設定しており , これも妥当なやり方と思われる。 これらの工夫から , 一見「最大クラス」だと専門 家でさえ思い込みがちである。 報告書では入倉・三宅式が使われているが , 原 発の基準津波の審査では , 武村 ( 1998 ) 式を用い て ' 震源の大きさ ' を推定するのが普通である。そ の式を変形してわかりやすくすると次の ( 3 ) 式と なる。ここで L(km) は断層の長さである。 財。 = 4.365X10 炻 x た により求めることができる。 〃 = 1.273 x 〃Ⅳ 3 ( 4 ) こでⅣ ( km ) は断層の幅を示す。海底断層 F54 では長さカ = 58 km, 幅Ⅳ = 13.9 km なので , ず れの量は 5.3 m と求まる。これにばらっきを加え ると 6.8 m となる。入倉・三宅式を用いた場合の 2.8 m の倍以上である。ばらっき 1.5 m を加えな くとも倍に近い。山中・島崎 ( 1990 ) " 式からも同 様に、震源の大きさ ' とずれの量が次のように求め られる。 外イ。 = 3.802X 1016X カ 〃 = 1.108 X 〃Ⅳ 2 ( 5 ) ( 6 ) 上式からは , ずれの量が 4.6m と計算され , ばら つきを加えて 6.1 m となる。入倉・三宅式を用い コラム 地震モーメント 地震モーメント MO( この小文では。震源の大き さ ' ) は断層面積 S , ずれの量 u と剛性率″の三者 の積に等しい 12 。すなわち , 次のように表すこと ができる。 Mo = ″ X uX S こで剛性率は , 岩石のある種の固さを示す。断 層をずらすように加えたカに対する , 岩石の変形 しにくさを , 剛性率は示している。日本海の津波 断層モデルの報告書では , 剛性率を 3.43X101 。 Nm としているので , この小文でもその値を用い から導かれる。 ( 4 ) 式は上式と ( 3 ) 式から , ( 6 ) 式は上式と ( 5 ) 式 ずれの量を表す ( 2 ) 式は , 上式と ( 1 ) 式から , る。 た場合よりはるかに大きい。他の例も同様である。 報告書によれば , 兵庫県の海岸における F54 断層の津波の高さは , 高いところで 3 ~ 5 m 程度 とされている。しかし武村式や山中・島崎式が適 切な場合には , 津波の高さは高いところで少なく とも 6 ~ 10 m 程度となるのではないだろうか 想定の 2 倍以上の高さの津波に襲われた地域で の犠牲者が , 全体の 8 割を占めた東日本大震災 を忘れてはなるまい。 入倉・三宅式を他の式と比べる なぜ , 式によってこのような違いが生じるのか 日本海津波断層モデルの委員会委員横田他 ( 2016 卩 3 が式の検討を始めたが , もととなったデ ータの違いによると思われる。入倉・三宅式では 世界のデータが扱われており , 他の式では日本の データのみが扱われている。 この小文で問題としているのは , 日本海西部 , 詳しく言えば能登半島以西の津波である。これら の津波は垂直な断層 , あるいは垂直に近い断層に よって発生する。これらの断層の動きは主に横ず れである。逆に日本海東部のほとんどの断層は斜 めに傾いており , 縦ずれの動きが大きい。日本海 のみならず , 日本列島とその近海で発生する地震 にはこのような特徴がある。 入倉・三宅式が問題となるのは , 断層が垂直 , あるいは垂直に近い場合である。西日本の多くの 断層が該当する。一方 , 断層が斜めに傾いている 場合は間題にはならない。日本海東部の津波がこ の小文の対象から除かれているのは , このためで ある。次に , なぜ断層が垂直 , あるいは垂直に近 い場合が問題なのかを説明しよう。 津波を起こす地震は浅い地震である。日本列島 およびその近海 ( 日本海を含む ) で起こる浅い地震の 断層の下端は , 深さ 15km 程度とほば一定である。 上記で例としてあげた F54 断層は垂直で , 断層 下端の深さが 15. Okm , 上端の深さが 1. lkm で , 幅は 13.9km である。なぜ , 断層下端の深さが 定なのか ? 地震は , 地震発生層と呼ばれる層 ( 厚 最大クラスではなし旧本海「最大クラス」の津波科学 0655
水流が集中し , 一層凍結しにくくなるわけで , 最 初からこうなるとわかっていたのではないかとも 思います。なぜうまくいくとは思えないやり方で の作業を方針転換もしないで進めているのか , と いうのは , もちろん原子力行政ではそこらじゅう にあることにしても , 事故対応ではもうちょっと ◎科学から生まれた本 岩波書店編集部編『科学者の目 , 科学の芽』 岩波科学ライプラリー 248 本体 1600 円 + 税 有田正規著『科学の困ったウラ事情』 岩波科学ライプラリー 247 本体 1200 円 + 税 戸塚洋二・梶田隆章著『増補新版地底から宇宙 機敏に対応ができる必要があるように思います。 また , これは多少状況が違うにしても , 2 年前 のトレンチ凍結失敗と基本的に同じメカニズムに よるものであり , なぜそこからなにも学習しなか ったのか , ということも問われるように思います。 8 月号予告 8 月 1 日発行 ( 7 月 25 日出 庫・販売開始 ) 予定 * をさぐる 四六判 ニュートリノ質量が発見されるまで』 本体 1800 円 + 税 特集甲状腺がん 172 人の現実 ( 仮 ) 7 月 25 日は小社出庫日で店頭でご覧いただけるま でに数日かかります。店頭での在庫はお近くの書店 にご確認ください。 『科学』バックナンバー く 2016 年〉 大浜啓吉著『「法の支配」とは何か行政法入門』 岩波新書新赤版 1589 本体 840 円 + 税 植木不等式著『ばくらの哀しき超兵器』 岩波現代全書 71 本体 2500 円 + 税 中嶋康裕著『うれし , たのし , ウミウシ 岩波科学ライプラリー 240 本体 1300 円 + 税 study2007 著『見捨てられた初期被曝』 岩波科学ライプラリー 239 本体 1300 円 + 税 牧野淳一郎著『被曝評価と科学的方法』 岩波科学ライプラリー 236 本体 1300 円 + 税 小豆川勝見著『みんなの放射線測定入門』 岩波科学ライプラリー 224 本体 1200 円 + 税 今泉みね子著『脱原発から , その先へドイツの 市民エネルギー革命』 四六版 本体 2100 円 + 税 尾内隆之・調麻佐志編『科学者に委ねてはいけな いことーー科学から「生」をとりもどす』 本誌論文選 本体 2600 円 + 税 「科学」編集部編『原発と震災ーーこの国に建て る場所はあるのか』 本誌論文選 6 月号 5 月号 4 月号 3 月号 2 月号 I 月号 く 2015 年〉 2 月号 3 月号 4 月号 5 月号 6 月号 7 月号 8 月号 9 月号 10 月号 Ⅱ月号 12 月号 I 月号 日本の原子力安全を評価する 重力波検出 / 理解と思考の危機 大学と利益 原発事故下の 5 年 土壌微生物がもたらした奇跡の薬 2015 ノーベル生理学・医学賞より 有用性の罠 . 軍事と科学 研究不正と大学の現在 く安全〉をめぐる問い 本来の設計・本音のコスト 原子力発電をめぐる対話 . 今の日本でそれは可能か 過酷事故への備え 人間の論理・自然の摂理 『大陸と海洋の起源』 100 年 大陸移動説からプレートテクトニクスへ 宇宙を駆けめぐる贈り物 一般相対論 100 年 100 ミリシーベルト神話を問い直す 論理が活きる社会へ 国際土壌年に寄せて 土の現在 , 土の未来 ニュートリノ物理歴史と展望 光をつくる 0664 KAGAKU 本体 2200 円 + 税 Jul. 2016 VOL86 N07
照射脆化 ) 補足説明資料」 ( 資料 1 + 5 ) 2 を提出し , 高経 年化技術評価の詳細説明を行った。その説明資料 は , 前報で問題にした破壊靭性データとその解析 をどのように行ったかのプロセスをある程度詳し く述べていると考えられる。 こで , 「考えられ る」としたのは , 肝心の記述がほとんど白抜きに なっていて , 中身がわからないからである。驚く べきことに , 「機密に係る事項」という名目で , 秘密にすべきでない安全に関わるデータや数値が 白抜きになっているのだ ( 詳しくは , 筒井哲郎 , 蝌学』 6 月号参照 3 ) 。 これらの問題をめぐって , 4 月 20 日 , 原子力 資料情報室と原発ゼロの会 ( 阿部知子議員事務所 ) の共 催で原子力規制庁ヒアリングをおこない , 質疑が 不十分に終わった点については再質問し , 5 月 12 日と 16 日に文書回答が届いた。また , 5 月 12 日の衆議院原子力問題調査特別委員会では , 菅直人議員が , ( I) 関電資料 1 ー 1 ー 5 の白抜き問題 , ( 2 ) 原子炉圧力容器破壊靭性評価の信頼性 , 3 監視規程を作成した日本電気協会の中立性・公開 性の 3 点について , 規制委員会に説明を求めた。 「白抜き」について 原子炉圧力容器の健全性を確認する破壊靭性評 価において重要なのは , 各回の監視試験における 破壊靭性値の生データと破壊靭性曲線の作成プロ セスである。前報 1 に詳しく書いたように , 美浜 2 号機などについては , 原子力安全・保安院時代 の「高経年化意見聴取会」で関西電力は , 監視試 験の生データをすべて公開し , 破壊靭性曲線の作 成プロセス図も示した * 1 。ところが , 高浜 1 , 2 * 1 ー阿部知子議員 ( 原発ゼロの会 ) の質問書に対し , 規制庁は , 「原子力安全・保安院時代に意見聴取会の資料として公開され ていた照射脆化関連データについては原子力規制委員会として は提出を受けていません。」と回答してきた。これは奇妙なこ とである。旧組織 ( 原子力委員会 , 原子力安全・保安院など ) の 資料はすべて原子力規制委員会が引き継いだはずである。当初 , 規制委員会のホームページ上にも載っていた意見聴取会などの 資料は , サイトの容量が不足になったなどという理由で , 2015 年 9 月 ( 発足から 3 年後 ) に削除されたとのことであるが , 電子 データとして規制庁が保管し活用していないとは考えにくい。 0644 KAGAKU Jul. 2016 VOL86 No. 7 号機についての対応する数値は完全に白抜きであ る ( 資料 1 ー 1 ー 5 , p. 34 , 35 ) 。この違いはなぜ生じたのか , 公開の原則が保安院時代より後退しているという ことはないのか , というのが菅直人議員の第一の 質問だった。 原子力規制委員会田中俊一委員長は , できるだ け公開するという原則には変わりない , セキュリ ティー関係や商業機密に当たるところは , 情報公 開法上不開示情報に該当するので公開しない , 資 料が極めて膨大なので事業者からの申請をベース に対応している , という趣旨の答弁を行った。そ れに対し , 菅直人議員は , 関電が企業秘密だから 公開できないと言ったら , はいそうですかと白抜 きにする , とても国民的には理解できない , と追 及した。田中委員長は , 「ご指摘の点 , 私も同意 できるところはありますので , ・・・・・・改善を図って いきたい」と答えた。 具体的に関西電力作成の説明資料 1 ー 1 ー 5 の白 抜き箇所を示しての追及に対しての回答であるか ら , この資料についての白抜き箇所の是非につい て規制庁が見直し , 当然ながら公開するものと期 待する。また , 一般論としての回答でもあるから , 事業者提出資料全般についても改善がなされなけ ればならない。 破壊靭性評価の信頼性 関西電力作成の「高浜 1 号炉高経年化技術評 価書 30 年目 ) 」に示されている運転開始 60 年後の 破壊靭性予測曲線と「同 ( 40 年目 ) 」の予測曲線と を比較すると , 両者の位置が著しく異なり , 40 そのようなことであれば , 原子力規制行政が歴史的スパンでの 思考を停止していることになる。あってはならないことである。 私たちが直接接する規制庁の若手職員たちがときとして歴史経 過を知らないという経験をするので , そうでないことを願う。 なお , この旧組織の資料 ( 高経年化技術評価に関する意見聴取 会 ( 第 13 回 , 2012 年 4 月 13 日 ) 資料 2 「関西電力 ( 株 ) 美浜発電 所 2 号炉の高経年化技術評価に関する照射脆化関連データ」 ) は 国立国会図書館によって収集・保存されており , 次のサイトで 閲覧できる : http: 〃 warp. da. ndl. go.jp/info:ndIjp/pid/9483636/ www.nsr.go.jp/archive/nisa/shingikai/800/30/013/240413. html
自己免疫病の何らかのサインを見逃さないように , 十分なチェックを怠らなけ れば , 大事に至らずに , がんの治療と自己免疫の治療を並行させることは不可能 ではありません。 自己免疫症状が現れる人とそうではない人 , また現れる臓器の違いについても , 個人差の問題になります。免疫系の活性化されやすさや , いわゆる抗原認識多様 性の違い , それに加えて , 炎症反応を引き起こすサイトカインの産生量など , 免 疫系にかかわる遺伝子の数だけでも数百は優に数えられます。人はそれぞれ , 同 じ遺伝子をもっとは言っても , その遺伝子の多型性 ( 配列のバリエーション ) の組み合 わせから , その遺伝子の発現量によって , 非常に異なる反応が引き起こされます。 あまりにもつよい反応が起きるときには , 特定の臓器への攻撃が重症化し , 自己 免疫病が発症してしまうわけです。 したがって , もともと明らかな自己免疫病をもつ人が , がんを患った場合には , 現時点では , この治療法は医師としては勧めにくいと考えられていますが , やが てそういう患者でも , 自己免疫病を予防しながら治療する道は開けていくものと 期待しています。 いのちとは何か 幸福・ゲノム・病 本庶佑著 四六判 166 頁本体 1900 円 + 税 2009 年 12 月 17 日発行 永遠の問いに現代の生命科学はどのように答えるのか。 環境との相互作用の中で生まれ進化してきた生命は , 〈偶然〉とく必然〉の狭間を歩んでいる。 いのちのダイナミズムと人の幸福を 世界的に知られる免疫学研究の第一人者が語る。 雑誌『科学』連載の単行本化。 岩波書店 本庶佑 いのちとは何か 幸福・ゲノム・病 岩波書店 0652 KAGAKU Jul. 2016 VOL86 No. 7
0 、今すを ! HiIiamaeta の様子。 "Löu" 側へ , 海が見える ( , 真ん中に公共の道路がある。 そのほかは「違いはない」 , ある に現れてきた。そして合議広場の そこかしこに砂岩性のべンチが置 いは「わからない」と答えた。ま かれているが , 背板の有無 , 背板 た答えること自体に消極的であっ の高さ , 座面の格式表現の差異に た。これは聞き取りに応じた人が I 型のヒリナワロ・フォウ よって階級差が如実に現れていた。 住んでいる側の影響が大いにあっ (Hilinawalö Fau, 0.653725N , 97.778579 たし , 集落の形の成長によって次 E ) の集落に訪れた時 , 巨大なヴォ おそらく首長と第二の位置に属す る人物が座っていたであろう右側 第に左右が生み出す差異に対する リュームをもった首長の家をみた。 の二つの椅子は凝った装飾の高い その家の前に見事な造形の合議広 意識が薄まった可能性も考えるこ 背板を持ち , その背後には "daro- ニアスの伝統 場があった。公共軸の中心を石積 とができた。現に daro" と呼ばれる資本の象徴であ 集落の組織構成は特に Raja のカ みの高低を用いることで正方形に は有名無実化しているという。世 領域化したその広場には , “ L 面” る巨大な平石状のべッドが置かれ " Raya " のみならず , 首長の家の ている。さらに横には高さ 4 m 界遺産に充分値する首長の家は空 き家となり , 廃墟化の危機に瀕し ある家並み側ともう一方の家並み を超すメンヒルがその椅子の横そ れぞれにそびえていた。一方 ている。彼らの末裔は合議広場の 側との階級表現を緻密にデザイン “ L 面 " 側の左側にある最も低いべ していた。合議広場には様々な階 討議でイニシアチプをとるとは限 らない ( 註 6 ) 。しかしやはりニアス ンチは背板がなく位置も低く , 座 級 , 役割を持った人々が座るため , 板に貢ぎ物めいた箱型の彫刻がさ の集落にはその集落ができあがる そこに一つの間違いもあってはな れていた。そのべンチの装飾はそ らなかったのだろう。高低差を分 までのダイナミックなプロセスが 析すると , 。 Raya " と首長側であ こに座することが一時的であるこ 記録されている。 る右側を最上とする関係性が見事 とを意味していた。 こで私たち 科学 0675 動く大地に住まう ロ議場所の造形
米国は 2011 年 7 月 , タスクフォースを立ち上げ 要棟を撤回し , 既存の緊急事対策所の隣に耐震支 このよう て具体的な 12 の勧告を行っているが 4 援棟を建設するという変更を申請した。さらに関 な対応をとるには成熟した経験が必要である。 西電力高浜 1 , 2 号の審査では , 火災を防ぐため それでも原子力規制委員会は早急に , 事業者の 難燃性ケープルを導入する新しい規制要求に対し , 先を行き , 事業者を超える知見が必要である。例 全長 1300 km に及ぶ 6 割を難燃性 , そして残り えば難燃性ケープルの代替案が及ばす影響の独自 は防火シートで覆うという方針が認められ審査に の分析や , また川内原発が方針を変えた理由が単 合格した。 なる方向転換なのか審査合格を急いだ結果なのか このような手続きや設計の変更は , 安全性の軽 詳細な分析が必要である。そうでなければ , 今後 , 視といった懸念を感じさせる。しかしながら特定 他の事業者が次々と追随し新規制基準は崩れてい 重大事故等対処施設は , 規制委員会によればバッ くだろう。 クアップ施設であり本来の安全性は別途確保され なお審査スケジュールについて , 規制委員会が ていること , また新規制基準は具体的に仕様を指 事業者に配慮するような不透明な動きが見られる。 定する仕様規定ではなく , 要求する性能を満たせ 例えば 2015 年 7 月 , 審査の効率化と称して東京 ばその手法は問わない性能規定で要求しているた 電力柏崎刈羽原発を BWR の中で優先的に審査す め , その点では矛盾はないともいえる。 る方針を明らかにしたが , その意思決定過程は不 しかしこれらの動きの背景には , 日本の原子力 安全規制は , 福島事故以前の低いレベルから短期 明療である。いすれにせよ審査が長期化している ことについて原子力規制委員会は懸念する必要は 間にトップレベルまで上がることが要求され , そ ない。日本原子力産業協会は早期の再稼働を訴え , の結果 , 規制能力が追いついていないという重大 日本原子力学会は研究炉の停止に伴う大学研究の な問題があることが考えられる。 影響を訴えている。しかし現状の審査の遅れは , 例えば性能規定は , 事業者に自主性を促しかっ 原子力業界が長期にわたって安全性を軽視してき 合理的な手法ではある。しかし一方で , その事業 た当然の帰結にすぎない。またもし停止の長期化 者の多様な判断を分析・評価する能力が規制側に で安全性が低下するのであれば , それは公開の場 必要となる。性能要求は相手に丸投げすればよい で議論すべき内容である。原子力規制委員会はそ ものではなく , 規制側は独自の評価基準を事前に の活動原則の中に , 独立した意思決定を掲げ , 確立しておく必要があるしかし現在 , 原子力規 「何ものにもとらわれす , 科学的・技術的な見地 制委員会は , 自分たちで設定した高い安全基準に から , 独立して意思決定を行う」ことを挙げてい ついて , 経験豊富で要領のよい事業者からの回答 る。 これを忘れるべきではない。 に十分に対峙できていない。 福島事故以前から低い規制レベルにあった日本 の原子力安全規制は , たとえ規制機関が変わった としても , すぐに十分なレベルに達することは困 難である。例えば旧原子力安全・保安院および旧 上記の問題を解決するために , 以下の二つの具 体的な対策の導入が必要である。 原子力安全委員会に対して行われた 2008 年の IRRS 報告書では , 規制機関の品質マネジメント ( 1 ) 原子力の危険性の明示化 : 安全目標の決定 システムなど 10 項目もの勧告が行われており , と費用便益分析の活用 前述の安全目標について , 死亡リスクを勘案し その後 , 日本側はその対策を取っていなかった。 た明確な値を早急に定め , 原子力政策が突きつけ つまり福島事故後の日本の原子力規制はゼロから る人間社会への影響を明示化し , その是非をより ではなくマイナスからのスタートであり , いまだ 具体的に議論し合う必要がある。特に福島事故を 向上の時間を必要としている。日本とは対照的に 福島事故 5 年後の原子力安全規制 : 現状と将来の課題科学 0729 0 一三 確実な規制に向けて
正・負エネルギーの固有関数 ( ェ ) 三 exp は / ( ん・エー川 ( > 0 ) を用いてスカラー場の ( ェ ) を , 式 ( 23.1 ) ではなく , 直接 ( 23.2 ) の形に展開する : ( 23.4 ) そしての , をそれぞれ電荷が逆符号の粒子の消 滅演算子と解釈するのである。 これと同じことが電子場に対しても可能である ということが , なぜ 1934 年から 1937 年まで気 付かれなかったのであろうか。人々がそれほど空 孔理論の考え方に魅せられていたということか ただし PauIi だけは例外だったと Weissk 。 pf は述 べている。 Pauli は空孔理論が大嫌いであり , 負エネルギー状態には Dirac とは別の取り扱いが 可能であるということを , スカラー場の量子化に よって例示したかったらしい , というのである。 最近 S. Weinberg も彼の教科書の中で , 反空孔 理論的な考えを述べている " / 。ただ , 空孔理論に 代る取り扱いを試みた最初の論文として , 文献 111 ではなく , 1934 年のⅣ H. Furry-Oppen- heimer の論文を挙げている 52 。しかしこの論文は , やはり ( 23.1 ) から出発し , その後陰・陽電子に対 する状態空間を構築するという迂遠な方法を採っ ている。これでは空孔理論と五十歩百歩ではない か。したがって電子場の量子化法改変の論文とし ては , 文献 1 1 1 の方が適当と私は考える。事実 , 坂田も Furry-Oppenheimer 論文については何ら の言及もしなかった。 以上のような状況にも拘らず , その後もなお空 孔理論は生き延びる。どうやら物理学者は・真空 から粒子が飛び上って・・・・・・ ' といった詩的表現が お好きだったようである。例えば 1947 年の伊 藤・木庭・朝永のレター 89 にも , " 真空電子の自 分自身とのクーロン相互作用によって作られた ( 陰・陽電子対 ) " といった表現がなされている。 長年の習慣からは容易に脱し切れないということ か。いずれにせよ , まことに奇妙な状況ではあっ 陽電子論の第 3 段階は , 1949 年の Fe メ nman の , 0740 KAGAKU Jul. 2016 VOL86 No. 7 ( 士 ) 文字どおり "The theory of positrons" と題する論 文である ( 文献 102 の第 1 論文 ) 。ここでは電子 の過去向きの運動を陽電子と同定する。そしてこ れに対する伝播関数の導出が長々と続くが , 要す るに , 負エネルギー ( ーお状態に対する ( 通常の ) 波動関数の位相を exp[—i(—E)t]=exp[—iE(—t)l と書き直すことに対応する。あるいは相対論的場 の量子論における℃ PT 定理 ' を用いれば , 次の ようになる。ここに C, P, T はそれぞれ、荷電共 役 ' 啌間反転 ' , 塒間反転 ' の演算子であり , の 3 者を任意の順序で続けて変換するとき , 理 論は不変である ' という定理である。このことを 記号的に CPT I ( 恒等変換 ) と表現しよう。 QED では P I であるから , 上式より CT I, したが って c2 I を考慮すれば T C となる。すなわち , 時間反転した電子状態は , 荷電共役した状態 , っ まり陽電子状態と同等になる。 以上は形式的な議論に過ぎないが , このことの おかげで摂動計算が恐ろしく簡単になったのであ る。例えば , 過去に向って進行していた電子が外 場によって未来向きの運動に転化したとする。 れは物理的には , 外場による陰・陽電子対の生成 過程に相当する。生成時以降は 2 体問題となる が , Feynman 的に見ればまったくの 1 体問題で ある ( この種のことは 2 体以上の場合にも可能 ) 。 これが計算簡単化の一因である。 さらに , 一般に Feynman QED では , 基礎方程 いわゆる 'Feynman 図 ' を先す 式を書く代りに , 画き出す。これは電子や光子の入射・放出を表す 外線 ' , 両者の伝播を表す吶線 ' , および陰・陽 電子による光子の放出・吸収を表す、頂点 ' から成 る。そして内線や頂点をそれぞれ 'Feynman 伝播 関数 ' , 。頂点関数 ' で置き換えれば , Feynman 図に 対応する過程の確率振幅が得られる。しかも , 与 えられた Fe メ nman 図は時空的に任意の仕方で歪 めてもよく , このため , 1 個の Feynman 図が物 理的には互いに相異なる多くの過程を代表し得る ことになる。これが摂動計算簡単化の第 2 の , そして最大の要因である。旧式の摂動計算で高次
近似を経験したわれわれ老輩が , Feynman 方式 の簡単さを知ったときの驚きのほどは , Feynman 図から素粒子論を始めた若者たちには , 恐らく想 像もできないのではなかろうか Feynman 理論と同じ頃にわが国では , 木庭・ 武田が , やはり陽電子を時間逆行の状態として表 し , 摂動計算を図式化することを試みている 11 % もっとも彼らの方法は従来の摂動計算に基づくも のであり , 中間状態を察知する上では有効であっ たが , 計算の簡単化に繋がるものではなかった。 しかしながら , 次節で取り上げる Dyson の第 1 論文 97 は , その冒頭に脚註を付し , " 同種の図式 化は木庭・武田によっても略述されている " と述 べ , 高く評価している。 本節の余話は梅沢博臣著『素粒子論』 ( 四六版 , 全 308 頁 ) みすす書房 ( 1953 ) についてである。 こでも電子場の量子化を上述の lwanenko たちの 論文に帰している。恐らくこの著者もまた , 本節 冒頭で述べたと同じことを坂田から教わったので はなかろうか。ところで本書は , 私の推測に過ぎ ないが , 紫粒子論 ' と銘打った成書としては , 世 界初ではなかろうか。もっとも当時のわが国では 、素粒子論 ' と、場の理論 ' はほとんど同義語とされ ており , 私の学生時代に唯一読むことのできた 明の理論 ' の教科書として G. WentzeI 著の "Ein- führung in die Quantentheorie der Wellenfelder" Franz Deuticke, Wien ( 194 引が存在したことは確 かであるか・ さて , この梅沢本については , 後に再び取り上げることもあるので ( 1 ) , ではその成立過程を説明しておきたいと思う。 1950 年頃 E 研において梅沢が若手研究者に向 けて一連の講義を行っていた。手研究者 ' とは 主に ( 旧制の ) 大学院生であった。現在の大学院の ような講義や試験や単位や学位とはまったく無関 係で , 単に学部卒業後も大学に残って研究を続け る者の , いわば総称なのであった。それゆえ , 彼 らに対して講義を行うことは , まったく異例の出 来事であった。梅沢が準備してきた原稿を基に 自由に討論を行うので , 講義というよりは , むし ろ報告者梅沢による連続セミナーと言ったほうが 適当かもしれない。そこでの討論の中から新しい アイディアが生まれ , 論文となったものも多くあ った。 一例を挙げよう 私にとって最も印象深かっ たことの一つでもある。ある日の主題は明の方 程式 ' の解法としての 'Yang-FeIdman の方法 ' であ り微分方程式を積分方程式に書き替えて論す るものであった。一見して私には , この方法は正 準形式では取り扱えないような , 例えば非局所的 な相互作用の場合にも適用できるのではと思えた。 そこでそれについて発言すると梅沢は " それは面 白い問題だ , 一考に値する " と言い , 結局 , そこ から多くの論文が書かれていくことになる。私自 身はくりこみの仕事で多忙なため遠慮したが , 連の研究に参加した人々の名前を挙げれば , 高橋 , 梅沢 ( 以上名古屋 ) , 林 ( 忠四郎 ) , 片山 ( 泰久 ) ( 以 上京都 ) , pauli, HeitIer-L. O'Raifeartaigh, ( 以上 Z ⅱ rich ) ・・・となる。こうした議論の結果をまとめ たものが上記の書となる。なお講義では採り上げ なかった行列 ' ( 第 17 節 ) の草稿は私が書いた。 1953 年秋 , 坂田のいわゆる " 小さな ( 四六版 ) 大著 " を携えて梅沢は英国 Manchester 大学の L. R 。 sen 日 d 教授の許に赴く。この書の引用文献の , ローマ字で書かれた著者名から推して , これは場 の理論関係の本らしいと R 。 sen 日 d は判断する。 そして彼の斡旋により直ちに英訳・出版の運びと なる。これが H. Umezawa "Quantum Field Theo- ry", North-Holland Pub. Co. Amsterdam ( 1956 ) 全 364 頁である。当時のヨーロッパでも , この類の 書は未だそう多くはなかったと思う。 目 24 Dyson の 2 論文 ( 1 ) 朝永 , Schwinger そして Feynman 1949 年 F.J. Dys 。 n はくりこみ理論の全体的構 造を明確にするような 2 篇の基礎的論文を発表 する 9 / 。そしてその第 1 論文が , "The Radiation Theories of Tomonaga, Schwinger, and Feynman と題されていたことは , すでに述べた ( 20 参 ーーー研究者 0 洄想科学 0741 照 ) 。以下では , いかにしてこのような表題の論 くりこみ理論誕生のころ
規程内容が技術的に妥当であるかどうかを評価し ている , というものだった。菅議員は , 規制委員 会会合の席上でも委員から批判的な意見が出され ていることを指摘した上で , 規格を作成するメン バーと作成された規格の内容とは関係性が遮断さ れているわけではない , しつかりとチェックせよ と質問を締めくくった。 この菅議員の指摘は , 規制委員会席上で出され た更田豊志委員の次の発言 4 などを受けたもので ある。少し長いが原文のまま引用する。 更田委員長代理 ・・・ 2013 年追補版に基づく予測を上回る脆化が見られ た場合には , 日本電気協会に報告を求めると書かれている のですけれども , これはパプリックコメントでも日本電気 協会の立場を示すかのような御意見がありましたけれども , これが得られない場合には , これはもう規制側の対応は極 めて単純でありまして , 日本電気協会の評価が予測式を上 回る脆化が見られたのだったら , それは個別の技術評価に おいて事業者にきちんと説明をしてもらう。そういう意味 で , 日本電気協会の予測式が果たす役割がそこで失われる ことになるわけだけれども , それに対応が見られないのだ ったら , それはそれで「せざるを得ない」という倉崎課長 の説明がありましたけれども , これは規制側の対応として は極めてシンプルなものだと思っています。 それから , 2 つ目は , 今回 , これは物理的なモデル式と してではなくて , 単にデータをつなぐ多項式近似なのだと , そういう捉え方をして , 多項式としてある範囲をもって使 えるものだということを確認したわけですけれども , 日本 電気協会は元々これを物理的なモデル式だとして示してき たわけで , そういった姿勢を示すのであれば , 様々な内容 に関する問いかけに対してきちんと答えるというのが , れは学協会規格を与える者としての当然の責任であろうと 思います。 ただし , これは 3 つ目ですけれども , それで , 日本電 気協会の考え方等に対して報告を求めるという姿勢になっ ているのだけれども , 例えですけれども , 嫌がる相手をい つまでも追いかけているのではなくて , もう応じられない のだったら別の場を立てるのだというぐらいの姿勢を見せ ていいのだと思います。 0646 KAGAKU Jul. 2016 VOL86 N07 これは日本機械学会なり , 日本金属学会等の場を借りる のでもいいし , 原子力規制庁が日本電気協会にこうしても らうというのをあるところで諦めなければならないのかも しれない。それならそれで , もうプロアクテイプにこちら で場を立てて , 脆化予測式の検討をしましようという , そ ういう覚悟といいますか , そういう姿勢を持った上で , 日 本電気協会に今後どうするのですかというのを是非問うて もらいたいと思います。 このことに関連し , 規制庁は , 日本電気協会に 対して「特定指導文書」を発出し , 婉曲的な表現 ではあるが次の改訂時にはまともな規程にするこ とを求めた。日本電気協会に対しそれなりの圧力 をかけたと言える。これは , 昨年来の筆者らのさ まざまな批判活動が多少 , 影響を与えたと考えて よいであろう。とはいえ , 規制委員会は , 初歩的 誤りを含む無様な現行規程を容認したことに変わ りはない。それに目を瞑る代わりに「特定指導文 書」を出さざるを得なかったのである。日本電気 協会が約東した JEAC4201 の改訂は 2 年先 ( 2018 年 ) である。現規程を作成した責任者たち 5 が , 誤 りを認めてまともに改訂作業に取り組むかどうか , どのような改定案ができ上がるのか , 注目してお 原子力の安全性を確保する規程は , 原子力学会 , 機械学会 , 電気協会の 3 学協会が作成に当たっ ている。事業者主導で業界に親和的な大学教授な どの学識経験者をへッドに据えて委員会を組織す るのが常である。安全性に不安を抱く市民サイド の意見が反映される仕組みはまったくない。規制 庁ヒアリングでは , そういう基本の問題について も問いただそうとしたが , まったくのすれ違いに 終わった。 高浜 1 号機・ 2 号機の 40 年を超えての運転延 長は , 今後 , 次々と現実化する 40 年を超える古 い原発の再稼働の是非に大きな影響を与える。判 断の根拠を示す資料すら公開しないままに , 運転 延長認可期限までに審査を終えようとする規制委 員会の姿勢は , 再稼働を前提とした拙速審議だと 言わざるを得ない。 4 月 18 日 , 高浜 1 号機・ 2
るとこれはまことに貴重な助言であった。以下で はこのことを中心にして , 陽電子論変遷の経過を 振り返ってみたい。 場の量子論から見た陽電子論には , 3 つの大き な段階があったと私は考える。第 1 段階は電子 の負エネルギーの困難を避けるために , Dirac に よって導入されたいわゆる、空孔理論 ' であるお真 空 ' を負エネルギー状態のすべてが占有された状 態とし , そこにできた ' 空孔 ' を十 e をもった粒子 と同定したことである。当時は新種粒子の導入を 嫌う風潮があり Dirac もそれに従ったか , 空 孔を陽子と同定した育 3 。他方 , Dirac 方程式は荷 電共役 ( 反転 ) の下で不変であることも判明し , け っきよく空孔は十 e をもった、陽電子 ' と同定され るようになる育 4 。そして 1932 年の C. D. Ander- son による陽電子の発見に土る ユく育 5 これを要するに , Dirac の空孔理論は , 電子の 。反粒子 ' としての陽電子の存在を予言したという 点では卓抜な考え方であった。外場 , あるいは光 子の放出・吸収による陰・陽電子対の生成・消滅 の説明も見事であった。しかしここに留意すべき は , 真空状態がいわゆるつ irac の負の海 ' である という事実であり , 理論的には , このことに対し て支払うべき大きな負債を抱えていた。 負の海のもつエネルギーや電荷はともに一で ある。エネルギーの場合には , 真空エネルギーか らのすれのみが物理に利くと考えれば何ら問題は ない。しかし電荷の場合にはどうするのか。やは り真空電荷からのずれのみが寄与するように , 電 磁力学を根本的に改変する必要があろう。このた めに Dirac や Heisenberg は長大かっ難解な論文 しかも結論は Hartree 近似でなら何とか処理 できるというもの一一を書かなくてはならなかっ た 52 。いつもは綺麗で決定的な議論をする Dirac にしてはいささか心許ない。基礎方程式には厳 密・正確なものが求められるからである。 このような困難を回避するのが第 2 段階であ ピノール ) でもって , 次のように展開する : ェ ) = 当 〃ん , ス″んス十んス″ん , ス , ( 23.1 ) る。〃は消滅演算子であり , 〃日すとともに通常 し , 下付きのス ( = 1 , 2 ) はスピン自由度に対応す こで上付き記号 ( 士 ) はエネルギーの正・負を表 みと関わり , しかも両者は対称的に取り扱われる この結果 , 理論は正エネルギーの陰・陽電子の 理論から完全に姿を消しているからである。 解釈は大いに異なってくる : 負エネルギー状態は の移行は , 単なる書き替えに過ぎないが , 物理的 の量子化法である , 式 ( 23.1) から式 ( 23.2 ) へ ある。これがいわゆる Iwanenko-SokoIov, Kram- こでは不必要となった上付き記号 ( 士 ) は省いて ( 23.2 ) る : この結果 , 式 ( 23.1) は , 次のように書き改められ き , 後者を陽電子の生成 ( 消滅 ) 演算子と解釈する。 ( 演算子ルⅡを矼ゞ ( したがって〃Ⅱすを A) と書 なス * でもって展開する。これに応じて展開係数 対する波動関数をスとして , ″の代わりに 電共役 ' は、複素共役 ' と一致するので , 陽電子に す Dirac 行列に対して特別な表式を採れば , ・荷 そこで上式第 2 項を次のように変更する。先 滅に煩わされることになった。 扱われているため , 負エネルギー電子の生成・消 では正・負エネルギー状態がまったく同様に取り の反交換関係を満たすと仮定される。上式 ( 23.1 ) ことになる。真空状態も , の , ス = ス = 0 ( 233 ) る。 こでは電子場ェ ) の量子化法と解釈を改 変し , 真空を再び空つばの状態に戻す。従来の方 式では , 自由場ェ ) を 4 種の固有解″ ( 4 元ス によって定義される。したがって , 荷電共役の演 算子を C とするとき , C?ITo= となる ( 空孔理論 ではこの式は成立しなかった ) 。 言うまでもなく , 負エネルギー状態の出現は , 相対論的理論の帰結であり , 電子場に限ったこと でない : 例えばスカラー場の場合にも同様に出現 する。しかし , 1934 年に PauIi と Weisskopf が複 素 ( 荷電 ) スカラー場の量子化を論じた論文では 負エネルギー状態を次のように取り扱っている。 くりこみ理論誕生のころーーー研究者 0 洄想科学 0739