そうぞう うと想像して、その人にあうのが、とてもたのしみになりました。 ゅ、つしよく ちゃ ちゃ 夕食のあと、ふたりでお茶をのみました。。 フドウジャムのはいったお茶でした。 「 : : : それで、と、ルルーはきりだしました。 「〃ギルバ 「うん。湖のそばの別荘にひとりですんでいらっしやるの。年は十七。お父さまが大 まち しちょう しようにん 商人で、この街の市長さんだったんだけどさ、去年、はやり病で死んじゃって。おな びようき こうねっ じ病気で、ギルバ ートさまも高熱がでて、なおったんだけど、目がおみえにならなく あさ べっそう なったの。ちょうどあすの朝に、ギルヾ 】トさまの別荘にパンを配達にいこうと思っ ていたから、そのときにでも、魔女さま、ばくといっしょに、、、 ( 力ない ? 」 「ええ、つれていって、と、ルルーはこたえながら、 「あの : : : そのかたは、目がおわるいのに、ひとりでくらしてらっしやるの ? 」 からだふじゅう 体が不自由な人でも、本人がそうしようと思うなら、ひとりでくらせるものだとい もうもくしようねん 」いしようにん うことを、ルル 1 はしっています。でも、十七歳の盲目の少年、おまけに、大商人の むすこ しようねん 息子だったという少年が、別荘でひとりぐらしをしているというのは、なんだか不自 ートさま。というのは、どういうかたなの ? この街のかたなのよね ? 」 べっそう ほんにん べっそう まじよ きよねん と ち はいたっ し
まじよ 「魔女さまの笑顔なら、ばくの目のなかにもう、焼きついていますから」 え しようねん くろひとみ キルバ ートは、レル 1 の伝のほかに、ヾ ノラケ少年の絵もかいていました。黒い瞳の しようねん ひょうじようみずつみ 少年は、笑顔ではなく、さみしそうな表情で湖のほとりにたたずんでいました。 「バラケさんがわらうところは、おばえるほどはみたことがなかったから : しようねんえ あさごうとう しようねん ルルーは少年の絵をみあげました。あの朝、強盗の手でころされてしまった少年の ち 絵を。城のわかい騎士がかけつけたときには、もう、 ハラケはろうかを血にそめて、 しようねん こときれていたそうです。ふしぎなことに少年のほおのかたほうはくやしそうにゆが ひょうじよう められ、もうかたほうはやすらいだような表情をうかべていたそうです。 しようねん その話をきいたとき、ルルーは、ヾ ートやじぶんをうらぎった少年で ノラケがギルバ あるということをわすれて、じぶんには、あの人のためにできることはなかったのだ ろうかと、なせだかつよく思ったのでした。そのあとも、思っていました。 しようねん ートはいいました。 ハラケ少年の絵をみながら、さみしそうにギルバ 「やつばり、彼とは友だちになりたかったと思います。 ばくたちふたりは、じつはとてもちかかったような気がするんです。ばくだって、 え しろ えがお れ えがお え え や 184
そうして、張り紙の日にちが『あと五日くらい』『あと三日くらい』と、じよじよ ノノーがキル にへってゆき、ついに、『きようかあしたには』にかわったころ くすり ゅうがた とおか ちゅうば - っ 1 トにあってから、ちょうど十日めの夕方、ルル】が厨房のすみで薬をしあげてい りようり・ しゅじん ると、 " ニジマス亭〃の主人が、料理の下ごしらえをしながら、しみじみといいました。 まじよ みぶん ートさまはわたしらとは身分がちがうとはわかってたん 「魔女さまもともとギルバ ですが : : : でも、城にあがるなんてことになったら、もうわたしらとはいままでどお しようじき りには話せなくなると思うと : : : 正直いって、すこしばかり、さみしくはありますね」 ちゅうば - っ おかみさんがエプロンを目にあてて、厨房をそっとでてゆきました。 やさい 台の上にのつかって、ざるで野菜をあらっていたジャンが、わらっていいました。 ートさまはもうこれで一生、しあわせでいられ 「なにいってんだよ、父さん。ギルバ しちょう まいにちえ るんだよ。いじわるな市長になやまされることもないし、きれいなお城で、毎日絵を べっそう かいてくらしていられるんじゃないばくね、これからは、あの別荘がほこりつばい こととかでおこらないんですむんだなあと思うと、一生ぶんほっとしたかんじだよ さばさばしたふうにいっていても、かなしそうにルルーにはみえたのでした。 しろ がみ いっか っしよう みつか っしよう しろ 102
であ いままでじぶんが生きてきた道すじをふりかえってみると、だれかやなにかと出会うこと ぶんきてん がきっかけになって、あたらしい分岐点 ( わかれ道 ) ができたこともあったように思いま す。 かんたんにいうと : : : たとえば、こんな人っているんじゃないかな ? かりに子さん す としておきましよう。子さんは、ちがうクラスにいたある女の子と、本が好きだという - っちゅう しゆみがいっしょだったので、友だちになった。よく話してみると、その子は宇宙にくわ ・つちゅう しい子で、その子と話しているうちに、じぶんも宇宙にきようみがでてきて、気がつくと せいざわくせい 0 子さんも、星座や惑星にくわしくなっていた : うんめい す ほしぞらだいす 星空が大好きになった子さんは、本だけが好きだったころと、運命がかわってきます み ほしぞら だって、それからは星空にきようみのあるほかの人たちと友だちになるかもしれないし、未 ・つちゅう がっこうしんがく ゅめ ほしぞらべんきよう 来への夢もかわってくるかもしれない。星空の勉強ができる学校に進学したいとか、宇宙 ・つちゅうひこ - っし せん 船をつくってみたいとか思うかもしれないし、宇宙飛行士になりたいと思うかもしれない しんろ であゆうじん そうして、進路がちがってくれば、出会う友人たちも、いよいよかわってくるし、とお い未来には、恋や結婚をする相手だってかわってくるかもしれません。 であ うんめい たったひとりの女の子との出会いが、運命をかえることだってあるのです せかい かんが げんじっせかい であ そう考えると、出会いって魔法みたいですね。現実世界は、ファンタジーの世界とち がって、つまんないみたいに思えちゃうけど、まだまだこんな魔法だってあるんですよ みらい けっこん みち みち 0 0 0 197
: ルルーのいじわる』 ルルーはなっかしいにおいの本のペ 1 ジをめくりました。こうしていると、小さな ひび ころに本をいっしょにみていた死んだお姉さんのことが思いだされます。あの日々は、 ほんの数年まえのことのように思えるのに、もうなん十年もむかしのことなのでした。 とし 魔女のルル】は、年をとるのがゆっくりなので、みた目は十一一歳ほどの女の子にみえ せかい ても、ほんとは百二十年も、この世界で生きているのでした。 よ 「おもしろいわねえ、ベルタ。小さいころ読んだときは、むずかしくってわからな じゅもん かった呪文が、いまみるととなえられそうな気がするのよ まほ - つべんきよう 『ルル 1 ったら、なまけものだし、魔法の勉強にもきようみがなくって、その本だっ てページをひらいたこともなかったのにね。どんなきまぐれでそんな古本、またひら く気になったの ? 』 べんきよう 「 : : : 勉強がすんだら、ぜったいに、 たらいであらうから」 りよう′に ルル】がよこ目でにらむと、ベルタは両手をこうさんというようにあげました。 ( ーました。 「わたしね、思ったのよ」と、ルル 1 は、ページをめくりながら、 すうねん し ねえ ふるほん
「ギルバ ートさまは目がみえないんでしょ ? やみあがりでふらふらしてるし、そん みずみ なんで湖に水をくみにいくなんて、足がすべって、おっこっちゃったらどうするんで す ? あのバラケってば、いまの市長といっしょで、なにかんがえてるんだか : 「そりやすまないね。でもおれはもともとこうですからね」 かわら くろ しようねん そういってあらわれたのは、レレ、、ー : ノ丿 1 カ月原てあったあの黒い目の少年でした。 ゆかにねそべっていた犬のあげたうなり声と、その男をみたジャンのまなざしで、 ルルーは、彼こそがその、″やとい人のバラケ。なのだとしりました。 しようねん とまどっていると、少年バラケもルルーに目をとめて、おやというような顔をしま した。そしてもういちど、ルルーをみて、うすくわらうと、「まさか」というように かお 首をよこにふりました。それきり、ふいと顔をそむけ、もうルルーをふりかえりませ んでした。 としうえしようねん かお ジャンはじぶんよりもずっと年上の少年をみあげて、顔をまっ赤にしておこりました。 「おまえのことはまえからあやしいと思ってたんだついにけさ、しつばをつかんだ にんげん さいてい ぞ。バラケ、じぶんのしごとをきちんとしないやつは、人間として最低なんだぞっ」 しちょう かお
にんげん にんげん にいったって、人間なんてしよせん人間で、けしきとはつりあわなかったと思うよ』 ルル 1 は、「そんなことないもん。と、こたえました。 さいこうゆうだい あんたってぬいぐるみは、こんなにすてきで最高に雄大なけしきをみて、 「だいたい そんなに、、、 ( じわるなこといえるなんて、わたしはもうしんじられないわ、 たとえば、と、ルルーはベルタのまねをして、ゆびをふりました。 やどや やど 「宿屋のジャンは、いい子でしよう ? お宿の人たちだっていい人よ やど あくにん 『ゅうべ宿にきたごろっきみたいな男は、悪人みたいだったよ』 かお ルルーはぐっとつまって、また、顔をあげました。 まち たびびと 「あれは旅人みたいだったじゃない ? この街の人じゃないもの。ええっとそうだ、 てんし きょ一つこれからあ一つギルバ 1 トさまは、天使みたいな人だっていうじゃない ? 」 しちょう 『でもそのおじさんの市長さんは、いじわるだっていうじゃない ? 』 ルルーは、ううっとうなったまま、にやにやわらうべルタをみつめました。 うたごえ ーいかけたとき、だれかの歌声がきこえました。 「でも、とにかくわたしは」と、 しようねん まだ少年のような、わかい男の人の声です 0
サラはまぶしいものでもみたというように、ルルーのことをみつめていました。 ルルーはせきばらいしました。 「ところで、と、ききだそうとしました。そういうあなたも魔女なんじゃないの、と にんげん ずうっと、思っていました。この子はふつうの人間の女の子じゃない、と。それは であったときからそうだったかもしれません。でも、ルルーはいままでながいこと、 じぶん以外の生きている魔女とであったことがなかったから、そんなことがあるかし まじよ ら、と、じぶんでうちけしていたのです。この子が魔女だったらいいなあと思うほど そうぞう に、「ちがう」といわれたときのつらさを想像するとおそろしくて ( やつばり、サラは魔女なのじゃないかしら ? ) さっきサラは、わけあって親とはなればなれになったといいました。もしサラが魔 女だとすればその理由もわかるような気がします。サラはひょっとしたらルルーのよ りようしんまじよが うに、両親を魔女狩りでころされたのではないのでしようか ? ひとりきりとりのこ まじよ ほうろうたみ されたサラは放浪の民とであい、やさしい放浪の民は、魔女の子をほうっておけずに まじよ かお そだてたのではないでしようか ? ルルーと顔がそっくりなのは、おなじ魔女どうし、 じよ しカ ( ほうろうたみ りゅう まじよ おや まじよ 0 でも 0 0
みずつみ くのことを思っていてくれるし : : : 大好きな湖のそばで、くらしていることができる みずみ 空や森や湖や、たくさんのものたちにかこまれてくらせることを、目がみえていた ころのばくは、あたりまえのように思っていたような気がします。でもいまのばくは、 かんしゃ ひとっ呼吸をするごとに、、 ( ろんなものに感謝したくなるのです」 しようねん レレーは、、キルバ ートという少年をしみじみとみつめました。 ( こんな人も、いるのねーー ) みずみ じぶんがギルバ 1 トなら、とてもこんなふうに湖みたいに澄んだ心ではいられない やまい うんめい だろうと、ルルーは思いました。病で目がみえなくなったりすれば、運命をのろって、 わあわあ泣いて、まわりの人たちにあたりちらしたでしようし、そのあと、おじさん さいのう につめたくあっかわれたら、うらんだでしよう。ルルーには絵をかく才能はありませ せかい だいす んが、それでもまわりの世界がみえなくなったら、大好きな世界からじぶんがみすて 0 られてしまったようにかんじて、さみしさとくやしさでたちなおれなくなるでしよう しようねん せかい それが、このギルバ ートという少年は、かえって世界のうつくしさに気づき、よりふ あい え かく愛しているのです。じぶんはもうにどと絵をかけなくなってしまったと思ってい こきゅう だいす す せかい え 0
ふいにジャンが、わっと泣きだしました。 それがとっぜんだったので、ルル】はびつくりしましたが、すぐに、ああそうかと 思いあたって、ジャンの小さなかたをだき、なでてあげました。 へいわ いくらあたまがよくて気がきいていても、ジャンはまだこどもで、それもこの平和 じけん まち なうつくしい街で、しあわせにくらしていたこどもなのです。あんな事件にあえば、 しままでジャンはじぶんがしつか おどろききすっくのはあたりまえでした。なのに、、 りしなければと思っていたのでしよう。むりしてがんばっていたのでしよう ルルーは、あせとお日さまのにおいがする体を、しつかりだきしめてあげました。 「 : : : こわい思いをさせちゃって、ごめんね」 ジャンはルル】のむねに発をふせたまま、首をよこにふりました。泣きながら、 「 : : : ばくが、もっとつよかったらよかったんだ。そしたら犬は死ななかったし : まじよ まじよ 魔女さまだって、こわかったでしょ ? ばく、魔女さまが死んだら、ばくのせいだと まじよ ートさまともあわなかっ 思ったの。ばくと湖でであわなかったら、魔女さまはギルバ ートさまの目をなおしてほしいなんていったからだって : : : 」 : ばくがキルバ か からだ 121