息子 - みる会図書館


検索対象: 運命の息子
30件見つかりました。

1. 運命の息子

エバンナのいう怪物たちを、ばくはどう受けとめたらいいのか ? エバンナはこれまで一度として、 ばノ、はと士小」 そんな話などしなかったのに い、ばくの頭からはなれないもうひとつの怪物のこと に、・古をもどした。 やみ 「あんた、ばくが闇の帝王になるかもしれないって言ったけど、まちがってるよ。ばくは、そんな怪物 じゃない」 うんめい カ いっしん よげん ばくは運命を変えたい一心で、エバンナの予言をうちけした。 いた たがエバンナは、痛いところをついてきた。 さ 「おや、ダリウスがおいっ子だとスティープが明かさなかったら、おまえ、ダリウスを刺してたんじゃ ないのかい」 いか たしかに あのとき、目の前でシャンカスをころされて、ばくはにくしみと怒りで、はらわたが かんけい ぜんあく にえくりかえった。あのときのばくは、スティープとそっくりだった。善も悪も、関係ない。スティー さ むすこ みらい きず プの息子を刺すことで、スティ 1 プを傷つけてやるという思いしかなかった。あのとき、ばくは未来の 自分のすがたをかいま見た。怪物としての自分のすがたを でも、ああなるとは思いたくない しんじっ べんかい ばくは真実から目をそむけようと、やっきになって弁解した。 「あのときは、シャンカスのかたきをとりたかっただけだ。手に負えない怪物になったわけじゃない 0 0 お ろ 9 ー第 2 章家、

2. 運命の息子

ミスター・タイニ 1 は、鼻で笑った。 「ふん、なぜ助けるのだ ? 」 いまのスティープは、声をしばりだすのがやっとだ。それでも、けんめいにうったえた。 いちども : ・・ : 持ったことがない。父上である : ・・ : あなたを : ・・ : 知り 「おれは : ・・ : 父親というものを : あいじさっ たい。あなたの : : : 言うとおりにして : : : あなたに : : : 愛情を : : : ささげますから : : : 」 たか、ミスター・タイニーは声をあげてあざわらった。 きほんてきかんじさっ 「愛情だと ? そんなもの、このわたしがのぞむと思うか ? 愛情とは、人間のもっとも基本的な感情 ふくじゅう むえん だ。わたしはそんなものとは無縁で、ほんとうによかったと思っている。わたしがほしいのは、服従、 せいれい いか いぞんきさっふ 依存、恐布、にくしみ、怒りといった感情だ。愛情だと ? そんなもの、おまえの魂とともに、精霊の ち 湖に行ってしまえ。精霊の湖でのなぐさめにでもしろ」 むすこ 「でも : : : おれは : : : あなたの : : : 息子ですー 子 の 消えいりそうな声でうったえるスティープを、ミスター・タイニーはせせら笑った。 「ふん、もう息子でもなんでもない。ただの負け犬だ。じきに命もなくなる。おまえの死体など、リト 章 し ) - しゃ ル・ピープルにくれてやるわ。わたしにとっておまえは、そんなものよ。この世は勝者のもの。二位に第 しさつぶ なっても、負けは負けだ。負けたおまえに用はない。勝負がついたいま、わが息子はダレンだけだ」

3. 運命の息子

体のあちこちを杭にひっかかれている。いっ命を落とさないともかぎらない。しかしあまりにもむごい しさっげき 死に衝撃を受け、だれひとりとして動けなかった。 きずお さいわいにもエフラは、ひどい傷を負うことなく、舞台にたどりついた。舞台にあかると、エプラは むすこ 泣き シャンカスのそばにすわりこんだ。息子が生きていないかと、ひっしにあちこちさわりまくり わら くずれた。身もだえしてむせび泣き、死んだ息子の頭をひざに乗せ、二度と笑うことのない息子の顔を 自分の涙でぬらす。ばくらは、はなれたところから見つめることしかできなかった。みんな、声をあげ て泣いた。ふだんなら涙などぜったい見せないアリスも、泣いていた。 まいなカ やがてハーキャットが杭をおしのけながら、あなを通りぬけた。そして舞台においてあった一枚の長 い板をバンチャ元帥とふたりであなの上にわたし、ばくらが舞台に行けるようにしてくれた。でも、行 きたいなどと思う者はいない。長いこと、だれも動かなかった。ようやくデビーがしやくりあげて泣き ながら、ふらふらと板のところに行き、あなをわたりだした。 デビーに続いてアリスが板に乗り、そのあとにばくか続いた。体が、どうしようもなくふるえる。こ ひとじちこうかん こから、逃げだしてしまいたい。万が一、人質交換という計画が失敗して、シャンカスがスティープに やられたらどう感じるか。自分では、わかっているつもりだった。でも、なにもわかっていなかった。 いくらスティープでもシャンカスの命をうばうようなまねはしないだろうと、たかをくくっていたのだ。 いた しつばい 19 ー第 1 章ア = ーの子

4. 運命の息子

ダレン・シャン うんめいむす 運命の息子 Darren Shan 作 橋本恵訳 0

5. 運命の息子

と、ダリウスかまたにくくなってきた。指が、。 ひくっと動く。この指で、ダリウスの首をひつつかみ、 ひと思いに だがすぐに、ばくがおじさんだとわかったときのダリウスの顔が、うかんできた。ショックを受け、 こうかい おそれおののき、混乱して、苦しみ、はげしく後海する顔ーーー。ダリウスへのにくしみが、すっと消え ないしん ダリウスが板をわたりきり、まっすぐ近づいてきた。内心ではびくびくしているのだろうが、そんな 気配はおくびにも出さない。ダリウスが、立ちどまった。バンチャ元帥を、アリスを、そして最後にば ばくはある くを見る。あらためてしげしげとながめたら、たしかにばくと似ている。似ているーーー ? ことを思いだし、ダリウスに声をかけた。 「アニーの家で見かけた子と、ちがうな」 せつめい ダリウスが首をかしげたので、説明してやった。 「この町に来てから、自分が生まれ育った家をのぞきに行ったんだ。そのとき、フェンスごしにアニー むすこかえ を見た。せんたくものをとりいれているところだった。そこへ息子が帰ってきて、手伝った。でも、そ きんばっ のときに見た息子は、おまえじゃない。金髪のきれいな、太った子だった」 そのときのことを、ダリウスはすぐに思いだした。 こんらん 25 ー第 1 章ア = ーの子

6. 運命の息子

じゃあく えられないほど邪悪だが、やりかけたことはとことんやりぬく意志の強さがある。こうと決めたら、て こでも動かない。ダリウスもそうだ。 ばくはいすにすわったダリウスの前に腰をおろし、ダリウスの指の先につめをつきたてようとした。 そのとき、アニーがためいきをついてなげいた。 「信じられないわ。ついさっきまで、明日なにを買おうとか、ダリウスが学校から帰るまでにもどらな くちゃとか、そんなことしか考えてなかったのに : 。とっぜん、死んだはずのお兄ちゃんがもどって きて、しかもバンパイアだなんて言いだした。やっとなっとくできたと思ったら、すぐにまた死ぬかも むすこ しれないなんて。息子まで、死んでしまうかもしれないなんて : : : 」 はいご いまにも、やめて、と言いだしそうだ。アリスが背後から歩みより、アニーにそっとっげた。 さつじんき 「息子さんを、人間のまま死なせるほうがいい ? それとも、父親とおなじ殺人鬼として死なせるほう 力いいのかしらフ・ ざんこく こと・は 残酷な言葉だ。でもそのおかげでアニーは、ダリウスがどうなってしまうか考えて、あきらめかつい たらしい。体をはげしくふるわせ、声を出さずに泣きながらはなれていき、ようすを見守った。 りさって ばくはなにも言わす、ダリウスと両手の指先を合わせ、ダリウスのやわらかい指の先に、つめをぜん第 ひめい ぶ、いっきにつきたてた。ダリウスが悲鳴をあげ、すわったままのけぞった。血の出る指をくわえよう こし

7. 運命の息子

ぼう せいしんてき 望をみたしてくれるが、ひとりの人間として自分の意思を持つ者がほしかったのだ。とはいえ、精神的 こゞゝこきそわせることにした。負けたほうには、 にもろくてはこまる。そこでわか子をふたり作り、オカし。 しはいしゃ この世から消えてもらう。負け犬など、どうでもいい。勝ったほうが、この世の支配者となるのだ : : : 」 あいじさっ ミスター・タイニーか、 ばくに向かって左右のうでをのばした。ふざけたしぐさだが、愛清あふれる しぐさに見えなくもない 「さあ、ダレン、わたしをだきしめてくれ。いとしい、わが息子よ ! こ むすこ 160

8. 運命の息子

りそう 、 0 ゝ、、 しここちのいし 、理想の世界にひたるのだ。 」 ( 一クのチケットを手に人れた日から先のことは、考えな。 ぎようぎ むすこ ぼくは、ダレン・シャン。かわいい息子で、やさしい兄。世界一行儀のいい子とは言わないが、手のつ ー、だい ' 、」けられない悪ガキでもない。ママやパパの手伝いをして、ひいひい言いながら宿題をして、テレビを見 。一て、友だちと遊ぶ。あるときは、六歳か七歳。あるときは、十歳か十一歳。半バンパイア時代の自分に 挙かんぜんに背を向け、昔の自分しか見ない。見たくないものには、すべて目をつぶる。スティープは、 えいカ だいしんゅう ほくの大親友「 = いっしょにマンガを読んで、ホラー映画をみて、しようだんを言いあう。妹のアニーは、 でんせつかい むすこ ノンパイアなんて、伝説の怪 越 ( おさない子ども。いつまでも、子どものまま。息子のいる母親ではない。ヾ 一 ~ な ? お要みゼ」こ 物 3 狼男や、ゾンビや、ミイラとおなし。本気にするほうかおかしい しき つみ 子どものころのばくに、もどるのた。ずっと子どものままでいるのだ。罪の意識など、感したくない。 しさっき 。、いままでも正気をうしないかけたが、そのたびに現実に引きもどされてしまった。こんどこそ、おかし こんどこそ、もどりたくない 』〕ぐなってしまいたい。 かこ さあ、過去の世界へ、子どものころの世界へ、かんぜんに行ってしまうのだ。あのころのことは、な せいれいろみ おも 。糸力しところまで、どんどんはっきりしてくる。精霊の湖の 」物 ) ~ にもかもおばえている。思いだすたひこ、田、ゝ たましい 奉を一ことも、、その中にいる魂たちのことも、バンパイアのことも、バンパニースのことも、頭から消えてい しゅんかん くときどき、ふっとわれに返る瞬間があるか、むりやりわすれる。子どもの目で見て、子どもの頭で

9. 運命の息子

「ママ、ほんとうだってば ! 見ればわかるよ。ダレンおじさんは、どんな人間よりカがある。足も速 いんだ。おじさんは : : : 」 そんなダリウスを、 「おだまりー は′、り」ナ、 と、アニーがどなりつけた。あまりの迫力に、さすがのダリウスも口をつぐむ。アニーが、 ろりとにらみつけた。 「この家から、出ていって。うちの息子に、近づかないで。二度と、来ないで」 「でも : : : 」 ぜっき ばくは言いかけたが、アニーに絶叫された。 ダレンだとしても、あたしはみとめない ! 十八年前に、お 「うそよ ! あなた、ダレンじゃない , はか 墓にうめたんだから。ダレンは、死んだ。いまさら、生きかえってほしくない。あなたがダレンだろう 。 ) ゝ 0 ) がなんだろうか、どうでもしし しますぐ、あたしから : : : あたしたちから、はなれてちょうだい ! へ 家 立ちあがり、ドアを指さす。 章 「さあ、出ていって ! 第 ばくは、動かなかった。できることなら、出ていきたい。ダリウスのことがなければ、犬のようにし ばくをぎ はや

10. 運命の息子

「かまわねえよ。あんなガキ、好きでもなんでもねえ。ガリガリにやせた、こむすかしいガキじゃねえ か。血を見るのも飲むのもいやがるし。まあ、じきに、そうも言ってられなくなるがな , くつくっと笑うスティープに、ばくはするどく一一 = ロいかえした。 「さあ、どうだか」 「おれはよ、あいつに血を流しいれたんだ。あいつは、半バンパニーズなんだぜ」 スティープが胸をはる。 ばくは、にやりとして一一一口いかえした。 「いや。いまはちがう。ばくとおなじ半バンパイアだ」 えつ、とスティ 1 プがばくを見つめた。 「おまえ、血を流しいれたのか ? なかま 「ああ。いまのダリウスは、バンパイアの仲間だ。人間の血を、飲みほさなくていし えん むすこ ろ。息子とは思うなって。おまえとは、かんぜんに縁が切れたんた」 スティープが、けわしい顔をした。 「なんてことをしやがる。あいつは、おれのものだったのに」 ばくは、言ってやった。 むね さっき言っただ 108