任の百合子先生がお休みの間だけという やくそく ゆりこ なお ふつき 約東だったからな。百合子先生が治って、もうすぐ復帰するのさ。どうだ ? うれしいだろう。」 らんまる 蘭丸先生の目が、お見通しだぞとばかりにニャッと笑った。 ゆりこ ふくざっ こがらせいそやさ ばくの気持ちは複雑だった。美人で小柄で清楚で優しい百合子先生がもどってくるのは、そ らんまる す ふしぎたんてい りゃあうれしい。でも、蘭丸先生だって、ばくの大好きな先生なんだ。第一、不思議探偵クラ プはど、つなる ? 玲は、ばくよりももっと悲しむじゃないか るいせんこしよう 玲の目からなみだがあふれるのがわかったとたん、ばくの涙腺も故障したみたいで、玲の姿 がかすんで見えた。 か ん わら すがた
玲の姿をうっとりとなかめているうちに、ようやく校長先生の言葉が耳に入ってきた。 「 : : : それでは、五年三組の代わりの先生を紹介します。」 たんにんゆりこ そうだった。ばくらの担任の百合子先生は、教え方が悪いと、親から総こうげきをくらい、 きゅうしよく と、つとう休職に追いこまれてしまったのだ。 ゆりこ ばくは百合子先生が好きだった。玲とはまったくちがうタイプで、小柄でほっそりとしてい ちてき て、かみの毛は長くて茶色で、はだの色はぬけるように白かった。金ぶちのめがねが知的な感 じで、でも、それがぜんせんいやみじゃなくって、おとなしい、もの静かな、優しい先生だっ つぎす ( くが、玲の次に好きな女性だったんだ。 ゆりこ 百合子先生の教え方が悪かったんじゃない。あいつらが悪かったんだ。それは、ばくだって ゆりこ やさ じゅぎようたいど 授業態度が決して良かったとは言えない。しかし、あいつらときたら百合子先生が優しいのを じゅぎようちゅう しいことに、授業中さわぎまくって、先生が泣きだしてしまうことだってしよっちゅうだった。 先生だってプロなんだから、すぐに泣かないでほしいとは思うけど、それにしても、あいつら の悪さときたらハンパじゃなかった。 すがた じよせい しよう」かし 7 全校朝会 しす 」がら そう やさ
じようせいしんじようたい の巨体がふっとんで、ふすまをぶったおした。異常な精神状態にあるときには、ふだん考えら れないような力が出るものらしい。 当、と、つゆり・こ さて、ほかの先生がひどい目にあっているときに、三組の佐藤百合子先生は何をしていたの 第、ら ゆりこ てきせつ れいせい か ? ほかの先生たちに比べて、百合子先生が一番冷静に適切な行動をした。すでに男子の部 らんまる らんまる じゅくすいじようたい 屋で、熟睡状態だった蘭丸先生をよびにいったのだ。この場をおさめられるのは蘭丸先生しか かごん はんだん おか すく れいせい しオし この冷静な判断が、ひばりが丘小の移動教室を救ったといっても過言ではない。 きようば、つしゅうだん ヒステリーで、凶暴な集団と化した六年一組の女の子たちに、さんざんな目にあわされた先 きゅうきゅうしゃ ちんせいざい 生たちが、もう、どうしようもないから救急車をよんで、鎮静剤でも打ってもらおうかと相談 らんまる あらわ を始めたころ、蘭丸先生が現れた 「こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいでください。」 た玉 わた らんまる 部屋の中央で、蘭丸先生がひびき渡るような大声でじゅ文を唱えた。すると、それまで泣き . り・ト小、つ いっしゅんせいじゃく さけんでいたヒステリ 1 女たちが、はっとして泣きゃんだ。一瞬の静寂を利用して、蘭丸先生 がまた大声で唱える。 きょたい とな いレ ) 、つ ノエンジェルさん とな らんまる
ゆりこ 百合子先生と、蘭丸先生だった。 : : : ミスキャスト。そ 二人を見て、う 5 んとわたしは思ってしまった。何て言、つの : : : そう じきゅうそ、つしゅもくたんと、つ らんまる ゆりこ の言葉が、びったりのコンビだ。百合子先生も、蘭丸先生も、持久走の種目担当に向いてない ゆりこ よ。百合子先生は長いきより走ると、そのままたおれちゃいそうだし、蘭丸先生は、朝練なん ほ、つかご か絶対来そうにない。放課後練だって、きっと、たばこなんかくわえて、さばっていそう。先 りくしようせんしゅ 生は実際には走らないけど、それでもいかにも陸上選手リみたいな先生じゃないと、わたし たちのやる気が出ないじゃないか ゆりこ あん せつめい ( = 明が始まったけど、案の定、前に出て話すのは百合子先生で、蘭丸先生はばお 1 っとして、 鼻毛なんかぬいている。もう、サイテー せつめい 説明を聞いているうちに、やつばり今年も練習をちゃんとしてないと、出場できないという 話になった。 を」カい ほ、つかご 「朝と放課後の一日二回で、練習期間は十日間ですから、全部で二十回練習機会があるわけで じきゅうそ、つむり すね。そのうち、十五回は練習に出てこないと、出場はできません。持久走は無理をすると、 9 7 持久走のエントリー せったい じっさい らんまる 0 らんまる らんまる