農福連携ー大地に生きる、自然と生きる そのため、いざオープンしてみると、 も、今度は競って参加するようになっ光農園と産地直売所のふたつでスタ 1 トしたアグリの里は、おいらせ広域物 苫米地さんですら仰天するほどの来場た。そこで 2005 ( 平成片 ) 年には 地域から会員を募り、約 120 人で有産館、足湯などを併設した総合観光施 者数を記録したのである 設へとさらに規模を拡大していった。 人が集まると、当然ながら産地直売限会社コーポレ 1 ションを設立。 そして、 2009 ( 平成幻 ) 年に 所の売り上げも上がっていく最初は産地直売所の運営を会員たち自らが 相手にしてくれなかった農家の人たち担っていくかたちにした。その後、観は、百果良彩、イチゴのハウスを増設。 これで現在の姿がほば整った。 同時に、障害者就労支援施設 「工房あぐりの里」を開設。こ れまで施設の各所で働いていた 障害者たちの職場 ( それまでは 特定非営利活動法人による小規 冬模作業所であった ) を、本格的 な就労支援の場として誠友会が R 運営する障害者就労継続支援 < 型・型事業所にしたのである お客様の増加とともに 障害者の職場も増えていく 工房あぐりの里には、現在浦 人の障害のある人たちが働いて いる。主な仕事は、熱帯果樹 Novemb e r 2 016
祉 アグリの里が現在もっとも力を入れ私たちもこれまでに各種の商品を開発ば、農家の人たちの所得アップにもっ 福 ているのは、地元の新しい名産品「もし、イベントなどで積極的に普及活動 なかっていくもちろん商品を生産販 ち小麦」の普及活動だという。もち小 を行ってきました。その結果、ひとロ売するアグリの里の売り上げもアップ するため、そこで働く障害者たちのエ 麦とは、東北農業研究センタ 1 が創出サイズの餅に加工したク姫っこもち〃 し、青森県立保健大学が保健・医療・が、県南 5 町村の学校給食に採用さ賃を向上させることもできる 福祉に役立っ食材として研究しているれ、約 4 万食を提供するなどの成果が 「もち小麦の普及活動は、アグリの 小麦のことである。小麦でありながありました。食材イベントなどに出店里をさらに発展させるためにも非常に ら、まるでもち米のような食感であするといつも大きな反響をいただき、重要です。というのも、高齢者も楽し り、しかもかみやすく消化されやすい全国の食品加工会社からも受注していめる食や体験メニュ 1 の充実こそが、 という特徴をもっている。毎年、餅をます。これからも多くの需要が見込ま私たちの次なる課題。もち小麦を使っ 喉に詰まらせる高齢者の事故が絶えなれるのですが、課題はもち小麦の作付 たおいしいメニュ 1 をレストランで提 いが、もち小麦が普及すればその数をけ量ですね。私たちの施設の畑で収穫供したり、そのつくり方を教えたりす 大幅に減らすことか可能だ。また食後できる量などではとても足りるはずもるイベントは、新たな集客の柱になる の血糖値の上昇が緩やかになることも なく、地域の農家の人たちに作付けをと考えています。これからも積極的に 証明されるなど、生活習慣病に役立つお願いしている状況です」 地域づくりに関わり、地域活生化のお 機能性食品としても注目されている もち小麦をこれから全国に向けて発手伝いができるといいですね」 ( 苫米 おいらせ町ではこのス 1 1 小麦の普信していくためには、プランド化や商地さん ) 及を図るために、おいらせもち小麦推品開発だけでなく、農家の人たちに作農福連携によって地域と結びつき、 進委員会を発足。苫米地さんは、その付けをしてもらい、生産量を増やして六次産業化を積極的に推進すること 会長に選出されている いくという地道な活動が不可欠であで、障害者の就労の場を拡大すること 「もち小麦の食材としての素晴らしる、と苫米地さんは力説する。作付け かできる。アグリの里の実践は、それ さは、もはや疑いようかありません の拡大かそのまま消費拡大に結びつけを見事に証明している
農福連携ー大地に生きる、自然と生きる 連日満席となる農園レストラン百果良彩。水曜日の特別メ二ューを目当てに訪れる常連客も多い 百果良彩の厨房で、調理補助スタッフとして働く利用者たち。シェフの補佐役として、なくてはならない存在だ 37 月刊福祉 November 2016
特集 農福連携ー大地に生きる、自然と生きる ゾオ ~ す 有明海を見渡せる丘に広がっている、佐賀西部コロ二一海水みかんの農園 0 を第一 完熟すると、宝石のようなみかんが完成。 1 CFI 4 度という糖度以上に、ロの中で持続する甘みが特徴 27 月刊福祉 November 2016
「私は今、 娘さんのご両親に お願いがあります」 「彼女は週末 深夜になると、 家を飛び出して 朝まで帰らない と学校から 聞きましたが、 そうですか ? 」 「それなら 今度の週末、 又彼女が家を出たら、 ご両親で探してください」 、いわ / 「見つかるかどうかは 「でも、一晩中探してあげてください」 「もし、見つかったら、 一緒に帰ろうと 「うん」とは 言わないでしようが、 「気をつけて帰っておいで」 と言い残してください。 月刊福祉 96 November 2016
ワ 1 カ 1 としての立ち位置を考ることに感動しました。 えるのに役立っています。 楽しみをエネルギーに 学びを確かなものに 4 年次は、各自の問題意識 学生は学内での学びを確かや関心をもとに卒業研究を行い なものにするため、学外での体ます。就職活動、国家試験の勉 験学習も行っています。具体的強など複数の課題を抱えなが には、若年性認知症の人とそのら、卒業論文の提出締め切り日 家族の集まりや認知症カフェへである肥月中旬ギリギリまで、 の参加です。当事者から直接話ゼミの仲間で励まし合いながら を聞くことで、当事者の思いや執筆作業に取り組みます。 考えをよりリアルに知ることか そんな大変な卒業研究を乗 でき、文献抄読により得た知識り切るために、 4 年次の 5 月に おおみ かさらに自分のものへと消化さはほかのゼミと合同で、大三 れていきます。また、学生は当島 ( 愛媛県 ) にディキャンプ 事者と交流することで、認知症へ行きます。いつもと違うお互 に対する一面的な理解 ( どちら いの姿が見られるのも楽しみの かとい、つとマイナスのイメ 1 ひとつです。 ジ ) や偏見があることに、改め 《参考文献 て気づかされました。そして、 * 1 「京都式認知症ケアを考えるつどい」 実行委員会編著「認知症を生きる人た 誌知症の人が自分の病気に対す ちから見た地域包括ケア』クリエイツ かもがわ、 2012 年 る不安を抱えながらも、周囲の * 2 「特集認知症新時代」『現代思想』 2 家族やサポータ 1 に対し、一生 015 年 3 月号、 6 ・ 6 、青土社、 2015 生・ 懸命気遣いをしてくださってい 4 金子努先生 ( 左 ) N 0 v emb e r 2 016 91 月刊福祉
みあげていく ネタを思いついても、それをしゃべって を自分たちで決めていくのです。例えば しばたさおり いいのか自信がないのです。それを少し 支援員 ( 保育士 ) の柴田沙織さん ( ) 調理だったら、ホットケーキをつくって いしかわよ、つ、」 と石川葉子さん ( ) は、結家の具体的なみたいとか好きなものをつくるから楽でも見つけ出し、みんなが笑えるように 活動内容について次のよ、つに説明する しいし、会話も弾みます。コミュニケー 仕向けるのが私たち支援員の腕の見せど 「すべてのプログラムはクミ 1 ティン ション能力の向上にも力を入れています。ころです。こうしたク雑談カクの育成は、 グ↓実践↓振り返りッという基本構成で自分から話すことが極端に少ない子ども子どもたちが社会に出て暮らしていくた たちですけど、実はとてもおもしろい会めにとても重要だと考えています」 組み立てられています。毎回取り組む前 結家の活動は、すべてが本物志向な にみんなで話し合い、何がやりたいのか話センスかある子どももいます。たとえ のも特徴だ。調理でつくるメニューはカ フェで提供できるレベルをめざし、園芸 活動で栽培するラベンダーは、収穫後に オイルを抽出して製品化し、販売も行っ ている。また、災害時に自分で対応でき るようにするため、電気を使わない生活 を体験するプログラムも実施する。自分 の命は自分で守ることを学ぶのだ。本物 志向だからこそ、結家での体験が子ども たちに自信や生きるエネルギーを与えて 発達障害に対してスタッフがひとっ になって取り組んでいる結家の実践は、 同じ悩みを抱えるたくさんの家族にとっ て大きな希望となることだろう 子ともたちの親も 結家の活動を支える CURE GARDEN 結家代表浦野典子さん 結家では子どもたちみんなから「ボス」と慕われている浦野 さん。発達障害児に対する理解を広めるための講演活動も精力 的にこなしている。そんな浦野さんの行動力に触発されて、結 家に子どもが通う保護者たちも動き出した。保護者会が主催と なって勉強会やこどもまつり、ことりカフェの運営をスタート させたのだ。「地域の人たちに子どもたちの障害を知ってもら うのは、とても大切なこと。結家のことを知らす、ひとりで悩 んでいる親も多いと思います。私たちはそんな人のためにも、 自分たちの経験を語っていきたいです」と、保護者会の中心メ ンバーは語る。 人前では本音を話せなかった保護者たちが「子育てあるある」 話で盛りあがり、息 抜きの場となってい る。同じ悩みをもつ からこそ得られる共 感、そしてそこから 次へのステップ。浦 野さんが実践してき た活動の基本は、周 りの人たちに着実に 「子どもたちの成長が楽しみです」と語るスタッ 受け継がれている。フの皆さん ( 左から石川さん、管理者の浦野哲 也さん、代表の浦野さん、柴田さん ) 1 0 イ。 73 月刊福祉 November 2016
Watehing- ウォッチング ~ ロ旧 担当ル 子保健看護学部庸自 和歌山県立 自殺の少ない地域には どのような特性があるのか 平田 ご著書の『生き心地の良い 町』を拝読し、興味深い研究だと 思いました。年間約 2 万 4000 人が自殺で亡くなっている日本に も、自殺希少地域があることに注 目し、その地域の「予防因子」を あぶり出そ、つという発想ですが、 この研究のきっかけは何ですか 岡自殺を研究のテーマにするこ とは大学院に入る段階で決めてい ました。たくさんの先行研究がす すめられていましたが、見ると 「自殺の多い地域では、なぜ多い のか」という研究ばかりでした。 そろそろシフトチェンジしてもい いのではないか、自殺が少ないの は不思議なことといえるのではな いか、という素朴な疑問を抱いた のが研究の始まりです。 平田周りからは「自殺が少ない ことの研究なんて無理なのでは」 月刊福祉 48 November 2016
寅 3 0 0 をつなく こへ来ていた子どもたちは、明日からど 後は 3 年にわたり民生委員を務めた。ま キートス誕生の背景 た、発達障害のある児童の介助員としてこへ行くのだろう」と疑問をもったとい う。翌年もその疑問は消えず、「法律上、 「キ 1 トスの活動で、それまでの自分 2 年間、小学校に勤務した経験ももっ こうした経験か買われ、 2007 ( 平成『児童』とはみなされす、公的支援の対 のさまざまな経験が 1 本の線でつながっ 四 ) 年には、特定非営利活動法人ちょ、つ象外となってしまう歳からの居場所が たように思います」。そう話す白旗さん くにたち ふこどもネットが主催する、中高生を対必要」との思いか強まり、 2010 ( 平 は、国立音楽大学教育音楽科を卒業後、 ちょ、つふ 成 ) 年 3 月末にを退職「そ 自宅でピアノ教室を開き、知的障害や発象とした児童館「調布市青少年ステ 1 の年のお別れ会で送り出される子どもた ション 0 < co 」 ( 以下、 0 < ) に 達障害のある子どもたちを受け入れてき ちに私の携帯電話の番号を渡しておいた 相談員として迎えられた。 た。多様な子どもたちと関わり、また自 ところ、電話か来るよ、つになり、しばら では毎年 3 月末に、高校 3 身の子育てを通して、心理学に興味を もった白旗さんは、絽歳の時にルーテル年生を送り出す「お別れ会」かあり、そくはファミリーレストランで子どもたち の相談にのっていました。でも、誰にも 学院大学へ入学し、心理学を専攻卒業の時、白旗さんは「家に居づらくて、こ 「家」のように安心できる 「居場所」をつくる 東京都◎特定非営利活動法人青少年の居場所 0 特定非営利活動法人青少年の居場所 -•-+J 0 ( 以下、キートス ) では、さまざまな事情から、 家庭に自分の居場所を見いだすことのできない代から囲代の若者を対象に、安心して過こせる 「居場所」を提供している。利用者の「家」代わりであることにこだわり、利用者一人ひとりに寄 しらはたまき り添いながら、さまざまな支援に尽力する代表の白旗眞生さん ( ) にお話をうかがった。 安心して過こすことのできる「居場所」を求めて、キートスに 集まる子どもや若者たち November 2016 月刊福祉 78
M/fift«•hing ウォッチング ~ ロ旧 希日自 心地がよく、その結果、表出した 殺回の の第一 現象のひとっとして自殺率が低い 本で町 旧究い のだと思います 研良 同の 平田そ、つすると、いじめか少な 課取を いとか虐待か起きにくいといった を生 ) - 斗 - 十一に 3 ことにもつなかりそうです。今後 博書 研で著 2 の研究にそ、つした広がりも出てき ン究賞社 0 メ研受談 そうですね ジのを講 ネ子賞 ( マ因文る 岡 今、「公と私」、つまり公的空 康防論あ 健予秀が 院殺優由 間と私的空間の行き来をど、つする み学自会理 力とい、つプロジェクトに関わってい ゅ蠻 ま大お神さ 塾に精低 ます。プライ、ハシーを守りすぎる 義域会の カ應地社率 お慶少本殺 と外から私的空間が見えなくなり、 児童虐待などの問題が重症化して のですね。仮説はどのように立て町の人たちにいろいろと話を聞く平田町で見つけた予防因子は、 も公が適切に関与できなくなりま 0 られたのでしようか なかで浮かびあがってきたことで「いろんな人がいてもよい、いろす。そのバランスは難しいですね 岡先行研究かなかったこともあす。何度も繰り返し、いろいろなんな人かいたほうがよい」「人物海部町では「プライバシーの侵害」 り、予断をもってはいけないと考人に話を聞くうちに「あ、これは本位王義をつらぬく」「どうせ自に対する概念が少し違います。住 えていました。事前に考えていた前も聞いたな」とつながっていった分なんて、と考えない」「病は市民同士、一挙手一投足が把握され のは、「地域によって自殺率が違うのです。さらに、住民 3300 人に出せ」「ゆるやかにつなかる」て何でも筒抜けなのですが、ティー のであれば、そこにコミュニティのを対象に行ったアンケ 1 ト調査で、 の 5 つでしたね。個人の尊重原理ンエージャ 1 も含めて「プライバ 特性が関係しているのではないか」それらの点を検証していきました。そのものをさしているような気がシーが侵害されている」とは思わ ということぐらいでした。研究の して、非常に興味深いです ないよ、つです。ではと、つい、つ時に 「病は市に出せ」とは なかで出てきた 5 つの予防因子は、 岡それを追求しているから生きプライバシーの侵害を感じるのか 0 0 月刊福祉 50 November 2016