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検索対象: 走る二宮金次郎のなぞ
49件見つかりました。

1. 走る二宮金次郎のなぞ

た白のスラックス。胸には金のくさりがジャラジャラと三種類もゆれている。となりで苦虫を こカら かみつぶしたような顔をして立っている校長先生が、ずいぶん小さく見える。小柄な校長先生 が相手とはいえ百九十センチはこえているだろう。ともかく、どう見たって先生には見えない しょにち たんにん 「初日早々、ちこくしちゃいました。 ' こめんなさいです。今度、五年三組の担任になりました。 ろくじようらんまる 六條蘭丸といいます。ョ・ロ・シ・ク。」 じど、つ ( ろくじようらんまるう ) なんちゅう名前じゃと、全校児童が思ったにちがいない。おまけ にあのあいさつの仕方。最後の「よろしく」なんて、まるでロックシンガーのようだった。も しゅんかん し、この瞬間、校庭の航空写真をとったなら、全校中が口をポカンと開けた写真がとれていた だろ、つ。 しょにち 「やれやれ。初日からちこくして、あのかっこうじゃ、またお母さんたちにさわがれて、すぐ に学校に来られなくなっちゃうよ。まったく。」 玲がため息をつきながら、耳元でささやいた。ばくは幸せで胸がいつばいになって、そのと おりだと賛成した。 さんせい むね 7 全校朝会 しゆるい むね

2. 走る二宮金次郎のなぞ

ねん ともかく泣かないようにしよう。それだけを強く念じた。ここで泣いたらあいつらの思うつ ばだ。目の前がかすんで、ばやけそうになるのをぐっとたえる わたしのすべきことは : : : あいつらをけっとばすことだ。 ひかしやま ぐんぐん近づいていく。東山が中ごしになって、今にもにげだしそうになりながら、それで わら いて、よゅうをみせるためにニャニヤ笑っているのが見える そうだ。今日はスカートだったんだ。まくれ上がらないように、、つまくけっとばさなければ へん ならない : : なんて、また変なことを考えてしまう。 そのとき、 「玲ちゃん。おはよう。」 とその場のきんちょうを台なしにする、とばけた声か教室中にひびいた。 とし 俊ちゃんだ。 すてき 「玲ちゃん。今日は素敵だね。あっ、今日は、なんて言、つと失礼だね。今日もって言わなくち ゃ。でも、そ、ついうスタイルもとっても似合うから、ときどき着ておいでよ。」 9 しつれい

3. 走る二宮金次郎のなぞ

「そうだよ。おれたちはあんなことあったのに、次の日、ちゃんと学校に来たもんな。」 玲とばくは、その様子を苦々しい思いでながめていた。 とし ふしぎたんてい 「俊ちゃん、いよいよ不思議探偵クラブの出番ね。わたしたちもしのびこんで、うわさが本当 か A 」、つか確かめよ、つ。」 玲が顔を近づけて、ばくにささやいた。大きなひとみの中に、ばくが映っているのが見える かのじよ せんさい 彼女の茶色の繊細なかみからは しいカ 42 り・カ ・ : ・ : トリ 1 トメントたろ、つか、何ともいえない きようふしん する。それにふらふらとなってする前に、それでも恐怖心のほうがまさった。 かがみ 「でも、鏡の中に引きずりこまれて、この世界にもどってこられなくなったらどうする ? ふしぎたんてい 玲は苦しそうな顔をした。だってそうだろう。不思議探偵クラブのリ 1 ダーとして玲は、学 ふしぎ ちょうじようげんしようと、つぜんしん 校の七不思議のような超常現象は当然、信じているはすなのだ。それが、竹川たちのうそをあ ちょうさ むじゅん ばくための調査をすることになる。この矛盾に苦しんでいるのだ。 れいすく ばくは玲を救うためにも、もう一度言った。 「ねえ、やめようよ。お化けが本当にいるかもしれないもん。もどってこられなかったら大変 かお たし うつ たけかわ たいへん

4. 走る二宮金次郎のなぞ

いや、もっと悪いやつらはほかにいた。あいつらの母親だ。息子の言ううそを真に受けて、 たんにん ゆりこ 校長先生に担任をかえろとねじこみ、とうとう百合子先生を病気にしてしまった。とんでもな ゆりこ いやつらだ。ばくは、百合子先生のために何もできなかった自分を、今もうれつにはじている。 ゆりこ ばくは百合子先生のために、あいつらにふくしゅうすることをちかった。 校長先生は、朝礼台に上がったきり、何かもじもじしている。 「えーっ、そこで、代わりにおいでになられる先生を紹介したいのですが : : : その、まだ、お いでには : : : 。」 しようこ、つぐち そのときだ。昇降口から背の高い男の人が「いやあ悪い、悪いと言いながら、かけてきた。 まさか : その男の人は朝礼台に飛び乗った。全校中が息を飲んだ。頭がまっきんきんの きんばっ 金髪だった。外国人なら話はわかる。でもあのほりの浅さは、どう見てもばくたちと同じ国の 人だ。それに、どう見たって地毛には見えない。わざわざ脱色して染めたのにきまっている。 さらにファッション。地味なス 1 ツにネクタイといった、いわゆる先生ファッションとはまる つきり正反対のかっこうだ。あざやかなオレンジ色のジャケット。黒のシャツ。すその広がっ しよう力し あさ だっしよく

5. 走る二宮金次郎のなぞ

さくらばれい まつやまとしお ばくの名は、松山俊夫。ここ、「ひばりが丘小学校」の五年生だ。桜庭玲とは同じ三組、そ まえかわとおる して、朝会で全校のうわさになっているトオル前川徹とも同じクラスだ。 かいだん 」の、つ わす トオルは昨日の夜、忘れ物のプ 1 ルバッグを取りにきて、教室に向かうとちゅう、階段のお けいびいん おおかがみ どり場の所で大鏡の中に引きずりこまれそうになった。警備員さんがあわててかけつけて、何 とか無事だったが、ショックで入院してしまったといううわさだ。 玲は言うべきことを言ってしまうと、もうすすしい顔をして、朝礼台の方に顔を向けている かのじよ 列の間に立ったまま、自分の並ぶ場所にはもどる気はないようだ。横目でうかがうと、彼女の きりつとした小麦色の横顔が見える。くちびるはしつかりと引きしめられ、ショートカットの しよか サラサラへアが初夏の風にふかれて目元をかくすと、ちょっとうるさそうにかきあげる ノンプルな白のシャツからむきだしになってい 小麦色をしているのは、顔だけじゃない、、 ふしぎたんてい るうで、ジ 1 ンズ地のショートパンツからのびている長いあしも同じだ。玲は不思議探偵クラ しゆみ プというマニアックな趣味をもっているだけでなく、バスケットボールクラブのエースとい、つ スポ 1 ッ少女でもあるのだ。 なら おか

6. 走る二宮金次郎のなぞ

「ほら、玲ちゃん連れてきたよ。玲ちゃん、こ ふしぎたんてい う見えてもさ、不思議探偵クラブの部長だから さ、相談してみなよ。」 のぞピーがうながす。『こう見えても』は余 さかきばら 計だと思ったが、 榊原さんが何かにしきりにお びえているのが気になったので、話を聞いてみ る気になった。 しせん おどおどした榊原さんの視線の先には、あの、 にのみやきんじろうぞう 二宮金次郎像が立っていた。 さかきばら 78 ノ

7. 走る二宮金次郎のなぞ

な はその言葉を聞くとだまってしまった。そしてヒックヒックとしやくりあげながら泣きだした。 てつだ そのことに気づくと、ばくはそれまで何も一言えなかったことのくやしさも手伝って、同じよ 、つにしやくりあげてしまった。ま、、、、 ( く力やっとの思いで言えたのはこれだけだ。 「ヒックヒック : : : 先生やめちゃうって本当ですか ? 」 な いっそうせいたい それを聞くと、玲は一層盛大に泣き声を上げた。 たいばっきようし 「おいおい、やめてくれよ。まるでわたしが体罰教師みたいだろ。たのむから泣きゃんでくれ な 先生はそう言ってたのんだが、ばくたちは教室にたどり着くまでに泣きやむなんて芸当は、 とてもじゃないけどできなかった。 廿一い、か / 、 でも、なみだでくもった目の片すみに、何かが映るのは見えた。いや、正確に言うと何かが ないのが見えたが正しい。 あるべきはずのものがなかったのだ。 二階と三階のとちゅうのおどり場にあるはずのあの大鏡が、かげも形もなかったのだ。 7 母親たちの逆襲 0 うつ おおかがみ

8. 走る二宮金次郎のなぞ

とう先生が現れてしまった。今日は、夜だというのに黒のシャツ、黒のスリムジーンズとい きばっ う黒ずくめのスタイルである。いつもの奇抜なファッションよりはまともだが、それでもどう ふしん 見たって不審人物にしか見えない。絶対に学校の先生なんかには見えないぞ。 げんかん 先生は本当に玄関から入らずに、ばくたちをうながしてポイラ 1 室に回った。ばくがべニヤ 板をおしてすきまを作り、右手をつつこみ、ドアのロックを中から回した。学校にしのびこむ ためにみんながしている方法だ。 「ふうん、みんなこんなところから出入りしてるんだ。」 らんまる 、つらにわ′、ろ、つ 蘭丸先生はやけに楽しそうだ。ぬかるんだ裏庭を苦労しながら歩いてきたのに、はずむよう な声を出している 「まったくう。くもの巣とかないでしようね。」 玲はこわいのをかくすためだろうか、おこったような声を出した。 けいびいん 「しつ、警備員さんに見つかるぞ。」 かいちゅうでんと、つ 先生が注意し、懐中電灯でゆかを照らした。 あらわ ほ、つほ、つ せったい

9. 走る二宮金次郎のなぞ

けいびいん ドアを開けてしのびこむ。警備員さんと、はちあわせをしないように気をつけて、ゆっくり 三階に向かう。 たけかわ 「竹川のやっ、つまんないうわさふりまきやがって。おれが、ただのうわさだってこと確かめ てやるぜ。」 やぎさわ 八木沢はひたひたとろうかを進んだ。非常灯の明かりをたよりに、手すりにつかまりながら かいだん 0 階段を上る かがみ いよいよ鏡をのぞく。自分の姿が見える。なんだ、やつばりおれしか映ってないじゃないか かがみ と思ったとたん、鏡の中の自分の後ろに、ばーっと白いものが見える。なんだと目をこらして いると、 かがみ 「おい、そこのお前。鏡の中に引きずりこんでやるぞおー。」 かいだん という声が階段にひびきわたった。 かいだん やぎさわ 八木沢はギャーとさけんで、その場にしりもちをついた。階段から転げ落ちなかったことだ - かマヒっちゅう けが不幸中の幸いだった。 すがた ひじようレ」 - っ 3 うつ

10. 走る二宮金次郎のなぞ

そ - っこ しず 夜。倉庫の中にしまわれている様々なガラクタたちも、静かにねむっているように見える さ まど おおかがみ じようやと一つ はんしゃ あの取りはずされた大鏡も、窓から差しこむ常夜灯の光を反射しているだけだ。 とっぜん、鏡の表面に白いものが映った。それが、ゆらゆらとゆれながら、だんだん形を かがみ 整えていく。最後には人間の形になってしまった。その白い人間のかげは、にゆうっと鏡か はしらどけい らぬけだした。そして、まわりを見回し、ほこりをかぶっていた古い柱歇言に目を止めた。 はしら SJ けい しゅん 顔はないはずなのに、にやっと笑ったようにも見える。かけは柱時言をだきあげた。次の瞬 かがみ 間には時計をだいたまま鏡の中にすいこまれていった。 よ - つむしゅじ そうこ はしらÄJ け・、 、王寺 + よどこをさがしても見当たらなかった。 次の日、用務主事さんが倉庫を開けたが、オ日言。 かん ( 新 ) 倉庫 かがみ わら うつ 0