レポートⅡ ざまな建物がある 祉 起こり、地元の農家が商品を直接販売 福 アグリの里をオープンした理由 その規模は、想像を大きく超える する道の駅などの施設が次々とオ 1 プ 栽培ハウスだけでも 6 棟ある。 8 連棟誠友会がこの巨大な施設をオープン ンし、成功している店も多かった。各 とまべち で計 1248 坪のイチゴのハウスを筆した理由について、理事長の苫米地地の成功事例を見た苫米地さんは、お よーレゆ一 頭に、熱帯果樹園が 536 坪、水耕プ義之さん ( 浦 ) は次のように語る いらせ町に立ち上げる産地直売所の年 ラントが 164 坪、となっている。百「私たちの法人は、特別養護老人間来場者数の目標を川万人とし、地域 きざきのそう 果良彩は客席数席。駐車場は普通車ホーム木崎野荘を中心にさまざまなの農家に積極的な参加を呼びかけた。 さんたん 180 台、観光バス 3 台を収容できる高齢者福祉事業を展開しています。私 「結果は、惨憺たるものでした ( 笑 ) 。 広さだ。 は福祉系大学の在学中から障生暑の働農家の方に、ほとんど参加していただ 年間の来場者数は、 2015 ( 平成 く場づくりに興味かあり、チャンスか けなかったのです。こんな田舎の町に 年度の実績が約菊万人。年間を通あればいっかは障害者就労支援事業を年間川万人が来るなんて夢のような話 じて、ほとんど客足が途絶えることが立ち上げたい、と考えていました。構だと。ですから産地直売所のスタ 1 ト ないのも大きな特徴だ。青森県の施設 想かまとまったのは、 2004 ( 平成は、出品者 6 人という本当に小さな規 の場合、春から夏にかけてのシ 1 ズン ) 年頃のことです。特別養護老人模だったのですよ」 に来場者が集中するところがほとんどホ 1 ムの温泉熱を活用して、亜熱帯果苫米地さんにも、確固たる自信か だが、アグリの里だけは別格である。樹のハウス栽培かできないかと思い立あったわけではない。ただし、障害者 平均して毎月 3 万人の集客数を保ってちました。そこに併設するかたちで地の就労支援事業を行ううえで、ひとっ いる。この数字はオ 1 プンからずっと域の農家の方と提携した産地直売所をの信念があった。それは自主商品をつ 上昇し続け、今や県内でも最大級の体オープンすれば、多くのお客様を集めくる以上、人がたくさん集まる販売拠 験型施設として人気の観光スポットと られるのではないかと考えたのです。点が必要だということだ。当時、青森 なった。 これがアグリの里の始まりですね」 県には亜熱帯果樹をハウス栽培する観 当時は日本中で産地直売所プ 1 ムか光農園というのは非常に珍しかった。
【〈農福連携の現場を訪ねて②〉 観光農園を通じた地域貢献と 障害者の働く場づくり / 社会福祉法人誠友会アグリの里おいらせ 3 ( 取材】編集部 ) 1 年中イチゴを摘むことができるイチゴのハウス。車いすでも楽しめるよう に、イチゴ棚の高さや通路の幅を調整してある 青森県で有名な観光農園 社会福祉法人誠友会では、総合観光 施設・観光農園「アグリの里おいらせ」 ( 以下、アグリの里 ) を運営している ここは「見る、収穫する、食べる、ふ れあう」をテ 1 マとして、家族 ( 親 子 ) や高齢者、障害者、子どもなど、 あらゆる人たちが楽しめるようにつく られた体験型施設である 場所は、青森県東南部に位置するお いらせ町だ。田園風景のなかに、広大 な敷地か広かっている。ここには、熱 、 0 、 0 、 ノノイヤ、ドラゴ 帯果樹園 ( バナナ ンフルーツ ) 、水耕プラント ( トマト、 レタス、 ープ ) 、イチゴのハウス ( 摘み取り体験の観光農園 ) 、農園レス ひやっかりよ、つさい トラン百果良彩、産地直売所、お いらせ広域物産館、足湯、体験型多目 的工房 ( そばや高齢者向けメニューを 提供するレストラン、体験研修会場 ) 、 小動物ふれあいコーナー、などのさま 33 月刊福祉 NO v emb e r 2 016
とに、佐賀西部コロニーの実践は参加年から引年も続く「全日本カプト虫相ロニ 1 が新しい活動や商品を発表する 者たちの共感を呼び、第 3 回からは後撲大会」だ。同様の大会は各地でも開 たびに、必す何らかのかたちでメディ 月 援団体として『現代農業』 ( 一般社団催されているが、その歴史や規模におアに取りあげられてきた。それは施設 法人農山漁村文化協会 ) が名を連ねるい 開設時からずっと変わらす、これまで てトップクラスであり、毎年全国か までになった。 らたくさんの子どもたちが施設に集ま数百回にも及んでいる 「会長の村井が現代農業に何回も論る夏の恒例行事となっている。優勝者佐賀西部コロニ 1 の名が広まれば広 文を発表していたこともあり、海水農には文部科学大臣賞が贈られ、毎年多まるほど、海水農法で収穫された農作 法の魅力が全国の意欲的な農家の人た くのメディアが大会の様子を伝えてい物は売りやすくなる。農福連携にはさ ちに浸透してきたのだと思います。セる。 2016 ( 平成 ) 年は佐まざまなスタイルがあるだろうか、こ ミナーはこれまでに 8 回開催され、毎賀放送で報道されたニュ 1 スか、全国の法人の特徴は海水農法という独自の 回約浦人の参加があります。有明海かでも放送された。以前には、アメリカアイデアを中心に据えていることに尽 ら海水をくみあげるところから始まっ のテレビの取材陣がやって来た きる。この農法によって付加価値があ て、希釈して農地に散水するまでの実こともある る商品を生み出せば、販路は必す広げ 地視察、専門家による講演、当法人の 全国海水 ( 塩 ) 農業セミナ 1 や、全ることができると中尾さんたちは考え 実践報告などが中心です。最近では、 日本カプト虫相撲大会は、佐賀西部コている過疎の町という不利な状況の 実際に海水農法に取り組まれた農家かロニ 1 にとって法人が費用負担をするなかでも「金を使わす、知恵を出し、 らの報告も増え、情報交換の時間も充社会貢献事業だ。それにもかかわらず、他人が創らないものを創り、他人が売 実してきました」と、中尾さんはうれなぜこんなにも精力を注ぎ、長期にわらないものを売る」 ( 私たちの信条 ) たって開催し続けることかできるのだ という考えにのっとって、これからも しそ、つにる ( 2016 年の開催はⅡ 月 日 ) 。 ろうかそれは、これらのイベントが佐賀西部コロニ 1 は地域の高齢者とと 佐賀西部コロニ 1 のもうひとつの大法人の広報戦略としてしつかり位置づもに、その生産物を全国へと広めてい くことたろ、つ 」 . な , イベントか、 1985 ( 昭和 0 6 ) けられているからだろう。佐賀西部コ
特 農福連携ー大地に生きる、自然と生きる 穫した作物はすべて買い取りますのも仕事かでき、元気になる。まさに町培ってきた海水農法のノウハウを全国 の農業者たちに公開する「全国海水 で、農家にとってこんなに安心できるのみんなが元気になれる事業です」 ( 塩 ) 農業セミナ 1 」を 2008 ( 平 ことはありません。耕作放棄地がなく 全国海水 ( 塩 ) 農業セミナーや 成幻 ) 年から開催している。もともと なり、過疎の町の高齢者が元気にな 全日本カプト虫相撲大会を開催 は特定非営利活動法人日本セルプセン る。そして海水農法により高い品質の ターの農産部会の勉強会とあわせて開 作物を販売することで、利用者たちに佐賀西部コロニーでは、これまでに 催されており、全 の国で農産事業を展 開する福祉施設の 真 仲間に付加価値の のある事業展開のヒ ントを提供すると るいう勉強会だった。 見しかしふたを開け プてみると、福祉関 一係者よりもむしろ カ新しい農法にチャ 「自レンジしたいとい う積極的な農家の 人たちが全国から カ続々と集まってき 本 た。回を重ねるご 社会福祉法人佐賀西部コロニ 住所〒 849 ー 1 61 5 佐賀県藤津郡太良町大字大浦乙 1840 ー 2 FAX 0954 ー 68 ー 3212 電話 0954 ー 68 ー 3211 ホームページ http://www.hagakure.ne.jp/seibu-co/ 31 月刊福祉 November 2016
レポート I 尾さんは次のよ、つに語る。 価格は、農協に卸す金額の約 1 ・ 5 なる重いホースを手で支えたり、ホ 1 「太良町は佐賀県で最も高齢化のす倍 ) 。参加条件は、歳以上の高齢者スを畑に移動するといったカ仕事を得 すんだ地域であり、少子化と人口減少であり、自分の農地または共有利用の意とする人たちばかりである。彼らが が止まらない消滅可能性都市のひとっ農地をもつ人 ( 借地農地については貸海水散布作業で大活躍するからこそ、 に認定されています。しかし言い換え借が明確な場合 ) 。日常の肥培管理は、地域元気営農事業は成立する。障害者 ると、長年農作業に関わってきたべテ収穫まで農家の責任で担当してもら支援施設がもっている潜在的な労働力 ラン農家が多いといえるのです。私た う。佐賀西部コロニーの役割は海水散と地域の高齢者の農家をマッチングさ ちが園芸事業を行うにあたって、皆さ布と、買い取った作物の販売だ せた、理想的なプログラムである。 んの農業ノウハウを活かさない手はあ 「海水農法を行、つにあたって、いち 結果として、 2015 ( 平成苞年 りません。太良岳山系や有明海という ばん大変なのが海水の散布作業です。度の農家の人たちの参加人数は人 素晴らしい自然資源だけではなく、太有明海から海水をくみあげて、それを ( 世帯 ) であった。平均年齢は約間 良町には人材というもっと素晴らしい 幻 5 倍に希釈し、例えばみかんの木歳。生産額の合計は 3960 万円と 資源があるのです。ないものづくしの 1 本当たりにすると約リットルの海なっている。 8 年前に肥人 ( 8 戸 ) で なかで、考え方を 180 度変えると見水を散布しなければいけません。 10 スタ 1 トしたこの事業が、ここまでの え方も変わってくるという逆転の発想 0 本の樹木があるとして、約 2000 実績を上げるに至ったのだ。理事長の たけしたたけゆき ですね」 リットル。これを 455 回行うこと竹下武幸さん ( ) も、地域元気営 地域元気営農事業の具体的なシステは、ただでさえ人手不足の農家にとっ農事業が地域の高齢者の農家に与えた ムは、次の通りである。佐賀西部コロて実現不可能な重労働なのです」と、 インパクトの大きさを証一言する ニ 1 が海水農法を使って作物をつくる中尾さん 「せつかく長い間続けてきた農業も、 にあたり、地域の農家に生産を委託 しかし佐賀西部コロニ 1 には、体力人手不足のためにそろそろ限界にきた し、そこで収穫された生産物はすべてのある利用者たちが多く在籍している と悩んでいる人たちは多いと思いま 買い取ることを前提とする ( 買い取り海水を散布する間、何十メ 1 トルも連す。しかし当法人のシステムでは、収 November 2016 月刊福祉 30
レポート I ると、発売開始直後から多くの反響がため、サツマイモの開花実験をしなが 海水みかんが大ヒット 寄せられ、あっという間に売り切れてら交配し、種を採取して「織姫」とい 1 年あまりの試行錯誤の末、大潮のしまったのだという。中尾さんは、当時う新品種を生み出した。海水を倍に 海水にこだわり、佐賀西部コロニーののことを次のように振り返る 希釈し、収穫時までに 6 回ほど散布す みかん農園の環境に適した海水濃度、 「福岡放送のニュースとしてると、海水ミネラルによってかってない / 散布回数を見いだした結果、驚くべき取りあげてもら 0 た時は、特にす ) 」ほどの甘みになる。特に焼きィモにす みかんが誕生した。糖度が川 5 Ⅱ度にかったですね。電話が鳴りやます、施るとその特徴は顕著となり、何と糖度 なっただけでなく、ナトリウム含有量設中か大パニックになったのです。う度を達成した。焼きィモ屋さんも驚 か 100 グラム当たりミリグラムとれしい悲鳴とは、まさにこのことでく、奇跡のサツマイモである。このほか つきじ いう圧倒的に高い数値を示したのだ。 にも、ジャガイモ、ショウガ、ウリなど、 しよう ( 笑 ) 。築地青果市場 ( 東京都 ) これはココナツツの約 2 倍、レモンので海水みかんの講演をしたこともあ海水農法を使うことによって品質がワ 約 6 倍とい、つ量である り、九州・四国だけでなく全国に品質ンランクアップし、高値で取り引きさ 一般的なみかんより糖度にして 15 のよさか知られていきました。現在でれる作物を次々と生み出している 2 度高いうえ、塩分が含まれているた も海水みかんはク食べる宝石とし 高齢者の農家とタイアップした めにロの中で甘みが持続する。そこでて、高級贈答品用に出荷しています 地域元気営農事業 「ナトリウム含有量日本一」をうたい おかげさまで、毎年購入してくださる 「海水みかん・ダイヤ」と名づけた高お客様からの注文だけでほとんど売り海水みかんの成功によって、佐賀西 級みかんを本格的に売り出した。 切れてしまうのですよ」 部コロニーが次に打ち出した施策か、 大玉幻個入り 3000 円 ( 税別 ) と佐賀西部コロニ 1 ではみかんによって地域の高齢者の農家とのタイアップで いう強気の価格設定で売り出したにも 証明された海水農法を、さらにほかのある。これは「地域元気営農事業」と かかわらず、そのおいしさが新聞やテレ作物の栽培へと広げているまずはサして 2009 ( 平成幻 ) 年から始まっ ビなどのメディアを通じて広まった。すツマイモ。海水に強い品種に改良するている。この事業の目的について、中 月刊福祉 28 Novemb e r 2 016
特集 農福連携ー大地に生きる、自然と生きる ゾオ ~ す 有明海を見渡せる丘に広がっている、佐賀西部コロ二一海水みかんの農園 0 を第一 完熟すると、宝石のようなみかんが完成。 1 CFI 4 度という糖度以上に、ロの中で持続する甘みが特徴 27 月刊福祉 November 2016
レポート I やっしろ 祉 農園を整備して薬草園にする考えだって肥料として使っていた。農家の女性本県八代市などで栽培されるク塩トマ 福 たが、手入れの行き届いたみかんの木たちが海水を含んだ重い潟土を干潟か トのように、塩分濃度が高い土壌で がたあげば をすべて伐採するのはあまりにももっ ら潟揚場まで運ぶ様子を歌う「潟い もよく成長しておいしい作物が収穫で たいないかといって普通にみかんをな節」という民謡が残っているほどできる事例もあります。当時はます、ト つくっても、価格競争の波に飲み込まある マトを実験材料として、①新月期の ' / れて、キノ「の栽培と同じ結果になる 残念ながら、現代では農業において海水、②満月期の海水、③真水のグ だけである。どうせやるなら、ほかに海水や潟土を使う習慣はまったくなく ル 1 プに分け、希釈した海水を定期的 はないこだわりのみかんをつくれない なっている。植物への塩害リスクと安に散布しながら成長の様子を観察する か、と村井さんは考えたという 価で効率的な化学肥料の普及によっという地道な研究を重ねていきまし て、海水を活用するという伝統的な栽た。海水をくみあげる時期を変えたの 試行錯誤で誕生した海水農法 培法は過去のものとされてしまったた は、満潮時と干潮時では海水に含まれ そこで注目したのが、みかん畑の下めだ。しかし、地球上の生物はすべてるミネラル成分の量が変わってくるた ありあけ に広がる有明海だった。日本古来よ海から生まれている。遺伝子レベルでめです」と、中尾さん トマトを使った実験によって一定の その記憶を残しているはずで、塩分か り、みかんの木に海水をかける、とい う栽培法は存在していたようで、江戸すべて害とはいえないのではないか成果が得られたこともあり、いよいよ ひやくしよ、つ 時代に書かれた『百姓伝記』にも 村井さんはそのように考え、海水を活本格的に海水農法によるみかんの栽培 おき さっきどきぶんびよう 「木の根に不浄を置、五月時分苗の用した伝統的な農法を自ら試してみるに着手することになる。もしも失敗し かれたるを置、寒中に潮をかけたるが ことにした。それが「海水農法」のスてみかんの木がすべて枯れてしまうこ とがあっても、「もともと薬草園にす よし」と記述されている。また佐賀西タ 1 トだった。 「もちろん農業の視点では、植物にるつもりだったのだから、かえって手 部コロニ 1 がある太良地域では、化学 間か省けていい」と、当時は気楽に考 肥料が普及していない昭和初期まで、海水をかけると塩害で枯れてしま、つと がたっち えていたという いうのか常識だと思います。しかし熊 海水を含む有明海の潟土を乾燥させ
レポート I 〈農福連携の現場を訪ねて①〉 海水を使った農業を始めて 2 年 ーこれからも地域の農家とともに / 社会福祉法人佐賀西部コロ一一ー 内給食用の食材を栽培する程度にすぎ なかった。この流れが変化したのは、 バブル崩壊や安価な海外製品の流入に よって、木工事業が不調となってから なかおとみつぐ のことだ、と常務理事の中尾富嗣さ ん石 ) は説明する 「大小屋やスノコ、夏休み用の木工 キットなど、木工製品はつくればっく るほど売れた時代もありましたが、時 代の流れとともに次第に売り上げか落 ばいち はノコクズにし、キノコ栽培の培地とち込んでいきました。次に期待された リサイクル循環型事業をめざした して活用する。さらにキノコ栽培で使キノコの栽培も、市況価格の低迷によっ 佐賀西部コロニー い終わった培地は、カプト虫の幼虫のて安定した売り上げが見込めなくなり、 カプト虫の養殖事業も年間を通じて収 社会福祉法人佐賀西部コロニ 1 ( 佐餌とし、最終的にこの土は肥料となり、 賀県 ) は、 1984 ( 昭和年に身園芸 ( 農業 ) に利用される。このよ、つ入が得られない欠点をもっています。 体障害者授産施設として誕生した。当に、 ①木工製品の製作、②キノコのそこで最後のとりでとして園芸に力を 初の事業理念は、リサイクル循環型事栽培、③カプト虫の養殖、④園芸、入れようということになったのです」 むらいこ、つど、つ きっかけは、会長の村井公道さん 業をめざすというものであった。施設という 4 つの事業をすべて関連づけ、 たらだけ の周りは、多良岳山系の大自然に囲ま理想的な法人内リサイクルシステムを ( 爲 ) の友人からの相談であった。運 営していたみかん農園を、後継者不足 れている。ここで育った木材を丸太 ) 」当初から完成させていたのである 祉 と地元の森林組合から購入し、木工製もっとも当初のメイン事業は木工製から佐賀西部コロニーで購入しないか 福 品の製作をする。製材時にできた端材品の製作であり、園芸はあくまで法人と打診されたのだ。当初はこのみかん月 ( 取材【編集部 )
を確保する必要がある。また、屋外で効活用しながら、地域に適したかたち《参考文献》 作業する場合は天候に左右されやすで取り組むことが重要である。今回取 いこ、つした点について、こころんでりあげたこころんのような先駆的な事 は、少量多品目栽培や施設栽培を導入例では、試行錯誤しながら、そうした して周年化したり、加工や直売等の六体制を整えてきたといえよ、つ 次産業化を積極的にすすめることで、 近年では、国や先進的な自治体でも 0 多様な仕事を生み出している 農福連携を積極的に支援する動きが出 さらに、経営面では、農産物を生産始めている。厚生労働省と農林水産省 するだけでなく、いかに販売するかも が連携し、農福連携を推進するための 重要となる。聞き取り調査によれば、 ハンフレットを作成したり、各地で 社会福祉法人等が一般の卸売市場向けセミナ 1 も開催されており、農福連携 に農産物を出荷する場合、ロット ( 出に関する情報にもアクセスしやすくな 荷量 ) の小ささや規格、プランドカのりつつある 弱さなどから、望むよ、つな価格では取また、先進的な自治体では、福祉部 り引きされないとい、つ話か聞かれた。 局と農業部局が連携し、地域農業の特 そのため、こころんのように農産物直徴に応じたかたちで農福連携の取り組 売所で自ら販売したり、契約栽培に、ンみに対する支援を行っている。こうし 0 フトするケースか多くみられる た政策的な支援も十分に活用しなか ら、農業関係者、福祉関係者双方に おわりに とってメリットのある連携が広かるこ 農業と福祉の連携をすすめるにあとを期待したい。 たっては、両分野の知見や支援策を有 ※ 4 ※ 5 0 ※ 1 本稿は、参考文献 * 1 の一部を大幅に加筆修正したも のである ※ 2 特定非営利活動法人日本セルプセンター『農林水産省 「平成年都市農村共生・対流総合対策交付金」事業 ー農と福祉の連携についての調査研究報告』 2014 年。 2013 年度に同センターおよび全国社会就労セ ンター協議会の会員 1696 の事業所を対象に行った 調査。有効回答数 832 。 ※ 3 認定農業者制度は、農業者が農業経営基盤強化促進基 本構想に示された農業経営の目標に向けて、自らの創 意工夫に基づき、経営の改善をすすめようとする計画 を市町村か認定し、これらの認定を受けた農業者に対 して重点的に支援措置を講じようとするもの。社会福 祉法人や特定非営利活動法人の法人格で認定を受ける ことも可能である ※ 4 六次産業化・地産地消法によると、六次産業化とは、 「一次産業としての農林漁業と、ニ次産業としての製 造業、三次産業としての小売業等の事業との総合的か っ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付 加価値を生み出す取組」と定義されている。 ※ 5 厚生労働省・農林水産省「福祉分野に農作業をー支援 制度などのご案内」 ( 第 4 版 ) 。各種支援制度や事業紹 介、地域ことの相談窓口等も掲載されている http://www.ma →→ . go.jp/j/nousin/kou 「 yu/pdf/ nou → uku. pdf ( 2016 年 9 月 5 日閲覧 ) 小柴有理江ほか「農業と福祉の連携の形成過程に関す る研究ー農業分野における障害者就労を事例として」 農林水産政策研究所『農林水産政策研究』第号、 15 頁、 2016 年 * 2 濱田健司「原発問題に向き合い、就農および六次産業 化に取り組む福島県の障がい者施設ー社会福祉法人 こころんにおける取組み」 -o< 共済総合研究所共済 総研レポート 126 、 45 頁、 2013 年 4 月 月刊福祉 24 November 2016